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「肺がん検診の手引き」にて「読影医の条件」に挙げられている「症例検討会・読影講習会」をどのように受講すべきか不明な先生方への御説明

肺がん検診委員会では、2022年4月13日付で、「『肺がん検診のための胸部単純X線症例検討会』および『肺癌診断を主とした胸部X線読影講習会』の実施要項、および『肺癌診断を主とした胸部X線読影講習会』の申請受付の開始について」と題した通知をホームページ上にアップすると共に、日本肺癌学会会員の皆さんへ通知メールを配信しました。その後、それらの症例検討会や読影講習会をどのように受ければ良いのか、という御質問がいくつか寄せられています。そこで、それに対する回答としてこの文章をアップすることにいたしました。

まず、肺癌取扱い規約第8版(補訂版)から、「肺がん検診の手引き」の中の「読影医」の条件として「症例検討会(肺がん検診のための胸部単純X線症例検討会)・読影講習会(肺癌診断を主とした胸部X線読影講習会)へ年1回以上参加すること」が加わったことは御存じと思います。そうなった経緯については、委員会報告として、雑誌「肺癌」2020;60:929-935(「肺がん検診の手引き」2020 改訂のねらい ―特に「読影医の条件」と「症例検討会の実施」について―)に報告してありますので、御一読頂きたく存じます。今回、「申請」や「認定」の用語を使用しておりますが、「認定制度」や「認定医」とは無関係であり、あくまで「精度管理」の問題であることを御理解下さい。

いわゆる「やりっぱなし検診(読影はするが、その後の結果については関知しない。そもそも精密検査結果を調べることすらしない)」を行っている検診機関が存在していることは以前から問題であったわけですが、国内で大きく報道された「見逃し事案」などを受けて、「せめて、要精検とした受診者の精密検査結果ぐらいは、検診機関に調査してもらおう。その結果を検討する会に読影医にも参加してもらうことで、読影医の読影能力向上にもつながる」という観点から、「読影医に参加してもらう症例検討会の実施を検診機関の責務とした」のが今回の改訂です。ただし、「症例検討会をしたことが無い」という機関もあると思われ、すぐには対応できないところもあるだろうから、その場合には「読影講習会を代替として認める」としたわけです(ただし、肺癌を中心とした胸部X線の読影に関する講習会でなければ意味がありませんので、そのような条件はつけたわけです)。

したがって、既に肺がん検診の読影に従事されている先生方の地域で「現時点で参加できる症例検討会・読影講習会が無い」という場合には、まずは、先生方が読影を委託されている検診機関に対して、「『肺がん検診の手引き』では、検診機関の責任で『肺がん検診のための胸部単純X線症例検討会』を実施することが求められていますので、その方向で検討してください。当該症例検討会の開催方法のノウハウなどは肺癌学会のホームページに詳述されています」との意見を具申して頂きたいのです。特に、県や地域の肺癌診療の中心となっているような先生方におかれましては、検診機関に対する影響力がきわめて大きいと考えられますので、そのような御指導をお願いいたします。

また上記の検討会の実施がすぐには難しい場合、次善の策として「肺癌診断を主とした胸部X線読影講習会」の開催を、検診実施機関に求めていただきたく存じます。この読影講習会についても、詳しい実施要項をホームページにアップしてあります。こちらは、講師さえ見つかって費用をかければ、実施にあたり手間や作業はあまり要りませんが、委員会としては、精度管理の点から望ましいのは「読影講習会」よりも「症例検討会」だと考えており、そちらを強く推奨しています。

「読影講習会」に関しては、現実に「画像読影に関する講習会」は国内で多数行われていて、主催は学会・研究会・医師会・自治体などさまざまな状況で実施されているわけですが、それらが「胸部X線を主としたものか」「肺がん・肺腫瘤を主としたものか」は、主催者以外は良くわからないことが少なくありません。ましてや、他の地域で行われているものがそれに合致しているかどうかを事前に知ることは困難です。そのために、「この目的に合致した講習会である」ことを主催者側から申告していただき、それを公表することによって、他地域の先生方も参加することができる、という仕組みを今回構築したわけです。ただし、5月から受付開始ですので、8月以降に実施する講習会のみに適用され(7月までに実施する講習会では、主催者判断あるいは参加者判断で結構です)、また、全国に周知されるまでに時間がかかることが想定されますので、順調に動くまでには若干の期間(数か月以上)を要すると思われます。それまでの間は、準備期間と言うような位置づけとなってもやむを得ないものと判断しておりますので、ご容赦頂けますよう御願い申し上げます。(なお、5月に申請された読影講習会のうち合致していると判断されたものについては、5月末までに「肺がん検診について」のページに公表される予定です)

なお、日本肺癌学会学術集会で行われている「肺がん検診読影セミナー」は「読影講習会」の要件に合致している、と判断していますので、これに参加すれば「読影医」の要件はクリアできることになります。ただし、学術集会への参加費などがかかりますので、本委員会としては「肺がん検診読影セミナーに全員が参加すれば良い」と考えているわけではなく、各地でこの目的に合致した講習会が多数開かれること、さらには、多くの検診機関で症例検討会が行われ、当該検診機関における検診結果・精検結果などを自己評価できる体制が構築されることを、より期待しています。

以上のような経緯で新たに導入したシステムですが、これを契機に各検診機関で実効性のある症例検討会が行われるように、先生方からも御指導して頂ければ、本邦の肺がん検診のレベルアップに大きく資することになるのではないかと思います。
御協力頂けますよう、よろしくお願いいたします。

2022年4月21日
肺がん検診委員会