胸腺腫・胸腺がんの治療として,外科治療(手術),放射線療法,薬物療法(化学療法)があります。
すべての腫瘍が取り切れると判断された場合は,手術が行われ,腫瘍とともに胸腺をすべて摘出します。胸腺腫ではすべて取り切ることができれば,追加の治療は必要ありません。胸腺がんでは,周りの組織にがんがひろがっている場合はすべて取り切れても補助的に放射線療法を追加することがあります。
すべて取り切ることが難しいと判断された場合は,まず化学療法や化学放射線療法が行われて,その後,可能であれば手術が行われます。手術ができないと判断された場合は,化学療法や化学放射線療法が続けられます。また,手術ができてもすべて取り切れなかった場合は,残った腫瘍に対して術後放射線療法や化学放射線療法が行われます。
再発や遠隔転移がある場合は,化学療法を中心とした治療が行われますが,可能であれば手術や放射線療法を組み合わせた集学的治療も行われています。
手術は通常,胸骨を縦切開する方法(開胸)で行われますが,最近では胸腔鏡やロボット支援手術も行われています。放射線療法は,副作用を軽くするため三次元的に行われ,線量は1 回1.8~2.0 Gyで,標準的に総線量50~60 Gyが照射されます。化学療法は,胸腺腫ではシスプラチンとアンスラサイクリン系抗がん剤の併用が,胸腺がんではプラチナ製剤を用いた多剤併用療法が行われます。
化学療法施行後の進行・再発胸腺がんに対して,分子標的治療薬レンバチニブによる治療が実施可能です。レンバチニブは内服薬で,頻度の高い副作用として高血圧,タンパク尿,手足症候群(手や足の皮膚の赤みと感覚障害)があります。