Ⅳ期の非小細胞肺がんの患者さんに対して使用されるがん治療薬には,抗がん剤(細胞障害性抗がん薬)(Q40,Q41参照),分子標的治療薬(Q42,Q43参照),免疫チェックポイント阻害薬(Q44,45参照)があります。
治療薬の選択において,最も重要な情報は「ドライバー遺伝子の変異や転座の有無」です(Q10参照)。がん細胞もしくは血液中のがん細胞由来の遺伝子を用いた遺伝子検査でEGFRやALKなどの遺伝子に変異や転座が確認された際には,積極的に分子標的治療薬(オシメルチニブやアレクチニブなど)を用いた分子標的治療が行われます(Q42参照)。薬剤は年齢,体力なども考慮して選択されます。
非小細胞肺がんと診断された時点で,ドライバー遺伝子の変異や転座とともにがん細胞表面のPD-L1タンパクの発現状況が確認されます。ドライバー遺伝子の変異や転座が確認されず,かつPD-L1タンパクの発現状況が高い(がん細胞の50%以上で発現)場合には,免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待されます。また,免疫チェックポイント阻害薬単独(ペムブロリズマブ)もしくは抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が選択されます。
ドライバー遺伝子の変異や転座が確認されず,PD-L1タンパクの発現がない,もしくは発現が低い場合には,抗がん剤単独もしくは抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が選択されます。
抗がん剤を選ぶ際には,75歳未満で,普段と同様の生活ができている状態であれば,最初の治療としてプラチナ製剤(シスプラチンもしくはカルボプラチン)と1990年代以降に開発された新規抗がん剤(ペメトレキセドやアルブミン懸濁型パクリタキセルなど)による2剤併用療法が標準治療として勧められます。また,この治療に,血管新生阻害薬やくであるベバシズマブを加えると抗がん剤による治療(化学療法)の効果が高まることがわかっており,これを追加した3剤の併用療法が勧められることもあります。がんの種類や状態によっては血管新生阻害薬の副作用の危険性が高まるため,使用できない場合があります。また,抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法を選択する場合には,プラチナ製剤と新規抗がん剤(+ベバシズマブ)に免疫チェックポイント阻害薬のペムブロリズマブもしくはアテゾリズマブが追加されます。
75歳以上の患者さんに対して,抗がん剤を用いた化学療法を行う際には,1剤のみの抗がん剤が使用されるのが一般的です。この際に用いられる薬剤としては,ドセタキセルなどがあげられます。
抗がん剤の選択に関しては,十分に担当医と話し合って,納得したうえで治療を受けることが重要です。