第5章 症状がある場合 転移がある場合 の治療
Q49
つらい痛みがあります。痛みはとれるでしょうか
1. 痛みの原因

 痛みとは,あなたのからだのどこかが傷ついたとき,あるいはその前後に感じる不快な感覚や感情の変化のことです。

 がんの痛みの原因には下記のようにさまざまなものがあります。痛みの原因によって対処法や使用する痛み止めが異なるため,まずは痛みの原因について正しい診断を受けることが重要です。

  • ①がん自体が原因の痛み:がんがある場所で感じる痛み,骨への転移により感じる骨の痛みなど
  • ②がん治療に伴う痛み:外科治療後の痛み,薬物療法や放射線療法の副作用による口内炎の痛みなど
  • ③がんに関連した痛み:手足のむくみや便秘などによる痛みなど
2. 痛みの伝え方

 がんの痛みを我慢すると,がんと闘うための体力を消耗し,気持ちも落ち込んでしまいます。痛みはあなたが感じていても診察や検査ではわからない症状なので,我慢せず担当医や看護師に伝えることが大切です。

 痛みの伝え方として,以下のことを参考にしましょう。

  • ①痛みの場所とひろがり:1カ所だけか・指で指せる範囲か・広い範囲か
  • ②痛みの強さ:まったく痛くない場合を0,最悪の痛みを10とすると今の痛みは何点か
  • ③痛みの始まりとその後:いつからか・きっかけがあったか・ひどくなってきているか
  • ④痛みがやわらぐとき・ひどくなるとき:お風呂に入るとやわらぐ・夜間に痛くなる・からだを動かすとひどくなる
  • ⑤痛みの感じ方:ズキッとする・ズーンと重い感じ・ビリビリとしびれた感じ
  • ⑥痛みの持続時間:1日中感じているのか・そうでなければ何分くらい痛みが続くか
  • ⑦日常生活への影響:痛みのために眠れない,痛くて動く気がしない
  • ⑧痛み止めの効果:処方されている痛み止めの効果はあるか・副作用はあるか
3. 痛み止めの種類

 痛み止めの種類としては下記のようなものがあり,痛みを正しく評価したうえで適切な痛み止めが選択されます。

  • ①医療用麻薬以外の痛み止め:NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)・アセトアミノフェン→主にズキズキとした骨・筋肉・関節などの痛みに使われる
  • ②鎮痛補助薬:抗うつ薬・抗けいれん薬・ステロイドなど→主にビリビリとしびれるような,電気が走るような神経由来の痛みに使われる
  • ③医療用麻薬:モルヒネ・オキシコドン・フェンタニルなど→主にズーンと重く感じる内臓由来の痛みや,がんによる痛み全般に使われる

 これらの痛み止めは,痛みの強さによっても使い分けられます。世界保健機関(WHO)が定める3段階除痛ラダー()にしたがって,軽度の痛みには「医療用麻薬以外の痛み止め」,軽度から中等度の痛みには「弱い医療用麻薬」,中等度から高度の痛みには「強い医療用麻薬」を用います。また,強い痛みの場合には最初から強い医療用麻薬を用いる場合もあります。「医療用麻薬以外の痛み止め」や「鎮痛補助薬」は医療用麻薬との併用が効果的な場合があります。

 医療用麻薬は一般的に,時間を決めて欠かさず使用する定期薬に加えて,痛みが出たそのときに使用する頓服薬とんぷくやくを組み合わせて使用します。頓服薬は,痛くなる前(トイレ移動の前・処置前・食事前など)に予防的に使用することもあります。また頓服薬は一般的には,吐き気や強い眠気がなければ,1時間あけて追加で使用することもできます。

 痛み日記やメモ(病院で配布されている服薬日誌など)をつけることで,痛みの経過や頓服薬の使用時間やその効果などが把握でき,今後の痛みの治療についても相談しやすくなります。

4. 痛み止め以外の治療

 さらに痛み止め以外の痛みをやわらげる治療としては,以下のようなものがあります。

  • ①薬物療法:肺がんの治療薬でがんが小さくなれば痛みが軽減します
  • ②放射線療法:骨や脳への転移による痛みなどに効果を発揮します
  • ③神経ブロック:痛みを感じている神経を遮断し痛みをやわらげます
  • ④原因に応じた治療:腸閉塞による腹痛であればチューブで腸の内圧を下げて痛みをやわらげます

 ご自身でできる工夫としては,気分転換やリラックスなどが一般的に勧められています。そのほか,できる範囲でからだを動かしたり,温めたりすることも効果があることがあります。担当医と相談してください。

 このように,さまざまな方法でつらい痛みをとり,QOL(生活の質)を改善することが可能です。まずは担当医や看護師など身近な医療者へ相談してみましょう。

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