第4章 治療の概要 4-5.リハビリテーション
Q48
がんの治療中にリハビリテーションを行ったほうがよいのですか

 肺がんの患者さんにも必要に応じて適切なリハビリテーションが行われます。わが国では「がんのリハビリテーションガイドライン」が定められ,①予防的,②回復的,③維持的,④緩和的と,その状況と目的に合わせたリハビリテーションを実施できる医療機関も増えており,徐々に普及しています。それぞれの状況におけるリハビリテーションの目的は以下のようになっています。

  • ①予防:手術前の体力や身体の機能を維持して,手術後も肺炎などの合併症を防ぎ,その後の機能回復を積極的に促します。
  • ②回復:薬物療法や放射線療法の間にも筋力や体力が低下することがあるので,これらをできるかぎり維持,回復させます。
  • ③維持:治療経過で身体機能や体力が低下したり,運動障害や感覚障害などの後遺症が残ったり,がんの転移によって新たなからだの障害が起こる場合があります。そのような場合にも,できるかぎりその障害から回復をはかるリハビリテーションを行って日常生活上の動作ができるように,あるいは安全に行いやすくするように,その方法や工夫についての指導などを行います。
  • ④緩和:緩和ケア中心となった時期においても,運動の機能の維持やQOL(生活の質)を保ちます。

 具体的には,胸部や手足の筋肉のストレッチ,全身の比較的大きな筋肉の筋力トレーニング,息切れが強くならない程度でのウォーキングなどの運動,呼吸法の練習,日常生活における動作の方法の指導が行われます。また,生活環境の整備も含めた日常生活上の工夫のアドバイスが受けられます。実際のがんの進行度と身体状況や家族の希望など,さまざまな状況に合わせて可能なかぎりのQOLを維持できるように,リハビリテーション専門職(理学療法士:PT,作業療法士:OT,言語聴覚士:ST)とほかのスタッフが協力してリハビリテーションを行っていきます。

 ただし,肺がんがある状態でリハビリテーションをするには,いろいろなリスクが伴います。息苦しさや痛みなどのがんによる症状や,抗がん剤(細胞障害性抗がん薬)などの薬物療法による副作用によっても体調は変化しますので,状況によってはリハビリテーションを行わないほうがよいときもあります。

 リハビリテーションは必要に応じて行えるとよいですが,実際のからだの具合や,どのようなリハビリテーションを行うのが適しているのかなど,まずは担当医やリハビリテーション専門職と相談してください。

このページの先頭へ