第2章 肺がんの診断に必要な検査
Q7
経過観察といわれましたが大丈夫でしょうか

 昔と比べ,高精度のCT装置の普及によって,肺の中に直径数 mm程度の小さな結節(影)や,薄く淡い影(すりガラス陰影)が多く見つかる機会が増えました。このような小さな結節やすりガラス陰影の中には,肺がんの可能性がある病変も含まれます。また,良性病変が強く疑われるものの完全に肺がんが否定できない病変もあります。

 画像検査の結果,肺がんが疑われる場合,気管支鏡検査や胸腔鏡での組織診断に進みます。しかしながら,結節(影)のサイズが1 cmに満たない場合には,組織を取り出すことが非常に難しいのです。数 mm大の組織を取り出すのに全身麻酔で肺を切除することも必要となるかもしれません。このように組織診断の困難さや患者さんの身体的負担の大きさを考慮して組織診断の実施を判断します。サイズが小さくて良性病変の可能性もある場合には,経過観察を行い,病変の時間あたりの変化という追加情報をもって,再度組織診断の実施を判断する戦略がとられます。また,組織は取り出したものの,組織が小さすぎてがんの診断とならなかった場合もあります。この場合も同様に,定期的にCTなどを撮影してサイズや性状に変化が生じないか経過を確認し,再度組織診断を実施するか検討していくことになります。

 定期的に経過観察を続けることで,結節が大きくなったり,性状が変化してきた場合には,速やかに組織診断に移ることができます。また病変が消失したり,明らかな良性の所見が得られたときには観察終了となります。観察期間中にほかの部位に病変が現れることもまれにあります。なによりも担当医が観察期間終了と判断するまでは,その病変が肺がんである可能性がありますので,定期的に検査を受けることをお勧めします。

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