第7章 小細胞肺がんの治療
Q75
進展型小細胞肺がんにはどのような治療法があり,私には何が最適なのでしょうか

 進展型小細胞肺がんでは,抗がん剤(細胞障害性抗がん薬)による治療(化学療法)を行うことで生存期間が延長することが証明されています。さらに,1種類のみの抗がん剤を使用するよりも,いくつかの抗がん剤を組み合わせて使用する「多剤併用化学療法たざいへいようかがくりょうほう」を受けたほうが,より治療効果が高いことがわかっています。

 わが国において,シスプラチン+イリノテカン(PIピーアイ)療法とシスプラチン+エトポシド(PEピーイー)療法を比較する臨床試験が行われました。PI療法のほうが,生存期間の延長効果において優れたため,わが国の標準治療となっています。PI療法の副作用が懸念される方にはPE療法が標準治療として勧められます。副作用の特徴としては,PI療法では下痢が,PE療法では白血球減少や貧血などの副作用が強く出ることがあります。治療サイクル数は,PE療法,PI療法では4サイクルが勧められています。

 2018年に,カルボプラチン+エトポシド(CEシーイー)療法と免疫チェックポイント阻害薬(アテゾリズマブ)を併用して4サイクル治療を受けた後に,アテゾリズマブによる維持療法いじりょうほうを受ける治療法が検討され,化学療法だけの治療を受けた場合に比べて生存期間の延長が報告されたことから,標準治療のひとつになりました(Q76参照)。

 高齢者および全身状態が悪い患者さん(PS2,3)でも,できるだけ2剤併用による化学療法をしたほうがよいと考えられており,そのような場合,CE療法が多く行われています。

 全身状態がきわめて悪い患者さん(PS4)では,標準治療をそのまま行えず,個別の治療方法が検討されます。

※予防的全脳照射について

 以前は,限局型小細胞肺がんで強く勧められる「予防的全脳照射よぼうてきぜんのうしょうしゃ」について,進展型小細胞肺がんでも試みられることがありました。しかし,わが国における臨床試験の結果から期待される効果が証明されなかったため,現在は勧められていません。

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