第5章 症状がある場合 転移がある場合 の治療
Q51
呼吸が苦しいのですが,やわらげることはできますか

 息苦しさの原因には,肺がんによるもの(胸水きょうすい貯留ちょりゅう,がんせいリンパ管症かんしょう気道きどう狭窄きょうさくなど)のほか,治療の影響〔抗がん剤(細胞障害性抗さいぼうしょうがいせいこうがんやく)など薬物療法の副作用,放射線療法後の肺臓炎〕,心臓などの病気の影響,心理的な影響によるものなどがあります。

 いつから,どのくらい,何をしているとどのように息苦しいのか,担当医に伝えてみてください。パルスオキシメータという簡単な機器を指にはさんで,血中の酸素が不足していないかチェックし,聴診や胸部X検査などで呼吸不全の状態と原因の評価がなされます。

 「原因を治す治療」(たとえば,胸水の排液はいえき,肺炎に対する抗菌薬治療など)を,まず行われます。必要な酸素が不足しているようであれば,「酸素吸入療法」も併用します。機器を自宅に設置して使用することも,酸素ボンベや携帯型の酸素濃縮装置を携行して散歩することも可能です。

 症状を緩和する薬剤としては,モルヒネ,抗不安薬,ステロイドなどが使われます。

 「モルヒネ」は,痛み止めとして知られていますが,息苦しい感覚を緩和し,たんがらみのないせきを抑える役割があります。動くと息苦しさが強くなるような場合は,動く前に速効性のある(すぐ効くタイプの)モルヒネを使うことが検討されます。必要な量には個人差がありますので,相談しながら増量が検討されます(副作用についてはQ50参照)。

 「抗不安薬」は,モルヒネとの併用が勧められており,緊張がほぐれリラックスして深呼吸することで呼吸を楽にする効果も期待されています。

 「ステロイド」は,がん性リンパ管症や気道の狭窄などに有効です。

 ご自身でできることとしては,深呼吸や呼吸法の工夫,ストレッチ,リラックスや気分転換,十分な睡眠の確保などがあります。また,扇風機やうちわで空気の流れを作ったり,部屋の温度と湿度をやや低めに設定するなどの工夫で楽になることもあります。

 原因や全身状態により,これらの方法を上手に組み合わせて調整し,息苦しさをやわらげていきます。

 しかし,病気の進行に伴って息苦しさが徐々に進み,酸素吸入やモルヒネ・抗不安薬の効果を実感しにくくなることも,ときにあります。その場合は,息苦しさが増すような動作をできるだけ避けて体力を温存したり,モルヒネや抗不安薬をさらに調節してうとうと眠ってやり過ごすという方法も可能です。何を優先して,どのように過ごしたいかを,家族や医療者と話し合っておくとよいでしょう。

このページの先頭へ