第3章 肺がんと診断されたらまず知って欲しいこと
Q22
患者さんを支援するような仕組みや団体はあるのでしょうか

 2015年に実施された患者体験調査(国立がん研究センターがん対策情報センター)によると「がんと診断されてから,家族から不必要に気を遣われていると感じている」と回答した患者さんは30.7%,「治療中に社会からのがんに対する偏見を感じた」と回答した患者さんは10.6%であったことが明らかになっています。

 このような孤立感の軽減に,同じ病気や似た境遇の方たちと語り合えるコミュニティーへの参加が有用であることは,すでに海外での研究で明らかになっています。しかしわが国では,いまだ地域性やがんに対する偏見により,自分ががんであることを自由に話すことができず,社会から孤立する場合があると指摘されています。

 このような患者さんの実体験をもとに,少しでも状況の改善をはかろうと整備が進められています。2007年に施行された「がん対策基本法」の全体目標には「すべてのがん患者とその家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上」が明記され,これを具体的に実現するために2012年に施行された「がん対策推進基本計画」には,就労を含めた社会的な問題を把握していくことや,ピアサポーターの養成,医療者と患者会が協働してがん診療連携拠点病院で患者サロン開催を行うことなど,患者さんの社会生活への支援が明文化された経緯があります。

1.がん相談支援センター

 がん診療連携拠点病院に設置されている「がん相談支援センター」は,患者さんや家族,および支える側の地域の医療福祉従事者から話を聞きつつ,がんに関する正しい情報を提供したり,患者さん同士の語りの場づくりをお手伝いしたりしています。最近では,働く世代のがん患者さんのために社会保険労務士やハローワークの職員といった医療以外の専門職とも協働して支援を展開しています。

 なお,がん診療連携拠点病院で治療を受けていない患者さんや家族でも利用が可能ですので,気軽に声をかけてください。

2.がん体験者による支援(患者会やピアサポーターズサロン)

 「不安な気持ちを誰かに聞いてもらいたい」「同じ体験者ならわかってくれるだろうな,この不安,このつらさ,この迷い…」「ほかの患者さんはどうやって乗り越えたんだろうか」といった気持ちが生じたときには,地域で活動している患者 会やがん診療連携拠点病院で開催されているピアサポーターズサロンに参加することをお勧めします。

 ピアサポートのピア(peer)とは,仲間,同僚,同等という意味をもち,ピアサポートとは,よく似た体験をもつ者同士が助け合うことを意味します。患者会では,同じような体験をした者同士の交流だからこそ得られる深い共感があったり,療養上のさまざまな困難に対処するための具体的な情報の入手,前述したような孤立感の解消や安堵感が得られるといった意義があるといわれています。

 お住まいの地域で開催されている患者会やサロンの情報についてお知りになりたい場合は,がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターあるいは下記の患者団体などに問い合わせてください。

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全国のがん相談支援センターを探す(国立がん研究センター がん情報サービス)

全国各地の「がん診療連携拠点病院」に設置されている「がん相談支援センター」には,がん患者さんや家族,地域の方も利用できる相談窓口があります。がん相談支援センターでは,専門の相談員が,がんに関わるさまざまな質問や疑問,心配ごとなどの相談に対応しています。相談には料金はかかりません。対面のほかに,電話やFAX,メールでの相談に対応しているところもあります。

その病院にかかっていなくても相談できます。

全国がん患者団体連合会(全がん連)ウェブサイト

 がん治療が生活にもたらす影響は多岐にわたっており,医療者だけですべての問題を解決することは困難です。皆さんのより良い療養生活の実現には,“医療のことは医療者に,生活の工夫は体験者から知る”という視点をもち,先に歩む体験者の声を聞くことも大きな支えになります。診察室以外の支援の場も積極的に活用しましょう。

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