Ⅱ.非小細胞肺癌(NSCLC)

1

外科治療

総 論
肺癌に対する外科治療
解 説

 臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌に対する標準治療は外科切除である。肺癌に対する外科治療の意義はランダム化比較試験で確認されたものではないが,過去の膨大な予後および合併症の情報から確認されるものである(CQ2)。術前には呼吸機能検査および循環器に関する機能評価は必須であり,手術に対する安全性を評価する(CQ1)。また1995年に報告された肺癌に対する外科治療における標準術式を問う臨床試験の結果から肺葉切除と肺門・縦隔のリンパ節郭清が標準とされた(CQ3)。一方最近では胸部CTによる術前の癌に関する浸潤性の評価が可能となり,肺葉以下の切除で予後を確保できるとする報告も相次いでいる。しかし,いずれも後ろ向きまたは小規模の試験の結果であり,最終的には多施設共同前向き試験として行われた肺葉切除と縮小切除のランダム化比較試験の結果を待たねばならない。したがって現時点では肺葉切除可能な患者に縮小切除を行うことは弱く推奨するにとどめる(CQ4)。肺葉以上の切除が不可能な患者に対する縮小切除に関しては,昨今の放射線治療の進歩があるものの,比較試験に指示されたものではないが,依然として有効性が高いと考えられ,弱く推奨する(CQ5)。

 臨床病期Ⅲ期非小細胞肺癌の治療方針は,呼吸器外科医,内科医,放射線治療医を含めた集学的治療グループで検討すべきであり,これを推奨する(CQ6)。臨床病期ⅢAの治療方針は組織学的に縦隔リンパ節転移を確認することを推奨する(CQ7)。

 肺癌の外科治療におけるリンパ節郭清の意義は,系統的リンパ節郭清と系統的リンパ節サンプリングをランダムに比較した試験の結果から予後の改善にはつながらないものの,正確な病期診断に資すると解釈されている。一方で致命的合併症は稀である。よって行うことを推奨する(CQ9)。T3肺癌に対する胸壁または心膜合併切除の必要性に関しては行うことを推奨する(CQ1011)。T4N0-1肺癌に対する外科治療は,T4臓器によりその意義は異なるものがあるが,弱く推奨する(CQ8)。気管支・肺動脈形成術は肺全摘術と比較して,局所制御,術後合併症発生割合,術後死亡割合,そして予後の観点から良好であり,肺全摘術を避けるために行うことを推奨する(CQ12)。同一肺葉内結節で肺転移または多発肺癌を疑う場合は臨床病期N0であれば予後の観点から手術を行うことを推奨する(CQ13)。他肺葉内結節で,多発原発性肺癌を疑う患者に対して手術を行うことを提案する(CQ14)。他肺葉内結節で,肺内転移を疑う患者に対して手術を行わないことを提案する(CQ15)。異時性多発癌に対しては,耐術能があれば手術を行うことを推奨する(CQ16)。臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対して胸腔鏡補助下肺葉切除を行うことは大規模な臨床試験に基づくエビデンスは十分ではないものの,日常臨床に十二分に普及しているためにこれを提案する(CQ17)。なお,ロボット手術に関してはエビデンス,実績ともに不十分であるため評価不能とした(CQ18)。術後経過観察を外科切除後に行うことの意義に関しては十分なエビデンスがあるとは言い難いが,日常臨床に浸透しており行うことを推奨する(CQ19)。術後の患者は禁煙するべきである(CQ20)。低悪性度肺腫瘍,つまりカルチノイド,粘表皮癌,腺様嚢胞癌などに対する外科切除は非小細胞肺癌に準じた外科治療を行うよう推奨する(CQ21)。

本文中に用いた略語および用語の解説

BPF bronchopleural fistula 気管支瘻
PS performance status 全身状態
SBRT stereotactic body radiotherapy 体幹部定位放射線治療
RATS robot-assisted thoracoscopic surgery ロボット支援胸腔鏡手術
VATS video-assisted thoracic surgery 胸腔鏡補助下手術
 
ACOSOG American College of Surgeons Oncology Group
ESMO European Society for Medical Oncology
IASLC International Association for the Study of Lung Cancer
JCOG Japan Clinical Oncology Group
SEER Surveillance Epidemiology and End Results
1-1
手術適応

文献検索と採択

文献検索期間
  • 2004年12月1日から2017年12月31日(術前呼吸機能・循環器機能評価)
  • 1994年12月1日から2017年12月31日(臨床病期Ⅰ-Ⅱ期,臨床病期ⅢA期)
  • 2005年11月1日から2017年12月31日(臨床病期ⅢA期T4N0-1)
文献検索方法
  • キーワード:術前呼吸機能・循環器機能評価(lung cancer, surgery, function, complication, morbidity or mortality, age, pulmonary function, preoperative care, cardiovascular function),臨床病期Ⅰ-Ⅱ期〔lung cancer, surgery, stageⅠ, stageⅡ, sleeve, clinical stageⅠ or Ⅱ, Pneumonectomy/methods(“[majr]OR”lung neoplasms/surgery“[majr])AND”Neoplasm Staging〕,臨床病期ⅢA期〔lung cancer, surgery, ⅢA, N2, clinical stageⅢA, Pneumonectomy/methods(“[majr]OR”lung neoplasms/surgery“[majr])AND”Neoplasm Staging〕,臨床病期ⅢA期T4N0-1〔“lung cancer”or“non-small cell carcinoma”AND surgery AND T4 OR“Great vessel”OR aorta OR“superior vena cava”OR“left atrium”OR“diaphragm”OR“carina”OR“vertebra”〕
  • 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
採択方法
  • メタアナリシス,第Ⅲ相試験,ランダム化比較第Ⅱ相試験を抽出し,review articleは除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
  • 臨床病期ⅢA期T4N0-1では臨床試験による文献はなく,後方視的観察研究の文献を採用した。施設の報告については,症例数を考慮した。
  • 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。

1-1-1.手術適応(術前呼吸機能・循環機能評価)

CQ1.

手術適応決定には,呼吸機能評価(spirometry)や循環機能評価(安静時心電図)をはじめ,血液・生化学所見や年齢などを総合的に評価・検討することが必要か?

推 奨
術前呼吸機能・循環機能をはじめ,総合的に評価・検討を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

解 説

 呼吸機能検査のspirometryは,拘束性障害や閉塞性障害を評価する方法として確立されている。術前肺機能評価と肺切除後のmortality,morbidityの関連については,1986年の海外からの報告があり1),その他にも術前肺機能評価との関連は検討されているが2),単一の普遍的な指標はない。術後呼吸機能の評価として,術前呼吸機能評価(spirometry)と肺血流シンチグラフィや肺区域数を用いての予測術後肺機能は,術後実測値と良い相関を示したとの報告があり,術後予測1秒量(predicted postoperative FEV1.0;ppoFEV1.0)≧800 mLなどの指標が参考値として用いられている3)4)。さらに,ppo%FEV1.0およびppo%DLcoと術後の長期予後の強い相関を示した報告もある5)。リスク評価としては,①pre%FEV1.0,pre%DLco,②ppo%FEV1.0,ppo%DLco,③運動負荷試験を指標にアルゴリズムを示した報告がある6)。術前の呼吸訓練は呼吸機能を有意に改善させ,肺癌手術後の在院日数,合併症を有意に減少させる7)8)

 術前検査としての循環器機能検査,特に安静時心電図については,基本的な機能評価として一般的に行われており,症例に応じて種々の負荷試験や超音波検査(心,血管など)などが行われている。これを推奨する根拠となる臨床試験はないものの,肺癌合同登録委員会の2004年手術例の調査では,併存疾患として負荷心電図陽性の虚血性心疾患を2.8%に認め,術後合併症として不整脈を3.3%に認めている9)

 血液・生化学所見や年齢などの総合的評価は全身状態の把握のために大切であり,明確な臨床試験はないが,手術適応の決定に必須であることは,議論の余地がない。呼吸機能検査と循環機能評価(安静時心電図)をはじめ,血液・生化学所見や年齢などを総合的に評価・検討することは,手術適応の決定において不可欠である。

 以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では術前呼吸機能・循環機能をはじめ総合的に評価・検討は行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(10/10)
0% 0% 0% 0%

1-1-2.手術適応(臨床病期Ⅰ-Ⅱ期)

CQ2.

臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌で標準手術可能な患者には,外科切除が勧められるか?

推 奨
臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌で外科切除可能な患者には,標準手術を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

解 説

 臨床病期ⅠまたはⅡ期肺癌に対して外科治療を放射線治療,または化学療法とランダム化比較した臨床試験は報告されていない。外科治療が最も肺癌の治癒をもたらす治療であると考えられているのは,これまでの多くの後方視的研究による1)~3)。肺癌外科切除11,663例の検討によれば,全体の5年生存割合は69.6%であり,臨床病期ⅠA,ⅠB,ⅡA,ⅡB期ではそれぞれ82.0%,66.1%,54.5%,46.1%であった3)

 以上より,臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌で肺葉切除可能な患者に対する外科切除は勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(10/10)
0% 0% 0% 0%

CQ3.

臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌で外科切除可能な患者に対する術式は,肺葉以上の切除を行うべきか?

推 奨
臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌で外科切除可能な患者に対する術式は,肺葉以上の切除を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B,合意率:100%〕

解 説

 米国Lung Cancer Study Groupによって臨床病期Ⅰ期肺癌に対する肺葉切除と縮小切除を比較したランダム化比較試験が1995年に報告された4)。この研究によると肺葉切除に比べて縮小切除は局所再発が3倍となり,予後不良の傾向が認められた。人工呼吸器を要する呼吸不全などの重症合併症は肺葉切除に多かったものの,結論としては臨床病期Ⅰ期肺癌に対する至適術式は肺葉切除であるとされた。肺葉切除と縮小切除の間で比較された手術死亡率に関する3,270例の外科切除例の検討では,両者に差は認められなかった5)

 以上より,臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌で外科切除可能な患者に対する術式は,肺葉以上の切除を行うことを推奨する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(10/10)
0% 0% 0% 0%

CQ4.

臨床病期ⅠA期,最大腫瘍径2 cm以下の非小細胞肺癌に対して,縮小手術(区域切除または楔状切除)を行うよう勧められるか?

推 奨
臨床病期ⅠA期,最大腫瘍径2 cm以下の非小細胞肺癌に対する縮小手術(区域切除または楔状切除)は行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

解 説

 臨床病期Ⅰ期肺癌に対する標準術式は肺葉切除であるが,これまでに2 cm以下の腫瘍径である肺癌に対して縮小切除を行った研究が報告されている。1つのメタアナリシスでは肺葉切除に対して縮小切除後の予後は劣らないとしているが,それぞれの報告の対象にばらつきがあり,結果に対する解釈に注意するよう結論付けられている6)。2 cm以下の肺癌に対する区域切除55例の報告では,5年生存割合81.8%,局所再発率4%と報告された7)8)。無作為ではないものの大規模な研究として567例の2 cm以下の肺癌に対して肺葉切除と縮小切除(主に区域切除)を比較したものがある9)。305例の縮小切除群のうち術中にリンパ節転移が認められるか,非完全切除に終わるかなどによって一部の症例は肺葉切除に転換され,その結果230例が縮小切除群に終わった。肺葉切除群と縮小切除群の局所再発と5年生存割合はそれぞれ6.9%,4.9%,そして89.6%,89.1%とほぼ同等の成績であった。また胸部CT上,広範囲にすりガラス濃度を呈する肺癌は病理学的に非浸潤癌であることが報告されており10),この対象に縮小切除を適応する研究も報告されている11)12)。これらすりガラス濃度を呈する肺癌は局所浸潤性に乏しく,縮小切除の中でも広範囲楔状切除でも極めて良好な予後が報告されている。一方で手術後5年以降に局所再発をきたした例も報告されており,現時点ではこれらの対象に縮小切除を適応するに十分な根拠はない13)。米国の807,748例の肺癌切除例の検討で,1988~97年,1998~2004年,そして2005~8年の3期間における検討では予後の観点から肺葉切除の縮小切除に対する優位性が薄れているとの報告もある14)

 以上より,臨床病期ⅠA期,最大腫瘍径2 cm以下の非小細胞肺癌に対する縮小手術(区域切除または楔状切除)は行うことを弱く推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 100%
(10/10)
0% 0% 0%

CQ5.

臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌で外科治療が可能であるが,肺葉切除以上の切除が不可能な患者に,縮小手術(区域切除または楔状切除)を行ってもよいか?

推 奨
臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌で外科治療が可能であるが,肺葉切除以上の切除が不可能な患者に,縮小手術(区域切除または楔状切除)を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:90%〕

解 説

 臨床病期Ⅰ期の肺癌で術後1秒率40%以下である低肺機能患者に対して縮小切除を行った報告によれば,32例と症例は少ないものの,肺葉切除とほぼ同等の局所再発率と予後であった15)。95例の肺葉切除不能例に対する非外科治療に関する研究では,縮小切除または放射線治療を行うことで,3年生存割合65%と報告された16)

 以上より,臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌で外科治療が可能であるが,肺葉切除以上の切除が不可能な患者に,縮小手術(区域切除または楔状切除)を行うことを弱く推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
10%
(1/10)
90%
(9/10)
0% 0% 0%

1-1-3.手術適応(臨床病期Ⅲ期)

CQ6.

臨床病期ⅢA期非小細胞肺癌の治療方針は,呼吸器外科医,内科医,放射線治療医を含めた集学的治療グループで検討すべきか?

推 奨
臨床病期ⅢA期非小細胞肺癌の治療方針は,呼吸器外科医を含めた集学的治療グループでの検討を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

解 説

 臨床病期ⅢAは様々な集団に予後の観点から分けることができる母集団であり,その治療方針決定のためには呼吸器外科医を含む集学的治療チームによる治療方針の決定が勧められる1)

 以上より,臨床病期ⅢA期非小細胞肺癌の治療方針は,呼吸器外科医を含めた集学的治療グループでの検討を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(10/10)
0% 0% 0% 0%

CQ7.

臨床病期ⅢA期N2非小細胞肺癌のN2診断は,組織学的に確認すべきか?

推 奨
臨床病期ⅢA期N2非小細胞肺癌の診断は,組織学的に確認を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

解 説

 大規模な後方視的研究で11,663例の肺癌切除例に関する検討が行われた2)3)。このうち800例が臨床病期ⅢA期N2と診断されたが,病理学的にN2と診断された症例は436例(54.5%)にとどまった。病理学的にN0,N1と診断された症例はそれぞれ271例(34%),75例(9%)であった。つまりおよそ44%の症例では臨床病期N2というのが過大診断であったことになる。cN0-1であれば遠隔転移がない可能性が高く,少なからず外科切除の恩恵を被る可能性の高い集団である。したがってN2の組織学的診断をつけることが勧められる。

 以上より,臨床病期ⅢA期N2非小細胞肺癌の診断は,組織学的に確認を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(10/10)
0% 0% 0% 0%

CQ8.

臨床病期ⅢA期T4N0-1非小細胞肺癌に対して,外科切除を行うよう勧められるか?

推 奨
臨床病期ⅢA期T4N0-1非小細胞肺癌に対して,外科切除を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:D,合意率:100%〕

解 説

 これまで臨床病期ⅢA期T4N0-1非小細胞肺癌の切除意義に関する報告については,ランダム化比較試験はなく,症例集積や少数例でのケースコントロール研究しか存在しない。その中で,下記に示すとおり,症例をよく選択した手術結果においては,PS良好で,N0-1のケースにおいては,予後と手術の安全性の観点からは手術は選択肢として許容される範疇にあると考えられる。以下に,具体的な報告を示す。

 T4N0-1M0症例の中で,各浸潤臓器別に切除成績をみると,大動脈合併切除では,致命的合併症発生率は0~12%であり,5年生存割合は37~48%と報告されている4)~6)。なかでも,特にN0-1では長期予後が期待でき,良い適応とされている。また,近年では大動脈ステントグラフトを術前に挿入し,人工心肺を使用せずに安全に切除する方法も報告されている7)

 左房合併切除は,単施設から30例以上の報告もあり8)~10),T4肺癌の中では比較的多く行われている術式である。致命的合併症発生率は0~10%,5年生存割合が16~46%と比較的良好な治療成績が報告されている4)9)~12)。左房においても同様にN0は予後良好因子である9)10)12)

 上大静脈合併切除においては単施設から40例以上の比較的まとまった症例数での報告が複数ある9)13)14)。致命的合併症発生率は4~10%,5年生存割合は24~31%であり,やはりN2は予後不良因子である9)13)~15)。分岐部合併切除の致死的合併症は約3~20%であり,最近の64例の報告では,5年生存割合は病理病期により,pN0で70%,pN1で35%,pN2で9%と報告されている16)~20)

 横隔膜合併切除では,致死的合併症発生率は1.6~4.4%22)23),5年生存割合は19~42.6%21)22)24)と報告されている。JCOG肺癌外科グループの報告では,完全切除例の5年生存割合は22.6%であったのに対し,非完全切除例では0%,病理病期ではpN0の5年生存割合は28%であったのに対し,pN1で20%,pN2で0%であった22)

 最近の本邦における肺癌登録合同委員会報告では,浸潤するT4臓器により5年生存割合に有意差はなく,T4N0で70歳未満であれば,5年生存割合は50%を超えると報告されている25)

 以上より,臨床病期ⅢA期T4N0-1非小細胞肺癌に対しては外科治療を行うよう提案する。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会(白票2)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 100%
(8/8)
0% 0% 0%
引用文献

術前呼吸機能・循環器機能評価

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(T4N0-1非小細胞肺癌)

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1-2
リンパ節郭清

文献検索と採択

文献検索期間
  • 2004年12月1日から2017年12月31日
文献検索方法
  • キーワード:“lung cancer”OR“non-small cell lung cancer”AND“lymph node dissection”OR“lymphadenectomy”OR“lymph node excision”
  • 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
採択方法
  • メタアナリシス,第Ⅲ相試験,ランダム化比較第Ⅱ相試験を抽出し,review articleは除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
  • 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。

CQ9.

切除可能な非小細胞肺癌に対しては,肺門縦隔リンパ節郭清を行い,病理学的評価を行うべきか?

推 奨
肺門縦隔リンパ節郭清を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B,合意率:80%〕

解 説

 まずはじめに,リンパ節の評価には,リンパ節を周囲脂肪組織とともに一塊として摘出する系統的リンパ節郭清,原発部位により郭清範囲を省略する選択的リンパ節郭清,任意のリンパ節のみ摘出するサンプリングなどが挙げられるが,本邦での明確な定義はない。

 これまでに行われた最大規模のランダム化比較試験であるAmerican College of Surgery Oncology Group(ACOSOG)Z0030試験1)では,T1-2N0-1(肺門部リンパ節を除く)症例を対象に系統的リンパ節郭清群とサンプリング群の治療成績が比較検討され,系統的リンパ節郭清群と系統的サンプリング群の生存期間中央値,ならびに無再発5年生存割合はそれぞれ,8.5年と8.1年,68%と69%で,系統的リンパ節郭清による有意な治療成績の改善は認められなかった2)。また系統的リンパ節郭清の手術時間はサンプリングに比べ,15分程度長いに過ぎず,術後の合併症発生率や手術関連死亡率にも差がなかった3)

 その他にも肺門縦隔リンパ節郭清が予後に与える影響について検証した,リンパ節郭清とサンプリングとのランダム化比較試験はこれまでに複数の報告があり,予後を改善するという結果4)と予後に影響を与えないとする結果2)5)の双方が存在する。また,これらのランダム化試験を含むメタアナリシス6)~9)も複数報告されているが,同様に結果の一貫性が認められない。

 したがって,系統的郭清が予後に与える影響を検証する複数のランダム化比較試験とメタアナリシスはあるもの,結果の一貫性がないこと,また,各ランダム化試験における対象病期や対照・試験アームの手技が異なるなど,試験デザインが異なっており,種々のバイアスが含まれるため,リンパ節郭清の予後に与える影響については科学的根拠が明確であるとはいえない。一方,ACOSOGのランダム化比較試験にてサンプリングではN2の4%が見落とされており6),正確な病理病期の決定のためにはリンパ節郭清を行うように勧められる。

 以上より,切除可能な非小細胞肺癌に対して,肺門縦隔リンパ節郭清を行うことは,少なくとも正確な病理診断のためには推奨されると考えられる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会,薬物療法小委員会,放射線治療小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
80%
(8/10)
20%
(2/10)
0% 0% 0%
引用文献
1)
Darling GE, Allen MS, Decker PA, et al. Randomized trial of mediastinal lymph node sampling versus complete lymphadenectomy during pulmonary resection in the patient with N0 or N1(less than hilar)non-small cell carcinoma: results of the American College of Surgery Oncology Group Z0030 Trial. J Thorac Cardiovasc Surg. 2011; 141(3): 662-70.
2)
Izbicki JR, Passlick B, Pantel K, et al. Effectiveness of radical systematic mediastinal lymphadenectomy in patients with resectable non-small cell lung cancer: results of a prospective randomized trial. Ann Surg. 1998; 227(1): 138-44.
3)
Allen MS, Darling GE, Pechet TT, et al. Morbidity and mortality of major pulmonary resections in patients with early-stage lung cancer: initial results of the randomized, prospective ACOSOG Z0030 trial. Ann Thorac Surg. 2006; 81(3): 1013-9.
4)
Wu Yl, Huang ZF, Wang SY, et al. A randomized trial of systematic nodal dissection in resectable non-small cell lung cancer. Lung Cancer. 2002; 36(1): 1-6.
5)
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6)
Wright G, Manser RL, Byrnes G, et al. Surgery for non-small cell lung cancer: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. Thorax. 2006; 61(7): 597-603.
7)
Huang X, Wang J, Chen Q, et al. Mediastinal lymph node dissection versus mediastinal lymph node sampling for early stage non-small cell lung cancer: a systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2014; 9(10): e109979.
8)
Meng D, Zhou Z, Wang Y, et al. Lymphadenectomy for clinical early-stage non-small-cell lung cancer: a systematic review and meta-analysis. Eur J Cardiothorac Surg. 2016; 50(4): 597-604.
9)
Mokhles S, Macbeth F, Treasure T, et al. Systematic lymphadenectomy versus sampling of ipsilateral mediastinal lymph-nodes during lobectomy for non-small-cell lung cancer: a systematic review of randomized trials and a meta-analysis. Eur J Cardiothorac Surg. 2017; 51(6): 1149-56.
1-3
T3臓器合併切除(肺尖部胸壁浸潤癌以外)

文献検索と採択

文献検索期間
  • 2004年12月1日から2017年12月31日
文献検索方法
  • キーワード:lung cancer, surgery, chest wall or pericardium
  • 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
採択方法
  • メタアナリシス,第Ⅲ相試験,ランダム化比較第Ⅱ相試験を抽出し,後方視的な検討は,症例数を加味し採用した。なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
  • 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。

CQ10.

臨床病期T3N0-1M0の胸壁浸潤非小細胞肺癌には,胸壁合併切除を行うよう勧められるか?

推 奨
臨床病期T3N0-1M0の胸壁浸潤非小細胞肺癌には,胸壁合併切除を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

解 説

 胸壁合併切除術の手術死亡率は0~7.8%で1)~6),合併症発生率は19~44%と報告されている1)~3)。胸壁合併切除術を施行した肺癌の予後因子として,完全切除,リンパ節転移,胸壁浸潤の程度が挙げられている。完全切除症例は不完全切除症例より予後が良好である3)~6)。胸壁浸潤肺癌334例の検討で,完全切除例(n=175)の5年生存率が32%であったのに対し,非完全切除例(n=94)では4%と報告されている4)。完全切除可能であれば壁側胸膜切除と骨性胸壁切除の差はないとする報告が多い3)4)7)8)。リンパ節転移に関しては,pN0症例の5年生存率は25~67%であるのに対し,pN1では症例数が少ないものの20~100%,pN2症例では6.2~20.5%と報告されている1)~8)。本邦における肺癌登録合同委員報告では胸壁浸潤407例の5年生存率はpN0 49.1%(n=299),pN1 36.5%(n=43),pN2 20.5%(n=65)で,pN2がpN0に比較して有意に予後不良であった8)。胸壁浸潤の程度に関しては,壁側胸膜のみの浸潤例が胸壁軟部組織や骨性胸郭浸潤例より良好であるという報告もあるが1)5),pN0症例では胸壁浸潤の程度は予後に影響しないと報告されている8)。なお,上記文献はいずれも術後病理病期で記載されており,臨床病期で検討されている論文はない。本症を対象とした手術以外の治療法との直接の比較試験はないが,他の治療法との差異は明らかであるため臨床病期T3N0-1M0症例の胸壁合併切除術は推奨度1Cとした。ただし,縦隔リンパ節転移を有すると考えられる症例,特に術前病理検査にてN2と判明した症例については,その予後不良が予測されることより,手術単独療法は施行すべきではない。

 最近,本邦でのcN0症例に対する導入化学放射線療法後の胸壁合併切除の前向き試験の報告では,3年と5年の全生存率はそれぞれ77%,63%であり,12例の病理学的完全奏功例の3年全生存率91.7%と良好であった。一方,pN0症例に対する補助化学療法に関してはNCDBによる824例の後ろ向き観察研究で,補助化学療法はHR 0.74(95% CI:0.6-0.9)で生存を改善したとの報告がある。

 以上より,臨床病期T3N0-1M0の胸壁浸潤非小細胞肺癌に対しては,胸壁合併切除を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(10/10)
0% 0% 0% 0%

CQ11.

心膜に浸潤した臨床病期T3N0-1M0の非小細胞肺癌には,合併切除を行うよう勧められるか?

推 奨
心膜に浸潤した臨床病期T3N0-1M0非小細胞肺癌には合併切除を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

解 説

 心膜合併切除例の5年生存率は15.1~54.2%であり8)9)10),pT3に限れば比較的良好な報告もある。しかし91例の心膜浸潤症例の後方視的研究では,全体の5年生存率15.1%と予後不良であった10)。うち32例が心膜単独浸潤(T3)で59例は肺静脈,心房浸潤(T4)を伴っていたが,T3,T4間に予後の差を認めなかった。N0は12例(13.2%)N1は31例(34.1%),N2は48例(52.8%)と,心膜浸潤症例ではリンパ節転移の頻度が極めて高く,肺全摘の頻度も高かった。なお,上記文献はいずれも術後病理病期で記載されており,臨床病期で検討されている論文はない。臨床病期T3N0-1M0心膜浸潤肺癌切除例の予後は,最近の報告で改善はみられるものの依然不良であり,推奨度は1Cとした。ただし,縦隔リンパ節転移を有すると考えられる症例,特に術前病理検査にてN2と判明した症例については,その予後不良が予測されることより,手術単独療法は施行すべきではない。

 以上より,心膜に浸潤した臨床病期T3N0-1M0非小細胞肺癌に対しては合併切除を行うことを推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会(白票3)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(7/7)
0% 0% 0% 0%
引用文献
1)
Facciolo F, Cardillo G, Lopergolo M, et al. Chest wall invasion in non-small cell lung carcinoma: a rationale for en bloc resection. J Thorac Cardiovasc Surg. 2001; 121(4): 649-56.
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4)
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5)
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6)
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8)
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1-4
気管支・肺動脈形成

文献検索と採択

文献検索期間
  • 1990年1月1日から2017年12月31日
文献検索方法
  • キーワード:lung cancer and surgery and bronchoplasty and angioplasty
  • 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
採択方法
  • 臨床試験による文献はなく,後方視的観察研究の文献を採用し,施設の報告については,100症例以上を採用した。なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
  • 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。

CQ12.

肺全摘を避けて,気管支・肺動脈形成を行うべきか?

推 奨
肺全摘を避けて,気管支・肺動脈形成を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

解 説

 ランダム化比較試験はないが,腫瘍が中枢進展しているか,肺門リンパ節転移のために肺全摘または気管支・肺動脈形成術が可能な場合,気管支・肺動脈形成術後の局所コントロールは肺全摘と同等であり1),かつ予後はⅠ期・Ⅱ期1)2)および,pN01)3) N1症例について肺全摘術と同等4)かそれ以上1)2)5)と報告されている。気管支形成の手術死亡率は0.9~5.9%1)2)4)6)~8)と報告されている。

 Wedge切除の局所再発率は8.9%,BPFは1.6%,術死は3.7%で管状切除と変わらないとの報告がある9)

 肺動脈形成は単独および気管支形成同時であっても,安全性・有効性が報告されている3)5)6)7)10)。最近の報告3)5)11)では,気管支・肺動脈形成術の手術死亡率,術後合併症率は低下している。

 肺全摘を避けるために行う複雑気管支形成術の有効性も報告されている12)13)

 Induction後の気管支形成の安全性・有効性が報告されている14)~16)。術前化学療法群と化学放射線療法群と通常の気管支形成群との比較で,術死亡,術後合併症,また吻合部合併症に差がない14)~16)という報告や,術前放射線治療が術死,吻合合併症に影響したという報告もある7)。また予後に関しては,Induction群で全摘症例やInductionのない症例より良好という報告がある16)17)

 以上より,肺全摘を避けて,気管支・肺動脈形成を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会(白票2)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(8/8)
0% 0% 0% 0%
引用文献
1)
Deslauriers J, Grégoire J, Jacques LF, et al. Sleeve lobectomy versus pneumonectomy for lung cancer: a comparative analysis of survival and sites or recurrences. Ann Thorac Surg. 2004; 77(4): 1152-6.
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3)
Venuta F, Ciccone AM, Anile M, et al. Reconstruction of the pulmonary artery for lung cancer: long-term results. J Thorac Cardiovasc Surg. 2009; 138(5): 1185-91.
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17)
Bagan P, Berna P, Brian E, et al. Induction chemotherapy before sleeve lobectomy for lung cancer: immediate and long-term results. Ann Thorac Surg. 2009; 88(6): 1732-5.
1-5
同一肺葉内結節

文献検索と採択

文献検索期間
  • 1990年1月1日から2017年12月31日
文献検索方法
  • キーワード:lung cancer and surgery and(pulmonary metastasis or pulmonary metastases)
  • 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
採択方法
  • 臨床試験による文献はなく,後方視的観察研究の文献を採用し,施設の報告については,40症例以上を採用した。なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
  • 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。

CQ13.

同一肺葉内結節で転移(PM1)もしくは多発肺癌を疑うcN0症例において,手術を行うべきか?

推 奨
同一肺葉内結節で転移(PM1)もしくは多発肺癌を疑うcN0症例において,手術を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:D,合意率:100%〕

解 説

 転移を有する非小細胞肺癌に対する手術の有無についての比較臨床試験は行われていない。

 IASLCに登録された肺癌症例(1999~2010年)のうち,同一肺葉内転移(PM1),M0の臨床病期172例,病理病期960例について検討されている1)。組織別での差はなく,多くの症例は,手術時に発見されることが多かった。5年生存率は,c-N0:59%(110例),c-N-any:47%(172例),p-N0:59%(468例),p-N-any:42%(960例)であった。ただし,c-N0,M0症例のうち,切除例68%に対し,非切除例は症例数が少ないが0%であった。またpN0M0切除例のうち,R0:59%に対し,R-any:42%であり,P-N0M0 R0であれば,良好な予後が得られている。これは,肺癌登録合同委員会で登録された1994年の肺癌手術症例の予後と同等かそれ以上であった。この報告でリンパ節転移の有無別に解析すると,N0,N1,N2症例での5年生存率は,45.8%,25.3%,11.1%であり,N0群とN1群(P=0.0176),N1群とN2群(P=0.0114)に有意差が認められた2)。同様に,100例以上の解析がなされた報告では,PM1の術後5年生存率は30~58%と報告され2)~8),特にリンパ節転移陰性症例では概ね50%以上であることが報告され6)~8),比較的予後が期待できる集団と考えられる。

 術前検査において同一肺葉内転移が疑われる症例において,手術の結果その結節が転移でない場合も認められ9),正確な診断のためにも手術が勧められる。また,多発癌との鑑別が困難なこともあり,リンパ節転移のない症例においては,手術を行うよう勧められる。なお,リンパ節転移を有すると考えられる症例,特に術前検査にて組織学的N2と判明した症例については,その予後不良が予測されることより,手術単独療法は施行すべきではない。

 以上より,同一肺葉内結節で転移(PM1)もしくは多発肺癌を疑うcN0症例においては,手術を行うよう推奨する。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(10/10)
0% 0% 0% 0%
引用文献
1)
Detterbeck FC, Bolejack V, Arenberg DA, et al. The IASLC Lung Cancer Staging Project: Background Data and Proposals for the Classification of Lung Cancer with Separate Tumor Nodules in the Forthcoming Eighth Edition of the TNM Classification for Lung Cancer. J Thorac Oncol. 2016; 11(5): 681-92.
2)
Nagai K, Sohara Y, Tsuchiya R, et al. Prognosis of resected non-small cell lung cancer patients with intrapulmonary metastases. J Thorac Oncol. 2007; 2(4): 282-6.
3)
Okumura T, Asamura H, Suzuki K, et al. Intrapulmonary metastasis of non-small cell lung cancer: a prognostic assessment. J Thorac Cardiovasc Surg. 2001; 122(1): 24-8.
4)
Rami-Porta R, Ball D, Crowley J, et al. The IASLC Lung Cancer Staging Project: proposals for the revision of the T descriptors in the forthcoming(seventh)edition of the TNM classification for lung cancer. J Thorac Oncol. 2007; 2(7): 593-602.
5)
Ou SH, Zell JA. Validation study of the proposed IASLC staging revisions of the T4 and M non-small cell lung cancer descriptors using data from 23,583 patients in the California Cancer Registry. J Thorac Oncol. 2008; 3(3): 216-27.
6)
Zell JA, Ou SH, Ziogas A, et al. Survival improvements for advanced stage nonbronchioloalveolar carcinoma-type nonsmall cell lung cancer cases with ipsilateral intrapulmonary nodules. Cancer. 2008; 112(1): 136-43.
7)
William WN Jr, Lin HY, Lee JJ, Lippman SM, et al. Revisiting stageⅢB and Ⅳ non-small cell lung cancer: analysis of the surveillance, epidemiology, and end results data. Chest. 2009; 136(3): 701-9.
8)
Okamoto T, Iwata T, Mizobuchi T, et al. Surgical treatment for non-small cell lung cancer with ipsilateral pulmonary metastases. Surg Today. 2013; 43(10): 1123-8.
9)
Detterbeck FC, Franklin WA, Nicholson AG, et al. The IASLC Lung Cancer Staging Project: Background Data and Proposed Criteria to Distinguish Separate Primary Lung Cancers from Metastatic Foci in Patients with Two Lung Tumors in the Forthcoming Eighth Edition of the TNM Classification for Lung Cancer. J Thorac Oncol. 2016; 11(5): 651-65.
1-6
他肺葉内結節

文献検索と採択

文献検索期間
  • 1990年1月1日から2017年12月31日
文献検索方法
  • キーワード:lung cancer and surgery and(pulmonary metastasis or pulmonary metastases), lung cancer and surgery and(multiple primary or multiple cancers)
  • 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
採択方法
  • 臨床試験による文献はなく,後方視的観察研究の文献を採用し,施設の報告については,症例数を考慮した。なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
  • 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。

CQ14.

他肺葉内結節で,多発原発性肺癌を疑う症例において,手術を行うべきか?

推 奨
他肺葉内結節で,多発原発性肺癌を疑う症例においては,手術を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:D,合意率:80%〕

解 説

 多発原発性肺癌と肺内転移の鑑別診断基準には,多くの論文においてMartini and Melamedの基準が用いられている1)。多発原発性肺癌を疑う症例においては,複数の後方視的研究で,5年生存率が23.4~69.6%と外科治療が良好な成績を得たとの報告もある2)~5)。また,縦隔リンパ節転移がない症例については,5年生存率が29~69.6%と比較的良好な成績の報告もある3)6)7)。しかしながら,術前診断において特に同じ組織型の場合には,転移との鑑別は必ずしも容易ではない。近年の遺伝子診断技術の向上により,臨床的鑑別診断に加え8)9),分子生物学的診断によるclonalityの評価がなされつつあるが,確立するには至っていない10)~14)

 以上より,他肺葉内結節で,多発原発性肺癌を疑う症例においては,手術を行うよう提案する。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会,薬物療法小委員会,放射線治療小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 80%
(8/10)
20%
(2/10)
0% 0%

CQ15.

他肺葉内結節で,肺内転移(PM2,3)を疑う症例において,手術を行うべきか?

推 奨
肺内転移(PM2,3)を疑う症例においては,手術を行わないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:D,合意率:60%〕

解 説

 肺癌登録合同委員会で登録された1994年の非小細胞肺癌6,525例(ver. 6)のうち,他肺葉転移(PM2)128例の5年生存率は22.5%で,PM2を除いたM1症例の5年生存率は20.5%であり,PM2症例と有意差は認められなかった(P=0.434)15)。また,その他の報告においても,他肺葉の肺内転移(PM2,3)の症例に対する切除成績は,PM1に比較し予後不良である報告が多く16)~19),手術を勧める科学的根拠は明確でない。

 以上より,肺内転移(PM2,3)を疑う症例においては,手術を行わないよう提案する。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行わないよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会,薬物療法小委員会,放射線治療小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 30%
(3/10)
60%
(6/10)
10%
(1/10)
引用文献
1)
Martini N, Melamed MR. Multiple primary lung cancers. J Thorac Cardiovasc Surg. 1975; 70(4): 606-12.
2)
Riquet M, Cazes A, Pfeuty K, et al. Multiple lung cancers prognosis: what about histology? Ann Thorac Surg. 2008; 86(3): 921-6.
3)
Yu-YC, Hsu PK, Yeh YC, et al. Surgical results of synchronous multiple primary lung cancers: similar to the stage-matched solitary primary lung cancers? Ann Thorac Surg 2013; 96(6): 1966-74.
4)
Jiang L, He J, Shi X, et al. Prognosis of synchronous and metachronous multiple primary lung cancers: systematic review and meta-analysis. Lung Cancer. 2015; 87(3): 303-10.
5)
Leventakos K, Peikert T, Midthun DE, et al. Management of Multifocal Lung Cancer: Results of a Survey. J Thorac Oncol. 2017; 12(9): 1398-402.
6)
Fabian T, Bryant AS, Mouhlas AL, et al. Survival after resection of synchronous non-small cell lung cancer. J Thorac Cardiovasc Surg. 2011; 142(3): 547-53.
7)
Shah AA, Barfield ME, Kelsey CR, et al. Outcomes after surgical management of synchronous bilateral primary lung cancers. Ann Thorac Surg. 2012; 93(4): 1055-60.
8)
Detterbeck FC, Nicholson AG, Franklin WA, et al. The IASLC Lung Cancer Staging Project: Summary of Proposals for Revisions of the Classification of Lung Cancers with Multiple Pulmonary Sites of Involvement in the Forthcoming Eighth Edition of the TNM Classification. J Thorac Oncol. 2016; 11(5): 639-50.
9)
Detterbeck FC, Marom EM, Arenberg DA, et al. The IASLC Lung Cancer Staging Project: Background Data and Proposals for the Application of TNM Staging Rules to Lung Cancer Presenting as Multiple Nodules with Ground Glass or Lepidic Features or a Pneumonic Type of Involvement in the Forthcoming Eighth Edition of the TNM Classification. J Thorac Oncol. 2016; 11(5): 666-80.
10)
Hiroshima K, Toyozaki T, Kohno H, et al. Synchronous and metachronous lung carcinomas: molecular evidence for multicentricity. Pathol Int. 1998; 48(11): 869-76.
11)
Shimizu S, Yatabe Y, Koshikawa T, et al. High frequency of clonally related tumors in cases of multiple synchronous lung cancers as revealed by molecular diagnosis. Clin Cancer Res. 2000; 6(10): 3994-9.
12)
Chang YL, Wu CT, Lin SC, et al. Clonality and prognostic implications of p53 and epidermal growth factor receptor somatic aberrations in multiple primary lung cancers. Clin Cancer Res. 2007; 13(1): 52-8.
13)
Girard N, Ostrovnaya I, Lau C, et al. Genomic and mutational profiling to assess clonal relationships between multiple non-small cell lung cancers. Clin Cancer Res. 2009; 15(16): 5184-90.
14)
Detterbeck FC, Franklin WA, Nicholson AG, et al. The IASLC Lung Cancer Staging Project: Background Data and Proposed Criteria to Distinguish Separate Primary Lung Cancers from Metastatic Foci in Patients with Two Lung Tumors in the Forthcoming Eighth Edition of the TNM Classification for Lung Cancer. J Thorac Oncol. 2016; 11(5): 651-65.
15)
Nagai K, Sohara Y, Tsuchiya R, et al. Prognosis of resected non-small cell lung cancer patients with intrapulmonary metastases. J Thorac Oncol. 2007; 2(4): 282-6.
16)
Fukuse T, Hirata T, Tanaka F, et al. Prognosis of ipsilateral intrapulmonary metastases in resected nonsmall cell lung cancer. Eur J Cardiothorac Surg. 1997; 12(2): 218-23.
17)
Okumura T, Asamura H, Suzuki K, et al. Intrapulmonary metastasis of non-small cell lung cancer: a prognostic assessment. J Thorac Cardiovasc Surg. 2001; 122(1): 24-8.
18)
Zell JA, Ou SH, Ziogas A, et al. Survival improvements for advanced stage nonbronchioloalveolar carcinoma-type nonsmall cell lung cancer cases with ipsilateral intrapulmonary nodules. Cancer. 2008; 112(1): 136-43.
19)
Detterbeck FC, Bolejack V, Arenberg DA, et al. The IASLC Lung Cancer Staging Project: Background Data and Proposals for the Classification of Lung Cancer with Separate Tumor Nodules in the Forthcoming Eighth Edition of the TNM Classification for Lung Cancer. J Thorac Oncol. 2016; 11(5): 681-92.
1-7
異時性多発癌

文献検索と採択

文献検索期間
  • 2000年1月1日から2017年12月31日
文献検索方法
  • キーワード:lung cancer and surgery and(metachronous or heterochronic or second or multiple), lung cancer and surgery and(redo or completion)
  • 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
採択方法
  • 臨床試験による文献はなく,後方視的観察研究の文献を採用し,施設の報告については,症例数を考慮した。なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
  • 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。

CQ16.

異時性多発肺癌に対しては,耐術能があれば外科治療を行ってもよいか?

推 奨
異時性多発肺癌に対しては,耐術能があれば外科治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:D,合意率:60%〕

解 説

 異時性多発肺癌に対する治療では,外科治療で良好な成績を得たとの報告が多い1)~8)。5年生存率は一次癌から60.9~79%,二次癌から33.4~46%であり1)8),手術関連死は1.4~7.0%5)8)であった。肺切除法としては,肺機能が許せば肺葉切除が良好であったとの報告があり,5年生存率は肺葉切除,縮小手術,肺全摘術において,それぞれ57.5,36,20%であった4)。一方,縮小手術でも同等の成績を示したとの報告がある1)3)7)。肺全摘術に関しては,予後不良因子であったとの報告4)5)と他の切除法と同等であったとの報告2)とがある。再発肺内転移との鑑別診断に関しては,同一組織型であっても遺伝子分析にて可能であったとの報告9)~12)もあり,今後さらに臨床応用されることが期待される。耐術能がない異時性多発肺癌患者に対しては,体幹部定位放射線治療(SBRT)により,重篤な有害事象を発症することなく,2年生存率68.1%13),3年生存率62%14)と良好な成績を得たとの報告もある。

 以上より,異時性多発肺癌に対しては,耐術能があれば外科治療を行うよう推奨する。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会,薬物療法小委員会,放射線治療小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
60%
(6/10)
40%
(4/10)
0% 0% 0%
引用文献
1)
Battafarano RJ, Force SD, Meyers BF, et al. Benefits of resection for metachronous lung cancer. J Thorac Cardiovasc Surg. 2004; 127(3): 836-42.
2)
Riquet M, Cazes A, Pfeuty K, et al. Multiple lung cancers prognosis: what about histology? Ann Thorac Surg. 2008; 86(3): 921-6.
3)
Lee BE, Port JL, Stiles BM, et al. TNM stage is the most important determinant of survival in metachronous lung cancer. Ann Thorac Surg. 2009; 88(4): 1100-5.
4)
Zuin A, Andriolo LG, Marulli G, et al. Is lobectomy really more effective than sublobar resection in the surgical treatment of second primary lung cancer? Eur J Cardiothorac Surg. 2013; 44(2): e120-5.
5)
Yang J, Liu M, Fan J, et al. Surgical treatment of metachronous second primary lung cancer. Ann Thorac Surg. 2014; 98(4): 1192-8.
6)
Jiang L, He J, Shi X, et al. Prognosis of synchronous and metachronous multiple primary lung cancers: systematic review and meta-analysis. Lung Cancer. 2015; 87(3): 303-10.
7)
Hattori A, Suzuki K, Takamochi K, et al. Clinical features of multiple lung cancers based on thin-section computed tomography: what are the appropriate surgical strategies for second lung cancers? Surg Today. 2015; 45(2): 189-96.
8)
Hamaji M, Ali SO, Burt BM. A meta-analysis of resected metachronous second non-small cell lung cancer. Ann Thorac Surg. 2015; 99(4): 1470-8.
9)
Huang J, Behrens C, Wistuba I, et al. Molecular analysis of synchronous and metachronous tumors of the lung: impact on management and prognosis. Ann Diagn Pathol. 2001; 5(6): 321-9.
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van Rens MT, Eijken EJ, Elbers JR, et al. p53 mutation analysis for definite diagnosis of multiple primary lung carcinoma. Cancer. 2002; 94(1): 188-96.
11)
Girard N, Ostrovnaya I, Lau C, et al. Genomic and mutational profiling to assess clonal relationships between multiple non-small cell lung cancers. Clin Cancer Res. 2009; 15(16): 5184-90.
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Wu CT, Lin MW, Hsieh MS, et al. New aspects of the clinicopathology and genetic profile of metachronous multiple lung cancers. Ann Surg. 2014; 259(5): 1018-24.
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Creach KM, Bradley JD, Mahasittiwat P, et al. Stereotactic body radiation therapy in the treatment of multiple primary lung cancers. Radiother Oncol. 2012; 104(1): 19-22.
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Nishiyama K, Kodama K, Teshima T, et al. Stereotactic body radiotherapy for second pulmonary nodules after operation for an initial lung cancer. Jpn J Clin Oncol. 2015; 45(10): 947-52.
1-8
胸腔鏡補助下肺葉切除,ロボット支援下肺葉切除

文献検索と採択

文献検索期間
  • 2004年12月1日から2017年12月31日
文献検索方法
  • キーワード:lung cancer, VATS, video-assisted thoracic surgery
  • 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
採択方法
  • メタアナリシス,第Ⅲ相試験,ランダム化比較第Ⅱ相試験を抽出し,後方視的な検討では,胸腔鏡手術300例以上のものを抽出した。なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
  • 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。

CQ17.

臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対して,胸腔鏡補助下肺葉切除を行ってもよいか?

推 奨
胸腔鏡補助下肺葉切除を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:57%〕

解 説

 胸腔鏡補助下手術(video-assisted thoracic surgery;VATS)の定義には様々な解釈がある。本項ではアプローチ手技を問わず胸腔鏡を用い肺葉切除したものをVATS肺葉切除術として取り扱った。臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対するVATS肺葉切除術については,小規模ではあるが2つのランダム化比較試験が報告されている。1つは臨床病期Ⅰ期の非小細胞肺癌55例についてランダムに割り付けを行い,標準開胸肺葉切除(n=30),またはVATS肺葉切除(n=25)を比較したものであるが,手術時間,出血量,ドレーン留置期間,在院日数,術後疼痛に関しては両群間で有意差はなかった1)。他方は臨床病期ⅠA期非小細胞肺癌100例を標準開胸肺葉切除(n=52)とVATS肺葉切除(n=48)に分けて比較したところ,郭清リンパ節個数,リンパ節転移頻度,再発率,5年全生存率では両群間に差を認めなかったとの報告である2)。この2つのランダム化比較試験と19の非ランダム化試験のメタアナリシスの結果が報告され,VATSと開胸手術では手術時間,出血量,ドレーン留置期間,在院日数,肺瘻の遷延,不整脈,肺炎,手術死亡,局所再発の頻度に有意な差はなかった3)。しかしながら,VATS群のほうが有意に遠隔転移が少なく5年生存率も良好であったため,早期非小細胞肺癌患者に対してVATSによる肺葉切除術は適切な手技であると結論付けた。また別のメタアナリシスではⅠ期非小細胞肺癌の手術例においてはVATS群は開胸群と比較して5年生存率でより長い予後,少ない合併症であることが判明し,VATSは早期肺癌に対する治療として効果的で安全なアプローチであると結論された4)。一方で,長期予後に対してVATS手術は開胸手術と差がなかったというメタアナリシスの報告もある5)

 低肺機能の患者の肺葉切除における術後急性期の安全性について検討したメタアナリシスによると,術後30日死亡や術後合併症発症率は両群で同等であったが,VATS群で有意に肺合併症が少なかった6)

 サンプル例は66例と少ないが,肺葉切除における系統的リンパ節郭清について開胸とVATSを比較したランダム化比較試験が報告されている7)。2008~11年に単一施設で臨床Ⅰ期非小細胞肺癌の系統的リンパ節郭清を行い,郭清個数は差がなかったが,手術時間はVATS 187分,開胸158分と手術時間はVATSで有意に長かった。これにより縦隔郭清は開胸と同じくVATSでも十分行うことができ,視野はむしろVATSのほうが良好である。術後疼痛とQOLに関してVATSと開胸を比較したランダム化比較試験がLancet Oncologyに報告されている8)。臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌における葉切除でVATS群(102例)は開胸群(99例)と比較して術後疼痛が少なく,QOLも良いことが示された。

 VATS手術における術中の重篤な合併症に関して報告がある。ヨーロッパの6つのセンターでの前方視的研究では3,076例のVATS肺切除症例を解析した9)。術死3例,在院死43例(1.4%)で,重篤な合併症は46例(1.5%)認め,気管支血管を誤って切離,消化管損傷,中枢気道損傷,追加の手術を要するような合併症,生命に危険が及ぶ合併症などであった。在院死の23%は術中の重篤な合併症に関連していた。VATSから開胸へのconversionは5.5%(170例)に認め,その理由としては腫瘍学的(22%),手技的(30%),合併症(49%)であった。血管損傷は2.9%(88例)あり,そのうち70例がcoversionした。Washington大学からの報告では2004~12年の肺癌肺葉切除症例1,227例のうち,VATS完遂群517例(42%),VATSから開胸した群(conversion)87例(7%),開胸群623例(51%)となり,3群間で比較した10)。Conversionの原因は出血(25%),癒着/腫瘍(64%),リンパ節(9%)であった。また韓国からのVATS lobectomy施行中の予期せぬconversionを要した症例の検討では,conversionの原因はリンパ節の固着(28%),血管損傷(20%),腫瘍の浸潤(11%)であった11)。Conversionを要した69例とVATS例を1:3で割り付けし2群間を比較,術後合併症や在院死亡に差はなかったが,呼吸器合併症はconversion群で多く認めた。これらの報告からVATS手術中に腫瘍学的または手技的に困難であれば開胸へのconversionは躊躇せず,速やかに行うべきである。

 臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対するVATS肺葉切除術について混乱を生じているのは,VATSアプローチの定義自体があいまいな点である。そのアプローチにはモニター視のみの完全鏡視下と,直視を併用するもの,いわゆるHybrid VATSがある12)。皮切長,皮切の数,肋間開大(開胸器併用)の有無など様々な方法が施設毎に採用され,完全鏡視下であっても手術の質向上のために直視下触診を用いるものもある。その手術成績などについては,その区別なく論じられている場合がほとんどである。さらにVATSが開胸手術に比較して,予後,侵襲性,安全性に関して,同等ないし優れていると肯定的な研究は多いものの,これらの報告の多くは単施設の後方視的な解析に基づくものであり,十分な症例数を有したランダム化比較試験はなく,確定的な結論は出ていない。VATSアプローチの定義が難しいため,今後も大規模なランダム化比較試験の実施は困難であると予想される。2009年の日本胸部外科学会年次調査結果によれば,肺癌に対する23,520例の全肺葉切除術の50%以上,12,008例にVATS肺葉切除術が施行されている13)。このように臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対するVATS肺葉切除術は,実地医療の場ではランダム化比較試験を経ずに頻用されている。

 以上より,臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対して胸腔鏡補助下肺葉切除を行うよう提案する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会(白票3)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
43%
(3/7)
57%
(4/7)
0% 0% 0%

CQ18.

臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対して,ロボット支援下肺葉切除を行ってもよいか?

推 奨
臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対して,ロボット支援下肺葉切除を推奨するだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

解 説

 肺癌に対するロボット支援手術(robot-assisted thoracoscopic surgery;RATS)は2002年の報告に始まり,欧米を中心に広がってきた。本邦では2011年に最初の手術が報告された。胸腔鏡補助下手術(VATS)が本ガイドラインで推奨度2Bとなっている(CQ17参照)中で,RATSは3次元視野と精緻操作によりVATSの弱点を補う新技術として期待されている。しかしながら,RATSの有用性を示すための前向き研究は現在進行中で,いまだに明らかなエビデンスは得られていない。多くの後方視的な研究がなされる中で,VATSと比較した大規模試験のメタアナリシスをまとめると,根治性,安全性,長期予後には差がなく,操作性,ラーニングカーブではRATSに分がある14)~21)。しかしながら,利用できる器具が限られていることや手術時間が長いこと,コストがかかることがRATSのマイナス要素である14)~21)

 手術手技としては,肺葉切除のみならず,小型肺癌に対する区域切除,肺門部肺癌に対する気管支形成などの複雑な手技への応用も報告されている22)。RATSのメリットを考えた場合には,その優れた操作性からリンパ節郭清への有用性が期待されているが,いまだ定まった見解はない。長期成績は症例数や観察期間がまだ十分とはいえないが,開胸,VATS,RATSにおいて有意差のない予後が報告されている23)

 一方で,安全性については,RATSでは術中の医原性合併症の発生率が高いことも報告されている24)。したがって,RATSのピットフォールやトラブルシュートをよく熟知し,緊急時の対処法を平時から麻酔科医を含めてチームで話し合っておくことが大切と考えられる。

 以上より,臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対してロボット支援下肺葉切除を推奨するだけの明らかな根拠は乏しい。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 100%
(10/10)
0% 0%
引用文献
1)
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1-9
術後経過観察

文献検索と採択

文献検索期間
  • 2004年12月1日から2017年12月31日
文献検索方法
  • キーワード:lung cancer, follow-up,(Postoperative), Surveillance
  • 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
採択方法
  • メタアナリシス,第Ⅲ相試験,ランダム化比較第Ⅱ相試験を抽出し,review articleは除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
  • 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。

CQ19.

外科切除後の非小細胞肺癌に対しては,定期的な経過観察を行うべきか?

推 奨
外科切除後の非小細胞肺癌に対しては定期的な経過観察を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:90%〕

解 説

 肺癌術後経過観察は科学的根拠に則り,経済的影響を十分に考慮しながら行う必要がある。しかし臨床研究の結果に乏しく科学的根拠に基づいた観察法は示されていない。

 肺癌術後の予後は経過観察法,すなわちintensiveに経過を追うかどうかによっては改善されないとの報告がなされている1)2)。Virgoらの1995年の論文は単一施設でintensive群とnonintensive群を後方視的に解析した研究であるが,intensive群のほうがnonintensive群に比べ0.53年生存期間が延長していたものの有意差はなかった1)。一方でintensiveに経過観察した場合,生存率が改善するとの報告3)やintensiveな経過観察により他疾患の治療が容易になるとの報告もある2)。しかし無症状症例に積極的なスクリーニングを行うのは,費用対効果の面からも考える必要がある。早期の非小細胞肺癌に対する経過観察間隔に関してはESMOのガイドラインでは,2,3年までの半年毎の受診(問診・診察)と12カ月,24カ月時点でのCT撮影を推奨している4)

 明確に推奨する根拠はないものの術後経過観察は日常診療としてなされ,患者のニーズが明確に存在する。また受診による術後合併症の発見,患者の状態の把握,精神的支援などの側面もある。さらに異時多発癌は病理病期Ⅰ期においても1.99/100人年で発生し,切除例の予後は非切除例より良好であった(P=0.003)との報告5)があり,この点も考慮する必要がある。経過観察期間に関しては5年以降では再発は減少6)し,予後は良好7)との報告がある一方で,すりガラス陰影を呈する肺癌でも5年以降に再発したとの報告8)もあり,今後の検討を要する。

 CTについては海外の複数のガイドラインではCTを推奨しており4)9)10),経過観察には低線量らせんCTが有用との報告11)や,半年毎に胸部CTを行った群の予後が良好であったとの報告12)があるが,術後経過観察における術後CTの予後に対する影響は明らかではない。PETについても術後再発の検出に有用か否か検討が不十分であり13),また延命効果が示されていないことからESMOのガイドラインではむしろ推奨しないとされている4)

 以上より,外科切除後の非小細胞肺癌に対しては定期的な経過観察を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
90%
(9/10)
0% 10%
(1/10)
0% 0%

CQ20.

非小細胞肺癌術後の患者は,禁煙を行うべきか?

推 奨
非小細胞肺癌術後の患者に対しては,禁煙を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:90%〕

解 説

 本ガイドラインの中で数少ない喫煙・禁煙と肺癌の関係を対象としたCQであるので,喫煙・禁煙に関係する一般的事項に考察を加えながら課題のCQに答えるようにする。

 胃癌とピロリ菌,肝臓癌と肝炎ウイルス,子宮頸癌とヒトパピローマウイルスなどと同様に肺癌も喫煙との因果関係が明らかになっている14)~16)が,あまりにも明らかであるがため逆にランダム化比較試験のようなエビデンスの質の高い報告はみられず,また今後もそのような報告が出てくる可能性もないと考えられる。

 肺癌を予防するためには,たばこを吸わないことが最も効果的である。たばこの煙の中には多環芳香族炭化水素類やニトロソアミン類をはじめとする約70種類の発癌物質が含まれており,これらの発癌物質はDNA損傷など癌発生メカニズムの様々な段階に関与する。厚生労働省の「喫煙の健康影響に関する検討会(2016年)」の報告17)では喫煙と疾患の因果関係を以下の4レベルに分類している。すなわち「レベル1:科学的証拠は因果関係を推定するのに十分である」,「レベル2:科学的証拠は因果関係を示唆しているが十分ではない」,「レベル3:科学的証拠は因果関係の有無を推定するのに不十分である」,「レベル4:科学的証拠は因果関係がないことを示唆している」である。肺癌は従来の疫学的・中毒学的データに加え,分子レベル・細胞レベルでの研究で機序面での基礎が揃ったことからレベル1に分類されている14)17)

 多くの疫学研究で一貫して喫煙は癌患者の全死因死亡リスクを上昇させると報告されており,米国Surgeon General Report15)は「科学的証拠は癌患者における喫煙と全死因死亡との因果関係を推定するのに十分である」と結論付けている。60歳以上を対象としたシステマティックレビューでは,非喫煙者に対する統合相対死亡リスクは,喫煙者で1.83(95%CI:1.65-2.03),過去喫煙者で1.34(95%CI:1.28-1.40)と算出された18)。本邦における評価も同様にレベル1である。

 喫煙と肺癌の各種治療効果・治療毒性との関係に関してはレベル2(科学的証拠は因果関係を示唆しているが十分ではない)とされている17)が,放射線治療・薬物治療や手術に際して喫煙継続群では禁煙群より有意に合併症が増加したとする報告19)や治療効果が低下したとする報告がみられる20)

 術後再発に関しても同様にレベル2に分類されている17)。喫煙と再発に有意な関係はなかったとする報告もあるが,肺癌術後の患者を喫煙群と禁煙群にランダムに分けることは倫理的にも実施困難であり,必然的にレベルの高い結果は得られていない。しかし,喫煙と二次癌の発生に関してはレベル1(科学的根拠は因果関係を推定するのに十分である)に分類されており17)21)22),喫煙が本人だけでなく周りの人にも伏流煙(フィルターを通しておらず主流煙よりも多くの有害物質を含んでいる)による健康被害を惹起する事実から,肺癌術後の禁煙は強く推奨されるべきものといえる。

 以上より,非小細胞肺癌術後の患者に対しては,禁煙を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
90%
(9/10)
0% 10%
(1/10)
0% 0%
引用文献
1)
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1-10
低悪性度肺腫瘍(カルチノイド,粘表皮癌,腺様嚢胞癌)

文献検索と採択

文献検索期間
  • 2004年12月1日から2017年12月31日
文献検索方法
  • キーワード:lung cancer, surgery, carcinoid, mucoepidermoid, adenoid cystic
  • 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
採択方法
  • すべての文献を抽出し,review articleは除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
  • 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。

CQ21.

切除可能な低悪性度腫瘍(カルチノイド,粘表皮癌,腺様嚢胞癌)は,非小細胞肺癌に準じた外科治療を行うべきか?

推 奨
切除可能な低悪性度腫瘍(カルチノイド,粘表皮癌,腺様嚢胞癌)に対しては,非小細胞肺癌に準じた外科治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

解 説

 カルチノイドについてはIASLCのデータベースから集積した513例の手術症例で,5年,10年生存率が各々pN0で92%,84%,pN1で68%,54%,pN2で64%,0%であった1)。またSEERのデータベースから集積した1,437例の手術症例では,5年生存率がpN0で92%,pN1で81%,pN2で74%であった1)。カルチノイドに対する手術療法は,非小細胞肺癌の同じ病期のものと比較しても成績が良好である。Garcia-Yusteらの手術症例の報告2)では,定型的カルチノイド569例の5年生存率は,pN0で97%,pN1で100%,pN2で100%,非定型カルチノイド92例での5年生存率は,pN0で83%,pN1で61%,pN2で60%でカルチノイドに比し非定型カルチノイドの予後は不良であった。術式については,1973~2006年までに集積した3,478例の後方視的研究で中間生存期間は,肺葉切除以上群で84カ月,縮小手術群で67カ月で,propensity scoreを用いた解析では定型的カルチノイドであれば縮小手術も許容できるとの報告もある3)。また2000~7年までの3,270例の解析によれば,定型的カルチノイド3,084例,非定型カルチノイド186例に対し肺葉切除1,669例,縮小手術784例が行われ,多変量解析で疾患特異的生存において縮小手術は肺葉切除に対して非劣性が示された4)。カルチノイドにおける縮小手術の有用性を示す前方視的研究はない。

 非定型カルチノイドのみを集積した検討では,浸潤性が高いため標準切除とリンパ節郭清が重要とする報告や5)~7),335例の手術で3年生存率までは肺葉切除と縮小手術との差がない一方で,放射線照射は死亡率が高いとする報告もあり8),手術が一般的に推奨されている。

 最近のSEERデータベースでは,生検でカルチノイドとされたN0症例4,110例において,全5年生存率が肺葉切除で93%,縮小手術で92%,非切除で69%,疾患特異的生存率は肺葉切除で97%,縮小手術で98%,非切除で88%であった。非切除群の疾患特異的生存率も良かったため,高リスク患者では,無症状例の経過観察や,中枢発生有症状例の気管支鏡処置は考慮してよいと報告されている9)。気管支カルチノイドでは112例の初回経気管支鏡的処置例(全例観察期間5年以上)において,42%の患者が再発を認めず手術を回避し得たとの報告がある10)

 粘表皮癌は肺癌全体の0.1~0.2%を占める稀な腫瘍である。組織学的に低悪性度腫瘍,高悪性度腫瘍に分類される11)。一般的に低悪性度のものは予後良好で,高悪性度のものは予後不良とされている。Vadaszらは低悪性度腫瘍5例の5年生存率は80%,高悪性度腫瘍では44%にリンパ節転移が認められ,5年生存率は31%であったと報告している12)。またChinらは完全切除症例の10年生存率は87.5%であったのに対し,不完全切除症例では長期生存は認められなかったと報告している13)

 腺様嚢胞癌は完全切除での5年生存率が73~91%と報告され14)~16),後方視的研究ではあるが手術例は非切除例よりも良好な成績で報告されている。

 以上より,切除可能な低悪性度腫瘍(カルチノイド,粘表皮癌,腺様嚢胞癌)に対しては,非小細胞肺癌に準じた外科治療を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(10/10)
0% 0% 0% 0%
引用文献
1)
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