第4章 治療の概要 4-1.外科治療
Q33
手術をするかどうかはどのように決めていくのですか

 外科治療(手術)が望ましいか否かの医学的判断は肺がんの種類,ひろがり,患者さんの全身状態で決まりますが,最終的には患者さんの意志が尊重されます。外科医から納得いくまで説明を聞き,判断してください。

 手術の原則は,外科的にがんのあるところをすべて取り除くことでがんを完全に治すことですので,肺がんが片側の胸(胸腔きょうくう)の中にとどまっている(Ⅰ期からⅢ期の一部)ということが大きな条件になります。胸の外に転移がないかどうかについては全身のPETペットこつシンチグラフィや脳のCT・MRI,肝臓のCTや超音波などで調べます。非小細胞肺がんの場合は,原発巣の近くのリンパ節(肺門はいもんリンパ節)にのみ転移している場合は手術が可能ですが,原発巣げんぱつそうから遠く離れたリンパ節(縦隔じゅうかくリンパ節)にまでひろがっている場合には,さらに遠くにも転移している可能性が高いので手術だけで治療を行うことは望ましくありません。この場合,手術とほかの治療法を組み合わせたり,手術以外の治療法(たとえば化学放射線療法かがくほうしゃせんりょうほう)を選択したりします。一方,小細胞肺がんは進行のスピードが速いこと,薬物療法の効果が比較的期待できることから,手術の対象はリンパ節転移がないⅠ期のみに限られます。

 そして,安全に切除することが可能な体力・臓器機能があるということがもうひとつの条件となります。肺の手術により肺活量は必ず小さくなりますので,手術に耐え得る呼吸機能があるか,手術後の生活に重大な支障が生じないかの評価が必要になります。肺機能が低い場合には通常の手術を断念せざるを得ない場合があり,通常の肺葉切除はいようせつじょよりも少ない体積の肺を切除する縮小手術〔楔状くさびじょう(部分)切除や区域くいき切除〕や放射線療法などのほかの治療法を選択することになります。また,心臓や肝臓・腎臓などの機能が低下していたり,持病の多い患者さんでは重篤な合併症を起こす危険性が高く,手術ができないこともあります。一般に高齢の患者さんでは,重要臓器の機能が低下していますが,個人差が大きく,単に年齢だけで手術の可否の判断がなされることはありません。高齢の方でも臓器機能をよく評価してから判断されます

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