第5章 症状がある場合 転移がある場合 の治療
Q50
モルヒネ,麻薬を使うといわれました。副作用や中毒が心配です

 「医療用麻薬」には,モルヒネ,オキシコドン,フェンタニルなどがあります。痛みをやわらげる効果が強く,がんに伴う痛みを取り除くために,有効な薬剤です。一方で,主な副作用には,吐き気,便秘,眠気があり,どれも適切な対応方法があります。

1. 吐き気

 必ず生じるわけではありませんが,医療用麻薬の開始時・増量時に生じやすい副作用のひとつです。多くの場合,1〜2週間程度でからだが慣れてくると,自然に改善します。からだが慣れるまで,吐き気止めを定期的にまたはそのつど頓用とんようで使用します。食事は消化の良いものにする,部屋の空気を入れ替えるなどの工夫も有効な場合があります。吐き気がいつどのようなときに出るかを担当医や看護師,薬剤師に伝えてください。

2. 便秘

 医療用麻薬を定期的に使用している患者さんの約80%が経験します。下剤を上手に使うことで対応できます。下剤には,便をやわらかくする薬,腸の動きを改善する薬,そのほか(医療用麻薬による便秘を改善する薬などの新しい下剤)がありますので,状態にあわせて薬が選択されます。食事内容の工夫や適度な運動が有効な場合もあります。排便回数,便の性状を担当医に伝えてください。

3. 眠気

 必ず生じるわけではありませんが,医療用麻薬を始めるときや増やすときに生じることのある副作用のひとつです。1〜2週間程度でからだが慣れてくると自然に改善することもあります。ここちよい眠気の場合は少し様子をみてもよいでしょう。痛みがない場合には痛み止めの量を減らしたり,眠気が生じにくいほかの痛み止めに替えることもあります。使用前に比べ明らかに強い眠気(食べたり飲んだりできなくなる,呼びかけても反応が悪くなる)の場合は,担当医に相談してください。痛み止め以外が原因(脱水,電解質の異常,脳の病変など)の可能性もあるので,いつからどのような変化があったかを担当医に伝えてください。

 「麻薬中毒」とは,痛みがないにもかかわらず,薬を使わずにはいられなくなるような状態のことで,「精神依存」ともいいます。痛みの治療目的で医師が処方した薬をきちんと使用する場合は,依存症状はほとんど生じないことが研究で示されていますので,心配はいりません。

 医療用麻薬を使うことで,がん治療に悪い影響を及ぼすことも,寿命が縮まることもけっしてありません。むしろ痛みが緩和されることで食欲が出て眠れるようになり,QOL(生活の質)が改善し,がん治療に良い影響をもたらすといわれています。

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