第6章 非小細胞肺がんの治療 6-3.薬物療法のみの治療
Q66
薬物療法だけで肺がんは治るのでしょうか。手術はできないのでしょうか

 Ⅳ期の肺がんとは,がんが肺から離れたほかの臓器にまで転移した状態です。がん細胞が血液中に流れ込み,全身を回ってたどりついた臓器で増殖することにより起こります。まだ目に見えるような大きさには増大していない,小さな転移も存在すると予想されます。また,肺や心臓の周りにがん細胞がひろがり,そのために水がたまっている場合もⅣ期に含まれます。肺の表面と胸の壁の内面全体をおおう膜(胸膜きょうまく)もしくは心臓の周りの空間に,がん細胞が散らばった状態になったことを意味します。

 このような状態で発見された患者さんでは,すべてのがん病変を手術で取り除くことは困難です。また放射線療法も,全身ないしは片肺全体に放射線をあてるわけにはいかないので選択できません。したがって,完全に肺がんを治してしまうのはきわめて難しい状態です。Ⅳ期の患者さんの治療の目標は,がんの進行をコントロールして,がんによって引き起こされるさまざまな症状を予防し,あるいはやわらげ,元気に過ごせる時間を長く確保することです。治療薬が全身にいきわたる注射(点滴)やのみ薬で治療するがん治療薬での治療が第一選択になります。

 がん病変をコントロールするためのがん治療薬や,症状そのものに対処する緩和ケアによって,これまでどおりの日常生活が1日でも長く続くよう,希望をもって治療に臨んでいただければと思います。

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