がん患者さんの食欲低下にはさまざまな原因があり,いくつかの原因がかさなっていることもあります。食欲がないときに無理に食べようとしてもからだにも気持ちにも負担になり,楽しいはずの食事がむしろ苦痛となってしまうことさえあります。
食欲がないときには無理をせず,食事の工夫をするとともに,その原因に対してできることがないか担当医や看護師,栄養士などの医療者と相談していきましょう。
がんが進行するとがん悪液質がん患者さんの食欲が低下してあるいは食事をとっていてもやせてくる状態は「がん悪液質」といわれます。体重減少,とくに筋肉がやせてきて日常生活もままならなくなってくるなどがん患者さんにとってがん悪液質は大きな問題となります。以前は「がんだから仕方がない」と考えられてきましたが,近年では早いうちから食事の工夫や運動などを行うことでがん悪液質が進むのを遅らせたり,改善させることができないか検討されるようになっています。また体重減少および食欲不振を改善する薬剤として2021年4月からアナモレリンが使用できるようになりました。患者さんの状態によっては良いお薬となりますので,担当医とも相談してみましょう。と呼ばれる状態が引き起こされることがあります。また肺がんではまれですが,がんそのものが食道や胃,腸など食べ物の通り道を直接圧迫することもあります。がんによって血液中のカルシウムやナトリウムの濃度が異常になることで食欲が低下する場合もあるので普段の血液検査も大切です。
抗がん剤や放射線療法の副作用として食欲が低下することがあります。これらの治療によって生じた口内炎が原因の場合はQ93を参照してください。がんに対する薬物だけでなく,普段服用している薬が食欲低下の原因となることもあります。担当医や看護師,薬剤師と一緒に内服薬の確認をしましょう。
ストレスや不安から食欲が低下することもあります。Q53を参照してください。