a．胸膜中皮腫の病期診断のCT検査の際に造影剤を使用することで，中皮腫病変が造影効果を有することから，胸壁や内胸筋群への浸潤，横隔膜浸潤が明瞭化する^1）2）。また，胸部大動脈，肺動静脈などの縦隔/肺門の正常構造が明瞭化することにより，リンパ節腫大のより正確な評価が可能となる。

　以上より，エビデンスの強さはC，また総合的評価では胸膜中皮腫の病期診断においてCT撮像時に造影剤を使用することを強く推奨（1で推奨）できると判断した。下記に，推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

b．MRIは，胸壁や内胸筋膜への局所浸潤や横隔膜浸潤の診断能はCTより高い^1）。同様に葉間裂への広がり，骨への局所浸潤の評価においてもCTより有用との報告がある^3）。しかし，近年のmultidetector CTの発達に伴い任意の方向で再構成できるようになり，CTでも局所の広がりに関してかなり正確に評価可能である^4）。また，病期診断において，全身MRIはFDG-PET/CTと同様の診断精度を有するとの報告もある^5）。しかし，MRIは常にCTやFDG-PET/CTに付加する情報が得られるわけではなく，実臨床において多くの施設でルーチンに用いられていない^6）。

　以上より，エビデンスの強さはD，また総合的評価では胸膜中皮腫の病期診断に，胸部単純/造影CTに加えMRIを行わないことを強く推奨（1で推奨）できると判断した。下記に，推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

c．FDG-PET/CTは，病期診断において一般にやや過小評価されるものの^7）8），Stage ⅡおよびⅢに対する正診率はCTやMRIよりも高い^9）。局所浸潤の評価には向かないが，無症状あるいは他の画像診断で発見されていない胸郭外遠隔転移の検出に優れている^{8）10）～12）}。最近では，PET/MRIがPET/CTよりもT分類において有用な可能性が報告されている^13）。

　以上より，エビデンスの強さはC，また総合的評価では胸膜中皮腫の病期診断に，胸部単純/造影CTに加えFDG-PET/CTを行うことを強く推奨（1で推奨）できると判断した。下記に，推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。