Ⅱ.非小細胞肺癌(NSCLC)

7

Ⅳ期非小細胞肺癌

文献検索と採択

文献検索期間
  • 2004年12月1日から2018年12月31日
文献検索方法
  • キーワード:lung cancer, non-small cell lung cancer, chemotherapy
  • 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
採択方法
  • 文献はメタアナリシス,第Ⅲ相試験,ランダム化比較第Ⅱ相試験を中心に抽出し,総説もしくは検索時点で日本における未承認薬を用いた試験は除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献,論文化されていない重要な学会報告は上記以外でも採用した。
  • これ以前の文献でも,今回の改訂に際し重要と考えられたものについては採用としている。

本文中に用いた略語および用語の解説

CBDCA カルボプラチン
CDDP シスプラチン
CPT-11 イリノテカン
DTX ドセタキセル
GEM ゲムシタビン
IFM イホスファミド
nab-PTX ナブパクリタキセル
NDP ネダプラチン
PEM ペメトレキセド
PTX パクリタキセル
VNR ビノレルビン
PD-1/PD-L1阻害剤 ニボルマブ,ペムブロリズマブ,アテゾリズマブの総称
S-1 テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤
プラチナ製剤 CDDP,CBDCA,NDPの総称
第一・二世代のEGFR-TKI ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ,ダコミチニブの総称
ALK anaplastic lymphoma kinase 未分化リンパ腫キナーゼ
ECOG eastern cooperative oncology group 米国東海岸癌臨床試験グループ
EGFR epidermal growth factor receptor 上皮成長因子受容体
IC tumor-infiltrating immune cells 腫瘍浸潤免疫細胞
ORR objective response rate 客観的奏効率
OS overall survival 全生存期間
PFS progression free survival 無増悪生存期間
PS performance status 全身状態
QOL quality of life 生活の質
TC tumor cells 腫瘍細胞
TKI tyrosine kinase inhibitor チロシンキナーゼ阻害剤
ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)Performance Status
Score 定 義
0 全く問題なく活動できる。
発病前と同じ日常生活が制限なく行える。
1 肉体的に激しい活動は制限されるが,歩行可能で,軽作業や座っての作業は行うことができる。
例:軽い家事,事務作業
2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない。
日中の50%以上はベッド外で過ごす。
3 限られた自分の身の回りのことしかできない。
日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。
4 全く動けない。
自分の身の回りのことは全くできない。
完全にベッドか椅子で過ごす。

出典:Common Toxicity Criteria,Version2.0 Publish Date April 30, 1999

(JCOGホームページhttp://www.jcog.jp/より日本語訳を引用)

高齢者の定義

 日本における高齢者の定義は70~75歳以上とされており,2010年版の肺癌診療ガイドラインでは70歳以上を高齢者と定義していた。

 しかしながら,日本の臨床試験においては75歳以上の患者が除外されていることが多く,75歳以上の高齢者のデータは少ない。また,近年の70歳以上の高齢者を対象とした第三世代細胞障害性抗癌剤単剤とプラチナ製剤併用療法を比較した2編の第Ⅲ相試験において両試験とも登録された患者の多くが75歳以上であった。

 以上より,本ガイドラインでは非小細胞肺癌において「75歳以上」を高齢者と定義する。

維持療法(Maintenance)の定義
  • Switch maintenance:プラチナ製剤併用療法による導入療法後,導入療法で使用した薬剤とは別の薬剤に切り替えて投与する方法。
  • Continuation maintenance:プラチナ製剤併用療法による導入療法後,プラチナ製剤と併用した薬剤を継続して投与する方法。
総 論
Ⅳ期非小細胞肺癌における薬物療法の意義とサブグループ別の治療方針

樹形図

Ⅳ期非小細胞肺癌:サブグループ別の治療方針 ドライバー遺伝子変異/転座陽性 PD-L1陽性細胞50%以上 ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1陽性細胞50%未満,もしくは不明
解 説

 Ⅳ期非小細胞肺癌で用いられる薬物療法においては,長らく細胞障害性抗癌剤がその中心を担ってきた。細胞障害性抗癌剤と緩和治療を比較したメタアナリシスによって,細胞障害性抗癌剤が有意に生存を延長させることが示されている1)。これは1年生存率にして9%(20%から29%)の改善,もしくは約1.5カ月のOS延長に相当する。第三世代細胞障害性抗癌剤を用いた検討では,第三世代細胞障害性抗癌剤単剤療法でも緩和治療に比して1年生存率で約7%の改善がみられたことが示されている2)。毒性については,別のメタアナリシスで進行非小細胞肺癌における細胞障害性抗癌剤の治療関連死が1.26%であったと報告されており,その内訳は発熱性好中球減少,虚血や血栓などの心血管系の毒性,肺炎や間質性肺障害などの肺毒性であった3)。QOLに関しては,第三世代細胞障害性抗癌剤単剤は緩和治療と比較してQOLを改善させることが報告されている4)。また,第三世代細胞障害性抗癌剤にプラチナ製剤を追加することの意義を評価した第Ⅲ相試験では,プラチナ製剤と第三世代細胞障害性抗癌剤の併用がOS・PFS延長を示すと同時にQOLは同等であったと報告されている5)

 一方,2000年代以降になって分子標的治療薬・免疫チェックポイント阻害剤といった新規治療が登場し,これらは細胞障害性抗癌剤との比較によってその有効性を示している。

 分子標的治療薬の多くはEGFR遺伝子変異,ALK遺伝子転座などといった癌発生の直接的な原因となるようなドライバーと称される遺伝子変異/転座に対する阻害剤である。全身状態良好で,これらドライバー遺伝子の変異/転座を有する患者に対して,それぞれのキナーゼ阻害剤を投与することでORRの増加,PFSの延長などの有効性が報告されている。EGFR遺伝子変異,ALK遺伝子転座では細胞障害性抗癌剤と比較した第Ⅲ相試験が実施され,キナーゼ阻害剤のほうが細胞障害性抗癌剤に比して有効であることが報告されている(CQ45)。頻度の少ないEGFRのuncommon mutation,その他のドライバー遺伝子(ROS1,BRAF)変異/転座陽性例では細胞障害性抗癌剤と比較した第Ⅲ相試験が実施されていないが,第Ⅱ相試験や第Ⅲ相試験のサブセットではそれぞれの阻害剤によって同程度の高い有効性が報告されている(CQ545960)。また多くの分子標的治療薬は一般的に細胞障害性抗癌剤よりも毒性が軽度であることが多く,少数例の検討ながらPS不良例における前向き試験での有効性が報告されている点も重要である(CQ46)。

 2015年以降,本邦で使用可能となった免疫チェックポイント阻害剤は,細胞障害性抗癌剤や分子標的治療薬と異なる作用機序を有する新規薬剤で,腫瘍免疫における負の調節因子であるPD-1などの免疫チェックポイント分子を標的とした抗体薬である。PS 0-1でEGFR遺伝子変異,ALK遺伝子転座を有さない,PD-L1陽性腫瘍細胞(TPS)が50%以上の非小細胞肺癌を対象としたPD-1阻害剤(ペムブロリズマブ)とプラチナ製剤併用療法の第Ⅲ相試験(KEYNOTE-024試験)では,ペムブロリズマブ群においてORR,PFS,OSの有意な改善が示され,毒性も忍容可能であった(CQ63)。さらに,進行非小細胞肺癌を対象として細胞障害性抗癌剤(プラチナ製剤併用療法)にPD-1/PD-L1阻害剤の上乗せを評価した複数の第Ⅲ相試験(CQ68)が報告されており,PD-1/PD-L1阻害剤の上乗せの高い有効性が示されている。

 以上,全身状態良好なⅣ期非小細胞肺癌患者に対しては薬物療法(細胞障害性抗癌剤,分子標的治療薬,免疫チェックポイント阻害剤)が緩和治療に比してOSを延長し,QOLも改善することが示されている。治療方針の決定に際して,分子標的治療薬では腫瘍におけるドライバー遺伝子の変異/転座の有無を,ペムブロリズマブではPD-L1の発現状態を確認する必要があり,これらの薬剤を適切なタイミングで使用するためには組織,病期診断と並行して目の前の患者が1)ドライバー遺伝子変異/転座陽性例,2)ドライバー遺伝子変異/転座陰性のPD-L1陽性細胞50%以上,3)それ以外,のいずれのサブグループに属するのかを診断することが重要である。以下に各サブグループにおける治療方針を述べる。

1)ドライバー遺伝子変異/転座陽性例:CQ45~62

 ドライバー遺伝子変異/転座陽性例では前述したようにそれぞれのキナーゼ阻害剤によってORR,PFSの改善が報告されている。なおこれらの第Ⅲ相試験では,プラチナ製剤併用療法の後治療としてキナーゼ阻害剤へのクロスオーバーが高率に行われたために,OSの有意な差は示されていない。EGFR遺伝子変異陽性例の大規模研究において,一次から三次治療のエルロチニブ単剤のPFSに有意差を認めないことが報告されており6),キナーゼ阻害剤と細胞障害性抗癌剤の投与順序に関して,現時点で明確な結論はない。しかしながら,米国で行われた前向き観察研究では,733例を対象に10遺伝子について解析し,466例(64%)にドライバー遺伝子変異/転座を認めたが,ドライバー遺伝子変異/転座があり,それを標的とした治療薬を使用した260例のOS中央値は3.5年であったのに対し,ドライバー遺伝子変異/転座があったにもかかわらず,それを標的とした治療をしていない患者のOS中央値は2.4年であった(propensity score-adjusted hazard ratio:0.69,95%CI:0.53-0.9,P=0.006)7)

 以上より,ドライバー遺伝子変異/転座陽性例に対してキナーゼ阻害剤の投与機会を逸しないことは重要であり,細胞障害性抗癌剤よりも優先して投与することを推奨する。増悪後の二次治療としては全身状態に応じて細胞障害性抗癌剤が勧められる(CQ65~67)。ドライバー遺伝子変異/転座陽性例に対する免疫チェックポイント阻害剤についてはCQ4950を参照のこと。また,扁平上皮癌でドライバー遺伝子変異/転座陽性であった場合についてはCQ62を参照のこと。

2)ドライバー遺伝子変異/転座陰性のPD-L1陽性細胞50%以上:CQ6364

 PD-1/PD-L1阻害剤の高い臨床効果が期待できるサブグループであり,初回治療としてペムブロリズマブ単剤療法を行うよう勧められる。また,細胞障害性抗癌剤(プラチナ製剤併用療法)+PD-1/PD-L1阻害剤治療も勧められる。上記の治療増悪後の二次治療としては,全身状態に応じて細胞障害性抗癌剤を行うよう勧められる。なお,ドライバー遺伝子変異/転座陽性例は前項1)に準じる。

3)ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1陽性細胞50%未満,もしくは不明:CQ65~78

 このサブグループに対する一次治療として,分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害剤が細胞障害性抗癌剤よりも有効であることは示されていない。一方で,プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤治療は,プラチナ製剤併用療法のみと比較し有意な生存延長効果を示しており,プラチナ製剤併用療法の対象で,かつPD-1/PD-L1阻害剤の上乗せが可能な症例はこれらの多剤併用療法が勧められる。

引用文献
1)
Non-Small Cell Lung Cancer Collaborative Group. Chemotherapy and supportive care versus supportive care alone for advanced non-small cell lung cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2010; (5): CD007309.
2)
Baggstrom MQ, Stinchcombe TE, Fried DB, et al. Third-generation chemotherapy agents in the treatment of advanced non-small cell lung cancer: a meta-analysis. J Thorac Oncol. 2007; 2(9): 845-53.
3)
Fujiwara Y, Hotta K, Di Maio M, et al. Time trend in treatment-related deaths of patients with advanced non-small-cell lung cancer enrolled into phase Ⅲ trials of systemic treatment. Ann Oncol. 2011; 22(2): 376-82.
4)
Anderson H, Hopwood P, Stephens RJ, et al. Gemcitabine plus best supportive care(BSC)vs BSC in inoperable non-small cell lung cancer--a randomized trial with quality of life as the primary outcome. UK NSCLC Gemcitabine Group. Non-Small Cell Lung Cancer. Br J Cancer. 2000; 83(4): 447-53.
5)
Sederholm C, Hillerdal G, Lamberg K, et al. Phase Ⅲ trial of gemcitabine plus carboplatin versus single-agent gemcitabine in the treatment of locally advanced or metastatic non-small-cell lung cancer: the Swedish Lung Cancer Study Group. J Clin Oncol. 2005; 23(33): 8380-8.
6)
Rosell R, Moran T, Queralt C, et al. Screening for epidermal growth factor receptor mutations in lung cancer. N Engl J Med. 2009; 361(10): 958-67.
7)
Kris MG, Johnson BE, Berry LD, et al. Using multiplexed assays of oncogenic drivers in lung cancers to select targeted drugs. JAMA. 2014; 311(19): 1998-2006.
7-1
ドライバー遺伝子変異/転座陽性

樹形図

Ⅳ期非小細胞肺癌:ドライバー遺伝子変異/転座陽性の治療方針 CQ45 CQ48 CQ48
Ⅳ期非小細胞肺癌:EGFR遺伝子変異陽性<二次治療以降> CQ55 CQ46 CQ48 CQ46 CQ47
Ⅳ期非小細胞肺癌:ALK遺伝子転座陽性<一次治療> CQ56 CQ57 CQ46 CQ47
Ⅳ期非小細胞肺癌:ALK遺伝子転座陽性<二次治療以降> CQ58 CQ48 CQ46 CQ47
Ⅳ期非小細胞肺癌:ROS1遺伝子転座陽性 CQ59 CQ46 CQ48 CQ46 CQ47
Ⅳ期非小細胞肺癌:BRAF遺伝子変異陽性 CQ60 CQ46 CQ48 CQ46 CQ47

7-1-1.遺伝子変異陽性の治療方針(非扁平上皮癌)

CQ45.

全身状態良好(PS 0-1)なドライバー遺伝子変異/転座陽性例に対する最適な一次治療は何か?

推 奨
ドライバー遺伝子(EGFR,ALK,ROS1,BRAF)変異/転座を有するPS 0-1の患者に,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕

解 説

 EGFR遺伝子変異,ALK遺伝子転座,ROS1遺伝子転座,BRAF遺伝子変異は癌発生の直接的な原因となるような遺伝子変異/転座であり,本ガイドラインではこれらの遺伝子をドライバー遺伝子と総称する。全身状態良好で,これらドライバー遺伝子の変異/転座を有する患者に対して,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害剤によるORRの増加,PFSの延長などの有効性が報告されている。EGFR遺伝子変異,ALK遺伝子転座では細胞障害性抗癌剤との比較試験が実施され,キナーゼ阻害剤のほうが有効性が明らかに高いことが報告されている1)~8)。EGFRのuncommon mutation(CQ54),ROS1遺伝子転座(CQ59),BRAF遺伝子変異陽性(CQ60)では患者数が少ないために,細胞障害性抗癌剤との第Ⅲ相試験は実施されていないが,第Ⅱ相試験や第Ⅲ相試験のサブセットではそれぞれの遺伝子変異/転座に応じたキナーゼ阻害剤によって高い有効性を示している9)~14)。米国で行われた前向き観察研究では,733例を対象に10遺伝子について解析し,466例(64%)にドライバー遺伝子変異/転座を認めたが,ドライバー遺伝子変異/転座があり,それを標的としたキナーゼ阻害剤を使用した260例のOS中央値は3.5年であったのに対し,ドライバー遺伝子変異/転座があったにもかかわらず,それを標的とした治療をしていない患者のOS中央値は2.4年であった(propensity score-adjusted HR 0.69,95%CI:0.53-0.9,P=0.006)15)。ドライバー遺伝子変異/転座に対する免疫チェックポイント阻害剤のデータは乏しいが,現時点でキナーゼ阻害剤の効果を上回るものではない(CQ50)。

 なお,これらの試験では後治療としてクロスオーバーが認められていることから,OSの差は示されておらず優先順位を付けることはできない。EGFR遺伝子変異陽性例の大規模研究において,一次から三次治療のエルロチニブ単剤のPFSに有意差を認めないことが報告されており16),EGFR-TKI単剤と細胞障害性抗癌剤の投与順序に関しては,現時点で明確な結論はない。ALK遺伝子転座陽性に対するALK-TKI(クリゾチニブ)単剤と細胞障害性抗癌剤を比較した第Ⅲ相試験では,長期OSデータの生存曲線においてALK-TKI群が上回っているものの有意差は示されなかった(HR 0.760,95%CI:0.548-1.053)17)。毒性についてはキナーゼ阻害剤で軽い傾向にあるものの,薬剤により毒性のプロファイルおよび程度が異なる。

 以上より,ドライバー遺伝子変異/転座を有するPS 0-1の患者には,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害剤が勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(27/27)
0% 0% 0% 0%

CQ46.

PS 2-4のドライバー遺伝子変異/転座陽性例に対する最適な一次治療は何か?

推 奨
  • a.
  • ドライバー遺伝子(EGFR,ALK,ROS1,BRAF)変異/転座を有するPS 2の患者に,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:96%〕

  • b.
  • ドライバー遺伝子(EGFR,ALK,ROS1,BRAF)変異/転座を有するPS 3-4の患者に,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害剤を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:93%〕

解 説
  • a.EGFR遺伝子変異陽性やALK遺伝子転座陽性の患者を対象とした細胞障害性抗癌剤との比較試験にもPS 2の患者が5~10%程度含まれており,PS 0-1と同等の有効性が示されている3)4)7)8)。また,EGFR遺伝子変異陽性の患者に対するゲフィチニブや,ALK遺伝子転座陽性の患者に対するアレクチニブはPS不良例に対する有効性が報告されている18)19)

     PS 2のEGFRのuncommon mutation,ROS1遺伝子転座,BRAF遺伝子変異陽性に関するデータは患者数が少ないために限られているが,EGFRやALKの結果を鑑みて,キナーゼ阻害剤による治療を行うよう推奨される。

     以上より,ドライバー遺伝子変異/転座を有するPS 2の患者には,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害剤が勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
96%
(27/28)
4%
(1/28)
0% 0% 0%
  • b.PS 3-4のEGFR遺伝子変異陽性の患者を対象としたゲフィチニブや,ALK遺伝子転座陽性の患者を対象としたアレクチニブはPS不良例に対する有効性が報告されており,患者数はそれぞれ22例,6例と少ないが,安全性について大きな問題は認められなかった18)19)。なお,ゲフィチニブの検討ではORRが66%,79%の患者でPSの改善を認めており,アレクチニブの検討では6例中のすべての症例でPSの改善を認めている。

     PS 3-4のROS1遺伝子転座,EGFRのuncommon mutation,BRAF遺伝子変異陽性に関するデータはPS 2よりもさらに限られていたり,データがないものもあるが,PS 2と同様に有効性が期待され得る。

     一方,キナーゼ阻害剤によって有害事象の頻度やプロファイルは様々であり,全身状態良好例においてさえも高い頻度で休薬・減量を必要とする薬剤が存在するため,PS 3-4で用いる場合はより一層の注意が必要である。

     以上より,ドライバー遺伝子変異/転座を有するPS 3-4の患者には,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害剤が勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
7%
(2/28)
93%
(26/28)
0% 0% 0%

CQ47.

75歳以上のドライバー遺伝子変異/転座陽性例に対する最適な一次治療は何か?

推 奨
ドライバー遺伝子(EGFR,ALK,ROS1,BRAF)変異/転座を有する75歳以上の患者に,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:96%〕

解 説

 75歳以上のEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌を対象とした国内でのゲフィチニブ単剤の第Ⅱ相試験において,ORR 74%,PFS中央値12.3カ月と若年者と同等の有効性と安全性が報告されている20)。エルロチニブ単剤については国内での第Ⅱ相試験において,75歳超と75歳以下で同等の有効性が示されている21)

 EGFRのuncommon mutation,ALK遺伝子転座,ROS1遺伝子転座,BRAF遺伝子変異に関して,75歳以上に対する有効性を示したサブグループのデータはないが,一般にキナーゼ阻害剤は毒性が細胞障害性抗癌剤と比べて軽いため,高齢者に対しても比較的安全に使用できると想定される。EGFR-TKIの研究結果を鑑みて,ALK遺伝子転座,ROS1遺伝子転座,BRAF遺伝子変異に対しては75歳以上でもキナーゼ阻害剤を行うことを考慮し得る。

 以上より,ドライバー遺伝子変異/転座を有する75歳以上の患者には,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害剤が勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。ただし,薬剤による毒性には若年者より一層の注意が必要である。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
96%
(27/28)
4%
(1/28)
0% 0% 0%

CQ48.

ドライバー遺伝子変異/転座陽性例に細胞障害性抗癌剤は勧められるか?

推 奨
ドライバー遺伝子変異/転座陽性例の患者においても,ドライバー遺伝子変異/転座のない患者で推奨される細胞障害性抗癌剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕

解 説

 ドライバー遺伝子変異/転座のある患者におけるキードラッグはキナーゼ阻害剤であるが,これまでに行われた第Ⅲ相試験では,多くの症例がキナーゼ阻害剤の前後で細胞障害性抗癌剤の投与を受けている。後解析ではあるが,これらの第Ⅲ相試験にて細胞障害性抗癌剤を投与されている患者の予後が良い傾向にあり23)24),日本の大規模観察研究においても同様の傾向が認められている25)。ドライバー遺伝子変異/転座陽性例のみを対象として細胞障害性抗癌剤とベストサポーティブケアを比較した試験は存在しないが,ドライバー遺伝子変異/転座陽性例は陰性例と比較して細胞障害性抗癌剤の効果が明らかに劣ることを示唆するデータはないため,ドライバー遺伝子変異/転座不明例やドライバー遺伝子変異/転座陽性例を含む非小細胞肺癌患者を対象とした過去の細胞障害性抗癌剤のエビデンスは本対象に適応できると考える(CQ65~67参照。ただし細胞障害性抗癌剤と免疫チェックポイント阻害剤の併用についてはCQ49参照)。

 以上より,ドライバー遺伝子変異/転座のある患者においても,いずれかのタイミングで細胞障害性抗癌剤を行うことが勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(28/28)
0% 0% 0% 0%

CQ49.

ドライバー遺伝子変異/転座陽性例に細胞障害性抗癌剤と免疫チェックポイント阻害剤の併用は勧められるか?

推 奨
ドライバー遺伝子変異/転座陽性の患者にプラチナ製剤併用療法と免疫チェックポイント阻害剤の併用療法を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

解 説

 一次治療における非扁平上皮非小細胞肺癌に対する,CBDCA+PTX+ベバシズマブ+アテゾリズマブ療法とCBDCA+PTX+ベバシズマブ療法を比較した第Ⅲ相試験(IMpower150試験)のEGFR遺伝子変異もしくはALK遺伝子転座陽性のサブグループ解析において,PFS中央値9.7カ月vs 6.1カ月(HR 0.59,95%CI:0.37-0.94)とアテゾリズマブ併用群が有意に延長を示したが26),OSの中間解析の時点では有意な延長を認めなかった(未到達vs 17.5カ月,HR 0.54,95%CI:0.29-1.03)27)。しかし,このサブグループ解析はプロトコールであらかじめ予定されていた解析ではなく,また前述した遺伝子変異/転座の有無は割付調整因子にも設定されておらず,解釈には注意が必要である。またGrade 3以上の有害事象はアテゾリズマブ併用群58.5% vs非併用群50.0%であり,下痢(20.6% vs 15.2%)や皮疹(13.3% vs 5.1%)など免疫関連有害事象を含めた毒性がアテゾリズマブ併用群で多い傾向にあった。1つの第Ⅲ相試験の探索的なサブグループ解析のみであり,現時点では,ドライバー遺伝子変異/転座陽性例にプラチナ製剤併用療法と免疫チェックポイント阻害剤の併用療法を勧めるだけの根拠が明確でないと判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 30%
(7/23)
65%
(15/23)
0% 4%
(1/23)

CQ50.

ドライバー遺伝子変異/転座陽性例に免疫チェックポイント阻害剤単独療法は勧められるか?

推 奨
ドライバー遺伝子変異/転座陽性例の患者に免疫チェックポイント阻害剤単独療法を勧めるだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

解 説

 一次治療におけるPD-L1陽性細胞50%以上の非小細胞肺癌に対するペムブロリズマブとプラチナ製剤併用療法の第Ⅲ相試験(KEYNOTE-024試験)において,EGFR遺伝子変異陽性,ALK遺伝子転座陽性の患者は除外されていた。二次治療において,免疫チェックポイント阻害剤(ニボルマブ,ペムブロリズマブ,アテゾリズマブ)とDTXの第Ⅲ相試験を統合解析した報告の中で,EGFR遺伝子変異陽性例における免疫チェックポイント阻害剤のDTXに対するOSはHR 1.11(95%CI:0.80-1.53,P=0.54)であり,免疫チェックポイント阻害剤は全体集団では有効性が示されているもののEGFR遺伝子変異陽性例において優れているという結果は示されていない28)。単施設の報告では,EGFR遺伝子変異陽性もしくはALK遺伝子転座陽性例における免疫チェックポイント阻害剤のORRは3.6%と低かった29)。このため,ドライバー遺伝子変異/転座陽性の患者に対する免疫チェックポイント阻害剤の効果は,ドライバー遺伝子変異/転座陰性の患者と比べて低い可能性がある。しかし,これらの報告は対象となった症例数の少ないサブグループの結果であることに加え,EGFR/ALK以外のドライバー遺伝子変異/転座陽性例の報告は少ない。

 以上より,ドライバー遺伝子変異/転座陽性例における免疫チェックポイント阻害剤の投与の可否を判断するだけの根拠が明確でないと判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 23%
(5/22)
73%
(16/22)
0% 5%
(1/22)
引用文献
1)
Mitsudomi T, Morita S, Yatabe Y, et al. Gefitinib versus cisplatin plus docetaxel in patients with non-small-cell lung cancer harbouring mutations of the epidermal growth factor receptor(WJTOG3405): an open label, randomised phase 3 trial. Lancet Oncol. 2010; 11(2): 121-8.
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7-1-2.EGFR遺伝子変異陽性(非扁平上皮癌)

EGFR遺伝子変異陽性の一次治療:エクソン19欠失またはL858R変異陽性

CQ51.

PS 0-1の場合,一次治療としてどの治療法が勧められるか?

推 奨
  • a.
  • オシメルチニブを行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B,合意率:83%〕

  • b.
  • ダコミチニブを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:83%〕

  • c.
  • ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕

  • d.
  • エルロチニブ+ベバシズマブを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:92%〕

  • e.
  • ゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセドを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:92%〕

解 説

 EGFR遺伝子変異の約90%を占めるエクソン19の欠失変異とエクソン21のL858R変異は,EGFR-TKIの感受性を高める。進行非小細胞肺癌を対象にしたEGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ)とプラチナ製剤併用療法の第Ⅲ相試験におけるEGFR遺伝子変異の患者はエクソン19の欠失変異とL858R変異に限定されているか1)~3),大部分を占めていた4)~6)。すべての試験において一貫してEGFR-TKIのプラチナ製剤併用療法に対するPFSの有意な延長が報告され,QOL指標の一部が改善することも示されている7)8)

  • a.EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,オシメルチニブ単剤と第一世代EGFR-TKI単剤(ゲフィチニブまたはエルロチニブ)を比較する第Ⅲ相試験(FLAURA試験)が行われ,主要評価項目であるPFSはHR 0.46(18.9カ月vs 10.2カ月,95%CI:0.37-0.57,P<0.001)と有意に延長することが示された9)。また,毒性においても,第一世代EGFR-TKI単剤では下痢57%,ざ瘡用皮疹48%,AST上昇25%,間質性肺疾患2%に対し,オシメルチニブでは下痢58%,ざ瘡用皮疹25%,AST上昇9%,間質性肺疾患4%であり,皮疹,肝機能障害に関してはオシメルチニブのほうが軽い傾向であった。

     以上より,治療効果と毒性のバランスを考慮し,EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性例の一次治療としてはオシメルチニブを行うよう推奨する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
83%
(19/23)
17%
(4/23)
0% 0% 0%
  • b.EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,ダコミチニブ単剤とゲフィチニブ単剤を比較する第Ⅲ相試験(ARCHER1050試験)が行われ,主要評価項目であるPFSはHR 0.59(14.7カ月vs 9.2カ月,95%CI:0.47-0.74,P<0.0001)と,ダコミチニブ単剤はゲフィチニブ単剤に対しPFSを有意に延長することが示された10)。副次評価項目であるOSは,HR 0.760(34.1カ月vs 26.8カ月,95%CI:0.582-0.993)という結果であった11)。しかし,ゲフィチニブでは下痢56%,爪囲炎20%,ざ瘡用皮疹29%に対し,ダコミチニブでは下痢87%,爪囲炎62%,ざ瘡用皮疹49%であり,毒性においてはダコミチニブが強かった。

     以上より,効果と毒性のバランスを考慮し,EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性例の一次治療としてはダコミチニブを行うよう提案する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
13%
(3/23)
83%
(19/23)
0% 4%
(1/23)
0%
  • c.第一世代のEGFR-TKI同士を直接比較した第Ⅲ相試験で優越性が示されたものはない12)。また,ランダム化第Ⅱ相試験(LUX-Lung7試験)では,アファチニブがゲフィチニブに対して,PFSの延長を示したものの,毒性はより高度であった13)

     以上より,EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性例の一次治療としてはゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブを行うよう提案する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 100%
(23/23)
0% 0% 0%
  • d.エルロチニブ+ベバシズマブは,国内で行われた第Ⅲ相試験(NEJ026試験)で,主要評価項目であるPFSのHR 0.605(16.9カ月vs 13.3カ月,95%CI:0.417-0.877,P=0.01573)であり,エルロチニブ単剤に対しPFSを有意に延長することが示された14)。毒性については,併用群でベバシズマブ関連の有害事象が認められている(Grade 3以上の高血圧が9%,蛋白尿が32%,出血性事象が26%など)。また同様のデザインで行われたランダム化第Ⅱ相試験(JO25567試験)では,PFSがHR 0.54(16.0カ月vs 9.7カ月,95%CI:0.36-0.79)と有意差が認められたが,OSにおいては有意差を認めなかった15)16)

     以上より,EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性例の一次治療としてはエルロチニブ+ベバシズマブを行うよう提案する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
4%
(1/23)
92%
(21/23)
0% 4%
(1/23)
0%
  • e.ゲフィチニブ+CBDCA+PEM併用療法とゲフィチニブ単剤療法の第Ⅲ相試験(NEJ009試験)で,主要評価項目の1つであるPFSのHR 0.484(20.9カ月vs 11.2カ月,95%CI:0.391-0.625,P<0.010)であったが,PFS2においてはHR 0.966(20.9カ月vs 20.7カ月,95%CI:0.766-1.220,P=0.774)と両群間で有意差を認めなかった。OSの解析においてはHR 0.695(52.2カ月vs 38.8カ月)という結果であった。毒性については,併用群でGrade 3以上の血液毒性の頻度が高い結果であった17)。(*PFS2は,ゲフィチニブ単剤療法群において,ゲフィチニブでPDになった後の次治療でPDになるまでの期間と,ゲフィチニブ+CBDCA+PEM併用療法でPDになるまでの期間の比較)

     以上より,EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性例の一次治療としてはゲフィチニブ+CBDCA+PEMを行うよう提案する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 92%
(21/23)
4%
(1/23)
4%
(1/23)
0%

CQ52.

PS 2の場合,一次治療としてどのEGFR-TKIが勧められるか?

推 奨
EGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブのいずれか)を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

解 説

 EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌を対象としたエルロチニブとプラチナ製剤併用療法の2つの第Ⅲ相試験において,PS 2は各々7%,14%含まれておりPS 0-1と同等の有効性が示されている2)3)。また,ゲフィチニブはPS不良例に対する有効性が報告されている18)19)。アファチニブ,ダコミチニブに関しては,PS 2に対する安全性と有効性の検討は十分ではない5)6)10)。オシメルチニブについても,PS 2に対する有効性の検討は十分でないが,ゲフィチニブやエルロチニブと比較しても間質性肺疾患以外の毒性は軽度であり,使用を考慮し得る9)

 以上より,PS 2の場合,EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性例の一次治療としては,毒性を考慮したうえで,ゲフィチニブまたはエルロチニブのいずれかのEGFR-TKIが勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(24/24)
0% 0% 0% 0%

CQ53.

PS 3-4の場合,一次治療としてどのEGFR-TKIが勧められるか?

推 奨
ゲフィチニブを行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:75%〕

解 説

 EGFR遺伝子高感受性変異陽性でPS 3-4が大多数を占める予後不良群を対象としてゲフィチニブの投与を評価する第Ⅱ相試験(NEJ001試験)が行われ,約80%の患者でPSが改善し,ORR 66%,OS 17.8カ月,PFS中央値6.5カ月と極めて良好な治療効果が得られた18)。一方,PS不良,男性,喫煙歴,既存の間質性肺炎,正常肺領域が少ない患者,心疾患を合併した患者などで間質性肺障害発症のリスクが高いことが報告されており20)21),慎重な検討も必要である。なお,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会では,特にPS 4に対する投与の是非について議論がなされた。このような集団においては益の評価項目としてPSや症状の改善は重要であり,EGFR-TKIによってこれらの改善が期待されるものであるのかを十分吟味する必要がある。

 以上より,PS 3-4の場合,EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性例の一次治療としては,ゲフィチニブが勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
75%
(18/24)
25%
(6/24)
0% 0% 0%

EGFR遺伝子変異陽性の一次治療:エクソン18-21変異(エクソン19欠失・L858R変異を除く)

CQ54.

PS 0-1の場合,一次治療としてどのEGFR-TKIが勧められるか?

推 奨
  • a.
  • エクソン18-21の遺伝子変異(エクソン19欠失・L858R変異・エクソン20の挿入変異・T790M変異以外)にはEGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ)による治療を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:87%〕

  • b.
  • エクソン20の挿入変異にはEGFR-TKIを行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:70%〕

  • c.
  • EGFR-TKI未治療のT790M変異にオシメルチニブを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:D,合意率:67%〕

*EGFR遺伝子変異の種類,検査法などの詳細については「肺癌患者におけるEGFR遺伝変異検査の手引き」(日本肺癌学会)を参照

*Uncommon mutationがある場合は,エクソン19の欠失とL858R変異が同時にあったとしても,uncommon mutationに分類する。

解 説
  • a.EGFR遺伝子変異の約90%をエクソン19の欠失変異,エクソン21のL858R変異が占める22)。その他の遺伝子変異はuncommon mutationと称され,エクソン18-21にわたり(E709X,G719X,S768I,P848L,L861Q,エクソン19の挿入変異など)が報告されている。これらの変異でもEGFR-TKIの感受性はあるがORRはやや劣ると報告されている23)。第Ⅲ相試験の多くは,これらの変異が除外されているが1)~3),含まれたとしても全体の1割程度にすぎない4)~6)

     T790Mとエクソン20の挿入変異以外のuncommon mutationでは,EGFR-TKIにて48~71%のORRが得られている23)24)。なかでもアファチニブのORRは71.1%であり,ゲフィチニブやエルロチニブより高い傾向にあった24)。アファチニブのデータは前向き試験の結果ではあるものの少数のサブセットであり,他のEGFR-TKIと差を付けるだけの根拠に乏しいと考えられた。

     以上より,エクソン18-21の遺伝子変異(エクソン19欠失・L858R変異・エクソン20の挿入変異・T790M変異以外)陽性例に対しては,ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブのいずれかのEGFR-TKIが勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
13%
(3/24)
87%
(21/24)
0% 0% 0%
  • b.エクソン20の挿入変異の報告は少なくEGFR-TKIのORRも10%弱であることから,一次治療としてEGFR-TKIが有効とは判断できない24)25)

     以上より,エクソン20の挿入変異陽性例に対しては,EGFR-TKIは勧められない。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行わないよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 4%
(1/27)
0% 26%
(7/27)
70%
(19/27)
  • c.EGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ)による治療の前にT790M変異陽性の患者の報告は少なく,前述のFLAURA試験でもT790M変異を認めたのは556例中5例のみであった。また,オシメルチニブの第Ⅰ相試験では未治療のT790M変異陽性の患者7例中6例でPRを認めている26)。EGFR-TKI未治療のT790M変異に対するデータは限られているが,既治療のT790M変異陽性に対するオシメルチニブの効果は第Ⅲ相試験でも示されており,未治療例においても効果が期待できると考えられる。

     以上より,EGFR-TKI未治療のT790M変異陽性例に対しては,オシメルチニブが勧められる。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
4%
(1/27)
67%
(18/27)
29%
(8/27)
0% 0%

EGFR遺伝子変異陽性の二次治療以降

CQ55.

一次治療EGFR-TKI耐性または増悪後のT790M変異陽性例に対する最適な二次治療は何か?

推 奨
一次治療EGFR-TKI耐性または増悪後のT790M変異陽性例に対するオシメルチニブによる治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B,合意率:100%〕

解 説

 オシメルチニブは,活性型EGFR遺伝子変異と耐性変異であるEGFR T790M変異の両方を阻害する第三世代EGFR-TKIである。第一・二世代のEGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ)による治療の後にT790M変異陽性となった患者を対象にオシメルチニブとプラチナ製剤併用療法(CDDPまたはCBDCA+PEM)を比較した第Ⅲ相試験(AURA3試験)が報告された27)。主要評価項目であるPFSの中央値は,オシメルチニブ群が10.1カ月,プラチナ製剤併用療法群が4.4カ月(HR 0.30,95%CI:0.23-0.41,P<0.001)であった。Grade 3以上の毒性もオシメルチニブ群が低かった(6% vs 34%)。

 以上より,一次治療EGFR-TKI耐性または増悪後のT790M変異陽性例に対しては,オシメルチニブが勧められる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(26/26)
0% 0% 0% 0%
引用文献
1)
Mitsudomi T, Morita S, Yatabe Y, et al; West Japan Oncology Group. Gefitinib versus cisplatin plus docetaxel in patients with non-small-cell lung cancer harbouring mutations of the epidermal growth factor receptor(WJTOG3405): an open label, randomised phase 3 trial. Lancet Oncol. 2010; 11(2): 121-8.
2)
Zhou C, Wu YL, Chen G, et al. Erlotinib versus chemotherapy as first-line treatment for patients with advanced EGFR mutation-positive non-small-cell lung cancer(OPTIMAL, CTONG-0802): a multicentre, open-label, randomised, phase 3 study. Lancet Oncol. 2011; 12(8): 735-42.
3)
Rosell R, Carcereny E, Gervais R, et al; Spanish Lung Cancer Group in collaboration with Groupe Français de Pneumo-Cancérologie and Associazione Italiana Oncologia Toracica. Erlotinib versus standard chemotherapy as first-line treatment for European patients with advanced EGFR mutation-positive non-small-cell lung cancer(EURTAC): a multicentre, open-label, randomised phase 3 trial. Lancet Oncol. 2012; 13(3): 239-46.
4)
Maemondo M, Inoue A, Kobayashi K, et al; North-East Japan Study Group. Gefitinib or chemotherapy for non-small-cell lung cancer with mutated EGFR. N Engl J Med. 2010; 362(25): 2380-8.
5)
Sequist LV, Yang JC, Yamamoto N, et al. Phase Ⅲ study of afatinib or cisplatin plus pemetrexed in patients with metastatic lung adenocarcinoma with EGFR mutations. J Clin Oncol. 2013; 31(27): 3327-34.
6)
Wu YL, Zhou C, Hu CP, et al. Afatinib versus cisplatin plus gemcitabine for first-line treatment of Asian patients with advanced non-small-cell lung cancer harbouring EGFR mutations(LUX-Lung 6): an open-label, randomised phase 3 trial. Lancet Oncol. 2014; 15(2): 213-22.
7)
Oizumi S, Kobayashi K, Inoue A, et al. Quality of life with gefitinib in patients with EGFR-mutated non-small cell lung cancer: quality of life analysis of North East Japan Study Group 002 Trial. Oncologist. 2012; 17(6): 863-70.
8)
Wu YL, Hirsh V, Sequist LV, et al. Does EGFR mutation type influence patient-reported outcomes in patients with advanced EGFR mutation-positive non-small-cell lung cancer? Analysis of two large, phase III studies comparing afatinib with chemotherapy(LUX-Lung 3 and LUX-Lung 6). Patient. 2018; 11(1): 131-41.
9)
Soria JC, Ohe Y, Vansteenkiste J, et al; FLAURA Investigators. Osimertinib in Untreated EGFR-Mutated Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2018; 378(2): 113-25.
10)
Wu YL, Cheng Y, Zhou X, et al. Dacomitinib versus gefitinib as first-line treatment for patients with EGFR-mutation-positive non-small-cell lung cancer(ARCHER 1050): a randomised, open-label, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2017; 18(11): 1454-66.
11)
Mok TS, Cheng Y, Zhou X, et al. Improvement in Overall Survival in a Randomized Study That Compared Dacomitinib With Gefitinib in Patients With Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer and EGFR-Activating Mutations. J Clin Oncol. 2018; 36(22): 2244-50.
12)
Yang JJ, Zhou Q, Yan HH, et al. A phase Ⅲ randomised controlled trial of erlotinib vs gefitinib in advanced non-small cell lung cancer with EGFR mutations. Br J Cancer. 2017; 116(5): 568-74.
13)
Park K, Tan EH, O’Byrne K, et al. Afatinib versus gefitinib as first-line treatment of patients with EGFR mutation-positive non-small-cell lung cancer(LUX-Lung 7): a phase 2B, open-label, randomised controlled trial. Lancet Oncol. 2016; 17(5): 577-89.
14)
Furuya N, Fukuhara T, Saito H, et al. Phase Ⅲ study comparing bevacizumab plus erlotinib to erlotinib in patients with untreated NSCLC harboring activating EGFR mutations: NEJ026. 2018 ASCO annual meeting. J Clin Oncol 36, 2018(suppl; abstr 9006).
15)
Seto T, Kato T, Nishio M, et al. Erlotinib alone or with bevacizumab as first-line therapy in patients with advanced non-squamous non-small-cell lung cancer harbouring EGFR mutations(JO25567): an open-label, randomised, multicentre, phase 2 study. Lancet Oncol. 2014; 15(11): 1236-44.
16)
Yamamoto N, Seto T, Nishio M, et al. Erlotinib plus bevacizumab(EB)versus erlotinib alone(E)as first-line treatment for advanced EGFR mutation-positive non-squamous non-small-cell lung cancer(NSCLC): Survival follow-up results of JO25567. 2018 ASCO annual meeting. J Clin Oncol 36, 2018(suppl; abstr 9007).
17)
Nakamura A, Inoue A, Morita S, et al. Phase Ⅲ study comparing gefitinib monotherapy(G)to combination therapy with gefitinib, carboplatin, and pemetrexed(GCP)for untreated patients(pts)with advanced non-small cell lung cancer(NSCLC)with EGFR mutations(NEJ009). 2018 ASCO annual meeting. J Clin Oncol 36, 2018(suppl; abstr 9005).
18)
Inoue A, Kobayashi K, Usui K, et al; North East Japan Gefitinib Study Group. First-line gefitinib for patients with advanced non-small-cell lung cancer harboring epidermal growth factor receptor mutations without indication for chemotherapy. J Clin Oncol. 2009; 27(9): 1394-400.
19)
Maemondo M, Minegishi Y, Inoue A, et al. First-line gefitinib in patients aged 75 or older with advanced non-small cell lung cancer harboring epidermal growth factor receptor mutations: NEJ 003 study. J Thorac Oncol. 2012; 7(9): 1417-22.
20)
Kudoh S, Kato H, Nishiwaki Y, et al. Interstitial lung disease in Japanese patients with lung cancer: a cohort and nested case-control study. Am J Respir Crit Care Med. 2008; 177(12): 1348-57.
21)
Ando M, Okamoto I, Yamamoto N, et al. Predictive factors for interstitial lung disease, antitumor response, and survival in non-small-cell lung cancer patients treated with gefitinib. J Clin Oncol. 2006; 24(16): 2549-56.
22)
Beau-Faller M, Prim N, Ruppert AM, et al. Rare EGFR exon 18 and exon 20 mutations in non-small-cell lung cancer on 10 117 patients: a multicentre observational study by the French ERMETIC-IFCT network. Ann Oncol. 2014; 25(1): 126-31.
23)
Wu JY, Yu CJ, Chang YC, et al. Effectiveness of tyrosine kinase inhibitors on“uncommon”epidermal growth factor receptor mutations of unknown clinical significance in non-small cell lung cancer. Clin Cancer Res. 2011; 17(11): 3812-21.
24)
Yang JC, Sequist LV, Geater SL, et al. Clinical activity of afatinib in patients with advanced non-small-cell lung cancer harbouring uncommon EGFR mutations: a combined post-hoc analysis of LUX-Lung 2, LUX-Lung 3, and LUX-Lung 6. Lancet Oncol. 2015; 16(7): 830-8.
25)
Yasuda H, Kobayashi S, Costa DB. EGFR exon 20 insertion mutations in non-small-cell lung cancer: preclinical data and clinical implications. Lancet Oncol. 2012; 13(1): e23-31.
26)
Ramalingam SS, Yang JC, Lee CK, et al. Osimertinib As First-Line Treatment of EGFR Mutation-Positive Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer. J Clin Oncol. 2018; 36(9): 841-9.
27)
Mok TS, Wu Y-L, Ahn M-J, et al. Osimertinib or Platinum-Pemetrexed in EGFR T790M-Positive Lung Cancer. N Engl J Med. 2017; 376(7): 629-40.

7-1-3.ALK遺伝子転座陽性(非扁平上皮癌)

ALK遺伝子転座陽性の一次治療

CQ56.

PS 0-1の場合,一次治療としてどのALK-TKIが勧められるか?

推 奨
  • a.
  • アレクチニブを行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕

  • b.
  • クリゾチニブを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:A,合意率:96%〕

  • c.
  • セリチニブを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:96%〕

解 説

 ALK-TKIとプラチナ製剤併用療法を比較した第Ⅲ相試験では,すべての試験において一貫してALK-TKIのプラチナ製剤併用療法に対するPFSの有意な延長が報告され,QOL指標の一部においてALK-TKIのほうがプラチナ製剤併用療法より優れることが示されている1)~3)。なお,ALK-TKI同士を比較した試験でOSの有意な延長効果を示した薬剤は現時点ではない。

  • a.ALK遺伝子転座陽性,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌を対象として,アレクチニブとクリゾチニブを比較した第Ⅲ相試験が2編報告され,国内で実施された試験(J-ALEX試験)ではPFSのHRが0.38(25.9カ月vs 10.2カ月,95%CI:0.26-0.55,P<0.0001),海外で行われた試験(ALEX試験)では,PFSのHRが0.47(未到達vs 11.1カ月,95%CI:0.34-0.65,P<0.001)と,ともにPFSを有意に延長することが示されている4)5)。またGrade 3以上の有害事象は,J-ALEX試験においてアレクチニブで32%,クリゾチニブで57%とアレクチニブのほうが低頻度であった6)。アレクチニブの主な毒性は,味覚障害,筋肉痛,皮疹であり,また他のキナーゼ阻害剤と同様に間質性肺炎に注意が必要である。

     以上より,治療効果と毒性のバランスを考慮し,ALK遺伝子転座陽性例の一次治療としてはアレクチニブを行うよう推奨する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(27/27)
0% 0% 0% 0%
  • b.ALK遺伝子転座陽性,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌を対象として,クリゾチニブとプラチナ製剤併用療法を比較した2つの第Ⅲ相試験が行われ,PROFILE1014試験ではPFSのHR 0.45(10.9カ月vs 7.0カ月,95%CI:0.35-0.60,P<0.0001),PROFILE1029試験ではPFSのHR 0.402(11.1カ月vs 6.8カ月,95%CI:0.286-0.565,P<0.001)であり,ともにクリゾチニブのプラチナ製剤併用療法に対する有意な延長が報告されている1)3)。クリゾチニブの主な毒性は,視覚障害,下痢や悪心などの消化器毒性,肝機能障害が挙げられる。

     以上より,治療効果と毒性のバランスを考慮し,ALK遺伝子転座陽性例の一次治療としてはクリゾチニブを行うよう提案する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 96%
(26/27)
0% 0% 4%
(1/27)
  • c.ALK遺伝子転座陽性,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌を対象として,セリチニブとプラチナ製剤併用療法を比較した第Ⅲ相試験(ASCEND-4試験)が行われ,主要評価項目であるPFSはHR 0.55(16.6カ月vs 8.1カ月,95%CI:0.42-0.73,P<0.0001)であり,セリチニブのプラチナ製剤併用療法に対する有意な延長が認められた。しかしGrade 3以上の有害事象は,セリチニブで65%,プラチナ製剤併用療法で49%とセリチニブのほうが高頻度であった。セリチニブの主な毒性は,下痢,悪心,嘔吐などの消化器毒性,肝機能障害,食思不振が認められている2)

     以上より,治療効果と毒性のバランスを考慮し,ALK遺伝子転座陽性例の一次治療としてはセリチニブを行うよう提案する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 96%
(26/27)
0% 0% 4%
(1/27)

CQ57.

PS 2-4の場合,一次治療としてどのALK-TKIが勧められるか?

推 奨
アレクチニブを行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

解 説

 ALK遺伝子転座陽性の患者に対するアレクチニブは,PS不良例に対する有効性が報告されている7)。患者数はPS 2:12例,PS 3:5例,PS 4:1例であるが,安全性に大きな問題はなかった。主要評価項目であるORRは72.2%,PFS中央値は10.1カ月であり,さらに83.3%の患者でPSの改善を認めた。

 以上より,PS 2-4の場合,ALK遺伝子転座陽性例の一次治療としては,アレクチニブが勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(27/27)
0% 0% 0% 0%

ALK遺伝子転座陽性の二次治療以降

CQ58.

一次治療ALK-TKI耐性または増悪後のPS 0-2に対する最適なALK-TKIは何か?

推 奨
  • a.
  • 初回ALK-TKIがクリゾチニブの場合は,アレクチニブを行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

  • b.
  • ロルラチニブを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:79%〕

  • c.
  • セリチニブを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

解 説
  • a.クリゾチニブ耐性後のALK遺伝子転座陽性進行非小細胞肺癌を対象とし,アレクチニブを投与する第Ⅱ相試験が行われ,ORR 48~50%,PFS中央値8.1~8.9カ月の良好な成績が報告されている8)9)。本邦で行われたクリゾチニブ既治療の23例に対しアレクチニブを投与した試験では,ORR 65%,PFS中央値は12.9カ月であった10)。また,クリゾチニブならびにプラチナ製剤併用療法施行後の症例に対し,アレクチニブと標準化学療法を比較する第Ⅲ相試験(ALUR試験)が行われ,主要評価項目であるPFSはHR 0.15(9.6カ月vs 1.4カ月,95%CI:0.08-0.29,P<0.001)であり,細胞障害性抗癌剤(DTX単剤またはPEM単剤)に対し,PFSを有意に延長することが示された11)

     以上より,一次治療ALK-TKI耐性または増悪後のPS 0-2の患者には,初回ALK-TKIがクリゾチニブの場合,アレクチニブによる治療が勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者2名を含む)/実施年度:2019年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(29/29)
0% 0% 0% 0%
  • b.ALK遺伝子転座陽性例を対象としたロルラチニブの第Ⅱ相試験が行われ,クリゾチニブ治療後に増悪した症例(59例)においては,ORR 69.5%,PFS中央値は未到達(95%CI:12.5カ月-未到達),クリゾチニブ以外のALK-TKI治療後に増悪した症例(28例)においては,ORR 32.1%,PFS中央値は5.5カ月,2レジメン以上のALK-TKI治療後に増悪した症例(111例)においては,ORR 38.7%,PFS中央値は6.9カ月,とそれぞれ成績が示されている。主な毒性は,高コレステロール血症,高トリグリセラロイド血症,浮腫であり,重篤な有害事象として認知機能障害(1%)が報告されている12)

     以上より,一次治療ALK-TKI耐性または増悪後のPS 0-2の患者には,ロルラチニブによる治療が勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うことを弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者2名を含む)/実施年度:2019年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
21%
(6/29)
79%
(23/29)
0% 0% 0%
  • c.クリゾチニブならびにプラチナ製剤併用療法後に増悪したALK遺伝子転座陽性例を対象とした第Ⅱ相試験(ASCEND-2試験)が行われ,ORR 38.6%,PFS中央値5.7カ月の成績が示されている13)。また同様の症例を対象に,セリチニブと標準化学療法を比較した第Ⅲ相試験(ASCEND-5試験)においては,主要評価項目であるPFSのHR 0.49(5.4カ月vs 1.6カ月,95%CI:0.36-0.67,P<0.001)であり,細胞障害性抗癌剤(DTX単剤またはPEM単剤)に対しPFSを有意に延長することが示された14)。さらに,前治療でアレクチニブ使用歴のある20症例に対するセリチニブの第Ⅱ相試験(ASCEND-9試験)が本邦で行われ,ORR 25%,PFS中央値 3.7カ月であった15)

     以上より,一次治療ALK-TKI耐性または増悪後のPS 0-2の患者には,セリチニブによる治療が勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者2名を含む)/実施年度:2019年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 100%
(29/29)
0% 0% 0%
引用文献
1)
Solomon BJ, Mok T, Kim DW, et al; PROFILE 1014 Investigators. First-line crizotinib versus chemotherapy in ALK-positive lung cancer. N Engl J Med. 2014; 371(23): 2167-77.
2)
Soria JC, Tan DSW, Chiari R, et al. First-line ceritinib versus platinum-based chemotherapy in advanced ALK-rearranged non-small-cell lung cancer(ASCEND-4): a randomised, open-label, phase 3 study. Lancet. 2017; 389(10072): 917-29.
3)
Wu YL, Lu S, Lu Y, et al. Results of PROFILE 1029, a phase III comparison of first-line crizotinib versus chemotherapy in East Asian patients with ALK-positive advanced non-small cell lung cancer. J Thorac Oncol. 2018; 13(10): 1539-48.
4)
Hida T, Nokihara H, Kondo M, et al. Alectinib versus crizotinib in patients with ALK-positive non-small-cell lung cancer(J-ALEX): an open-label, randomised phase 3 trial. Lancet. 2017; 390(10089): 29-39.
5)
Takiguchi Y, Hida T, Nokihara H, et al. Updated efficacy and safety of the j-alex study comparing alectinib(ALC)with crizotinib(CRZ)in ALK-inhibitor naïve ALK fusion positive non-small cell lung cancer(ALK+NSCLC). J Clin Oncol. 2017; 35(15 suppl 9064).
6)
Peters S, Camidge DR, Shaw AT, et al. Alectinib versus Crizotinib in Untreated ALK-Positive Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2017; 377(9): 829-38.
7)
Iwama E, Goto Y, Murakami H, et al. Alectinib for Patients with ALK Rearrangement-Positive Non-Small Cell Lung Cancer and a Poor Performance Status(Lung Oncology Group in Kyushu 1401). J Thorac Oncol. 2017; 12(7): 1161-6.
8)
Ou SH, Ahn JS, De Petris L, et al. Alectinib in Crizotinib-Refractory ALK-Rearranged Non-Small-Cell Lung Cancer: A Phase Ⅱ Global Study. J Clin Oncol. 2016; 34(7): 661-8.
9)
Shaw AT, Gandhi L, Gadgeel S, et al. Alectinib in ALK-positive, crizotinib-resistant, non-small-cell lung cancer: a single-group, multicentre, phase 2 trial. Lancet Oncol. 2016; 17(2): 234-42.
10)
Hida T, Nakagawa K, Seto T, et al. Pharmacologic study(JP28927)of alectinib in Japanese patients with ALK+ non-small-cell lung cancer with or without prior crizotinib therapy. Cancer Sci. 2016; 107(11): 1642-6.
11)
Novello S, Mazières J, Oh IJ, et al. Alectinib versus chemotherapy in crizotinib-pretreated anaplastic lymphoma kinase(ALK)-positive non-small-cell lung cancer: results from the phase III ALUR study. Ann Oncol. 2018; 29(6): 1409-16.
12)
Solomon BJ, Besse B, Bauer TM, et al. Lorlatinib in patients with ALK-positive non-small-cell lung cancer: results from a global phase 2 study. Lancet Oncol. 2018; 19(12): 1654-67.
13)
Crinò L, Ahn MJ, De Marinis F, et al. Multicenter PhaseⅡ Study of Whole-Body and Intracranial Activity With Ceritinib in Patients With ALK-Rearranged Non-Small-Cell Lung Cancer Previously Treated With Chemotherapy and Crizotinib: Results From ASCEND-2. J Clin Oncol. 2016; 34(24): 2866-73.
14)
Shaw AT, Kim TM, Crinò L, et al. Ceritinib versus chemotherapy in patients with ALK-rearranged non-small-cell lung cancer previously given chemotherapy and crizotinib(ASCEND-5): a randomised, controlled, open-label, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2017; 18(7): 874-86.
15)
Hida T, Seto T, Horinouchi H, et al. Phase II study of ceritinib in alectinib-pretreated patients with anaplastic lymphoma kinase-rearranged metastatic non-small-cell lung cancer in Japan: ASCEND-9. Cancer Sci. 2018; 109(9): 2863-72.

7-1-4.ROS1遺伝子転座陽性(非扁平上皮癌)

CQ59.

ROS1遺伝子転座陽性にクリゾチニブは勧められるか?

推 奨
クリゾチニブを行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

解 説
修正 #1

 ROS1遺伝子転座陽性の肺癌ではクリゾチニブの効果が複数報告されている。米国を中心とした試験では50例が参加し,ORRは72%,PFS中央値19.2カ月であった1)。東アジアで実施された試験では,127例が登録され,ORR 71.7%,PFS中央値15.9カ月であった2)。これらはクリゾチニブのALK阻害剤に対する効果と同等以上である。

 以上より,ROS1遺伝子転座陽性例に対しては,クリゾチニブが勧められる。エビデンスの強さはC,総合的評価ではドライバー遺伝子に対する分子標的薬の他剤の効果と併せて行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した(CQ45も参照のこと)。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(26/26)
0% 0% 0% 0%
引用文献
1)
Shaw AT, Ou SH, Bang YJ, et al. Crizotinib in ROS1-rearranged non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2014; 371(21): 1963-71.
2)
Wu YL, Yang JC, Kim DW, et al. Phase II study of crizotinib in East Asian patients with ROS1-positive advanced non-small-cell lung cancer. J Clin Oncol. 2018; 36(14): 1405-11.

7-1-5.BRAF遺伝子変異陽性(非扁平上皮癌)

CQ60.

BRAF遺伝子変異陽性にダブラフェニブ+トラメチニブは勧められるか?

推 奨
ダブラフェニブ+トラメチニブを行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:69%〕

解 説

 BRAF遺伝子変異陽性の肺癌ではダブラフェニブ単剤や,ダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法の効果が複数報告されている。Ⅳ期非小細胞肺癌のBRAF V600E遺伝子変異陽性の既治療例57例を対象とした,ダブラフェニブとトラメチニブの併用療法の第Ⅱ相試験が行われ,主要評価項目のORRは66.7%,PFS中央値は9.7カ月であった1)。Ⅳ期非小細胞肺癌のBRAF V600E遺伝子変異陽性の未治療例36例を対象とした,ダブラフェニブとトラメチニブの併用療法の第Ⅱ相試験では,主要評価項目のORRは64%,PFS中央値は10.9カ月であった2)。ただし両試験に登録された日本人の症例数が限られている。ダブラフェニブとトラメチニブの併用療法では,主な毒性として発熱,肝機能障害,心駆出率減少が認められている。

 以上より,BRAF遺伝子変異陽性例に対しては,ダブラフェニブ+トラメチニブが勧められる。エビデンスの強さはC,総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
[1回目]
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
58%
(15/26)
42%
(11/26)
0% 0% 0%
[2回目]
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
69%
(18/26)
31%
(8/26)
0% 0% 0%
引用文献
1)
Planchard D, Besse B, Groen HJM, et al. Dabrafenib plus trametinib in patients with previously treated BRAF(V600E)-mutant metastatic non-small cell lung cancer: an open-label, multicentre phase 2 trial. Lancet Oncol. 2016; 17(7): 984-93.
2)
Planchard D, Smit EF, Groen HJM, et al. Dabrafenib plus trametinib in patients with previously untreated BRAF(V600E)-mutant metastatic non-small-cell lung cancer: an open-label, phase 2 trial. Lancet Oncol. 2017; 18(10): 1307-16.

7-1-6.NTRK遺伝子転座陽性

CQ61.

NTRK遺伝子転座陽性*にエヌトレクチニブは勧められるか?

推 奨
エヌトレクチニブを行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:D,合意率:97%〕

*主にがんの網羅的遺伝子検査で検索されるため,実施可能な施設は限られる(2019年10月時点)。

解 説

 NTRK遺伝子転座陽性の固形癌に対して,エヌトレクチニブを評価する試験が癌腫横断的に行われた。2つの第Ⅰ相試験(ALKA-372-001試験,STARTRK-1試験)では,有効性評価が可能な症例のうちNTRK遺伝子転座陽性例の3例中1例にNSCLCが含まれており,奏効が得られている1)。前述した第Ⅰ相試験および第Ⅱ相試験(STARTRK-2試験)の統合解析では,全体で54例のNTRK遺伝子転座陽性固形癌が登録され,主要評価項目であるORRは57.4%,PFS中央値は11.2カ月であった2)。そのうちNSCLCは10例(19%)含まれており,ORRは70%,PFS中央値は14.9カ月であった3)。ただし,前述した臨床試験における日本人の登録症例数は限られている。エヌトレクチニブの主な毒性は,味覚障害,便秘,下痢などの消化器毒性,倦怠感,浮腫,クレアチニン上昇,ヘモグロビン低下が挙げられる。

 以上より,NTRK遺伝子変異陽性例に対しては,エヌトレクチニブが勧められる。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者2名を含む)/実施年度:2019年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
66%
(19/29)
34%
(10/29)
0% 0% 0%
引用文献
1)
Drilon A, Siena S, Ou SI, et al. Safety and antitumor activity of the multitargeted pan-TRK, ROS1, and ALK inhibitor entrectinib: combined results from two phase I trials(ALKA-372-001 and STARTRK-1). Cancer Discov. 2017; 7(4): 400-9.
2)
Demetri GD, Paz-Ares L, Farago AF, et al. LBA17: Efficacy and safety of entrectinib in patients with NTRK fusion-positive(NTRK-fp)tumors: pooled analysis of STARTRK-2, STARTRK-1 and ALKA-372-001. Ann Oncol. 2018; 29(suppl_8): viii713.
3)
Paz-Ares L, Doebele RC, Farago AF, et al. 113O: Entrectinib in NTRK fusion-positive non-small cell lung cancer(NSCLC): Integrated analysis of patients(pts)enrolled in STARTRK-2, STARTRK-1 and ALKA-372-00. Annals of Oncology, 2019; 30(suppl 2): mdz063.011

7-1-7.遺伝子変異/転座陽性(扁平上皮癌)

CQ62.

扁平上皮癌で遺伝子変異/転座陽性であった場合に,チロシンキナーゼ阻害剤は推奨できるか?

推 奨
遺伝子変異陽性の扁平上皮癌患者に対して,それぞれのキナーゼ阻害剤を使用するよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:D,合意率:85%〕

解 説

 EGFR遺伝子変異陽性の扁平上皮癌患者を対象としたEGFR-TKIを用いた比較試験は存在せず,非小細胞癌患者を対象とした前向き試験のサブグループ,それらを集めたpooled analysisのみ存在する。前向き試験から治療成績を確認できた11例のORRは9.1%であり,その効果は限定的であったが,エクソン18-21の遺伝子変異(エクソン19欠損・L858R変異)以外の変異症例が3例以上は含まれているため,有効性の解釈に注意が必要である1)~3)。後ろ向き研究からはORR 25~32%,PFSは1.4~3.9カ月と報告されているが症例数は少ない1)4)5)。また,扁平上皮癌患者のEGFR uncommon mutation,ALK遺伝子転座陽性,ROS1遺伝子転座陽性,BRAF遺伝子変異陽性患者を対象とした臨床試験は存在しない。

 以上より,ドライバー遺伝子変異/転座陽性の扁平上皮癌患者に対する,それぞれのキナーゼ阻害剤の効果は限定的であるが,奏効例も存在するため行うことが勧められる。エビデンスの強さはD,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
15%
(4/26)
85%
(22/26)
0% 0% 0%
引用文献
1)
Shukuya T, Takahashi T, Kaira R, et al. Efficacy of gefitinib for non-adenocarcinoma non-small-cell lung cancer patients harboring epidermal growth factor receptor mutations: a pooled analysis of published reports. Cancer Sci. 2011; 102(5): 1032-7.
2)
Yamada K, Takayama K, Kawakami S, et al. PhaseⅡ trial of erlotinib for Japanese patients with previously treated non-small-cell lung cancer harboring EGFR mutations: results of Lung Oncology Group in Kyushu(LOGiK0803). Jpn J Clin Oncol. 2013; 43(6): 629-35.
3)
Yamada K, Aono H, Hosomi Y, et al. A prospective, multicentre phaseⅡ trial of low-dose erlotinib in non-small cell lung cancer patients with EGFR mutations pretreated with chemotherapy: Thoracic Oncology Research Group 0911. Eur J Cancer. 2015; 51(14): 1904-10.
4)
Hata A, Katakami N, Yoshioka H. How sensitive are epidermal growth factor receptor-tyrosine kinase inhibitors for squamous cell carcinoma of the lung harboring EGFR gene-sensitive mutations? J Thorac Oncol. 2013; 8(1): 89-95.
5)
Xu J, Zhang Y, Jin B, et al. Efficacy of EGFR tyrosine kinase inhibitors for non-adenocarcinoma lung cancer patients harboring EGFR-sensitizing mutations in China. J Cancer Res Clin Oncol. 2016; 142(6): 1325-30.
7-2
PD-L1陽性細胞50%以上

樹形図

Ⅳ期非小細胞肺癌:PD-L1陽性細胞50%以上の治療方針 CQ63 CQ64 CQ74

CQ63.

全身状態良好(PS 0-1)なPD-L1陽性細胞50%以上に対する一次治療において薬物療法は勧められるか?

推 奨
  • a.
  • ペムブロリズマブ単剤療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:96%〕

  • b.
  • プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B,合意率:69%〕

解 説
  • a.EGFR遺伝子変異やALK遺伝子転座のない,PD-L1陽性細胞50%以上のPS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,ペムブロリズマブ単剤とプラチナ製剤併用療法を比較する第Ⅲ相試験(KEYNOTE-024試験)が行われた1)。中間解析において,主要評価項目であるPFSはHR 0.50(10.3カ月vs 6.0カ月,95%CI:0.37-0.68,P<0.001),OSは更新された報告において,HR 0.63(30.0カ月vs 14.2カ月,95%CI:0.47-0.86,P=0.002)であり2),ペムブロリズマブ単剤はプラチナ製剤併用療法に対しPFS,OSを有意に延長することが示された。また,ORRは44.8% vs 27.8%であり,ペムブロリズマブ単剤が有意に優れていた。主な毒性は,ペムブロリズマブ群で下痢や倦怠感,発熱,プラチナ製剤併用療法群で貧血,悪心,倦怠感などであり,Grade 3以上の毒性はペムブロリズマブ群で有意に少なかった(26.6% vs 53.3%)。一方,ペムブロリズマブ群で甲状腺機能障害,肺臓炎,皮疹,大腸炎などの免疫関連の毒性が報告されGrade 3以上は9.7%と報告されており,それらの毒性管理には注意が必要である。またQOLにおいて,ペムブロリズマブ群がプラチナ製剤併用療法に比べて有意に肺癌による症状が悪化するまでの期間を遅らせることが報告されている3)

     さらに,前述した試験と同様のデザインで,PD-L1陽性細胞1%以上を対象として,ペムブロリズマブ単剤とプラチナ製剤併用療法を比較する第Ⅲ相試験(KEYNOTE-042試験)が行われた4)。PD-L1陽性細胞50%以上のサブグループにおける解析では,主要評価項目であるOSはHR 0.69(20.0カ月vs 12.2カ月,95%CI:0.56-0.85,P=0.0003)とペムブロリズマブ単剤はプラチナ製剤併用療法に対しOSを有意に延長することが示され, また, PFSはHR 0.81(7.1カ月vs 6.4カ月,95%CI:0.67-0.99)であり,PFSも延長することが示された。また,ORRは39% vs 32%であった。主な毒性は,前述するKEYNOTE-024試験と同様であり,これらの毒性管理には注意が必要である。

     なお,75歳以上の症例において,有効性,安全性に関する報告は少ない。

     以上より,PD-L1陽性細胞50%以上のⅣ期非小細胞肺癌(EGFR遺伝子変異陰性およびALK遺伝子転座陰性),PS 0-1症例に対してペムブロリズマブ単剤療法を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
96%
(26/27)
4%
(1/27)
0% 0% 0%
  • b-1.非扁平上皮癌

     EGFR遺伝子変異やALK遺伝子転座のない,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しペムブロリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(KEYNOTE-189試験)が行われた5)。中間解析において,主要評価項目であるPFSおよびOSは,それぞれHR 0.52(8.8カ月vs 4.9カ月,95%CI:0.43-0.64,P<0.0001),HR 0.49(中央値に到達せずvs 11.3カ月,95%CI:0.38-0.64,P<0.0001)であり,プラチナ製剤併用療法に対するペムブロリズマブの上乗せはPFS,OSを有意に延長することが示された。また,PD-L1陽性細胞50%以上のサブグループ解析においても,PFSはHR 0.36(9.4カ月vs 4.7カ月,95%CI:0.25-0.52,P<0.0001),OSはHR 0.42(中央値に到達せずvs 10.0カ月,95%CI:0.26-0.68,P=0.0001)と有意に生存を延長した。主な毒性は,ペムブロリズマブ併用群で悪心,貧血,倦怠感,便秘などであり,Grade 3以上の毒性はプラチナ製剤併用療法群と比較し頻度は同等であった(67.2% vs 65.8%)。ただし,ペムブロリズマブ併用群で急性腎障害が5.2%にみられることに加え,Grade 3以上の免疫関連の毒性が8.9%と報告され,そのうち肺臓炎により3例の治療関連死が報告されており,それらの毒性管理には注意が必要である。

     PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しアテゾリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(IMpower150試験)が行われ,CBDCA/PTX/ベバシズマブ+アテゾリズマブ併用療法(B群)とCBDCA/PTX/ベバシズマブ療法(C群)の比較結果が報告された6)。主要評価項目はドライバー遺伝子変異/転座陰性集団におけるPFSおよびOSであった。なお,本試験におけるPD-L1発現は,TCに加え,ICをそれぞれ0~3の4段階で測定し評価している。C群に対するB群のPFSは,HR 0.62(8.3カ月vs 6.8カ月,95%CI:0.52-0.74,P<0.001),OSはHR 0.78(19.2カ月vs 14.7カ月,95%CI:0.64-0.96,P=0.02)であり,プラチナ製剤+ベバシズマブ併用療法に対するアテゾリズマブの上乗せはPFS,OSを有意に延長することが示された。また,PD-L1発現が「TC3 or IC3」のサブグループ解析においても,PFSはHR 0.39(12.6カ月vs 6.8カ月,95%CI:0.25-0.60,P<0.0001),OSはHR 0.70(25.2カ月vs 15.0カ月,95%CI:0.43-1.13)と,PD-L1が高発現症例において良好な結果を示した。主な毒性は,アテゾリズマブ併用群で食思不振,末梢神経障害,悪心,倦怠感などであり,Grade 3以上の毒性はプラチナ製剤+ベバシズマブ併用療法群と比較し頻度は高い傾向を認めた(58.5% vs 50.0%)。また免疫関連毒性として,アテゾリズマブ併用群で皮疹,肝機能障害,甲状腺機能障害,肺臓炎,大腸炎が報告されており,免疫関連の毒性管理には注意が必要である。

  • b-2.扁平上皮癌

     PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しペムブロリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(KEYNOTE-407試験)が行われた7)。559例が1:1でランダム化され,主要評価項目であるPFSの332例のイベントが確認された時点の中間解析が報告された。PFSはHR 0.56(6.4カ月vs 4.8カ月,95%CI:0.45-0.70,P<0.0001)と,プラチナ製剤併用療法に対するペムブロリズマブの上乗せはPFSを有意に延長することが示された。もう1つの主要評価項目であるOSは,観察期間中央値が7.8カ月と不十分な観察期間ではあるがHR 0.64(15.9カ月vs 11.3カ月,95%CI:0.49-0.85,P=0.0008)と,OSもまた有意に延長することが示された。PD-L1陽性細胞50%以上のサブグループ解析においても,PFSはHR 0.37(8.0カ月vs 4.2カ月,95%CI:0.24-0.58),OSはHR 0.64(中央値に到達せずvs中央値に到達せず,95%CI:0.37-1.10)と良好な傾向がみられた。主な毒性は,ペムブロリズマブ併用群で貧血,食思不振,好中球減少,悪心などであり,Grade 3以上の毒性はプラチナ製剤群と比較し頻度は同等であった(69.8% vs 68.2%)。ただし,ペムブロリズマブ併用群で肺臓炎の発症率(6.5% vs 2.1%)と治療関連死亡(3.6% vs 2.1%)は高い傾向を認めており,毒性管理には注意が必要である。

     PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しアテゾリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(IMpower131試験)が行われ,CBDCA/nab-PTX+アテゾリズマブ併用療法(B群)とCBDCA/nab-PTX療法(C群)の比較結果が報告された8)。主要評価項目であるC群に対するB群のPFSは,HR 0.71(6.3カ月vs 5.6カ月,95%CI:0.60-0.85,P=0.001)であり,プラチナ製剤併用療法に対するアテゾリズマブの上乗せはPFSを有意に延長することが示された。ただし,もう1つの主要評価項目であるOSは,中間解析においてHR 0.96(14.0カ月vs 13.9カ月,95%CI:0.78-1.18,P=0.6931)と,OSの延長は示されなかった。またPD-L1発現が「TC3 or IC3」のサブグループ解析において,PFSはHR 0.44(10.1カ月vs 5.5カ月,95%CI:0.27-0.71),OSはHR 0.56(23.6カ月vs 14.1カ月,95%CI:0.32-0.99)と,PD-L1が高発現症例において良好な結果を示した。Grade 3以上の毒性は,プラチナ製剤群と比較し頻度は高い傾向が認められた(69% vs 58%)(2019年10月時点において扁平上皮癌に対するCBDCA/nab-PTX+アテゾリズマブ併用療法は,本邦で保険適用となっていない)。

     75歳以上の症例においては,前述する4つの第Ⅲ相試験5)~8)においてある一定数が登録されているが,安全性のデータは示されていないためその投与には慎重を期すべきである。なお,アテゾリズマブの上乗せを評価した2試験においては,75歳以上のサブグループ解析が報告されている。IMpower150試験(非扁平上皮癌)では,75歳以上においてPFS:HR 0.78(9.7カ月vs 6.8カ月)6),IMpower131試験(扁平上皮癌)では,75歳以上においてPFS:HR 0.51(7.0カ月vs 5.6カ月,95%CI:0.30-0.84)8)と,ともに併用療法が有効である傾向が示されているが,OSの結果は示されていない。

     以上より,PD-L1陽性細胞50%以上のⅣ期非小細胞肺癌(EGFR遺伝子変異陰性およびALK遺伝子転座陰性),PS 0-1症例に対してプラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤を行うよう勧められる。ただし,ペムブロリズマブ単剤と比較したデータはなく,プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤がペムブロリズマブ単剤より優れているかどうかは明らかでない。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
69%
(18/26)
31%
(8/26)
0% 0% 0%

 なお,プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤の治療レジメンは有効性および安全性の観点から非扁平上皮癌においてはCDDP/CBDCA+PEM+ペムブロリズマブもしくはCBDCA+PTX+ベバシズマブ+アテゾリズマブ,扁平上皮癌においてはCBDCA+PTX/nab-PTX+ペムブロリズマブが推奨される。詳細については,項末のレジメンを参照のこと。

CQ64.

PS 2のPD-L1陽性細胞50%以上に対する一次治療において薬物療法は勧められるか?

推 奨
  • a.
  • 細胞障害性抗癌剤を行うよう推奨もしくは提案する。

〔単剤/推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕

〔カルボプラチン併用療法/推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:100%〕

  • b.
  • ペムブロリズマブ単剤療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:D,合意率:85%〕

  • c.
  • プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤を行うよう推奨するだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

解 説
  • a.CQ67参照

  • b.KEYNOTE-024試験では,適格基準としてPS 0-1を満たす患者のみが登録されており1),PS 2のⅣ期非小細胞肺癌の一次治療でペムブロリズマブ単剤療法を投与した際の臨床成績,安全性は不明である。そのため,ペムブロリズマブ単剤療法を一次治療において推奨するだけの根拠が明確ではない。一方でPS 2に対する細胞障害性抗癌剤のエビデンスも十分とはいえず,有効性は限定的で毒性も懸念される。ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会では,PD-1/PD-L1阻害剤は細胞障害性抗癌剤と比較して重篤な毒性の頻度が低いことから,益と害のバランスを考慮し治療選択肢として加えてよいという意見が多くみられた。

     以上より,PS 2のPD-L1陽性細胞50%以上のⅣ期非小細胞肺癌に対し投与の是非を慎重に検討したうえで,一次治療においてペムブロリズマブ単剤療法の投与を行うことをエキスパートオピニオンとして提案する。エビデンスの強さはD,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 85%
(22/26)
15%
(4/26)
0% 0%
  • c.プラチナ製剤併用療法に対しPD-1/PD-L1阻害剤の上乗せを評価した4つの第Ⅲ相試験5)~8)では,適格基準としてPS 0-1を満たす患者のみが登録されており,PS 2のⅣ期非小細胞肺癌の一次治療でプラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤を投与した際の臨床成績および安全性は不明である。また,PS 2症例は細胞障害性抗癌剤の毒性も懸念される患者群であり,さらにPD-1/PD-L1阻害剤を上乗せすることについては安全性における懸念を払拭できない。

     以上より,PS 2のPD-L1陽性細胞50%以上のⅣ期非小細胞肺癌に対し一次治療においてプラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤を推奨するだけの根拠が明確ではなく,推奨度決定不能とした。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 69%
(18/26)
27%
(7/26)
4%
(1/26)
引用文献
1)
Reck M, Rodríguez-Abreu D, Robinson AG, et al. Pembrolizumab versus Chemotherapy for PD-L1-Positive Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2016; 375(19): 1823-33.
2)
Reck M, Rodríguez-Abreu D, Robinson AG, et al. Updated Analysis of KEYNOTE-024: pembrolizumab versus platinum-based chemotherapy for advanced non-small-cell lung cancer with PD-L1 tumor proportion score of 50% or greater. J Clin Oncol. 2019; 37(7): 537-46.
3)
Brahmer JR, Rodríguez-Abreu D, Robinson AG, et al. Health-related quality-of-life results for pembrolizumab versus chemotherapy in advanced, PD-L1-positive NSCLC(KEYNOTE-024): a multicentre, international, randomised, open-label phase 3 trial. Lancet Oncol. 2017; 18(12): 1600-9.
4)
Mok TSK, Wu YL, Kudaba I, et al. Pembrolizumab versus chemotherapy for previously untreated, PD-L1-expressing, locally advanced or metastatic non-small-cell lung cancer(KEYNOTE-042): a randomised, open-label, controlled, phase 3 trial. Lancet. 2019; 393(10183): 1819-30.
5)
Gandhi L, Rodríguez-Abreu D, Gadgeel S, et al; KEYNOTE-189 Investigators. Pembrolizumab plus Chemotherapy in Metastatic Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2018; 378(22): 2078-92.
6)
Socinski MA, Jotte RM, Cappuzzo F, et al; IMpower150 Study Group. Atezolizumab for First-Line Treatment of Metastatic Nonsquamous NSCLC. N Engl J Med. 2018; 378(24): 2288-301.
7)
Paz-Ares LG, Luft A, Tafreshi A, et al. Phase 3 study of carboplatin-paclitaxel/nab-paclitaxel(Chemo)with or without pembrolizumab(Pembro)for patients(Pts)with metastatic squamous(Sq)non-small cell lung cancer(NSCLC). 2018 ASCO Annual Meeting. J Clin Oncol. 2018; 36(suppl; abstr 105).
8)
Jotte RM, Cappuzzo F, Vynnychenko I, et al. IMpower131: Primary PFS and safety analysis of a randomized phaseⅢ study of atezolizumab+carboplatin+paclitaxel or nab-paclitaxel vs carboplatin+nab-paclitaxel as 1L therapy in advanced squamous NSCLC. 2018 ASCO Annual Meeting. J Clin Oncol. 2018; 36(suppl; abstr LBA9000).
7-3
ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1陽性細胞50%未満,もしくは不明

樹形図

Ⅳ期非小細胞肺癌:ドライバー遺伝子変異/転座陰性の二次治療以降 CQ75 CQ74 CQ75 CQ74

7-3-1.ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1陽性細胞50%未満,もしくは不明の一次治療

CQ65.

ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1陽性細胞50%未満,もしくは不明のPS 0-1,75歳未満に対する一次治療において細胞障害性抗癌剤は勧められるか?

推 奨
プラチナ製剤と第三世代以降の細胞障害性抗癌剤併用を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:93%〕

*PEMは非扁平上皮癌への投与が推奨される。

*ネダプラチン(NDP)は扁平上皮癌への投与が推奨される。

解 説

 メタアナリシスによってプラチナ製剤(CDDPもしくはCBDCA)を含む治療が緩和治療に対して有意にOSの延長に寄与していることが示されている1)。また,プラチナ製剤併用の薬剤を第二世代と第三世代細胞障害性抗癌剤で比較したメタアナリシスにおいて,後者がORRで12%,1年生存率で6%優ると報告されている2)。本邦では,4種類の第三世代細胞障害性抗癌剤とプラチナ製剤併用の第Ⅲ相試験(FACS試験)の結果が報告されており,いずれの効果も同等であった3)

 新規薬剤においても,複数の第Ⅲ相試験によって有効性が示されているが,いくつかの薬剤は特定の組織型に対してのみ有効性が示されている。PEMはそのような薬剤の1つであり,非扁平上皮癌に対して用いられる。CDDP+PEMとCDDP+GEMの第Ⅲ相試験(JMDB試験)が行われ,全体では同等の効果であったが組織型による差が認められ,非扁平上皮癌においてはCDDP+PEM群でOSの有意な延長(11.8カ月vs 10.4カ月,HR 0.81,95%CI:0.70-0.94,P=0.005)を認めた一方で,扁平上皮癌においてはCDDP+PEM群でPFS(4.4カ月vs 5.5カ月,HR 1.36,95%CI:1.12-1.65,P=0.002),OS(9.4カ月vs 10.8カ月,HR 1.23,95%CI:1.00-1.51,P=0.05)ともに劣っていた4)。サブグループ解析ではあるが,有効性ならびに毒性の観点から非扁平上皮癌に対するCDDP+PEMは至適レジメンの1つである。また,CBDCA+PEMはOSを主要評価項目とした比較試験がないものの,患者が自覚する毒性がCDDPよりも軽度であることから実地臨床では頻用されている。CBDCA+PEMとCBDCA+GEM,CBDCA+DTXやCBDCA+PTX+ベバシズマブとの比較試験では,OSや主要評価項目であった有害事象などで優越性を示せていない5)~7)。しかしながら,CBDCA+PTX+ベバシズマブと比較しても生存曲線に大きな差はなく7),ベバシズマブを併用した試験ではCBDCA+PTX+ベバシズマブよりPFSが上回る傾向にある8)。以上より,CBDCA+PEMを行うことは許容される。

 扁平上皮癌に対しては,ネダプラチン(NDP)+DTXとCDDP+DTXの比較第Ⅲ相試験が本邦で実施され,OSの有意な延長が認められた(13.6カ月vs 11.4カ月,HR 0.81,95%CI:0.65-1.02,P=0.037)。毒性はプロファイルが異なり,NDP群では白血球減少,好中球減少,血小板減少が多く,CDDP群では悪心,倦怠感,低ナトリウム血症,低カリウム血症が多かった。本邦において第三世代以降の細胞障害性抗癌剤併用で唯一の優越性が示された有望なレジメンである9)

 その他,S-1の有効性を評価した2編の第Ⅲ相試験(LETS試験,CATS試験)では,CBDCA+S-1はCBDCA+PTXに対して,CDDP+S-1はCDDP+DTXに対して非劣性が示された10)11)。ヒト血清アルブミンとPTXを結合させたナノ粒子製剤であるnab-PTXとCBDCAの併用療法はCBDCA+PTXとの第Ⅲ相試験において,有意にORRの上昇を認めた(33.0% vs 25.0%)12)。これらのレジメンは組織型にかかわらず使用可能である。

 以上より,75歳未満,PS 0-1症例に対して,プラチナ製剤と第三世代以降の細胞障害性抗癌剤併用を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。各レジメンに固有の毒性プロファイルが報告されており,これらも踏まえて選択するべきと考えられる。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
93%
(25/27)
7%
(2/27)
0% 0% 0%

CQ66.

ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1陽性細胞50%未満,もしくは不明のPS 0-1,75歳以上に対する一次治療において細胞障害性抗癌剤は勧められるか?

推 奨
〈非扁平上皮癌〉
  • a.
  • カルボプラチン併用療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:85%〕

  • b.
  • 第三世代細胞障害性抗癌剤単剤を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:A,合意率:85%〕

〈扁平上皮癌〉
  • c.
  • 第三世代細胞障害性抗癌剤単剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:63%〕

  • d.
  • カルボプラチン併用療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:78%〕

*PEMは非扁平上皮癌への投与が推奨される。

解 説

 一次薬物療法の第Ⅲ相試験と術後補助療法を対象とした検討では,65歳以上と以下で治療効果の差は認めず,暦年齢よりも日常生活自立度が予後に関係していた13)。また,80歳以上でもPS 0-1と良好なものは80歳以下と比べて,OSにおいて80歳以上で7カ月,80歳未満で11カ月(P=0.20)とOSに有意な差がなく,毒性についても明らかな差を認めなかったと報告されている14)。以上より,暦年齢のみで薬物療法の対象外とするべきではない。

非扁平上皮癌

  • a.高齢者を対象とした第三世代細胞障害性抗癌剤単剤とプラチナ製剤併用を比較した第Ⅲ相試験が2編報告され,両試験とも登録された患者の多くが75歳以上であった。本邦では第Ⅲ相試験(JCOG0803/WJOG4307L試験)が行われ,weekly CDDP+DTXとDTX単剤が比較された。この試験では,中間解析において併用療法が単剤療法の成績を上回らないことが示され(OS 13.3カ月vs 14.8カ月,HR 1.18,95%CI:0.83-1.69),試験中止となった15)。この試験のサブグループ解析では,腺癌でもOSの延長(HR 1.24,95%CI:0.78-1.97)は示されなかった。その後さらに本邦において,75歳以上,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)患者を対象とした第Ⅲ相試験(JCOG1210/WJOG7813L試験)が行われ16),CBDCA+PEM併用群(PEMの維持療法あり)とDTX群の比較結果が報告された。主要評価項目はCBDCA+PEM群のDTX群に対するOS(非劣性)であり,OSのHRは 0.850(18.7カ月vs 15.5カ月,95%CI:0.684-1.056)であったことから非劣性が証明された。しかしながら,CBDCA+PEM群のDTX群に対する優越性は示されなかった。またPFSにおいては,HR 0.739(95%CI:0.609-0.896,P<0.01)とCBDCA+PEM群で有意に延長させることが示された。Grade 3以上の毒性は,CBDCA+PEM群で血小板減少と貧血が多く,DTX群で好中球減少と発熱性好中球減少が多かった。治療関連死は各群2例ずつで頻度は1%以下であった。さらに海外で行われた第Ⅲ相試験(IFCT0501試験)では,CBDCA+weekly PTXとGEM単剤もしくはVNR単剤の比較が行われ,併用療法でPFSの有意な延長(6.0カ月vs 2.8カ月,HR 0.51,95%CI:0.42-0.62,P<0.0001),OSの有意な延長(10.3カ月vs 6.2カ月,HR 0.64,95%CI:0.52-0.78,P<0.0001)が示された17)。この試験のサブグループ解析では,腺癌においてもOSの有意な延長(HR 0.73,95%CI:0.55-0.99)が示されている。しかし,この試験においては併用群における治療関連死が4.4%と高いなどの問題点が指摘されている。

     以上より,PS 0-1,75歳以上の非扁平上皮癌症例に対しては,CBDCA併用療法を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者2名を含む)(白票1)/実施年度:2019年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
85%
(23/27)
15%
(4/27)
0% 0% 0%
  • b.高齢者においては,緩和治療に対してVNR単剤が有意にOSを延長し薬物療法が有効であること,VNR単剤と比較してGEM単剤が同様の有効性を示していることが確認されている18)19)。その後,本邦で行われた第Ⅲ相試験(WJTOG9904試験)において,DTX単剤はVNR単剤に対して,PFSで5.5カ月vs 3.1カ月(HR 0.61,95%CI:0.45-0.82,P<0.001)と有意な延長を認め,OSで有意差は認めなかったものの14.3カ月vs 9.9カ月(HR 0.78,95%CI:0.56-1.09,P=0.138)と良好な成績を示した20)

     以上より,PS 0-1,75歳以上の非扁平上皮癌症例に対して,DTXをはじめとした第三世代細胞障害性抗癌剤単剤を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者2名を含む)(白票1)/実施年度:2019年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
15%
(4/27)
85%
(23/27)
0% 0% 0%
  • 扁平上皮癌

    c.前述のbを参照。

     以上より,PS 0-1,75歳以上の扁平上皮癌症例に対して,DTXをはじめとした第三世代細胞障害性抗癌剤単剤を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者2名を含む)(白票1)/実施年度:2019年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
63%
(17/27)
37%
(10/27)
0% 0% 0%
  • d.高齢者を対象とした第三世代細胞障害性抗癌剤単剤とプラチナ製剤併用を比較した第Ⅲ相試験が2編報告され,両試験とも登録された患者の多くが75歳以上であった。本邦では第Ⅲ相試験(JCOG0803/WJOG4307L試験)が行われ,weekly CDDP+DTXとDTX単剤が比較された。この試験では,中間解析において併用療法が単剤療法の成績を上回らないことが示され(OS 13.3カ月vs 14.8カ月,HR 1.18,95%CI:0.83-1.69),試験中止となった15)。この試験のサブグループ解析では,扁平上皮癌でもOSの延長(HR 0.92,95%CI:0.49-1.72)は示されなかった。また,第Ⅲ相試験(IFCT0501試験)では,CBDCA+weekly PTXとGEM単剤もしくはVNR単剤の比較が行われ,併用療法でPFSの有意な延長(6.0カ月vs 2.8カ月,HR 0.51,95%CI:0.42-0.62,P<0.0001),OSの有意な延長(10.3カ月vs 6.2カ月,HR 0.64,95%CI:0.52-0.78,P<0.0001)が示された17)。この試験のサブグループ解析では,扁平上皮癌(非腺癌の組織型含む)においてもOSの有意な延長(HR 0.52,95%CI:0.39-0.69)が示されている。しかしながらこの成績は,高齢者に対して本邦で行われた単剤療法の成績を大きく上回っているとはいえず,併用群における治療関連死が4.4%と高いなどの問題点として指摘されている。また,投与量も本邦における標準的なものとは異なっており,データの解釈には注意を要する。

     以上より,PS 0-1,75歳以上の扁平上皮癌症例に対して,CBDCA併用療法は選択肢の1つと考えられる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者2名を含む)(白票1)/実施年度:2019年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
22%
(6/27)
78%
(21/27)
0% 0% 0%

CQ67.

ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1陽性細胞50%未満,もしくは不明のPS 2に対する一次治療において細胞障害性抗癌剤は勧められるか?

推 奨
  • a.
  • 第三世代細胞障害性抗癌剤単剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕

  • b.
  • プラチナ製剤併用療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:100%〕

*PEMは非扁平上皮癌への投与が推奨される。

解 説

 PS 2は多様な集団であり,標準治療は定まっていない。しかし,薬物療法と緩和治療を比較したメタアナリシスのサブグループにおいて,PSにかかわらず薬物療法によるOSの延長が認められている〔PS 2以上の場合,薬物療法によって1年生存率にして6%(8%から14%)の改善〕1)

  • a.メタアナリシスにおいて第三世代細胞障害性抗癌剤(DTX,PTX,VNR,GEM)単剤療法は緩和治療に比して1年生存率約7%の改善が示されているが,この中にPS 2以上は約30%含まれていた2)。また,この解析でも取り上げられた3編の試験においてPS 2のサブグループの治療成績が明らかになっており,いずれもOSが延長する傾向が確認されている21)

     以上より,PS 2症例において,第三世代細胞障害性抗癌剤単剤を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(27/27)
0% 0% 0% 0%
  • b.PTX単剤とCBDCA+PTXとを比較した第Ⅲ相試験(CALGB9730試験)においてPS 2のサブグループが報告されており,CBDCA+PTXはPTX単剤に対して1年生存率で優位に上回っていた(18% vs 10%,HR 0.60,95%CI:0.40-0.91,P=0.016)22)。PS 2に対するCBDCA+PTXとCDDP+GEMとを比較した試験(ECOG1599試験)では,OSは各6.2カ月,6.9カ月と報告され,毒性に関しても忍容可能と考えられた23)。また,CBDCA+GEMとGEM単剤の比較試験が行われ,有意差が認められなかったものの,併用群でOSが6.7カ月vs 4.8カ月(P=0.49),PFSが4.1カ月vs 3.0カ月(P=0.36)の延長傾向が示された24)。さらに,PS 2症例を対象としたCBDCA+PEMとPEM単剤の第Ⅲ相試験が報告されている。この試験では第Ⅲ相試験としては登録数が205例と小規模で,扁平上皮癌を含む患者を対象としているなど問題があるが,併用群でPFSの有意な延長(5.8カ月vs 2.8カ月,HR 0.46,95%CI:0.35-0.63,P<0.001),OSの有意な延長(9.3カ月vs 5.3カ月,HR 0.62,95%CI:0.46-0.83,P=0.001)が示されている。毒性に関しては,併用群で貧血や好中球減少が高く,3.9%の治療関連死が認められた25)

     以上より,毒性が忍容可能と思われるPS 2症例に対してはプラチナ製剤併用療法を考慮してもよいと考えられる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。ただし,PS 2症例に関するエビデンスは限られており,そのほとんどはCBDCA併用レジメン,もしくは通常より減量した用量が用いられていることに注意が必要である。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 100%
(27/27)
0% 0% 0%

CQ68.

プラチナ製剤併用療法を受ける場合にPD-1/PD-L1阻害剤の上乗せは勧められるか?

推 奨
  • a.
  • PS 0-1症例に対して,プラチナ製剤併用療法にPD-1/PD-L1阻害剤を併用するよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B,合意率:78%〕

  • b.
  • PS 2症例に対して,プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤を行うよう推奨するだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

解 説
  • a-1.非扁平上皮癌

     EGFR遺伝子変異やALK遺伝子転座のない,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しペムブロリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(KEYNOTE-189試験)が行われた26)。中間解析において,主要評価項目であるPFSおよびOSは,それぞれHR 0.52(8.8カ月vs 4.9カ月,95%CI:0.43-0.64,P<0.0001),HR 0.49(中央値に到達せずvs 11.3カ月,95%CI:0.38-0.64,P<0.0001)であり,プラチナ製剤併用療法に対するペムブロリズマブの上乗せはPFS,OSを有意に延長することが示された。また,PD-L1発現別のサブグループ解析においても,PD-L1 1~49%のPFSはHR 0.55(95%CI:0.37-0.81,P=0.0010),OSはHR 0.55(95%CI:0.34-0.90,P=0.0081),PD-L1 1%未満のPFSはHR 0.75(95%CI:0.53-1.05,P=0.0476),OSはHR 0.59(95%CI:0.38-0.92,P=0.0095)と,いずれの集団においてもOSは有意に延長した。主な毒性は,ペムブロリズマブ併用群で悪心,貧血,倦怠感,便秘などであり,Grade 3以上の毒性はプラチナ製剤群と比較し頻度は同等であった(67.2% vs 65.8%)。ただし,ペムブロリズマブ併用群で急性腎障害が5.2%にみられることに加え,Grade 3以上の免疫関連毒性が8.9%と報告され,そのうち肺臓炎により3例の治療関連死が報告されており,それらの毒性管理には注意が必要である。

     PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しアテゾリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(IMpower150試験)が行われ,CBDCA/PTX/ベバシズマブ+アテゾリズマブ併用療法(B群)とCBDCA/PTX/ベバシズマブ療法(C群)の比較結果が報告された27)。主要評価項目はドライバー遺伝子変異/転座陰性集団におけるPFSおよびOSであった。なお,本試験におけるPD-L1発現は,TCに加え,ICをそれぞれ0~3の4段階で測定し評価している。C群に対するB群のPFSは,HR 0.62(8.3カ月vs 6.8カ月,95%CI:0.52-0.74,P<0.001),OSはHR 0.78(19.2カ月vs 14.7カ月,95%CI:0.64-0.96,P=0.02)であり,プラチナ製剤+ベバシズマブ併用療法に対するアテゾリズマブの上乗せはPFS,OSを有意に延長することが示された。また,PD-L1発現別のサブグループ解析において,「TC1/2 or IC1/2」のPFSはHR 0.56(95%CI:0.41-0.77,P=0.0003),OSはHR 0.80(95%CI:0.55-1.15),「TC0 and IC0」のPFSはHR 0.77(95%CI:0.61-0.99,P=0.039),OSはHR 0.82(95%CI:0.62-1.08)と,PD-L1が低発現および発現がみられない症例においても良好な結果を示した。主な毒性は,アテゾリズマブ併用群で食思不振,末梢神経障害,悪心,倦怠感などであり,Grade 3以上の毒性はプラチナ製剤+ベバシズマブ併用療法群と比較し頻度は高い傾向を認めた(58.5% vs 50.0%)。また免疫関連毒性として,アテゾリズマブ併用群で皮疹,肝機能障害,甲状腺機能障害,肺臓炎,大腸炎が報告されており,免疫関連の毒性管理には注意が必要である。

  • a-2.扁平上皮癌

     PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しペムブロリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(KEYNOTE-407試験)が行われた28)。559例が1:1でランダム化され,主要評価項目であるPFSの332例のイベントが確認された時点の中間解析が報告された。PFSはHR 0.56(6.4カ月vs 4.8カ月,95%CI:0.45-0.70,P<0.0001)と,プラチナ製剤併用療法に対するペムブロリズマブの上乗せはPFSを有意に延長することが示された。もう1つの主要評価項目であるOSは,観察期間中央値が7.8カ月と不十分な観察期間ではあるがHR 0.64(15.9カ月vs 11.3カ月,95%CI:0.49-0.85,P=0.0008)と,OSもまた有意に延長することが示された。PD-L1発現別のサブグループ解析においても,PD-L1 1~49%のPFSはHR 0.56(95%CI:0.39-0.80),OSはHR 0.57(95%CI:0.57-0.90),PD-L1 1%未満のPFSはHR 0.68(95%CI:0.47-0.98),OSはHR 0.61(95%CI:0.38-0.98)と,いずれの集団においても良好な傾向がみられた。主な毒性は,ペムブロリズマブ併用群で貧血,食思不振,好中球減少,悪心などであり,Grade 3以上の毒性はプラチナ製剤群と比較し頻度は同等であった(69.8% vs 68.2%)。ただし,ペムブロリズマブ併用群で肺臓炎の発症率(6.5% vs 2.1%)と治療関連死亡(3.6% vs 2.1%)は高い傾向を認めており,毒性管理には注意が必要である。

     PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しアテゾリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(IMpower131試験)が行われ,CBDCA/nab-PTX+アテゾリズマブ併用療法(B群)とCBDCA/nab-PTX療法(C群)の比較結果が報告された29)。主要評価項目であるC群に対するB群のPFSは,HR 0.71(6.3カ月vs 5.6カ月,95%CI:0.60-0.85,P=0.001)であり,プラチナ製剤併用療法に対するアテゾリズマブの上乗せはPFSを有意に延長することが示された。ただし,もう1つの主要評価項目であるOSは,中間解析においてHR 0.96(14.0カ月vs 13.9カ月,95%CI:0.78-1.18,P=0.6931)と,OSの延長は示されなかった。また,PD-L1発現別のサブグループ解析においては,「TC1/2 or IC1/2」のPFSはHR 0.70(95%CI:0.53-0.92),OSはHR 1.34(95%CI:0.95-1.90),「TC0 and IC0」のPFSはHR 0.81(95%CI:0.64-1.03),OSはHR 0.86(95%CI:0.65-1.15)と,PD-L1発現によらずPFSは良い傾向にあるものの,PD-L1低発現群においてOSの延長を示せなかった。Grade 3以上の毒性は,プラチナ製剤群と比較し頻度は高い傾向が認められた(69% vs 58%)(2019年10月時点において扁平上皮癌に対するCBDCA/nab-PTX+アテゾリズマブ併用療法は,本邦で保険適用となっていない)。

 75歳以上の症例においては,前述の4つの第Ⅲ相試験においてある一定数が登録されているが,安全性のデータは示されていないため,その投与には慎重を期すべきである。なお,アテゾリズマブの上乗せを評価した2試験においては,75歳以上のサブグループ解析が報告されている。IMpower150試験(非扁平上皮癌)では,75歳以上においてPFS:HR 0.78(9.7カ月vs 6.8カ月)27),IMpower131試験(扁平上皮癌)では,75歳以上においてPFS:HR 0.51(7.0カ月vs 5.6カ月,95%CI:0.30-0.84)29)と,ともに併用療法が有効である傾向が示されているが,OSの結果は示されていない。

 以上より,PD-L1陽性細胞<50%,もしくは不明のⅣ期非小細胞肺癌(EGFR遺伝子変異陰性およびALK遺伝子転座陰性),PS 0-1症例に対してプラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤を行うよう勧められる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
78%
(21/27)
22%
(6/27)
0% 0% 0%

 なお,プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤の治療レジメンは,有効性と安全性の観点から非扁平上皮癌においてはCDDP/CBDCA+PEM+ペムブロリズマブもしくはCBDCA+PTX+ベバシズマブ+アテゾリズマブ,扁平上皮癌においてはCBDCA+PTX/nab-PTX+ペムブロリズマブが推奨される。詳細については,項末のレジメンを参照のこと。

  • b.プラチナ製剤併用療法に対しPD-1/PD-L1阻害剤の上乗せを評価した4つの第Ⅲ相試験26)~29)では,適格基準としてPS 0-1を満たす患者のみが登録されており,PS 2のⅣ期非小細胞肺癌の一次治療でプラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤を投与した際の臨床成績および安全性は不明である。また,PS 2に対しては細胞障害性抗癌剤の毒性も懸念されており,さらにPD-1/PD-L1阻害剤を上乗せする治療法は安全性において看過できない可能性がある。

     以上より,PS 2のPD-L1陽性細胞<50%,もしくは不明のⅣ期非小細胞肺癌に対し一次治療においてプラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤を推奨するだけの根拠が明確でなく,推奨度決定不能とした。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 74%
(20/27)
22%
(6/27)
4%
(1/27)

CQ69.

ドライバー遺伝子変異/転座陰性, PD-L1陽性細胞1-49%,PS 0-1に対する一次治療においてペムブロリズマブは勧められるか?

推 奨
ペムブロリズマブ単剤療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:93%〕

解 説

 EGFR遺伝子変異やALK遺伝子転座のない,PD-L1陽性細胞1%以上のPS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,ペムブロリズマブ単剤とプラチナ製剤併用療法を比較する第Ⅲ相試験(KEYNOTE-042試験)が行われた30)。探索的評価項目であるPD-L1陽性細胞1-49%のサブグループ解析において,OSはHR 0.92(13.4カ月vs 12.1カ月,95%CI:0.77-1.11)であり,その生存曲線はクロスしていた。また,PD-L1陽性細胞1-49%のPFSは報告されていない。毒性においては前述するKEYNOTE-024試験の有害事象と同様であり,これらの毒性管理には注意が必要である。

 なお75歳以上の症例においては,前述する試験のみのサブグループ解析や前向きなデータともに報告はなく,有効性に関しては明らかになっていない。またPS 2の症例についても試験の対象に含まれておらず,有効性および安全性は不明である。

 以上より,PD-L1陽性細胞1-49%のⅣ期非小細胞肺癌(EGFR遺伝子変異陰性およびALK遺伝子転座陰性),PS 0-1症例に対して,プラチナ製剤併用療法やプラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤との検討の中で,益と害のバランスを鑑みてペムブロリズマブ単剤療法を考慮してもよい。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者2名を含む)/実施年度:2019年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 93%
(27/29)
7%
(2/29)
0% 0%

CQ70.

プラチナ製剤併用療法を受ける場合の推奨される投与期間は?

推 奨
プラチナ製剤併用療法のプラチナ製剤投与期間を6サイクル以下とするよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

解 説

 第三世代細胞障害性抗癌剤とプラチナ製剤との併用について,3サイクルもしくは4サイクルを6サイクルと比較した試験によると,いずれにおいても1年生存率やOSは同等で毒性は前者が軽いと報告された31)32)。前述の2編の試験を含む,6サイクルとそれ以下のサイクルを比較した試験の個票データを利用したメタアナリシスでは,6サイクル群で有意なPFSの延長を認めたがOSは同等であった33)

 一方,近年行われた第Ⅲ相試験では,一次治療におけるプラチナ製剤の投与サイクル数を4もしくは6サイクルと規定しているものがほとんどであり,CDDP+PEMとCDDP+GEMを比較した第Ⅲ相試験(JMDB試験)では,プラチナ製剤併用療法の投与中央値はどちらも5サイクルであった4)

 以上より,プラチナ製剤併用療法の投与期間は4~6サイクルとするよう勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。効果および毒性の観点から,6サイクルを超えるプラチナ製剤の投与は推奨されない。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(26/26)
0% 0% 0% 0%

CQ71.

プラチナ製剤併用療法を受ける場合にベバシズマブの上乗せは勧められるか?

推 奨
  • a.
  • ベバシズマブの適応となる75歳未満,PS 0-1症例に対して,プラチナ製剤併用療法にベバシズマブを併用するよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:A,合意率:73%〕

  • b.
  • 75歳以上の症例に対して,ベバシズマブを併用しないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:96%〕

  • c.
  • PS 2症例に対して,ベバシズマブを併用しないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:D,合意率:92%〕

*ベバシズマブは扁平上皮癌への投与は行わない。

解 説
  • a.メタアナリシスでは,プラチナ製剤併用療法にベバシズマブを追加することでORRの上昇,PFSの延長が示されており,OSについても延長が認められたとする報告がある34)35)。一方で,ベバシズマブの併用でGrade 3以上の毒性(蛋白尿,高血圧,出血性イベント,好中球減少,発熱性好中球減少,治療関連死)の有意な増加が報告されている34)~36)

     出血リスクに関しては,扁平上皮癌や空洞を有する症例,大血管への浸潤や隣接を認めるもの,その他,喀血,コントロール不能な高血圧,重篤な大血管病変や消化管における活動性出血の既往があるものなどが高リスク群と考えられており,ベバシズマブの投与に際してはその適応を十分に検討する必要がある36)

     CBDCA+PTXにベバシズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(ECOG4599試験)では,ベバシズマブ併用群でORRの上昇,PFSの有意な延長(6.2カ月vs 4.5カ月,HR 0.66,95%CI:0.57-0.77,P<0.001)ならびにOSの有意な延長(12.3カ月vs 10.3カ月,HR 0.79,95%CI:0.67-0.92,P=0.003)を認めた37)。一方,CDDP+GEMにベバシズマブを追加した第Ⅲ相試験(AVAiL試験)においては,PFSは有意に延長したがOSでは有意な延長を認めなかった38)。本邦ではCBDCA+PTXにベバシズマブを追加するランダム化第Ⅱ相試験(JO19907試験)が行われ,併用群においてORRの上昇(60.7% vs 31.0%,P=0.0013),PFSの延長(6.9カ月vs 5.9カ月,HR 0.61,95%CI:0.42-0.89,P=0.0090)を認め,新たな毒性を認めなかったが,OSについては有意な延長を認めなかった(22.8カ月vs 23.4カ月,HR 0.99,95%CI:0.65-1.50,P=0.9526)39)。中国において同じレジメンを比較した第Ⅲ相試験(BEYOND試験)では,ベバシズマブを一次治療以後も継続することが可能なデザインであったが,PFSの有意な延長(9.2カ月vs 6.5カ月,HR 0.40,95%CI:0.29-0.54,P<0.001)と,OSの有意な延長(24.3カ月vs 17.7カ月,HR 0.68,95%CI:0.50-0.93,P=0.0154)が認められた40)

     以上より,ベバシズマブの適応となる75歳未満,PS 0-1症例に対してプラチナ製剤併用療法を用いる際にはベバシズマブを追加することが勧められる。エビデンスの強さはA,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
27%
(7/26)
73%
(19/26)
0% 0% 0%

  •  ベバシズマブの投与については,その薬剤の特性からプラチナ製剤併用療法の終了後,病勢進行もしくは毒性中止まで投与を継続する方法が一般的である37)~40)

  • b.75歳以上

     高齢者におけるプラチナ製剤併用療法+ベバシズマブについて,ECOG4599試験におけるサブグループ解析で70歳以上の高齢者では効果の上乗せは認められず,若年に比してGrade 3以上の好中球減少,出血,蛋白尿が多かったとされている41)。その後に報告されたECOG4599試験とPoint Break試験を統合したサブグループ解析では,OSおよびPFSにおいて75歳以上で特にベバシズマブの上乗せ効果に乏しい傾向がみられた42)。米国におけるベバシズマブ併用療法の後方視的研究(ARIES)では,65歳未満と65歳以上,および75歳未満と75歳以上のサブグループ解析でどちらも有効性は同等であったが,毒性の面において高齢者群でGrade 3以上の動脈血栓塞栓症が増える傾向にあり,75歳以上ではさらに高かった(65歳未満1.5%,65歳以上2.9%,75歳以上3.5%)43)。また,欧州を中心に施行されたベバシズマブ併用療法のコホート研究(SAiL試験)では,70歳未満と70歳以上で有効性は同等であったが,高齢者群でGrade 3以上の出血の有害事象が増える傾向がみられた(70歳未満3.5%,70歳以上5.3%)44)。ただし,後者に示す2試験はいずれも非ランダム化試験でありエビデンスは低い。

     本邦においては75歳以上の高齢者におけるベバシズマブ併用療法の十分なデータはなく,有効性や安全性は確認されていない。

     以上より,高齢者に対するベバシズマブ併用を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではなく,現時点では行わないよう勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行わないよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 4%
(1/26)
96%
(25/26)
0%
  • c.PS 2

     ベバシズマブ併用の臨床試験ならびに観察研究においてその大半がPS 0-1であり,PS 2に対するベバシズマブの安全性や有効性に関してのデータは少ない43)44)。よって,PS 2に対するベバシズマブは行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。ベバシズマブを併用することにより毒性の頻度は有意に増加することから,益と害のバランスを考慮し現時点では行わないよう勧められる。エビデンスの強さはD,ただし総合的評価では行わないよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 4%
(1/26)
92%
(24/26)
4%
(1/26)

*CBDCA+PTX+ベバシズマブの第Ⅱ相試験においてGrade 3以上の肺出血が9.1%に認められ,扁平上皮癌では4/13例(31%)で重篤な肺出血をきたした45)。その後,出血リスクに関する検討が行われ,扁平上皮癌や空洞を有する症例,大血管への浸潤や隣接を認めるもの,その他,喀血・コントロール不能な高血圧,重篤な大血管病変や消化管における活動性出血の既往があるものなどが高リスク群と考えられた36)。以上より,ベバシズマブは扁平上皮癌に対して用いない。

CQ72.

プラチナ製剤併用療法を受ける場合にネシツムマブの上乗せは勧められるか?

推 奨
扁平上皮癌のPS 0-1症例に対して,シスプラチン+ゲムシタビンにネシツムマブを併用するよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:96%〕

解 説

 PS 0-2のⅣ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法(CDDP+GEM)に対しネシツムマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(SQUIRE試験)が行われた46)。主要評価項目であるOSはHR 0.84(11.5カ月vs 9.9カ月,95%CI:0.74-0.96,P=0.01)と,プラチナ製剤併用療法に対するネシツムマブの上乗せはOSを有意に延長することが示された。またPFSにおいても,HR 0.85(5.7カ月vs 5.5カ月,95%CI:0.74-0.98,P=0.006)と,有意に延長することが示された。さらに,PS0-1のサブグループ解析においても,OSはHR 0.85(95%CI:0.72-1.01),PFSはHR 0.86(95%CI:0.73-1.02)と良好な傾向がみられた。また,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌)の日本人患者を対象として,プラチナ製剤併用療法(CDDP+GEM)に対しネシツムマブを追加することの有効性を評価したランダム化第Ⅱ相試験が行われた47)。主要評価項目であるORRは,ネシツムマブ併用群で有意に高い(51.1% vs 20.9%)ことが示された。さらにOSおよびPFSは,それぞれHR 0.66(14.9カ月vs 10.8カ月,95%CI:0.47-0.93,P=0.0161),HR 0.56(4.2カ月vs 4.0カ月,95%CI:0.41-0.78,P=0.0004)であり,ネシツムマブの上乗せによりOS,PFSを有意に延長させることが示された。

 75歳以上の症例においては,前述する2つの試験46)47)においてある一定数が登録されているが,サブグループ解析の成績は示されていない。PS 2症例においては,SQUIRE試験のサブグループ解析でOSはHR 0.78(95%CI:0.51-1.21),PFSはHR 0.79(95%CI:0.50-1.24)と全体集団に劣らない傾向が示されている一方で,PS 2の日本人症例に対する投与経験はなく,有効性および安全性は不明である。

 主な毒性は,ネシツムマブ併用群で骨髄抑制,食思不振,倦怠感に加えてネシツムマブに特徴的な皮疹,低マグネシウム血症などであり,Grade 3~4の毒性が併用群で高い傾向であった。日本で行われた第Ⅱ相試験では,発熱性好中球減少症の頻度がプラチナ製剤群と比較し高かった(12% vs 3%)。また,SQUIRE試験における治療関連死亡は3% vs 2%であった。

 以上より,Ⅳ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌),PS 0-1症例に対してプラチナ製剤併用療法にネシツムマブを追加することが勧められる。ただし,プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤と比較したデータはなく,プラチナ製剤併用療法+ネシツムマブがプラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤より優れているかどうかは明らかでない。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師 2名,薬剤師 1名,患者 2名を含む)/実施年度:2019年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
4%
(1/28)
96%
(27/28)
0% 0% 0%

 ネシツムマブの投与については,前述した試験によるとプラチナ製剤併用療法の終了後,病勢進行もしくは毒性中止まで投与を継続する方法がとられている。また,プラチナ製剤併用療法+ネシツムマブの治療レジメンは前述した試験で用いられたCDDP+GEMが推奨され,安全性の観点からそれ以外の細胞障害性抗癌剤とネシツムマブの併用は勧められない。詳細については,項末のレジメンを参照のこと。

CQ73.

プラチナ製剤併用療法を受ける場合に維持療法は勧められるか?

推 奨
〈非扁平上皮癌〉
  • a.
  • シスプラチン+ペメトレキセド併用療法4サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な症例に対してペメトレキセドによるcontinuation maintenanceを行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B,合意率:100%〕

  • b.
  • プラチナ製剤併用療法4サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な症例に対してペメトレキセドによるswitch maintenanceを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:88%〕

〈扁平上皮癌〉
  • c.
  • プラチナ製剤併用療法4サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な症例に対してswitch maintenance,continuation maintenanceを行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

維持療法の定義

解 説
  • a.CDDP+PEM併用療法後のPEMを用いたcontinuation maintenanceの第Ⅲ相試験(PARAMOUNT試験)で,PFSの有意な延長(4.1カ月vs 2.8カ月,HR 0.62,95%CI:0.50-0.73,P<0.0001),OSの有意な延長(13.9カ月vs 11.0カ月,HR 0.78,95%CI:0.64-0.96,P=0.0195)が示された48)。QOLの低下は認めず,維持療法群において毒性の増強はみられたものの許容範囲内であった。ベバシズマブの併用に関しては,CDDP+PEM+ベバシズマブ併用療法後にPEM+ベバシズマブ群とベバシズマブ単独群の第Ⅲ相試験(AVAPERL試験)が行われ,前者でPFSの有意な延長(7.4カ月vs 3.7カ月,HR 0.48,95%CI:0.44-0.75,P<0.0001)を認めたが,OSの有意な延長は認めなかった49)

     以上より,CDDP+PEM併用療法4サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な症例に対するPEMのcontinuation maintenanceは行うよう勧められる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(26/26)
0% 0% 0% 0%
  • b.プラチナ製剤併用療法後のPEMを用いたswitch maintenanceの第Ⅲ相試験で,PFSの有意な延長(4.3カ月vs 2.6カ月,HR 0.50,95%CI:0.42-0.61,P<0.0001),OSの有意な延長(13.4カ月vs 10.6カ月,HR 0.79,95%CI:0.65-0.95,P=0.012)が示された50)。しかしながら,プラセボ群において二次治療以降に有効とされているPEMが投与されていない(クロスオーバー率が18%と少ない)ことが問題とされている。

     以上より,プラチナ製剤併用療法4サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な症例に対するPEMによるswitch maintenanceは選択肢の1つと考えられる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
12%
(3/26)
88%
(23/26)
0% 0% 0%
  • c.プラチナ製剤併用療法後のPEM,エルロチニブを用いたswitch maintenanceの第Ⅲ相試験でPFS,OSの延長が示されたが,扁平上皮癌のサブグループにおいてはOSにおける有意差が消失していた50)51)。さらに,早期からエルロチニブ維持療法を行う群とPD後にエルロチニブ療法を行う群を比較した第Ⅲ相試験(IUNO試験)が行われたが,前述の試験と同様に扁平上皮癌のサブグループにおいてもOSの延長は示されなかった(9.7カ月vs 9.5カ月,HR 1.00,95%CI:0.74-1.35,P=0.82)52)

     以上より,扁平上皮癌に対するswitch maintenanceは推奨するだけの根拠に乏しい。また,continuation maintenanceについても扁平上皮癌に対する有効性は示されていない。維持療法において毒性が増強する点も考慮すると,プラチナ製剤併用療法4サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な扁平上皮癌に対してswitch maintenance,continuation maintenanceともに行わないよう勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行わないよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 0% 0% 100%
(25/25)

CQ74.

PS 3-4の患者(ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明,PD-L1発現は問わない)に薬物療法は勧められるか?

推 奨
薬物療法を行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:D,合意率:100%〕

解 説

 PS 3-4症例(ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明,PD-L1発現は問わない)に対する細胞障害性抗癌剤は,一般に適応がない。PD-1/PD-L1阻害剤はPS良好例(PS 0-1)を中心に臨床試験が行われているため,PS不良例のエビデンスは乏しく,安全性も不明であることから細胞障害性抗癌剤と同様にPS 3-4についてのPD-1/PD-L1阻害剤も推奨されない。エルロチニブについて,PS不良や合併症のため細胞障害性抗癌剤の適応とならない進行非小細胞肺癌に対してエルロチニブ単剤と緩和治療の第Ⅲ相試験(TOPICAL試験)が行われた53)。患者背景として,年齢中央値77歳,PS 3が30%を占め,EGFR遺伝子変異については陰性,不明がそれぞれ52%,46%であった。組織型では,扁平上皮癌と非扁平上皮癌が各40%,60%含まれていた。この試験において,主要評価項目であるOSの延長は認められなかった(エルロチニブ単剤3.7カ月 vs プラセボ群3.6カ月,HR 0.94,95%CI:0.81-1.10,P=0.46)。

 以上より,PS 3-4の患者(ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明,PD-L1発現は問わない)に対する薬物療法は行わないよう推奨される。エビデンスの強さはD,ただし総合的評価では行わないよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 0% 0% 100%
(25/25)
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7-3-2.ドライバー遺伝子変異/転座陰性の二次治療以降

CQ75.

一次治療耐性または進行例,PS 0-2,免疫チェックポイント阻害剤未使用例に対する二次治療において薬物療法は勧められるか?

推 奨
  • a.
  • PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕

  • b.
  • 細胞障害性抗癌剤を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:A,合意率:96%〕

*ペムブロリズマブの適応症は,(腫瘍細胞上の)PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に限られる。

*PEMは非扁平上皮癌への投与が推奨される。

解 説
  • a.ドライバー遺伝子変異/転座陰性例の二次治療では,複数の第Ⅲ相試験においてDTX単剤療法と比較してPD-1/PD-L1阻害剤が有意にOSを延長することが証明されている。いずれの試験もDTX単剤を対照としており,ニボルマブおよびアテゾリズマブはPD-L1の発現を問わず行われ(CheckMate017試験1),CheckMate057試験2),OAK試験3)),ペムブロリズマブはPD-L1陽性細胞1%以上の非小細胞肺癌を対象として行われた(KEYNOTE-010試験4))。

     上記の第Ⅲ相試験はいずれもPS 0-1の症例を対象として実施しており,PS 2の一次治療耐性または進行後のⅣ期非小細胞肺癌症例に対するPD-1/PD-L1阻害剤の有用性は効果,安全性ともに現時点で不明である。そのため,PS 2に対してPD-1/PD-L1阻害剤の使用を推奨するだけの根拠は十分でない。ただしガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会では,PD-1/PD-L1阻害剤は細胞障害性抗癌剤と比較して重篤な毒性の頻度は低いことから,投与の是非を慎重に検討したうえでPD-1/PD-L1阻害剤の投与を考慮してもよいという意見が多くみられた。ただし,PD-1/PD-L1阻害剤のORRはいずれの試験においても10~20%程度と報告されており,本薬剤が無効と判断された場合には速やかに細胞障害性抗癌剤に切り替えることを推奨する。

     以上より,一次治療耐性または進行後,ドライバー遺伝子変異/転座陰性,免疫チェックポイント阻害剤未使用例のⅣ期非小細胞肺癌に対してはPD-1/PD-L1阻害剤を行うよう推奨する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(23/23)
0% 0% 0% 0%
  • 〈ニボルマブ〉

     ニボルマブは再発非小細胞肺癌の標準治療であるDTX単剤との比較において,扁平上皮癌を対象としたCheckMate017試験と非扁平上皮癌を対象としたCheckMate057試験の2つの第Ⅲ相試験が報告されている。

     プラチナ併用療法の治療歴を有する進行扁平上皮癌を対象としたCheckMate017試験では,ニボルマブは主要評価項目であるOSにおいてHR 0.59(9.2カ月vs 6.0カ月,95%CI:0.4-0.79,P<0.001)とDTX単剤と比較し有意な延長を示し,PD-L1発現率に基づくサブグループ解析でも,PD-L1の発現によらずニボルマブの有効性が示されている1)。主な毒性は,ニボルマブ群で倦怠感や食思不振,DTX群で好中球減少,倦怠感,脱毛などであり,Grade 3以上の毒性はニボルマブ群で有意に少なかった(7% vs 55%)。一方,ニボルマブ群で肺臓炎,甲状腺機能障害,大腸炎,肝機能障害,皮疹,Ⅰ型糖尿病などの免疫関連の毒性が報告されており,免疫関連の毒性管理には注意が必要である。

     プラチナ併用療法の治療歴を有する進行非扁平上皮癌を対象としたCheckMate057試験でも,主要評価項目であるOSにおいてHR 0.73(12.2カ月vs 9.4カ月,95%CI:0.59-0.79,P=0.002)とDTX単剤と比較しニボルマブの有意な延長が示されている2)。特にPD-L1陽性細胞1%以上のサブグループにおいてはOSがHR 0.58(95%CI:0.43-0.79),PFSがHR 0.70(95%CI:0.53-0.94)と有意にOSを延長することが示されている。また,CheckMate057試験におけるQOLの比較において,ニボルマブ群がDTX群と比較して有意に肺癌症状の悪化を遅らせることが示された5)。主な毒性としてニボルマブ群で倦怠感,吐き気,食思不振,DTX群で好中球減少,倦怠感,脱毛などであり,Grade 3以上の毒性はニボルマブ群で有意に少なかった(10% vs 54%)。一方,ニボルマブ群で肺臓炎,甲状腺機能障害,大腸炎,肝機能障害,皮疹,Ⅰ型糖尿病などの免疫関連の毒性が報告されており,CheckMate017試験同様,免疫関連の毒性管理には注意が必要である。PD-L1発現率に基づくサブグループ解析においてはCheckMate017試験と異なり,PD-L1発現率による有効性の違いが示唆されている。

     なお,CheckMat017/057試験ではPD-L1のカットオフが1%,5%,10%,50%などでの有効性解析はなされているが各カットオフ値未満における解析は報告されていない。非扁平上皮癌を対象としたCheckMate057試験において,PD-L1陽性細胞1%未満群におけるORRはDTX群で15%,ニボルマブ群で9%,PFSはHR 1.19(95%CI:0.88-1.61)とDTX群で良い傾向があった。一方でOSでは,有意差はないもののHR 0.90(95%CI:0.66-1.24)とニボルマブ群で良い傾向が示されている。ニボルマブの投与にあたっては,厚生労働省による最適使用推進ガイドラインも参照のこと6)

  • 〈ペムブロリズマブ〉

     プラチナ併用療法を含む治療歴を有するPD-L1発現率陽性細胞1%以上の進行非小細胞肺癌を対象とした第Ⅱ-Ⅲ相試験(KEYNOTE-010試験)では,DTX単剤に対するペムブロリズマブ(2 mg/kg群と10 mg/kg群の2群統合)のOSはHR 0.67(95%CI:0.56-0.80),PFSはHR 0.85(95%CI:0.73-0.98)であり,OSの延長効果が示されている4)。PD-L1陽性細胞が1~49%および50%以上のサブグループ解析においては,統合したOSでのHRがそれぞれ0.76(95%CI:0.60-0.96),0.53(95%CI:0.40-0.70)であり,PD-L1の低発現例,高発現例のどちらもペムブロリズマブが有意にOSを延長することが示されている。Grade 3以上の毒性はペムブロリズマブ2 mg/kg群で13%,10 mg/kg群で16%,DTX群で35%とペムブロリズマブ群で頻度が低く,ペムブロリズマブの免疫関連の毒性として甲状腺機能障害,肺臓炎,皮膚障害などが認められた。また,この試験においてペムブロリズマブ2 mg/kg群と10 mg/kg群での有効性や毒性の差は認めなかったことが報告されている。

     PD-L1陽性の切除不能な進行・再発非小細胞肺癌に対する本邦におけるペムブロリズマブの投与量は,添付文書により200 mg/bodyの3週毎投与と規定されている。

  • 〈アテゾリズマブ〉

     アテゾリズマブはプラチナ併用療法の治療歴を有する非小細胞肺癌を対象として,DTX単剤と比較したランダム化第Ⅱ相試験(POPLAR試験)と第Ⅲ相試験(OAK試験)がそれぞれ報告されている3)7)。前記の2試験では,前述したPD-1阻害剤を評価した比較試験と異なり,腫瘍細胞(TC:tumor cells)に加え,腫瘍浸潤免疫細胞(IC:tumor-infiltrating immune cells)のPD-L1発現をそれぞれ0~3の4段階で測定し評価している。

     POPLAR試験では,主要評価項目であるOSはHR 0.73(12.6カ月vs 9.7カ月,95%CI:0.53-0.99,P=0.040)とアテゾリズマブがDTX単剤と比較し有意にOSを延長した結果が示されている7)。OAK試験においても,主要評価項目であるOSはHRが0.73(13.8カ月vs 9.6カ月,95%CI:0.62-0.87,P=0.0003)とアテゾリズマブがDTX単剤と比較し有意にOSを延長した3)。組織型別のサブグループ解析では,非扁平上皮癌患者ではOSがHR 0.73(95%CI:0.60-0.89),扁平上皮癌患者ではOSがHR 0.73(95%CI:0.54-0.98)と組織型別効果の差は認められなかった。PD-L1発現のサブグループ解析では,「TC 0 and IC 0」群でOSがHR 0.75(95%CI:0.59-0.96,P=0.0215),「TC 1/2/3 or IC 1/2/3」群でOSがHR 0.74(95%CI:0.58-0.93,P=0.0102)といずれのサブグループでも有意にOSを延長する結果であった。また,OAK試験におけるQOLの比較において,アテゾリズマブ群がDTX群と比較して有意に肺癌症状の悪化を遅らせることが示された8)。OAK試験における主な毒性は,アテゾリズマブ群で倦怠感や悪心,下痢などであり,Grade 3以上の毒性(治療関連)はアテゾリズマブ群で15%,DTX群で43%とアテゾリズマブ群が少なかった。一方,アテゾリズマブ群の免疫関連の毒性として肺臓炎,肝炎,大腸炎が報告されており,毒性による投与中止例は8%(DTX群は19%)であった。アテゾリズマブの投与にあたっては,厚生労働省による最適使用推進ガイドラインも参照のこと9)

  • b.PD-1/PD-L1阻害剤と細胞障害性抗癌剤(DTX)単剤を比較した前述の5つのランダム化比較試験1)~4)7)において,一部の試験でPFSおよびOSの生存曲線が交差するなど,細胞障害性抗癌剤のほうが臨床的に有意義であった可能性のある症例が存在する。また,DTX単剤よりも生存延長効果に勝るDTX+ラムシルマブ併用療法とPD-1/PD-L1阻害剤とを比較した臨床試験は存在しない。

     以上より,一次治療耐性または進行後,ドライバー遺伝子変異/転座陰性,免疫チェックポイント阻害剤未使用例のⅣ期非小細胞肺癌に対して細胞障害性抗癌剤を行うよう提案する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 96%
(22/23)
4%
(1/23)
0% 0%

CQ76.

PS 0-2に対して二次治療以降で推奨される細胞障害性抗癌剤は何か?

推 奨
ドセタキセル±ラムシルマブ,ペメトレキセド単剤,S-1単剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕

*PEMは非扁平上皮癌への投与に限定。

解 説
  • 〈ドセタキセル単剤〉

     プラチナ製剤を含む薬物療法無効または奏効後に再発した非小細胞肺癌患者を対象としたDTX単剤の第Ⅲ相試験が2編報告されている。1つはDTX(100 mg/m2 or 75 mg/m2) vs VNR or IFMの比較試験(TAX320試験)でOSでは有意差を認めないもののDTX 75 mg/m2群で対照群と比較してORR,26週PFS率,1年生存率の有意な改善を認めた10)。また,DTX(100 mg/m2 or 75 mg/m2)と緩和治療の比較ではOS中央値と1年生存率は,DTX 75 mg/m2群,緩和治療群でそれぞれ7.5カ月と37%,4.6カ月と19%で,DTX群で有意に優れ(P=0.010,P=0.003),QOLの改善も認められた11)。いずれの試験においても,DTX 75 mg/m2群が最も治療成績が優れており,プラチナ製剤を含む治療後の不応ないし再発例に対する非小細胞肺癌の薬物療法としてはDTX 75 mg/m2の有用性が確立された。本邦における推奨用量は60 mg/m2であるが,本邦で行われたこの用量における第Ⅱ相試験でORR 18.2%,OS中央値 7.8カ月と上記2編の第Ⅲ相試験のDTX 75 mg/m2と同等の効果を有する結果を報告した12)

  • 〈ドセタキセル+ラムシルマブ〉

     CQ77参照

  • 〈ペメトレキセド単剤〉

     Ⅳ期非小細胞肺癌の二次治療におけるPEM単剤とDTX単剤の第Ⅲ相試験が報告され,ORR,OS中央値はPEM群で9.1%,8.3カ月,DTX単剤群で8.8%,7.9カ月であり,主要評価項目であるOSで非劣性は証明されなかったが同等の効果HR 0.99(95%CI:0.80-1.20,P=0.226)が報告された。毒性に関しては,Grade 3/4の好中球減少,発熱性好中球減少,全Gradeの脱毛の発現率がDTX群で有意に高かった13)。同試験を組織学的に後方視的解析した結果,OSは非扁平上皮癌でそれぞれ9.3カ月と8.0カ月(HR 0.78,95%CI:0.61-1.00,P=0.047)と有意差を認めた。また,PFSにおいても非扁平上皮癌でそれぞれ3.1カ月と3.0カ月(HR 0.82,95%CI:0.66-1.02,P=0.076)と有意差を認めなかったが,効果はほぼ同等であった14)。一方,毒性に関しては,Grade 3以上の発熱性好中球減少(1.9% vs 12.7%),好中球減少(5.3% vs 40.2%),好中球減少に伴った感染(0.0% vs 3.3%)の発現頻度は有意に少なく,ALT上昇(1.9% vs 0.0%)の頻度は有意に高いと違いを認めたが,QOLに関しては差を認めなかった。

  • 〈S-1単剤〉

     プラチナ既治療のⅣ期非小細胞肺癌,PS 0-2の二次もしくは三次治療例を対象とし,S-1単剤とDTX単剤を比較する第Ⅲ相試験が本邦を含むアジアで行われた。主要評価項目であるOSは非劣性を示すことが目的であり,S-1群で12.75カ月,DTX群で12.52カ月(HR 0.945,95%CI:0.833-1.073)で,DTX単剤に対するS-1単剤の非劣性が示された。またPFSはS-1群2.9カ月,DTX群2.9カ月(HR 1.03,95%CI:0.91-1.17)で両群に差を認めず,ORRはS-1群8.3%,DTX群9.9%であった。毒性に関しては,発熱性好中球減少ならびにGrade 3以上の好中球減少の頻度はDTX群で高く(0.9% vs 13.6%,5.4% vs 47.7%),全Gradeの下痢と口腔粘膜障害の頻度はS-1群で高かったが(37.2% vs 18.2%,23.9% vs 14.5%),Grade 3以上の頻度は低く忍容性は良好であった15)

 以上より,一次治療耐性または進行後のⅣ期非小細胞肺癌症例に対してDTX±ラムシルマブ,S-1単剤,(非扁平上皮癌の場合)PEM単剤の投与を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(23/23)
0% 0% 0% 0%

CQ77.

二次治療でドセタキセルを用いる場合にラムシルマブの併用は推奨されるか?

推 奨
  • a.
  • ラムシルマブの適応となるPS 0-1症例に対して,ドセタキセルにラムシルマブを併用するよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:74%〕

  • b.
  • 75歳以上の症例に対して,ドセタキセルにラムシルマブを併用しないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:D,合意率:78%〕

  • c.
  • PS 2症例に対して,ドセタキセルにラムシルマブを併用しないよう提案する。

〔PS 2/推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:D,合意率:87%〕

解 説
  • a.プラチナ製剤併用療法後に進行したPS 0-1の進行非小細胞肺癌症例を対象とし,DTX+ラムシルマブ併用療法とDTX単剤を比較する第Ⅲ相試験(REVEL試験)が行われ,主要評価項目であるOSは,ラムシルマブ併用群で有意な延長を認めた(10.5カ月vs 9.1カ月,HR 0.86,95%CI:0.75-0.98,P=0.023)。また,ラムシルマブ併用群において,PFS(4.5カ月vs 3.0カ月,HR 0.76,95%CI:0.68-0.86,P<0.0001),ORR(23% vs 14%,P<0.0001)も有意に良好であった。毒性に関しては,ラムシルマブ併用群でGrade 3/4の好中球減少,発熱性好中球減少,全Gradeの血小板減少,口内炎がより高頻度であったが,Grade 3以上の高血圧は6%で出血性イベントの多くはGrade 1/2であった16)

     また本邦において,DTX+ラムシルマブ併用療法とDTX単剤のランダム化比較第Ⅱ相試験(JVCG試験)が行われ,ラムシルマブ併用群においてPFS(5.2カ月vs 4.2カ月,HR 0.83,95%CI:0.59-1.16),OS(15.2カ月vs 13.9カ月,HR 0.77,95%CI:0.56-1.32),ORR(28.9% vs 18.5%)ともに良好な結果が示された。毒性に関しては,ラムシルマブ併用群において発熱性好中球減少の頻度が高く(34% vs 19%),低アルブミン血症,血小板減少,口内炎,鼻出血,蛋白尿などもDTX単剤よりも高頻度であったが,ほとんどはGrade 1/2であった17)。ラムシルマブにおいてもベバシズマブと同様に出血リスクには注意が必要であり,投与に際してはその適応を十分検討する必要がある。

     以上より,ラムシルマブは適応と考えられる症例においてDTXに追加するよう勧められる。エビデンスの強さはB,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
26%
(6/23)
74%
(17/23)
0% 0% 0%
  • b.75歳以上

     前述の第Ⅲ相試験(REVEL試験)における75歳以上のサブグループは不明である。また,本邦において実施された第Ⅱ相試験(JVCG試験)でも75歳以上の症例は10例と少数であるため75歳以上の高齢者に対するラムシルマブの安全性や有効性に関してのデータは十分ではない。一方,本ガイドラインの一次治療では,エビデンスの質は低いものの骨髄抑制などの毒性増加への懸念から,75歳以上に対してプラチナ製剤併用療法にラムシルマブと同じ血管新生阻害剤であるベバシズマブの併用を勧める根拠が乏しく,行わないよう提案されている(CQ71参照)。ラムシルマブについても若年者を中心とした本邦の第Ⅱ相試験において発熱性好中球減少をはじめとした毒性の増強が懸念されることを考えると,現時点で高齢者にラムシルマブを併用する根拠は明確ではない。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行わないよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 9%
(2/23)
9%
(2/23)
78%
(18/23)
4%
(1/23)
  • c.PS 2

     前述のREVEL試験,JVCG試験においては対象症例がPS 0-1であり16)17),PS 2に対するラムシルマブの安全性や有効性に関してのデータはない。よって,PS 2に対するラムシルマブは行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。PS 0-1を対象とした試験では,ラムシルマブ併用群で発熱性好中球減少の発現頻度が高く,PS不良例においてはラムシルマブの併用により毒性の悪化が懸念される。

     以上より,益と害のバランスを考慮し現時点では行わないよう勧められる。エビデンスの強さはD,ただし総合的評価では行わないよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 9%
(2/23)
87%
(20/23)
4%
(1/23)

CQ78.

二次治療以降でエルロチニブは推奨されるか?

推 奨
EGFR遺伝子変異陰性もしくは不明の患者に対して,エルロチニブ投与を行わないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:65%〕

解 説

 二次治療以降のⅣ期非小細胞肺癌を対象としたエルロチニブ単剤とプラセボとを比較する第Ⅲ相試験(BR21試験)において,ORRがそれぞれ8.9%と1%(P<0.001),PFSがそれぞれ2.2カ月と1.8カ月(HR 0.61,95%CI:0.51-0.74,P<0.001),主要評価項目であるOSが6.7カ月と4.7カ月(HR 0.70,95%CI:0.58-0.85,P<0.001)でいずれもエルロチニブ単剤群が有意に優れており,エルロチニブ単剤はⅣ期非小細胞肺癌に対する二次治療以降の治療選択肢の1つとなった18)

 その後,プラチナ製剤治療歴のあるEGFR遺伝子変異野生型症例を対象とし,二次治療としてDTX単剤とエルロチニブ単剤を比較する第Ⅲ相試験(TAILOR試験)が報告され,OSはDTX群が8.2カ月に対して,エルロチニブ群が5.4カ月(HR 0.73,95%CI:0.53-1.00,P=0.05)とDTX群が有意に良好であった19)。また本邦においても,主要評価項目をPFSとしてプラチナ製剤治療歴のある二次もしくは三次治療例を対象に,DTX単剤とエルロチニブ単剤を比較する第Ⅲ相試験(DELTA試験)が報告され,EGFR遺伝子変異陰性例におけるエルロチニブ群のPFSは1.3カ月,DTX群は2.9カ月(HR 1.57,95%CI:1.18-2.11,P<0.01)とエルロチニブ群で劣る結果であり,扁平上皮癌を含むEGFR遺伝子変異陰性非小細胞肺癌におけるエルロチニブ単剤の有効性はDTX単剤より低いことが示された20)

 近年,Ⅳ期非小細胞肺癌の二次治療においては,PD-1阻害剤であるニボルマブ単剤やペムブロリズマブ単剤,PD-L1阻害剤であるアテゾリズマブ単剤,DTX+ラムシルマブ療法は,DTX単剤との比較試験において有意なOSの延長を認めⅣ期非小細胞肺癌の標準治療となり,S-1単剤もDTX単剤に対する非劣性が示され標準治療の1つとなった。新たに標準治療となったこれらの薬剤の治療成績と前述のDTX単剤との比較試験の結果を考慮するとエルロチニブ単剤は有効性が低く,EGFR遺伝子変異陰性例においてはEGFR-TKIの間質性肺障害発症のリスク因子と報告されている臨床的背景をもつことが多く,間質性肺障害発症のリスクが高いとされる。

 以上より,ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明におけるエルロチニブ単剤は有効性と間質性肺障害のリスクなどから,現時点では行わないよう勧められる。エビデンスの強さはC,総合的評価では行わないよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 13%
(3/23)
17%
(4/23)
65%
(15/23)
4%
(1/23)
引用文献
1)
Brahmer J, Reckamp KL, Baas P, et al. Nivolumab versus Docetaxel in Advanced Squamous-Cell Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2015; 373(2): 123-35.
2)
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3)
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4)
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5)
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6)
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7)
Fehrenbacher L, Spira A, Ballinger M, et al; POPLAR Study Group. Atezolizumab versus docetaxel for patients with previously treated non-small-cell lung cancer(POPLAR): a multicentre, open-label, phase 2 randomised controlled trial. Lancet. 2016; 387(10030): 1837-46.
8)
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9)
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10)
Fossella FV, DeVore R, Kerr RN, et al. Randomized phaseⅢ trial of docetaxel versus vinorelbine or ifosfamide in patients with advanced non-small-cell lung cancer previously treated with platinum-containing chemotherapy regimens. The TAX 320 Non-Small Cell Lung Cancer Study Group. J Clin Oncol. 2000; 18(12): 2354-62.
11)
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12)
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16)
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レジメン
Ⅳ期非小細胞肺癌

ドライバー遺伝子変異/転座陽性

キナーゼ阻害剤療法
EGFR遺伝子変異陽性例 ゲフィチニブ 250 mg/日 1日1回
エルロチニブ 150 mg/日 1日1回
アファチニブ 40 mg/日 1日1回
オシメルチニブ 80 mg/日 1日1回
ダコミチニブ 45 mg/日 1日1回
ALK遺伝子転座陽性例 クリゾチニブ 500 mg/日 1日2回
アレクチニブ 600 mg/日 1日2回
セリチニブ 450 mg/日 1日1回
ロルラチニブ 100 mg/日 1日1回
ROS1遺伝子転座陽性例 クリゾチニブ 500 mg/日 1日2回
BRAF遺伝子変異陽性例 ダブラフェニブ 300 mg/日 1日2回
トラメチニブ 2 mg/日 1日1回
NTRK遺伝子転座陽性例 エヌトレクチニブ 600 mg/日 1日1回
併用レジメン(EGFR遺伝子変異陽性例のみ)
ベバシズマブ併用 エルロチニブ 150 mg/日 1日1回
ベバシズマブ 15 mg/kg,day 1 3週毎
細胞障害性抗癌剤併用 ゲフィチニブ 250 mg/日 1日1回
CBDCA (AUC=5),day 1 3~4週毎
PEM 500 mg/m2,day 1
・4~6コース終了後,増悪を認めなければゲフィチニブ+PEM併用の維持療法を考慮する

※PEMの投与に際しては下記ビタミンの補充を行う

①葉酸:投与の7日以上前から葉酸として1日1回0.5 mgを連日経口投与する。なお,本剤の投与を中止または終了する場合には,本剤最終投与日から22日目まで可能なかぎり葉酸を投与する。

②ビタミンB12:初回投与の少なくとも7日前に,ビタミンB12として1回 1 mgを筋肉内投与する。その後,本剤投与期間中および投与中止後22日目まで9週毎(3コース毎)に1回投与する。

ドライバー遺伝子変異/転座陰性

プラチナ製剤と第三世代以降の細胞障害性抗癌剤のレジメン
シスプラチンレジメン
CDDP 75 mg/m2,day 1 3週毎
PEM 500 mg/m2,day 1

・4コース終了後,増悪を認めなければPEM単剤の維持療法を考慮する

CDDP 80 mg/m2,day 1 3週毎
DTX 60 mg/m2,day 1
CDDP 80 mg/m2,day 1 3週毎
GEM 1000 mg/m2,day 1,8
CDDP 80 mg/m2,day 1 3週毎
VNR 25 mg/m2,day 1,8
CDDP 80 mg/m2,day 1 4週毎
CPT-11 60 mg/m2,day 1,8,15
CDDP 60 mg/m2,day 8 4~5週毎
S-1 40 mg/m2,1日2回,day 1-21

・増悪しなければ上記を6コース以内で繰り返す

※PEMの投与に際しては下記ビタミンの補充を行う

①葉酸:投与の7日以上前から葉酸として1日1回0.5 mgを連日経口投与する。なお,本剤の投与を中止または終了する場合には,本剤最終投与日から22日目まで可能なかぎり葉酸を投与する。

②ビタミンB12:初回投与の少なくとも7日前に,ビタミンB12として1回 1 mgを筋肉内投与する。その後,本剤投与期間中および投与中止後22日目まで9週毎(3コース毎)に1回投与する。

カルボプラチンレジメン
CBDCA (AUC=6),day 1 3週毎
PTX 200 mg/m2,day 1

・PTX投与30分前までにデキサメタゾン,H1,H2 blockerの前投薬を行う

CBDCA (AUC=5),day 1 3週毎
GEM 1000 mg/m2,day 1,8
CBDCA (AUC=5),day 1 3週毎
S-1 40 mg/m2,1日2回,day 1-14
CBDCA (AUC=6),day 1 3週毎
nab-PTX 100 mg/m2,day 1,8,15
CBDCA (AUC=5-6),day 1 3週毎
PEM 500 mg/m2,day 1

・4コース終了後,増悪を認めなければPEM単剤の維持療法を考慮する

・増悪しなければ上記を6コース以内で繰り返す

※PEMの投与に際しては下記ビタミンの補充を行う

①葉酸:投与の7日以上前から葉酸として1日1回0.5 mgを連日経口投与する。なお,本剤の投与を中止または終了する場合には,本剤最終投与日から22日目まで可能なかぎり葉酸を投与する。

②ビタミンB12:初回投与の少なくとも7日前に,ビタミンB12として1回 1 mgを筋肉内投与する。その後,本剤投与期間中および投与中止後22日目まで9週毎(3コース毎)に1回投与する。

ネダプラチンレジメン
NDP 100 mg/m2,day 1 3週毎
DTX 60 mg/m2,day 1

・増悪しなければ上記を6コース以内で繰り返す

細胞障害性抗癌剤と免疫チェックポイント阻害剤の併用レジメン
ペムブロリズマブ併用 (非扁平上皮癌のみ) 3週毎
CDDP 75 mg/m2,day 1
もしくはCBDCA もしくは(AUC=5),day 1
PEM 500 mg/m2,day 1
ペムブロリズマブ 200 mg/body,day 1

・4コース終了後,増悪を認めなければPEM+ペムブロリズマブ併用の維持療法を考慮する

(扁平上皮癌のみ) 3週毎
CBDCA (AUC=6),day 1
PTX 200 mg/m2,day 1
もしくはnab-PTX もしくは100 mg/m2,day 1,8,15
ペムブロリズマブ 200 mg/body,day 1

・4コース終了後,増悪を認めなければペムブロリズマブ単剤の維持療法を考慮する

・PTXを含むレジメンの場合,PTX投与30分前までにデキサメタゾン,H1,H2 blockerの前投薬を行う

アテゾリズマブ併用
(非扁平上皮癌のみ)
CBDCA (AUC=6),day 1 3週毎
PTX 200 mg/m2,day 1
ベバシズマブ 15 mg/kg,day 1
アテゾリズマブ 1200 mg/body,day 1

・4~6コース終了後,増悪を認めなければベバシズマブ+アテゾリズマブ併用の維持療法を考慮する

・PTX投与30分前までにデキサメタゾン,H1,H2 blockerの前投薬を行う

※PEMの投与に際しては下記ビタミンの補充を行う

①葉酸:投与の7日以上前から葉酸として1日1回0.5 mgを連日経口投与する。なお,本剤の投与を中止または終了する場合には,本剤最終投与日から22日目まで可能なかぎり葉酸を投与する。

②ビタミンB12:初回投与の少なくとも7日前に,ビタミンB12として1回 1 mgを筋肉内投与する。その後,本剤投与期間中および投与中止後22日目まで9週毎(3コース毎)に1回投与する。

分子標的治療薬併用レジメン
ベバシズマブ併用 CBDCA (AUC=6),day 1 3週毎
PTX 200 mg/m2,day 1
ベバシズマブ 15 mg/kg,day 1

・PTX投与30分前までにデキサメタゾン,H1,H2 blockerの前投薬を行う

・増悪しなければ上記を6コース以内で繰り返す

・プラチナ製剤併用療法の終了後,病勢増悪もしくは毒性中止までベバシズマブの単剤投与を継続する

ラムシルマブ併用 DTX 60 mg/m2,day 1 3週毎
ラムシルマブ 10 mg/kg,day 1
ネシツムマブ併用 CDDP 75 mg/m2,day 1 3週毎
GEM 1250 mg/m2,day 1,8
ネシツムマブ 800 mg/body,day 1,8

・4コース終了後,増悪を認めなければネシツムマブの単剤投与を継続する

単剤療法
免疫チェックポイント阻害剤 (PD-L1陽性細胞1%以上のみ) 3週毎
ペムブロリズマブ 200 mg/body,day 1
ニボルマブ 240 mg/body,day 1 2週毎
アテゾリズマブ 1200 mg/body,day 1 3週毎
細胞障害性抗癌剤 DTX 60 mg/m2,day 1 3週毎
PEM 500 mg/m2,day 1 3週毎
S-1 80-120 mg/body,1日2回,day 1-28 6週毎
GEM 1000 mg/m2,day 1,8,15 4週毎
VNR 25 mg/m2,day 1,8 3週毎

※PEMの投与に際しては下記ビタミンの補充を行う

① 葉酸:投与の7日以上前から葉酸として1日1回0.5 mgを連日経口投与する。なお,本剤の投与を中止または終了する場合には,本剤最終投与日から22日目まで可能なかぎり葉酸を投与する。

② ビタミンB12:初回投与の少なくとも7日前に,ビタミンB12として1回 1 mgを筋肉内投与する。その後,本剤投与期間中および投与中止後22日目まで9週毎(3コース毎)に1回投与する。

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