がん患者さんはさまざまなストレスを感じ,気分が落ち込んで憂うつになったり,不安で眠れなかったりイライラしたりすることがあります。これらは,こころの自然な反応で,あなただけが経験するものではありません。まずは,医療者に相談してみてください。こころの変調により,食事・睡眠・仕事など日常生活に支障がでてくる場合には,専門的なこころのケアが必要になります。
ひとりで悩まずに,家族・友人や医療者に,ありのままを話してみましょう。聞いてもらうだけで少し楽になったり,話すことでこころの整理がついたりするかもしれません。
“悪い知らせ”を聞いた後の気持ちの落ち込みは,多くの場合,時間が経つにつれて少しずつ変化し,「つらいけれど,なんとかこれからのことを考えていこう」と,現実の生活に対応できるようになるといわれています。
こころの変調が続き,食事・睡眠・仕事など日常生活に支障が続くような場合は,専門的なこころのケアが必要になります。
「適応障害」とは,つらい現実にうまく適応できず,精神的苦痛が強く,日常生活に支障をきたしている状態です。
「うつ病」とは,適応障害よりもさらに精神的苦痛が強く,何も手につかないような落ち込みが2週間以上続き,日常生活をおくるのが難しい状態をいいます。脳の中で感情をつかさどる機能が過熱,摩耗し,過労を引き起こしている状態です。「生きている意味がない」などと否定的な感情をもってしまう方もいます。専門家の治療が必要な段階です。
「睡眠障害」には,眠りにつけない・眠りが浅い・早く目が覚めてしまう・眠れた気がせず疲れが回復しないなどの種類があります。快適と感じる睡眠時間やパターンは人それぞれですが,まずは十分な休養をとることがとても大切です。
こころの変調はつながりあい影響しあいます。不安で眠れないと,よけいに不安が高まり緊張が増してイライラし,悪循環となります。
こころのつらさの治療やケアは,精神科医・心療内科医,心理士,専門の看護師などが担当します。「精神科に相談するほどではない」「今は大丈夫」などと無理にがんばりすぎず,気軽に専門家に相談してみましょう。
睡眠導入薬(よい眠りを助ける),抗不安薬(不安や緊張をほぐす),抗うつ薬(気分の落ち込み・意欲の低下・緊張や焦燥感などのバランスを整える)などの薬剤を調整します。
カウンセリング,リラクセーション(呼吸法・筋弛緩法)などがあります。
ストレッチや散歩など軽くからだを動かすこと,深呼吸,ぬるめのお風呂や足浴,好きな音楽や軽い読み物,好きな香り(アロマセラピー),温かい飲み物など,自分にあったリラックス法を工夫してみましょう。