第4章 治療の概要 4-2.放射線治療
Q34
放射線療法はどういう治療法ですか

 放射線療法放射線の細胞損傷作用を利用して,がん細胞を死滅させる治療法です。周囲の正常組織も損傷されますが,放射線療法では可能なかぎり,がんに放射線を集中させることができるので全身的な影響が少ない治療法です。は,外科治療,薬物療法,緩和ケアとともにがんの重要な治療法のひとつです。わが国ではこれまで,患者さんや担当医はがんにかかったらまず手術を考え,手術のできない,あるいは遠隔転移のある患者さんの治療に放射線療法が行われていました。しかし,最近の傾向として,からだにやさしく治療後のQOL(生活の質)が高い治療を希望する患者さんが増えており,放射線療法はこのような時代の要求に合った治療といえます。放射線療法の特徴を一言でいうと,がんに侵おかされた臓器の機能と形態の温存が可能であるということに尽きます。また,がんの局所療法なので,全身的な影響が少なく,高齢の患者さんでも安心して治療が受けられます。

 放射線とは,空間や物質を通じてエネルギーを伝える能力のある電磁波でんじはおよび粒子線りゅうしせんです。放射線は目に見えず,からだにあたっても何も感じません。放射線をあてることを「照射しょうしゃ」といいます。照射には痛みを伴わないので,麻酔をかける必要もありません。

 がん細胞に放射線があたると,放射線のもつエネルギーでがん細胞は損傷され,徐々に死滅します。もちろん,放射線は正常組織にも影響を及ぼしますが,最近は放射線を病変に集める方法が進歩しているので,患者さんのからだをほとんど傷つけずに,そして正常な機能を損なわずに放射線療法を行うことができます。

 下図に,放射線の線量が「がん」および「正常組織」に及ぼす影響を示します。放射線の影響は,がんでは効果として,正常組織では損傷(副作用)として現れます。がんも正常組織も一定の線量以下では影響は小さいですが,その線量を超えるとのように線量の増加とともに影響が大きくなります。たとえば,の線量Aでは,がんに対する効果が高く正常組織への損傷が少ないため,効率の良い治療ができることがわかります。

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