Ⅱ.治 療

4

緩和治療

文献検索と採択

文献検索期間
  • 1990年1月1日から2021年11月30日
文献検索方法
  • キーワード:malignant pleural mesothelioma, palliative or palliation, radiation or radiotherapy
  • 委員がPubMedを用いて検索し,2020年版からは国際医学情報センターの協力を得てより詳細な検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
検索式(検索日:2022年1月11日)
#1 悪性胸膜中皮腫
#2 #1×(緩和療法×放射線療法)
採択方法
  • 文献はメタアナリシス,第Ⅲ相試験,第Ⅱ相試験を中心に抽出し,総説もしくは検索時点で本邦における未承認薬を用いた試験は除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献,論文化されていない重要な学会報告は上記以外でも採用した。
  • これ以前の文献でも,今回の改訂に際し重要と考えられたものについては採用としている。

本文中に用いた略語および用語の解説

3D-CRT 3-dimensional conformal radiation therapy 3次元原体放射線治療
IMRT intensity-modulated radiation therapy 強度変調放射線治療

CQ17.

疼痛緩和目的の放射線治療は勧められるか?

推 奨
疼痛緩和目的の放射線治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:85%〕

解 説

 進行した胸膜中皮腫では,圧迫や浸潤により疼痛をきたすことが多い。緩和目的で放射線治療を施行した報告では,約60%の症例に疼痛緩和が得られたとされている1)2)。これらの報告では,主として40Gy/20回または36Gy/13回が用いられていた。また,単施設で189症例,227コースの緩和照射例を検討した報告で,1回線量4Gyの症例のほうが,1回線量4Gy未満の症例よりも緩和効果が高かった(50% vs 39%)3)。20Gy/5回の多施設第Ⅱ相試験の報告で,35%の症例で疼痛緩和効果があったとの報告もある4)。一方,Austin Healthのグループによる報告で,45Gy以上の高線量でGrade 3以上の重症な有害事象の発現率が3D-CRTで53%,IMRTで78%と高率に認められたとされている。緩和照射の際には,低線量で小さな範囲での照射が有用と考えられる5)

 現在のところ最適な分割方法や至適線量は不明であるが,胸膜中皮腫の疼痛に対して緩和照射は有効であり行うよう勧められる。

 以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では疼痛緩和目的の放射線治療を行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2名含む)/実施年度:2022年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
85%
(17/20)
10%
(2/20)
0% 5%
(1/20)
0%
引用文献
1)
Akmansu M, Erpolat OP, Goksel F, et al. Radiotherapy applications of patients with malignant mesothelioma:A single center experience. Rep Pract Oncol Radiother. 2012;18(2):82-6.
2)
Jenkins P, Milliner R, Salmon C. Re-evaluating the role of palliative radiotherapy in malignant pleural mesothelioma. Eur J Cancer. 2011;47(14):2143-9.
3)
de Graaf-Strukowska L, van der Zee J, van Putten W, et al. Factors influencing the outcome of radiotherapy in malignant mesothelioma of the pleura−−a single-institution experience with 189 patients. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1999;43(3):511-6.
4)
MacLeod N, Chalmers A, O’Rourke N, et al. Is Radiotherapy Useful for Treating Pain in Mesothelioma?:A Phase II Trial. J Thorac Oncol. 2015;10(6):944-50.
5)
Foroudi F, Smith JG, Putt F, et al. High-dose palliative radiotherapy for malignant pleural mesothelioma. J Med Imaging Radiat Oncol. 2017;61:797-803.
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