Ⅱ.非小細胞肺癌(NSCLC)
1
外科治療
- 総 論
- 肺癌に対する外科治療
肺癌に対する外科治療の意義はランダム化比較試験で確認されたものではないが,過去の膨大な予後および合併症に関する研究から,みなし標準治療として確認されるものであるため,臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌で肺切除可能な患者に対して外科切除を強く推奨する(CQ2)。耐術能における手術適応決定には,呼吸機能検査や循環機能検査をはじめ,血液・生化学所見や年齢などを総合的に評価・検討することを強く推奨する(CQ1)。大規模な多施設共同ランダム化比較試験(JCOG0802/WJOG4607L試験,CALGB140503試験)の結果から,臨床病期ⅠA1-2期の非小細胞肺癌で外科切除可能な患者に対しては,前回の改訂に引き続き縮小手術を推奨の一部とする(CQ3)。充実成分最大径/腫瘍最大径比≦0.5の肺野末梢非小細胞肺癌に対しては,縮小手術(区域切除または楔状切除)を行うことを強く推奨する(CQ3-a,b)。充実成分最大径/腫瘍最大径比>0.5の肺野末梢非小細胞肺癌に対しては,区域切除または肺葉切除を行うことを強く推奨する(CQ3-c)。本邦における大規模臨床試験の結果は区域切除の生存は良好であったが,局所再発率が区域切除群で約2倍であったこと,区域切除群のうち22例が肺葉切除に術式を変更していることなどを鑑み,引き続き肺葉切除も推奨とする。臨床病期ⅠA3-Ⅱ期非小細胞肺癌で外科切除可能な患者に対しては肺葉以上の切除を行うよう強く推奨する(CQ4)。標準手術(肺葉切除もしくは区域切除)が不可能な患者に対する縮小切除に関しては,昨今の放射線治療は技術的進歩があるものの,後方視的な検討では依然として手術の有効性が高いと考えられ,これを行うよう強く推奨する(CQ5)。cN2非小細胞肺癌の治療方針は,呼吸器外科医,内科医,放射線治療医を含めた集学的治療グループで検討することを強く推奨する(CQ6)。臨床病期ⅢA期cT4N0-1非小細胞肺癌に対しては,外科切除を行うよう強く推奨する(CQ7)。肺癌の外科治療におけるリンパ節郭清の意義は,系統的リンパ節郭清と系統的リンパ節サンプリングをランダムに比較した試験の結果から予後の改善にはつながらないものの,正確な病期診断に資すると解釈されている。一方で致命的合併症は稀である。よってリンパ節郭清もしくはサンプリングを行い,病理学的評価を行うことを強く推奨する(CQ8)。胸壁に浸潤した臨床病期T3N0-1M0の非小細胞肺癌には,胸壁合併切除を行うよう強く推奨する(CQ9)。心膜に浸潤した臨床病期T3N0-1M0非小細胞肺癌には心膜合併切除を行うよう強く推奨する(CQ10)。気管支・肺動脈形成術は肺全摘術と比較して,局所制御,術後合併症発生率,術後死亡率,そして予後の観点から良好であり,肺全摘術を避けるためにこれを行うことを強く推奨する(CQ11)。同一肺葉内結節で転移(PM1)もしくは多発肺癌を疑うcN0症例において,手術を行うよう強く推奨する(CQ12)。同時性他肺葉内結節で,多発原発性肺癌を疑う症例においては,手術を行うよう強く推奨する(CQ13)。同時性肺内転移(PM2,3)を疑う症例においては,手術を行わないよう弱く推奨する(CQ14)。異時性多発肺癌に対しては,耐術能があれば手術を行うよう強く推奨する(CQ15)。臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対する胸腔鏡下肺切除に関しては,大規模な臨床試験に基づくエビデンスは十分ではないものの,日常臨床に十二分に普及しており安全性も確認されているため,これを行うことを強く推奨する(CQ16)。また,ロボット手術に関しては,近年胸腔鏡手術と同等の成績が示されており,臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対して,ロボット支援下肺切除を行うことを弱く推奨する(CQ17)。外科切除後に術後経過観察を行うことの意義に関しては,十分なエビデンスがあるとは言い難いが日常臨床にすでに十分浸透しており,これを行うことを強く推奨する(CQ18)。非小細胞肺癌術後の患者に対しては禁煙を行うよう強く推奨する(CQ19)。切除可能な低悪性度腫瘍(カルチノイド,粘表皮癌,腺様嚢胞癌)に対しては,非小細胞肺癌に準じた外科治療を行うよう強く推奨する(CQ20)。
本文中に用いた略語および用語の解説
CTR | consolidation tumor ratio | 充実成分最大径/腫瘍最大径比 |
---|---|---|
DFS | disease free survival | 無病生存期間 |
HR | hazard ratio | ハザード比 |
NCDB | National Cancer Database | |
OS | overall survival | 全生存期間 |
PS | performance status | 全身状態 |
QOL | quality of life | 生活の質 |
SBRT | stereotactic body radiotherapy | 体幹部定位放射線治療 |
RATS | robot-assisted thoracoscopic surgery | ロボット支援胸腔鏡手術 |
VATS | video-assisted thoracic surgery | 胸腔鏡補助下手術 |
ACOSOG | American College of Surgeons Oncology Group | |
ESMO | European Society for Medical Oncology | |
IASLC | International Association for the Study of Lung Cancer | |
JCOG | Japan Clinical Oncology Group | |
SEER | Surveillance Epidemiology and End Results |
- 1-1
- 手術適応
文献検索と採択
- 文献検索期間
-
- 2004年12月1日から2023年11月30日(術前呼吸機能・循環機能評価)
- 1994年12月1日から2023年11月30日(臨床病期Ⅰ-Ⅱ期,臨床病期ⅢA期)
- 2004年12月1日から2023年11月30日(臨床病期ⅢA期T4N0-1)
- 文献検索方法
-
- キーワード:術前呼吸機能・循環機能評価(lung cancer, surgery, function, complication, morbidity or mortality, age, pulmonary function, preoperative care, cardiovascular function),臨床病期Ⅰ-Ⅱ期(lung cancer, surgery, stage Ⅰ, stage Ⅱ, sleeve, clinical stage Ⅰ or Ⅱ, Pneumonectomy),臨床病期ⅢA期(lung cancer, surgery, ⅢA, N2, clinical stage ⅢA, Pneumonectomy),臨床病期ⅢA期T4N0-1(lung cancer, carcinoma, non-small cell carcinoma, surgical procedures, resection, stage Ⅲ, stage ⅢA, T4, T4N0, T4N1)
- 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,さらに今回,下記の検索式で2022年版以降の検索を行った。
- 検索式(検索日:2023年12月25日)
- 術前呼吸機能・循環機能評価
-
#1 lung cancer OR surgery OR function OR complication OR morbidity or mortality OR age OR pulmonary function OR preoperative care OR cardiovascular function
- 臨床病期Ⅰ-Ⅱ期
-
#1 lung cancer OR surgery OR stage I OR stage II OR sleeve OR clinical stage I or II OR Pneumonectomy/methods("[majr] OR "lung neoplasms/surgery"[majr]") #2 "Neoplasm Staging" #3 #1 AND #2
- 臨床病期ⅢA期
-
#1 lung cancer OR surgery OR IIIA OR N2 OR clinical stage IIIA OR Pneumonectomy/methods("[majr] OR "lung neoplasms/surgery"[majr]") #2 "Neoplasm Staging" #3 #1 AND #2
- 臨床病期ⅢA期T4N0-1
-
#1 "Carcinoma, Non-Small-Cell Lung/surgery" #2 "Carcinoma, Non-Small-Cell Lung/therapy" AND "Surgical Procedures, Operative" #3 "stage III" OR "stage IIIA" OR "stage 3" OR "stage 3A" OR "stage I-III" OR "stage II-III" OR "stage 1-3" OR "stage 2-3" OR ("Neoplasm Staging" AND (IIIA OR 3A)) AND (T4 OR T4N0 OR T4N1) #4 (#1 OR #2) AND #3 #5 ("Non-Small-Cell Lung Carcinoma" OR "Nonsmall-Cell Lung Carcinoma" OR "Non-Small Cell Lung Cancer" OR "Nonsmall Cell Lung Cancer" OR NSCLC AND (surgery OR surgical OR operati OR pneumonectom OR resect AND ("stage III" OR "stage IIIA" OR "stage 3" OR "stage 3A" OR "stage I-III" OR "stage II-III" OR "stage 1-3" OR "stage 2-3" OR (stag AND (IIIA OR 3A)) AND (T4 OR T4N0 OR T4N1)
- 採択方法
-
- メタアナリシス,第Ⅲ相試験,ランダム化比較第Ⅱ相試験を抽出し,review articleは除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
- 臨床病期ⅢA期T4N0-1では臨床試験による文献はなく,後方視的観察研究の文献を採用した。施設の報告については,症例数を考慮した。
- 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。
1-1-1.手術適応(術前呼吸機能・循環機能評価)
CQ1.
手術適応決定には,呼吸機能評価(spirometry)や循環機能評価(安静時心電図)をはじめ,血液・生化学所見や年齢などを総合的に評価・検討することが必要か?
- 推 奨
- 術前呼吸機能・循環機能をはじめ総合的に評価・検討を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C〕
呼吸機能検査のspirometryは,拘束性障害や閉塞性障害を評価する方法として確立されている。術前肺機能評価と肺切除後のmortality,morbidityの関連については,1986年に海外からの報告があり1),その他にも術前肺機能評価との関連は検討されている2)が,単一の普遍的な指標はない。術後呼吸機能の評価として,術前呼吸機能評価(spirometry)と肺血流シンチグラフィや肺区域数を用いての予測術後肺機能は,術後実測値と良い相関を示したとの報告があり,術後予測1秒量(predicted postoperative FEV1.0;ppoFEV1.0)≧800 mLなどの指標が参考値として用いられている3)4)。さらに,ppo%FEV1.0およびppo%DLcoと術後の長期予後の強い相関を示した報告もある5)。リスク評価としては,① pre%FEV1.0,pre%DLco,② ppo%FEV1.0,ppo%DLco,③ 運動負荷試験を指標にアルゴリズムを示した報告がある6)。術前の呼吸訓練は呼吸機能やQOLを有意に改善させ,肺癌手術後の在院日数,合併症を有意に減少させる7)8)。特に,最近はシステマティックレビュー論文でも術前呼吸訓練の有用性が示されている9)。
術前検査としての循環機能検査,特に安静時心電図については,基本的な機能評価として一般的に行われている。加えて,症例に応じて種々の負荷試験や超音波検査(心,血管など)などが行われている。これを推奨する根拠となる臨床試験はないものの,肺癌登録合同委員会の2010年手術例の調査では,併存疾患として心疾患を7.7%に認めた(不整脈4.1%,治療適応のある冠動脈疾患2.0%など)10)。
血液・生化学所見や年齢などの総合的評価は全身状態の把握のために大切であり,明確な臨床試験はないが,手術適応の決定に必須であることは,議論の余地がない。
このように,呼吸機能検査と循環機能評価(安静時心電図)をはじめ,血液・生化学所見や年齢などを総合的に評価・検討することは,手術適応の決定において不可欠である。
以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では術前呼吸機能・循環機能をはじめ総合的に評価・検討は行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
---|---|---|---|---|
100% (9/9) |
0% | 0% | 0% | 0% |
- 1)
- Gass GD, Olsen GN. Preoperative pulmonary function testing to predict postoperative morbidity and mortality. Chest. 1986;89(1):127-35.
- 2)
- Puri V, Crabtree TD, Bell JM, et al. National cooperative group trials of“high-risk”patients with lung cancer:are they truly“high-risk”? Ann Thorac Surg. 2014;97(5):1678-83;discussion 1683-5.
- 3)
- Olsen GN, Block AJ, Tobias JA. Prediction of postpneumonectomy pulmonary function using quantitative macroaggregate lung scanning. Chest. 1974;66(1):13-6.
- 4)
- Wernly JA, DeMeester TR, Kirchner PT, et al. Clinical value of quantitative ventilation-perfusion lung scans in the surgical management of bronchogenic carcinoma. J Thorac Cardiovasc Surg. 1980;80(4):535-43.
- 5)
- Ferguson MK, Watson S, Johnson E, et al. Predicted postoperative lung function is associated with all-cause long-term mortality after major lung resection for cancer. Eur J Cardiothorac Surg. 2014;45(4):660-4.
- 6)
- 日本呼吸器外科学会.肺癌手術症例に対する術前呼吸機能評価のガイドライン.
http://www.jacsurg.gr.jp/committee/riskappraisal.pdf - 7)
- Sebio Garcia R, Yáñez Brage MI, Giménez Moolhuyzen E, et al. Functional and postoperative outcomes after preoperative exercise training in patients with lung cancer:a systematic review and meta-analysis. Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2016;23(3):486-97.
- 8)
- Pu CY, Batarseh H, Zafron ML, et al. Effects of preoperative breathing exercise on postoperative outcomes for patients with lung cancer undergoing curative intent lung resection:a meta-analysis. Arch Phys Med Rehabil. 2021;102(12):2416-27.e4.
- 9)
- Voorn MJJ, Franssen RFW, Hoogeboom TJ, et al. Evidence base for exercise prehabilitation suggests favourable outcomes for patients undergoing surgery for non-small cell lung cancer despite being of low therapeutic quality:a systematic review and meta-analysis. Eur J Surg Oncol. 2023;49(5):879-94. Epub 2023 Feb 4.
- 10)
- 岡見次郎,新谷康,奥村明之進,他.2010年肺癌外科切除例の全国集計に関する肺癌登録合同委員会報告―二次報告―.肺癌.2019;59:2-28.
1-1-2.手術適応(臨床病期Ⅰ-Ⅱ期)
CQ2.
臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌で標準手術可能な患者には,外科切除が勧められるか?
- 推 奨
- 臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌で標準手術可能な患者には,外科切除を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C〕
早期肺癌に対するランダム化比較試験は症例集積が難しく外科治療と薬物療法との比較試験の報告はない。Ⅰ期肺癌に対しては外科治療と定位放射線治療のランダム化比較試験が行われたものの(ACOSOG Z4099/RTOG1021試験,ROSEL試験,STARS試験,SABRTooth試験),いずれも症例集積不良のため中止となった1)2)。
定位放射線治療の単群前方視的試験(Revised STARS試験)では,診断が確定した腫瘍径3 cm以下のⅠ期非小細胞肺癌に対する定位放射線治療80例の3年生存率が91%であり,傾向スコア・マッチングを用いて抽出した肺葉切除症例の全生存と有意差がないことが示された3)。しかし早期肺癌に対する定位放射線治療と手術の比較試験のメタアナリシスでは,全生存,癌特異的生存率,無再発生存ともに手術のほうが良好であることが示されている4)。加えて,カナダにおける後方視的コホート観察研究で,Ⅰ期非小細胞肺癌に対して手術もしくは定位放射線治療を受けた70歳以上の高齢者において,手術群のほうが長期的な生活の自立が維持されることが示されている5)。
肺癌外科切除18,973例の報告によれば,全体の5年生存率は74.7%であり,臨床病期0,ⅠA1,ⅠA2,ⅠA3,ⅠB,ⅡA,ⅡB期(第8版)ではそれぞれ97.0%,91.6%,81.4%,74.8%,71.5%,60.2%,58.1%であった6)。
以上より,十分な症例数のランダム比較試験がなく,メタアナリシスの結果により手術の有効性が示されていることから,臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌で肺切除可能な患者には外科切除を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
---|---|---|---|---|
100% (9/9) |
0% | 0% | 0% | 0% |
すりガラス濃度を主体とする小型の肺結節は,部分充実型結節(part-solid nodule)とすりガラス型結節(pure ground-glass nodule)に分類される。これらに対し確定診断(外科切除)を行うか経過観察を行うかは臨床上議論になることが多い。この件については本ガイドライン「Ⅰ.肺癌の診断(CQ6)」でも触れられているが,ここでは主に手術適応の観点から,2024年3月に改訂された日本CT検診学会の「低線量CTによる肺がん検診の肺結節の判定基準と経過観察の考え方」を参考に記載する7)。部分充実型結節は,悪性疾患である可能性が高いが8)9),炎症性病変の可能性もあるため,3カ月後のTS-CT(thin-section CT)にて縮小や消失の有無を確認し,結節全体の最大径が15 mm以上の場合,および15 mm未満でも充実成分の最大径が8 mm以上の場合は確定診断(外科切除)を行うことが提唱されている(結節の最大径が15 mm未満でかつ充実成分の最大径が8 mm未満の場合は経過観察が原則とされている)。すりガラス型結節(pure ground-glass nodule)は,最大径が15 mm以上で3カ月後のTS-CTにて不変(ないし増大)の場合は確定診断(外科切除)を行うことが提唱されている(15 mm未満の場合は経過観察を継続することが提唱されている)。しかしながら,すりガラス型結節が部分充実型へ変化する場合があることや,部分充実型結節には外科切除により病理学的浸潤性腺癌と診断されるものが含まれていることに留意し10),患者背景(年齢や併存疾患など),胸膜陥入像の有無,予定術式,患者の手術希望の有無,などから確定診断(外科切除)と経過観察のリスクとベネフィットを勘案し判断することが望まれる。特に結節が胸膜直下に存在する場合は,経過によっては胸膜播種を含む進行も考えられるため十分に慎重に判断することが必要である。
CQ3.
臨床病期ⅠA1-2期非小細胞肺癌で外科切除可能な患者に対する適切な術式は何か?
- 推 奨
-
- a.
- 臨床病期ⅠA1-2期,充実成分最大径/腫瘍最大径比≦0.25の肺野末梢非小細胞肺癌に対して,縮小手術(区域切除または楔状切除)を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B〕
-
- b.
- 臨床病期ⅠA1-2期,0.25<充実成分最大径/腫瘍最大径比≦0.5の肺野末梢非小細胞肺癌に対して,区域切除を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B〕
-
- c.
- 臨床病期ⅠA1-2期,充実成分最大径/腫瘍最大径比>0.5の肺野末梢非小細胞肺癌に対して,区域切除または肺葉切除を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B〕
-
a.腫瘍最大径2 cm以下の非小細胞肺癌のうち,胸部CTで広範囲にすりガラス濃度を呈する肺癌は病理学的に非浸潤癌であることが報告されている(JCOG0201試験)11)。この報告に基づき,充実成分最大径/腫瘍最大径比(CTR)≦0.25の末梢型非小細胞肺癌に対して縮小手術を行う単群前方視的試験が遂行された(JCOG0804/WJOG4507L試験)12)。333例が登録されたこの研究では,切除マージンが不十分と判断された11例は肺葉切除に術式を変更し,切除マージンが確保された314例に縮小手術(うち楔状切除258例)が行われた。肉眼的に評価された切除マージンの中央値は15 mm(四分位範囲10~20 mm)であった。縮小手術の5年無再発生存率は99.7%であり,十分に切除マージンを確保した縮小手術は良好な成績が示された。
非末梢病変に関しては区域切除の非ランダム化検証的試験(JCOG1211試験)13)の対象として組み込まれ,5年無再発生存率98.0%と良好な成績が示された。ただしJCOG1211試験に登録された357例中非末梢型病変として登録された症例は40例(11%)に留まること,切除マージン2 cm以上を確保することが条件であったことを考慮すると,非末梢病変に対しては十分な切除マージンの確保と慎重な適応判断を要する。
すりガラス濃度を呈する肺癌に対する縮小手術は,術後5年以降に再発をきたした症例も報告されており14),十分な術後経過観察を要する。
以上より,臨床病期ⅠA1-2期,充実成分最大径/腫瘍最大径比≦0.25の肺野末梢非小細胞肺癌に対して,縮小手術(区域切除または楔状切除)を行うよう推奨する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
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100% (9/9) |
0% | 0% | 0% | 0% |
-
b.JCOG0201試験の長期予後の解析で最大腫瘍径≦3 cm,C/T比≦0.5のグループの5年無再発生存率が95.9%と非常に良好であることが示されたため15),前述したJCOG0804試験の対象を除いた腫瘍径が3 cm以下かつ,C/T比≦0.5の非小細胞肺癌に対して区域切除の非ランダム化検証的試験(JCOG1211試験)13)が行われた。JCOG1211試験では切除マージンを2 cm以上または腫瘍径以上確保するよう規定された。20歳以上79歳以下の396例が登録され,19例が肺葉切除に術式変更された。区域切除が行われた357例の切除マージンの中央値は25 mm(四分位範囲17~32 mm)であった。再発は2例(対側・縦隔リンパ節転移1例,骨転移1例)で5年無再発生存率は98.0%であり,良好な成績が示された。
以上より,臨床病期ⅠA1-2期,0.25<充実成分最大径/腫瘍最大径比≦0.5の肺野末梢非小細胞肺癌に対して,区域切除を行うよう推奨する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
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100% (9/9) |
0% | 0% | 0% | 0% |
-
c.臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌に対する標準術式は肺葉切除であったが,腫瘍最大径2 cm以下の末梢型非小細胞肺癌に対して,肺葉切除と縮小切除を比較する第Ⅲ相試験が本邦と米国で遂行された。いずれの試験も,肺野末梢(腫瘍中心が外套1/3に存在)のN0肺癌に対して行われたが,本邦の試験(JCOG0802/WJOG4607L試験)はPS 0-1,20歳以上85歳以下の患者を対象としており,米国を中心とした試験(CALGB140503試験)はPS 0-2,18歳以上の患者を対象としている。またJCOG0802/WJOG4607L試験の縮小手術は区域切除であるが,CALGB140503試験の縮小手術は術者の判断で区域切除または楔状切除が選択された。
手術の安全性に関してはいずれの術式も良好な成績であることが示された。JCOG0802/WJOG4607L試験に参加した1,106例(うち区域切除552例)の術後死亡率は0%16),CALGB140503試験に参加した697例(うち区域切除129例,楔状切除200例)の90日死亡率は肺葉切除1.7%,縮小切除1.2%であった17)。
予後に関する解析ではJCOG0802/WJOG4607L試験では18),中央観察期間7.3年の解析で区域切除の全生存が肺葉切除を上回る結果が示された(5年生存率:肺葉切除91.1%,区域切除94.3%)。全生存における区域切除のHRは0.663であった。副次評価項目である無再発生存率(5年無再発生存率:肺葉切除87.9%,区域切除88.0%)に関しては有意差は認められなかった。死亡症例は肺葉切除/区域切除で83例/58例で,その内訳は癌死28例/26例,他癌死31例/12例,非癌死21例/15例であった。術後有害事象(Grade 2以上の術後合併症:肺葉切除26%,区域切除27%)に関しては両群に有意差は認められなかったが,術後気漏,胸腔ドレーン再挿入は区域切除群で多かった(気漏:肺葉切除3.8%,区域切除6.5%,ドレーン再挿入:肺葉切除1.4%,区域切除3.8%)。手術時間,出血量に関しては,区域切除群で手術時間が長く,出血量が多かった(手術時間:肺葉切除174分,区域切除201分,出血量:肺葉切除45 mL,区域切除50 mL)。術後呼吸機能の変化割合に関しては,努力性一秒量の変化割合は区域切除群が少なかったものの,呼吸機能低下の軽減の目安としていた群間差10%には到達せず,術後1年で群間差3.5%であった。局所再発は区域切除群で多く(肺葉切除5.4%,区域切除10.5%),切除断端再発をきたしたのは区域切除のみであり,11例(6.8%)であった。
全生存に関するサブグループ解析では年齢,性別,組織型,充実成分径,いずれのサブグループにおいても区域切除の全生存が上回る結果であった。ただし副次解析で充実性結節に関する詳細なサブグループ解析が行われ19),70歳以上(5年生存率:肺葉切除77.1%,区域切除85.6%),男性(5年生存率:肺葉切除80.5%,区域切除92.1%)においては区域切除の全生存が上回る一方,70歳未満(5年生存率:肺葉切除92.5%,区域切除97.0%),女性(5年生存率:肺葉切除95.2%,区域切除93.1%)においては全生存に有意差は認められず,無再発生存に関しては70歳未満(5年無再発生存率:肺葉切除87.4%,区域切除84.4%),女性(5年無再発生存率:肺葉切除94.2%,区域切除82.2%)において肺葉切除が上回ることが示された。
CALGB140503試験では20)中央観察期間7年の解析で縮小手術の無病生存の非劣性が示された(5年無病生存率:肺葉切除64.1%,縮小手術63.6%)。無病生存における区域切除のハザード比は1.01であった。副次評価項目である全生存(5年生存率:肺葉切除78.9%,縮小手術80.3%),再発率(肺葉切除29.3%,縮小切除30.4%),局所再発率(肺葉切除10.0%,縮小切除13.4%)に関しても有意差は認められなかった。術後呼吸機能の変化割合に関しては,6カ月後の努力性一秒量の変化割合は縮小手術で-4.0%,肺葉切除群で-6.0%であった。CALGB140503試験では縮小手術群340例のうち201例(59.1%)に楔状切除が行われ,副次解析で,区域切除と楔状切除の予後に有意差は認めなかったことが示された21)(5年無病生存率:区域切除63.8%,楔状切除62.5%)。ただしJCOG0802/WJOG4607L試験を含む12,667例を対象としたメタアナリシス22)では,区域切除は肺葉切除と同等の成績だが楔状切除は肺葉切除と比べて予後不良であったと報告されている。
JCOG0802/WJOG4607L試験において主要評価項目である全生存で区域切除が上回ったことから,区域切除を推奨に加えた。ただし局所再発が区域切除群で多かったこと,区域切除群のうち22例(うち,リンパ節転移16例,切除マージン不十分4例)が肺葉切除に術式を変更していることを鑑み,慎重な症例選択と十分な切除マージンの確保が重要であると考えられる。
術中のリンパ節診断や切除マージンの評価方法が未確立であることからリンパ節転移を有する可能性がある症例や切除マージンの確保困難な症例においては従来どおり肺葉切除を行うよう推奨する。また,副次解析の結果から充実性結節に関しては,女性や70歳未満の症例には慎重な術式選択を要する。
CALGB140503試験で非劣性が示された楔状切除に関しては,JCOG0802/WJOG4607L試験と生存率が大きく異なっており患者背景や組織型の差異が示唆されていること,肺門リンパ節評価が難しいこと,メタアナリシスで肺葉切除の予後に劣ると報告されていることから,現時点では区域切除と同等に推奨する根拠は乏しいと考えられる。
以上より,臨床病期ⅠA1-2期,充実成分最大径/腫瘍最大径比>0.5の肺野末梢非小細胞肺癌に対して,区域切除または肺葉切除を行うよう推奨する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
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100% (9/9) |
0% | 0% | 0% | 0% |
CQ4.
臨床病期ⅠA3-Ⅱ期非小細胞肺癌で外科切除可能な患者に対する適切な術式は何か?
- 推 奨
- 臨床病期ⅠA3-Ⅱ期非小細胞肺癌で外科切除可能な患者に対して,肺葉以上の切除を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B〕
米国Lung Cancer Study Groupによって腫瘍最大径3 cm以下のリンパ節転移を伴わない肺癌に対する肺葉切除と縮小切除を比較したランダム化比較試験が1995年に報告された23)。この研究によると肺葉切除に比べて縮小切除は局所再発が3倍となり,予後不良の傾向が認められた。人工呼吸器を要する呼吸不全などの重症合併症は肺葉切除に多かったものの,結論としては至適術式は肺葉切除であるとされた。
以上より,臨床病期ⅠA3-Ⅱ期非小細胞肺癌で外科切除可能な患者に対して,肺葉以上の切除を行うことを推奨する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
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100% (9/9) |
0% | 0% | 0% | 0% |
CQ5.
臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌で外科治療が可能であるが,標準手術(肺葉切除もしくは区域切除)が不可能な患者に,縮小手術を行ってもよいか?
- 推 奨
- 臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌で外科治療が可能であるが,標準手術(肺葉切除もしくは区域切除)が不可能な患者に,縮小手術を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C〕
肺葉切除不能例95例に対する縮小手術または放射線治療の研究によると,3年生存率は縮小手術65%,放射線治療60%であり,肺葉切除不能例においても,肺癌に対する治療介入が有効である可能性が示された24)。
また,米国NCDBを使用して解析された縮小手術30,451例と定位放射線治療22,134例,Ablation 1,388例の比較で縮小手術のOSが良いことが示された25)。同データベースを用いた楔状切除10,032例と定位放射線治療4,296例の予後の比較では,切除断端陽性の部分切除と定位放射線治療の生存率が同等であること,完全切除の場合は定位放射線治療に比し死亡リスクが低いことが示された26)。
以上より,臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌で外科治療が可能であるが,標準手術が不可能な患者に,縮小手術を行うことを推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
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100% (9/9) |
0% | 0% | 0% | 0% |
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1-1-3.手術適応(臨床病期Ⅲ期)
CQ6.
cN2非小細胞肺癌の治療方針は,呼吸器外科医,内科医,放射線治療医を含めた集学的治療グループで検討すべきか?
- 推 奨
- cN2非小細胞肺癌の治療方針は,呼吸器外科医,内科医,放射線治療医を含めた集学的治療グループでの検討を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C〕
cN2非小細胞肺癌は,薬物療法や放射線療法に対する感受性や予後の観点から様々な集団に分けることができるため,その治療方針は呼吸器外科医を含む集学的治療グループにより検討のうえ,決定されることが勧められる1)。N2症例の治療方法は多様化しており,SEER databaseを用いたN2症例17,954例の解析では単独治療よりも複合治療の成績が良好であることが示されている2)。
縦隔リンパ節転移(N2)の臨床的診断は困難であることが知られている。肺癌切除例11,663例の後方視的研究で臨床的にN2と診断された800例のうち346例(43%)において病理学的にN0-1であったことが示されている3)。加えてN2を対象とした臨床試験では,組織学的にN2と診断された症例が対象とされている4)。よって治療方針を決定するにあたり,臨床的にN2診断が可能なMultiple station N2,Bulky N2などの場合を除き,組織学的にN2の診断を行うことが推奨される1)5)。
以上より,cN2非小細胞肺癌の治療方針は,呼吸器外科医を含めた集学的治療グループでの検討を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
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100% (10/10) |
0% | 0% | 0% | 0% |
CQ7.
臨床病期ⅢA期T4N0-1非小細胞肺癌に対して,外科切除を行うよう勧められるか?
- 推 奨
- 臨床病期ⅢA期T4N0-1非小細胞肺癌に対して,外科切除を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:D〕
これまで臨床病期ⅢA期T4N0-1非小細胞肺癌の切除意義に関する報告については,ランダム化比較試験はなく,症例集積や少数例での症例対照研究しか存在しない。その中で,下記に示すとおり,症例をよく選択した手術結果においては,PS良好で,N0-1のケースにおいては,予後と手術の安全性の観点からは手術は選択肢として許容される範疇にあると考えられる。また,1,000例以上の臨床病期T4N0-1M0非小細胞肺癌を大規模なデータベースから解析したコホート研究では,手術先行群と導入治療(導入化学療法,もしくは導入化学放射線療法)を行った群とで比較すると,導入治療を行った群では,有意に切除断端陽性が少なく(9.3% vs 33.1%,P<0.001),全生存率においても,有意に良好であった(65.9カ月 vs 27.5カ月,P<0.001)との報告がある6)。浸潤臓器別の治療成績について具体的な報告を示す。
T4N0-1M0症例の中で,各浸潤臓器別に切除成績をみると,大動脈合併切除では,致命的合併症発生率は0~12%であり,5年生存率は37~48%と報告されている7)~10)。なかでも,特にN0-1では長期予後が期待でき,良い適応とされている。
左房合併切除は,単施設から30例以上の報告もあり11)~13),T4肺癌の中では比較的多く行われている術式である。致命的合併症発生率は0~10%,5年生存率が16~46%と比較的良好な治療成績が報告されている7)12)~15)。左房においても同様にN0は予後良好因子である12)13)15)。
上大静脈合併切除においては40例以上の比較的まとまった症例数での報告が複数ある12)16)~18)。致命的合併症発生率は4~10%,5年生存率は24~31%であり,やはりN2は予後不良因子である12)16)17)19)。
分岐部合併切除の致死的合併症は約3~20%であり,最近の64例の報告では,5年生存率は病理病期により,pN0で70%,pN1で35%,pN2で9%と報告されている20)~24)。
横隔膜合併切除では,致死的合併症発生率は1.6~4.4%25)26),5年生存率は19~42.6%25)27)28)と報告されている。JCOG肺がん外科グループの報告では,完全切除例の5年生存率は22.6%であったのに対し,非完全切除例では0%,病理病期ではpN0の5年生存率は28%であったのに対し,pN1で20%,pN2で0%であった25)。
最近の本邦における肺癌登録合同委員会報告では,浸潤するT4臓器により5年生存率に有意差はなく,T4N0で70歳未満であれば,5年生存率は50%を超えると報告されている29)。
一方で,臓器浸潤のない,腫瘍径7 cmを超えるT4腫瘍切除例に関して,OS中央値73.1カ月との報告がある30)。
以上より,臨床病期ⅢA期T4N0-1非小細胞肺癌に対しては外科治療を行うよう推奨する。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うことを強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
---|---|---|---|---|
80% (8/10) |
20% (2/10) |
0% | 0% | 0% |
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- 1-2
- リンパ節郭清
文献検索と採択
- 文献検索期間
-
- 2004年12月1日から2023年11月30日
- 文献検索方法
-
- キーワード:lung cancer, carcinoma, non-small cell lung carcinoma, lymph node dissection, lymphadenectomy, lymph node excision
- 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,日本医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,さらに今回,下記の検索式で2022年版以降の検索を行った。
- 検索式(検索日:2023年12月25日)
-
#1 "Carcinoma, Non-Small-Cell Lung/therapy" #2 "Lymph Node Excision" #3 #1 AND #2 #4 ("Non-Small-Cell Lung Carcinoma" OR "Nonsmall-Cell Lung Carcinoma" OR "Non-Small Cell Lung Cancer" OR "Nonsmall Cell Lung Cancer" OR NSCLC AND (surgery OR surgical OR operati OR pneumonectom OR resect) AND ("Lymph Node Excision" OR Lymphadenectom OR "Lymph Node Dissection")
- 採択方法
-
- メタアナリシス,第Ⅲ相試験,ランダム化比較第Ⅱ相試験を抽出し,review articleは除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
- 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。
CQ8.
切除可能な非小細胞肺癌に対して,リンパ節郭清もしくはサンプリングを行い,病理学的評価を行うべきか?
- 推 奨
- リンパ節郭清もしくはサンプリングを行い,病理学的評価を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B〕
切除可能な非小細胞肺癌に対する手術時におけるリンパ節の病理学的評価法として,① リンパ節を周囲の脂肪組織とともに一塊として摘出する「リンパ節郭清」と② 任意のリンパ節のみを摘出する「サンプリング」がある1)。また,「リンパ節郭清」「サンプリング」をリンパ節の摘出範囲別に分類すると,① 原発肺葉に属する肺門・葉間・葉気管支周囲・肺内リンパ節(肺癌取扱い規約の第1群リンパ節)に加え,同側の上下縦隔のリンパ節(第2群リンパ節)を系統的に郭清する系統的リンパ節郭清(systematic nodal dissection,規約上ND2a-2もしくはND2b),② 肺葉毎のリンパ流路を考慮し,転移の可能性が低いと考えらえる縦隔郭清を省略する選択的リンパ節郭清(lobe-specific nodal dissection,規約上ND2a-1),③ 鎖骨上や対側肺門・縦隔リンパ節(第3群リンパ節)を郭清する拡大郭清(規約上ND3),④ 第1群リンパ節に留める郭清(規約上ND1aや1b),④ 各種郭清+サンプリング,⑤ 任意リンパ節のサンプリング,などに分けることができる2)。
リンパ節郭清やサンプリングに期待される効果としては,① 正確な病理病期診断および② 局所制御による治療的意義があるが,前者についてコンセンサスは得られているものの後者については現時点で明確なエビデンスは得られていない。
リンパ節郭清による治療的意義,すなわち予後に与える影響を検証したサンプリングとのランダム化比較試験は過去に複数あり,予後を改善するという結果3)と予後に影響を与えないとする結果4)~6)の双方が存在する。そのうち,最大規模のランダム化比較試験は北米で実施されたACOSOG Z0030試験6)である。本試験は,臨床病期Ⅰ-Ⅱ期〔TNM分類第5版におけるT1-2N0-1(肺門部N1を除く)M0〕非小細胞肺癌を対象とした,系統的リンパ節郭清とサンプリングの比較試験である。本試験では,登録後まず,規定された肺門・縦隔の複数リンパ節のサンプリングを行い,術中迅速病理診断にてすべて転移陰性であることを確認した後に系統的リンパ節郭清を追加するか否かのランダム化が行われた。郭清群とサンプリング群のOS中央値および5年無再発生存率はそれぞれ,8.5年と8.1年(P=0.25),68%と69%(P=0.92)であり,郭清追加による有意な生存延長および再発抑制は認められなかった6)。なお,本試験で採用されたサンプリングは,広範囲のサンプリングであったこと,また,サンプリングされたリンパ節の転移陰性が確認された後にランダム化を行うデザインであったことが,結果の要因となった可能性がある。いずれにせよ,本試験を含む複数のメタアナリシス7)~10)においても予後について結果の一貫性は認められない。したがって,リンパ節郭清が予後に与える影響については科学的根拠が明確とはいえない。
一方,ACOSOGの試験では,サンプリング群でpN2の4%が見落とされていた6)。また,郭清群の手術時間はサンプリング群と比較し,15分程度の延長にすぎず,術後の合併症発生率や手術関連死亡率にも有意差を認めなかった11)。以上より,郭清がサンプリングに比較して予後を改善する結果は得られなかったが,より正確な病理病期の決定のためにはリンパ節郭清を行うように勧められる,と述べられている。
近年,より合理的なリンパ節郭清を行うことを目的に,早期肺癌を中心に肺葉毎のリンパ流路を考慮した選択的リンパ節郭清(lobe-specific nodal dissection)が特に本邦において普及している12)。選択的リンパ節郭清と系統的リンパ節郭清の予後比較に関する検討は,これまで複数のコホート研究や小規模な前方視的あるいは後方視的の非ランダム化比較試験12)~17)の他,1つのランダム化比較試験18),さらにこれらの研究結果をもとに解析したメタアナリシス19)20)で報告されている。しかしながら,唯一のランダム化比較試験は症例数が96例と少数であるうえ,割り付け方法が不明など,試験の質が担保されているとはいえない。メタアナリシス19)20)も本ランダム化比較試験と5~8件のコホート研究や非ランダム化比較試験を元に解析されており,エビデンスレベルの高い検討とはいえない。また,選択的郭清では,その適応や方法によって再発が増加するという報告もあり15)16),その妥当性は科学的に証明されているとは言い難い。現在,JCOGが臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌でかつ,術中にN0もしくは非肺門N1(N1だが#10,#11陰性)と評価された症例を対象に,選択的リンパ節郭清と系統的リンパ節郭清を比較する大規模ランダム化比較試験(JCOG1413試験)21)を実施している。2021年8月に登録が終了し,現在,観察期間中であり今後の結果発表が待たれる。
一方,胸部薄切CTですりガラス成分が優位な末梢小型肺癌は,病理学的に非浸潤性腺癌または浸潤成分が微少な腺癌が多いことが報告されている。JCOG0201試験では,腫瘍最大径3 cm以下かつCTR 0.5以下の121例のうち115例(95%)が非浸潤性腺癌(本試験では,リンパ節転移,血管・リンパ管浸潤がいずれも陰性の腺癌と定義)であった。また,腫瘍最大径2 cm以下かつCTR 0.25以下の35例では34例(97%)が非浸潤性腺癌であった22)23)。以上より,すりガラス成分が優位な末梢小型肺癌は,リンパ節転移を認めない病変の可能性が高く,縮小手術を含むリンパ節摘出範囲の縮小または省略した術式が適応可能と考えられる。
また,充実成分が優位(CTR>0.5)であってもすりガラス成分を伴う場合はリンパ節転移,特に縦隔リンパ節転移の頻度が少ないことが報告されている。腫瘍最大径2 cm以下の臨床病期ⅠA期末梢型非小細胞肺癌に対する,肺葉切除と区域切除のランダム化比較試験であるJCOG0802/WJOG4607L試験の副次解析では,すりガラス成分を伴わないpure solid症例523例のうち55例(10.5%)にリンパ節転移(pN1-2)を認め,28例(5.4%)がpN2であったのに対し,すりガラス成分を伴う症例のリンパ節転移は533例中8例(1.5%),pN2は3例(0.5%)であった24)。この結果から,すりガラス成分を伴う腫瘍最大径2 cm以下の臨床病期ⅠA期末梢型非小細胞肺癌では,CTRが0.5を超えていても,リンパ節摘出範囲の縮小ができ得る可能性が示唆される。ただし,CTRの計測,すりガラス成分有無の判断には薄切CTを用いた正確な読影が必要である点には留意すべきである。
以上より,切除可能な非小細胞肺癌では,正確な病期診断のため,腫瘍の特性に応じたリンパ節郭清もしくはサンプリングを行い,病理学的評価を行うことが推奨される。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
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100% (10/10) |
0% | 0% | 0% | 0% |
- 1)
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- 1-3
- T3臓器合併切除(肺尖部胸壁浸潤癌以外)
文献検索と採択
- 文献検索期間
-
- 2004年12月1日から2023年11月30日
- 文献検索方法
-
- キーワード:lung cancer, surgery, chest wall or pericardium, NSCLC
- 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,さらに今回,国際医学情報センターの協力により,下記の検索式で2022年版以降の検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
- 検索式(検索日:2023年12月25日)
-
#1 "lung cancer" OR "NSCLC" #2 "chest wall" OR "pericardium" #3 "surgery" #4 #1 AND #2 AND #3
- 採択方法
-
- 臨床試験による文献は1件で,それ以外は後方視的観察研究の文献を採用した。
- 施設の報告については症例数を考慮した。
- 治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
- 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。
CQ9.
臨床病期T3N0-1M0の胸壁浸潤非小細胞肺癌には,胸壁合併切除を行うよう勧められるか?
- 推 奨
- 臨床病期T3N0-1M0の胸壁浸潤非小細胞肺癌には,胸壁合併切除を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C〕
胸壁合併切除術の手術死亡率は0~7.8%で1)~6),合併症発生率は19~44%と報告されている1)2)。胸壁合併切除術を施行した肺癌の予後因子として,完全切除,リンパ節転移,胸壁浸潤の程度が挙げられている。完全切除症例は不完全切除症例より予後が良好である3)~5)。胸壁浸潤肺癌334例の検討で,完全切除例(n=175)の5年生存率が32%であったのに対し,非完全切除例(n=94)では4%と報告されている4)。また,IASLCデータベース(1999~2010年)の解析では,pT3N0M0腫瘍の中で胸壁浸潤例の予後は他に比べて不良であるが,完全切除例では5年生存率が52%と報告されている5)。完全切除可能であれば壁側胸膜切除と骨性胸壁切除の差はないとする報告が多い3)~5)7)8)。リンパ節転移に関しては,pN0症例の5年生存率は25~67%であるのに対し,pN1では症例数が少ないものの20~100%,pN2症例では6.2~20.5%と報告されている1)~8)。本邦における肺癌登録合同委員会報告では胸壁浸潤407例の5年生存率はpN0:49.1%(n=299),pN1:36.5%(n=43),pN2:20.5%(n=65)で,pN2がpN0に比較して有意に予後不良であった8)。胸壁浸潤の程度に関しては,壁側胸膜のみの浸潤例が胸壁軟部組織や骨性胸郭浸潤例より良好であるという報告もあるが1)6),pN0症例では胸壁浸潤の程度は予後に影響しないと報告されている8)。一方,最近の胸壁合併切除例521例の傾向スコア解析による検討では,肋骨浸潤が壁側胸膜浸潤や胸壁あるいは軟部組織浸潤に比して予後が悪いと報告されている9)。なお,上記文献はいずれも術後病理病期で記載されており,臨床病期で検討されている論文はない。本症を対象とした手術以外の治療法との直接の比較試験はないが,他の治療法との差異は明らかであるため臨床病期T3N0-1M0症例の胸壁合併切除術は推奨度1Cとした。ただし,縦隔リンパ節転移を有すると考えられる症例,特に術前病理検査にてN2と判明した症例については,その予後不良が予測されることより,手術単独療法は施行すべきではない。
本邦でのcN0症例に対する導入化学放射線療法後の胸壁合併切除の前方視的試験の報告では,3年と5年の全生存率はそれぞれ77%,63%であり,12例の病理学的完全奏効例の3年全生存率は91.7%と良好であった10)。また,導入化学放射線療法が,良好な術後生存に関係したとするデータベース研究の報告もある11)。一方,pN0症例に対する補助化学療法に関しては米国NCDBによる824例の後方視的観察研究で,補助化学療法はHR 0.74(95%CI 0.6-0.9)で生存を改善したとの報告がある12)。さらに,同じく米国NCDBによる2,326例の大規模な検討では,傾向スコア解析を行っても生存期間中央値において補助化学療施行群は68カ月,非施行群は39カ月(P<0.01)と補助化学療法施行群で有意に良好であった13)。
以上より,臨床病期T3N0-1M0の胸壁浸潤非小細胞肺癌に対しては,胸壁合併切除を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
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100% (10/10) |
0% | 0% | 0% | 0% |
CQ10.
心膜に浸潤した臨床病期T3N0-1M0の非小細胞肺癌には,合併切除を行うよう勧められるか?
- 推 奨
- 心膜に浸潤した臨床病期T3N0-1M0非小細胞肺癌には合併切除を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C〕
心膜合併切除例の5年生存率は15.1~54.2%であり8)14)15),pT3例に限れば比較的良好な報告もある。しかしフランスから報告された91例の心膜浸潤症例の後方視的研究では,全体の5年生存率は15.1%と予後不良であった15)。うち32例が心膜単独浸潤(T3)で59例は肺静脈,心房浸潤(T4)を伴っていたが,T3,T4間に予後の有意差を認めなかった。N0は12例(13.2%),N1は31例(34.1%),N2は48例(52.8%)と,心膜浸潤症例ではリンパ節転移の頻度が極めて高く,肺全摘の頻度も高かった。なお,上記文献はいずれも術後病理病期で記載されており,臨床病期で検討されている論文はない。臨床病期T3N0-1M0心膜浸潤肺癌切除例の予後は,最近の報告で改善はみられるものの依然不良であり,推奨度は1Cとした。ただし,縦隔リンパ節転移を有すると考えられる症例,特に術前病理検査にてN2と判明した症例については,予後不良が予測されることより15),手術単独療法は施行すべきではない。
以上より,心膜に浸潤した臨床病期T3N0-1M0非小細胞肺癌に対しては合併切除を行うことを推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
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100% (10/10) |
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- 1)
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- 3)
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- 1-4
- 気管支・肺動脈形成
文献検索と採択
- 文献検索期間
-
- 2000年12月1日から2023年11月30日
- 文献検索方法
-
- キーワード:Lung Neoplasms, Lung Cancer, non small cell carcinoma of lung, Bronchoplasty, bronchoplastic, tracheobronchoplasty, arterioplasty
- 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,さらに今回,国際医学情報センターの協力により,下記の検索式で2022年版以降の検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
- 検索式(検索日:2023年12月25日)
-
#1 LUNG NEOPLASMS+NT/CT OR (LUNG OR PULMONARY)(NEOPLASM OR ADENOCARCINOM OR CARCINOM OR CANCER OR TUMOR) #2 BRONCHOPLAST OR TRACHEOBRONCHOPLAST OR ANGIOPLAST OR BRONCHOANGIOPLAST OR SLEEV LOBECTOM OR SEGMENTECTOM OR (LOBECTOM AND (SL OR ESL)) OR RECONSTRUC((LUNG OR PULMONARY)ARTER OR BRONCHI) #3 #1 AND #2 #4 #3 AND HUMAN AND ENGLISH/LA AND (2022-2024)/PY AND (20221201-20231130)/UP NOT EPUB/FS
- 採択方法
-
- 臨床試験による文献はなく,後方視的観察研究の文献を採用した。review articleは除外した。施設の報告については,症例数を考慮した。
- なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
- 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。
CQ11.
肺全摘を避けて,気管支・肺動脈形成を行うべきか?
- 推 奨
- 肺全摘を避けて,気管支・肺動脈形成を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C〕
ランダム化比較試験はないが,複数の後方視的比較研究および,2つの傾向スコアマッチによる比較研究,1つの後方視的研究のメタアナリシスが報告されている1)~5)。これらによると,中枢進展または肺門リンパ節転移のために,肺全摘もしくは気管支・肺動脈形成術を要する場合,気管支・肺動脈形成術後の局所コントロールは肺全摘と同等であり,予後は肺全摘術と同等か,それ以上と報告されている。気管支形成の手術死亡率は0.9~5.9%1)~4)6)~8)である。
気管支の切除方法や切除範囲については,気管支楔状切除に関して局所再発率8.9%,吻合部瘻1.6%,術死3.7%で管状切除と同等の成績であるとの報告がある9)。また,複雑気管支形成術の有効性も報告されている10)~12)。
肺動脈形成は単独で施行する場合も気管支形成と同時に施行する場合も,安全性・有効性が報告されている6)7)13)~15)。
導入療法後の気管支形成に関しては,術前化学療法群と化学放射線療法群と通常の気管支形成群との比較で,術死亡,術後合併症,また吻合部合併症に差がない16)~19)という報告がある一方,術前放射線治療が術死,吻合合併症に影響したという報告もある7)20)。予後に関しても,導入療法群の予後が良好であったという報告と19)21),導入療法群の予後が不良であったという報告22)のいずれも存在する。
以上より,肺全摘を避けて,気管支・肺動脈形成を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
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100% (9/9) |
0% | 0% | 0% | 0% |
- 1)
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- 1-5
- 同一肺葉内結節
文献検索と採択
- 文献検索期間
-
- 2000年12月1日から2023年11月30日
- 文献検索方法
-
- キーワード:Lung Neoplasms, Lung Cancer, Pulmonary Neoplasms, intrapulmonary metastases, intrapulmonary metastasis, pulmonary metastases
- 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,さらに今回,国際医学情報センターの協力により,下記の検索式で2022年版以降の検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
- 検索式(検索日:2023年12月25日)
-
#1 LUNG NEOPLASMS+NT/CT OR (LUNG OR PULMONARY)(NEOPLASM OR ADENOCARCINOM OR CARCINOM OR CANCER OR TUMOR) #2 #1 AND (SU/CT OR SURGICAL PROCEDURES, OPERATIVE+NT/CT OR SURG OR OPERAT OR ECTOM OR RESECT?) #3 (LUNG OR PULMONARY)(W)(METASTASIS OR METASTASES) #4 #2 AND #3 #5 (PM1 OR CN0) AND #2 #6 #2 AND INTRAPULMONAR(METASTA OR INVASI OR INVAD OR INFILTRAT) #7 #2 AND (IPSILATER? OR SAME)(LUNG OR PULMONARY ORNODE OR NODAL OR LOBE) AND (METASTA OR MULTIPL) #8 #4 OR #5 OR #6 OR #7 #9 #8 AND HUMAN AND ENGLISH/LA AND (2022-2024)/PY AND (20221201-20231130)/UP NOT EPUB/FS
- 採択方法
-
- 臨床試験による文献はなく,後方視的観察研究の文献を採用した。Review articleは除外した。施設の報告については,症例数を考慮した。
- なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
- 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。
CQ12.
同一肺葉内結節で転移(PM1)もしくは多発肺癌を疑うcN0症例において,手術を行うべきか?
- 推 奨
- 同一肺葉内結節で転移(PM1)もしくは多発肺癌を疑うcN0症例において,手術を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:D〕
転移を有する非小細胞肺癌に対する手術の有無についての比較臨床試験は行われていない。
IASLCに登録された肺癌症例(1999~2010年)のうち,同一肺葉内転移(PM1),M0の臨床病期172例,病理病期960例について検討されている1)。組織別での差はなく,多くの症例は,手術時に発見されることが多かった。5年生存率は,cN0:59%(110例),cN-any:47%(172例),pN0:59%(468例),pN-any:42%(960例)であった。ただし,cN0,M0症例のうち,切除例68%に対し,非切除例は症例数が少ないが0%であった。またpN0M0切除例のうち,R0:59%に対し,R-any:42%であり,pN0M0R0であれば,良好な予後が得られている。これは,肺癌登録合同委員会で登録された1994年の肺癌手術症例の予後と同等か,それ以上であった。この報告でリンパ節転移の有無別に解析すると,N0,N1,N2症例での5年生存率は,45.8%,25.3%,11.1%であり,N0群とN1群(P=0.0176),N1群とN2群(P=0.0114)に有意差が認められた2)。同様に,100例以上の解析がなされた報告では,PM1の術後5年生存率は30~58%と報告され2)~8),特にリンパ節転移陰性症例では,概ね50%以上であることが報告され6)~8),比較的予後が期待できる集団と考えられる。
術前検査において同一肺葉内転移が疑われる症例において,手術の結果その結節が転移でない場合も認められ9),正確な診断のためにも手術が勧められる。また,多発癌との鑑別が困難なこともあり,リンパ節転移のない症例においては,手術を行うよう勧められる。なお,リンパ節転移を有すると考えられる症例,特に術前検査にて組織学的N2と判明した症例については,その予後不良が予測されることより,手術単独療法は施行すべきではない。
以上より,同一肺葉内結節で転移(PM1)もしくは多発肺癌を疑うcN0症例においては,手術を行うよう推奨する。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
---|---|---|---|---|
100% (10/10) |
0% | 0% | 0% | 0% |
- 1)
- Detterbeck FC, Bolejack V, Arenberg DA, et al. The IASLC Lung Cancer Staging Project:Background Data and Proposals for the Classification of Lung Cancer with Separate Tumor Nodules in the Forthcoming Eighth Edition of the TNM Classification for Lung Cancer. J Thorac Oncol. 2016;11(5):681-92.
- 2)
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- 3)
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- 4)
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- 5)
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- 6)
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- 7)
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- 9)
- Detterbeck FC, Franklin WA, Nicholson AG, et al. The IASLC Lung Cancer Staging Project:Background Data and Proposed Criteria to Distinguish Separate Primary Lung Cancers from Metastatic Foci in Patients with Two Lung Tumors in the Forthcoming Eighth Edition of the TNM Classification for Lung Cancer. J Thorac Oncol. 2016;11(5):651-65.
- 1-6
- 同時性他肺葉内結節
文献検索と採択
- 文献検索期間
-
- 1990年1月1日から2023年11月30日
- 文献検索方法
-
- キーワード:lung cancer, surgery, multiple primary, multiple cancers
- 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,さらに今回,国際医学情報センターの協力により,下記の検索式で2022年版以降の検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
- 検索式(検索日:2023年12月25日)
-
#1 "lung cancer" AND "surgery" #2 "pulmonary metastasis" OR "pulmonary metastases" #3 "multiple primary" OR "multiple cancers" #4 #1 AND (#2 OR #3)
- 採択方法
-
- 臨床試験による文献はなく,後方視的観察研究の文献を採用し,施設の報告については,症例数を考慮した。なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
- 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。
CQ13.
同時性他肺葉内結節で,多発原発性肺癌を疑う症例において,手術を行うべきか?
- 推 奨
- 同時性他肺葉内結節で,多発原発性肺癌を疑う症例においては,手術を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:D〕
多発原発性肺癌と肺内転移の鑑別診断基準には,多くの論文においてMartini and Melamedの基準が用いられている1)。複数の後方視的研究で,縦隔リンパ節転移のない多発原発性肺癌を疑う症例では,5年生存率が53~97.2%と外科治療が良好な成績を得たとの報告が多い2)~6)。なかでも,すりガラス影を伴った多発肺癌は,特に予後良好と報告されている5)6)。縦隔リンパ節転移がある場合ついては,予後不良のため,手術は推奨しないとの報告がある7)8)。術前診断において特に同じ組織型の場合には,多発原発性肺癌と肺内転移との鑑別は必ずしも容易ではない。臨床的鑑別診断に加え9)10)11),分子生物学的診断によるclonalityの評価がなされつつあるが,確立するには至っていない12)~15)。
以上より,他肺葉内結節で,同時性多発原発性肺癌を疑う症例においては,手術を行うよう推奨する。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うことを強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
---|---|---|---|---|
70% (7/10) |
30% (3/10) |
0% | 0% | 0% |
CQ14.
同時性他肺葉内結節で,肺内転移(PM2,3)を疑う症例において,手術を行うべきか?
- 推 奨
- 同時性肺内転移(PM2,3)を疑う症例においては,手術を行わないよう弱く推奨する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:D〕
肺癌登録合同委員会で登録された1994年の非小細胞肺癌6,525例(ver. 6)のうち,他肺葉転移(PM2)128例の5年生存率は22.5%で,PM2を除いたM1症例の5年生存率は20.5%であり,PM2症例と有意差は認められなかった(P=0.434)16)。また,その他の報告においても,他肺葉の肺内転移(PM2,3)の症例に対する切除成績は,PM1に比較し予後不良である報告が多く17)~20),手術を勧める科学的根拠は明確ではない。局所治療を行う場合には手術以外の局所治療(ラジオ波焼灼療法など)も考慮する21)。
以上より,同時性肺内転移(PM2,3)を疑う症例においては,手術を行わないよう弱く推奨する。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行わないよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
---|---|---|---|---|
0% | 0% | 0% | 90% (9/10) |
10% (1/10) |
- 1)
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- 1-7
- 異時性多発癌
文献検索と採択
- 文献検索期間
-
- 2000年1月1日から2023年11月30日
- 文献検索方法
-
- キーワード:lung cancer, surgery, metachronous, heterochronic, second, multiple, redo, completion
- 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,さらに今回,国際医学情報センターの協力により,下記の検索式で2022年版以降の検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
- 検索式(検索日:2023年12月25日)
-
#1 "lung cancer" AND "surgery" #2 #1 AND "metachronous" OR "heterochronic" OR "second" OR "multiple" #3 #1 AND "Redo" OR "completion" #4 #2 AND #3 #5 #4 AND "metachronous" OR "heterochronic" OR "second" OR "multiple"限定 #6 #4 AND "Redo" OR "completion"限定 #7 #1 AND #2 AND #3 AND #4 AND #5 AND #6
- 採択方法
-
- 臨床試験による文献はなく,後方視的観察研究の文献を採用し,施設の報告については,症例数を考慮した。なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
- 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。
CQ15.
異時性多発肺癌に対して,耐術能があれば外科治療を行ってもよいか?
- 推 奨
- 異時性多発肺癌に対しては,耐術能があれば外科治療を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:D〕
異時性多発肺癌に対する治療では,外科治療で良好な成績を得たとの報告が多い1)~8)。5年生存率は一次癌から76~83.9%2)~4),二次癌から42~71.7%であり1)~7),手術関連死は1.4~7.0%であった2)~4)7)。肺切除法としては,肺機能が許せば肺葉切除が良好であったとの報告と2)6),縮小手術でも同等の成績を示したとの報告がある1)3)5)。肺全摘術に関しては,予後不良であったとの報告2)3)と,同等であったという報告とがある7)9)。再発肺内転移との鑑別診断に関しては,同一組織型であっても遺伝子分析にて可能であったとの報告もあり,今後さらに臨床応用されることが期待される10)~12)。また,耐術能がある患者においても,SBRTで手術と同等の成績が示されている13)。耐術能がない異時性多発肺癌患者に対しては,SBRTにより,重篤な有害事象を発症することなく,5年生存率は二次癌から38~65.8%と良好な成績を得たとの報告もある14)15)。
以上より,異時性多発肺癌に対しては,耐術能があれば外科治療を強く推奨する(1で推奨)。エビデンスの強さはD。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
---|---|---|---|---|
90% (9/10) |
10% (1/10) |
0% | 0% | 0% |
- 1)
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- 1-8
- 臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対する胸腔鏡下肺切除,ロボット支援下肺切除
文献検索と採択
- 文献検索期間
-
- 2004年12月1日から2023年11月30日
- 文献検索方法
-
- キーワード:lung cancer, lung neoplasm, non-small cell lung cancer, surgical procedure, operative procedure, VATS, video-assisted thoracic surgery, RATS, robot-assisted thoracic surgery
- 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,さらに今回,国際医学情報センターの協力により,下記の検索式で2022年版以降の検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
- 検索式(検索日:2023年12月25日)
-
#1 S LUNG NEOPLASMS+NT/CT OR (LUNG OR PULMONARY OR NONSMALL? OR NON(W)SMALL?)(3A)(NEOPLASM? OR ADENOCARCINOM? OR CARCINOM? OR CANCER? OR TUMOR? OR TUMOUR?) OR NSCLC #2 S #1 AND (SU/CT OR SURGICAL PROCEDURES, OPERATIVE+NT/CT OR SURG? OR OPERAT? OR ?ECTOM? OR RESECT?) #3 S #1 AND (ROBOTIC SURGICAL PROCEDURES+NT/CT OR THORACIC SURGERY, VIDEO-ASSISTED+NT/CT) #4 S #1 AND ((VIDEO OR ROBOT?)(3A)ASSIST?(3A)(SURG? OR OPERAT? OR RESECT? OR PNEUMONECTOM? OR LOBECTOM? OR THORAC?) OR VATS) #5 S #2 AND (ROBOTICS+NT/CT OR ROBOT? OR (THORACOSCOPY+NT/CT OR THORACOSCOPES+NT/CT OR THORACOSCOP?) AND (VIDEO-ASSISTED SURGERY+NT/CT OR VIDEO)) #6 S #3 OR #4 OR #5 #7 S #6 AND (VAT# OR RAT# OR ROBOT? OR VIDEO? OR THORACOS?)/TI #8 S #6 AND ((MULTIPLE? OR SINGLE? OR UNI)(W)PORT? OR UNIPORT?) #9 S #7 OR #8 #10 S(#9/HUMAN OR (#9 NOT ANIMALS/CT)) AND (ENGLISH OR JAPANESE)/LA AND (2022-2024)/PY AND (20221201-20231130)/UP
- 採択方法
-
- メタアナリシス,第Ⅲ相試験,ランダム化比較第Ⅱ相試験を抽出し,VATSではreview articleは除外し,RATSでは後方視的な検討では,胸腔鏡手術300例以上のものを抽出した。なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
- 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。
CQ16.
臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対して,胸腔鏡下肺切除を行ってもよいか?
- 推 奨
- 胸腔鏡下肺切除を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B〕
胸腔鏡下手術(VATS)の定義には様々な解釈がある。本項ではアプローチ手技を問わず胸腔鏡を用い肺切除したものをVATS肺切除術として取り扱った。
臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対するVATS肺葉切除術については,3つのランダム化比較試験が報告されている。1つは臨床病期Ⅰ期の非小細胞肺癌55例についてランダムに割り付けを行い,標準開胸肺葉切除(n=30),またはVATS肺葉切除(n=25)を比較したものであるが,手術時間,出血量,ドレーン留置期間,在院日数,術後疼痛に関しては両群間で有意差はなかった1)。2つ目は臨床病期ⅠA期非小細胞肺癌100例を標準開胸肺葉切除(n=52)とVATS肺葉切除(n=48)に分けて比較したところ,郭清リンパ節個数,リンパ節転移頻度,再発率,5年生存率では両群間に差を認めなかったとの報告である2)。3つ目は,対象が臨床病期Ⅰ,Ⅱ期で,手術の安全性に関する解析ではあるが,多施設前方視的ランダム化非劣性比較試験である。VATS群215例と開胸群210例を比較し,手術時間と出血量においてVATS群のほうが有意に優れていた3)。前2つのランダム化比較試験を含むメタアナリシスの結果が報告され,VATSと開胸手術では手術時間,出血量,ドレーン留置期間,在院日数,肺瘻の遷延,不整脈,肺炎,手術死亡,局所再発の頻度に有意な差はなかった4)。しかしながら,VATS群のほうで有意に遠隔転移が少なく5年生存率も良好であったため,早期非小細胞肺癌患者に対してVATSによる肺葉切除術は適切な手技であると結論付けた。また別のメタアナリシスではⅠ期非小細胞肺癌の手術例においてVATS群は開胸群と比較して5年生存率でより長い予後,少ない合併症であることが判明し,VATSは早期肺癌に対する治療として効果的で安全なアプローチであると結論された5)。一方で,長期予後に対してVATSは開胸手術と差がなかったというメタアナリシスの報告もある6)。さらに臨床病期Ⅰ期以外の病期も含んだ別のメタアナリシスでも同様に,術後合併症率やドレーン留置期間,入院期間,術中出血量においてVATS群は優れていたが,手術時間は長い傾向がみられていた7)。また同様の大規模メタアナリシスにおいては,33論文から合計61,633症例を含む解析を行い,周術期死亡HR 0.64(95%CI 0.56-0.73),長期生存HR 0.88(95%CI 0.81-0.96)と有意にVATS群で良好な成績が示されていた8)。
近年では安全性と予後について,VATSとロボット支援下手術(RATS),あるいはVATS・RATS・開胸手術の3群比較の研究が多く報告されている9)~12)。2021年と2023年に報告されたシステマティックレビューやメタアナリシスでは,RATSとVATSは周術期成績,OS,DFSのすべてで同等であることが示されている9)~11)。また,大規模データベースをもとにプロペンシティマッチングを行ったRATS・VATS・開胸手術の3術式の比較研究であるPORTaL Studyでは,臨床病期ⅠA-ⅢA期まで含んだ5,721例の解析において,手術時間はRATSが開胸手術やVATSに比較して最も短く,VATS/RATSは開胸手術に比して術後合併症発生率や術後在院日数が少なかったとしている12)。
系統的リンパ節郭清の精度については症例数が66例と少ないが,肺葉切除における開胸とVATSを比較したランダム化比較試験が報告されている13)。2008~11年に単一施設で臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌の系統的リンパ節郭清を行い,手術時間はVATS郡で多少長かったが,リンパ節の郭清個数には差がなかった。これにより縦隔郭清は開胸と同じくVATSでも十分行うことができると考えられる。さらに近年の高画質カメラを使用した胸腔鏡手術技術では良好な拡大視が得られ,局所解剖はむしろVATSのほうが有利と考えられる。術後疼痛とQOLに関してVATSと開胸を比較したランダム化比較試験がLancet Oncologyに報告されている14)。臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌における肺葉切除でVATS群(102例)は開胸群(99例)と比較して術後疼痛が少なく,QOLも良いことが示された。
一方で,VATSにおける術中の重篤な合併症に関して報告がある。ヨーロッパの6つのセンターでの前方視的研究では3,076例のVATS肺切除症例を解析した15)。術死3例,在院死43例(1.4%)で,重篤な合併症は46例(1.5%)認め,在院死の23%は術中の重篤な合併症に関連していた。Washington大学からの報告では2004~12年の肺癌肺葉切除症例1,227例のうち,VATS完遂群517例(42%),VATSから開胸した群(conversion)87例(7%),開胸群623例(51%)となり,3群間で比較した16)。Conversionの原因は出血(25%),癒着/腫瘍(64%),リンパ節(9%)であった。また韓国からのVATS lobectomy施行中の予期せぬconversionを要した症例の検討では,conversionの原因はリンパ節の固着(28%),血管損傷(20%),腫瘍の浸潤(11%)であった17)。これらの報告から症例によっては,あるいはVATS施行中に腫瘍学的または手技的に困難であれば開胸手術の選択,または開胸へのconversionは躊躇せず,速やかに行うべきである。
臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対するVATS肺切除術について混乱を生じている1つの原因として,VATSアプローチの定義自体が曖昧な点が挙げられる。VATSのアプローチにはモニター視のみの完全鏡視下と,直視を併用するもの,いわゆるHybrid VATSがある18)。皮切最大長については8 cm以下と,日本呼吸器外科学会や胸腔鏡技術認定委員会でのコンセンサスが得られているものの,皮切の数,肋間開大(開胸器併用)の有無など様々な方法が施設毎に採用され,完全鏡視下であっても手術の質向上のために直視下触診を用いるものもある。加えて近年では,従来の多孔式胸腔鏡(multiportal VATS;M-VATS)に対し,単孔式胸腔鏡(uniportal VATS;U-VATS)が行われている。これは4 cm以下の切開線による胸腔鏡ポート1カ所のみで実施される胸腔鏡手術であり,日本内視鏡外科学会のガイドラインにおいても,臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対して,単孔式胸腔鏡下肺葉切除を行うことは弱い推奨度で提案されている19)。少数例でのランダム化比較試験20)~22)やメタアナリシス23)~26)では手術時間,出血量,郭清リンパ節個数,術後ドレナージ期間,在院日数,術後合併症発生率においてM-VATSと比較して差を認めないとするものが多いが,術後ドレナージ期間や在院日数においてはU-VATSで短いとする報告もある。一方,術後疼痛については,U-VATSで痛み度が低いとする報告が多く,障害肋間が1つであることに優位性があると思われる。まだ歴史が浅い手術であり,長期予後については症例数が少なく,観察期間も短いことから高いエビデンスといえるものはない。安全性に関する報告についても同様である。まだ術者の技術や経験数に依存するところも大きいと思われ,十分に安全に配慮した手術が必要である。このような状況の中でVATSの手術成績などについては,アプローチの区別なく論じられている場合がほとんどである。さらにVATSが開胸手術に比較して,予後,侵襲性,安全性に関して,同等ないし優れていると肯定的な研究は多いものの,これらの報告の多くは単施設の後方視的な解析に基づくものであり,十分な症例数を有したランダム化比較試験はなく,確定的な結論は出ていない。VATSアプローチの定義が難しいため,今後も大規模なランダム化比較試験の実施は困難であると予想される。2020年の日本胸部外科学会年次調査結果によれば,肺癌に対する30,604例の全肺葉切除術の約70%,21,179例にVATS肺葉切除術が施行されている27)。臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対するVATS肺葉切除術は,実地医療の場ではランダム化比較試験を経ずに頻用されている。
以上より,大規模なランダム化比較試験がなく,メタアナリシスも解析対象の多くが単施設の第Ⅱ相試験や小規模の第Ⅲ相試験でエビデンスの質は決して高くはないが,今後大規模な第Ⅲ相試験が行われる可能性も低く,すでに実地臨床では広く,かつ比較的安全に行われていることを考慮して,臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対して胸腔鏡補助下肺葉切除を行うよう推奨する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
---|---|---|---|---|
60% (6/10) |
40% (4/10) |
0% | 0% | 0% |
CQ17.
臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対して,ロボット支援下肺切除を行ってもよいか?
- 推 奨
- 臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対して,ロボット支援下肺切除を行うことを弱く推奨する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B〕
肺癌に対するロボット支援手術(RATS)は2002年の報告に始まり,欧米を中心に広がってきた。本邦では2011年に最初の手術が報告された。胸腔鏡下手術(VATS)が本ガイドラインで推奨度1(行うよう強く推奨する)となっているが,RATSは3次元視野と精緻操作によりVATSの弱点を補う新技術としてさらに期待されている。多くの後方視的な研究がなされる中で,VATSと比較した大規模試験のメタアナリシスをまとめると,周術期成績,根治性,安全性,長期予後では差がなく,操作性,ラーニングカーブではRATSが優るが,利用できる器具が限られていること,手術時間が長いこと,コストがかかることがRATSの欠点とされる1)~9)。長期成績についても,症例数や観察期間が十分とはいえないが,開胸,VATS,RATSの3者の比較で,有意差のない予後が報告されている10)。
手術手技としては,肺葉切除のみならず,小型肺癌に対する区域切除12),肺門部肺癌に対する気管支形成13),進行肺癌に対する術前治療後の手術14)15)などの複雑な手技への応用も報告されている。RATSのメリットを考えた場合,その優れた操作性からリンパ節郭清への有用性が期待されており,VATSとの後方視的比較研究においてRATSのほうがより多くのリンパ節が郭清できるとする報告は多く16),RATSとVATSの前方視的ランダム化比較試験であるRAVAL trialの早期結果報告においても,RATS群で有意にリンパ節がサンプリングできたとされている17)。
RATSとVATSを比較した前方視的ランダム化比較試験は,2021年にROMAN study18)とRVlob trial19)の結果が示された。その結果,RATSとVATSの周術期成績は同等で,リンパ節郭清ではRATSにおいて改善が認められた。また,cN2肺癌に対するRATSと開胸手術のランダム化比較試験では,周術期管理においてRATSの有意性が示され,予後は同等であった20)21)。2021年と2023年に報告されたシステマティックレビューやメタアナリシスでは,RATSとVATSは周術期成績,OS,DFSのすべてで同等であることが示された22)~24)。したがって,RATSは臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対して,VATSと同様に低侵襲手術のオプションの1つとして提案できる。しかしながら,本邦においてはまだ十分な症例解析ができていないことには留意する必要がある。
一方で安全性については,RATSでは術中の医原性合併症の発生率が高いことも報告されている25)26)。したがって,RATSのピットフォールやトラブルシュートをよく熟知し,緊急時の対処法を平時から麻酔科医を含めてチームで話し合っておくことが大切と考えられる。
以上より,臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対してロボット支援下肺切除は低侵襲胸腔鏡手術の1つとして行うことを弱く推奨する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
---|---|---|---|---|
0% | 100% (10/10) |
0% | 0% | 0% |
胸腔鏡下肺切除
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- 1-9
- 外科切除後の経過観察,術後患者の禁煙
文献検索と採択
- 文献検索期間
-
- 2004年12月1日から2023年11月30日
- 文献検索方法
-
- キーワード:lung cancer, follow-up,(Postoperative), Surveillance, NSCLC, surgery, smoking cessation
- 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,さらに今回,国際医学情報センターの協力により,下記の検索式で2022年版以降の検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
- 検索式(検索日:2023年12月25日)
-
#1 "lung cancer or NSCLC" AND "surgery" #2 #1 AND "follow-up or survaillance" AND "postoperative" #3 #1 AND "follow-up"限定 OR "surveillance"限定 #4 #1 AND "smoking cessation" #5 #2 AND #3 AND #4 AND "follow up"限定 OR "smoking cessation"限定 #6 #1 AND #2 AND #3 AND #4 AND #5
- 採択方法
-
- メタアナリシス,第Ⅲ相試験,ランダム化比較試験を抽出し,review articleは除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
- 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。
CQ18.
外科切除後の非小細胞肺癌に対しては,定期的な経過観察を行うべきか?
- 推 奨
- 外科切除後の非小細胞肺癌に対しては定期的な経過観察を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C〕
肺癌術後経過観察は科学的根拠に則り,経済的影響を十分に考慮しながら行う必要がある。しかしランダム化比較試験の結果に乏しく科学的根拠に基づいた観察法は示されていない。
肺癌術後の予後は経過観察法,すなわちintensiveに経過を追うかどうかによっては改善されないとの報告がなされてきた1)2)。McMurryらの2018年の論文では,大規模データベースをもとに,病理病期Ⅰ-Ⅲ期非小細胞肺癌切除例4,463例を3カ月毎,6カ月毎,1年毎の3群に分け,リスク調整後,後方視的に解析しているが,これら3群間で全生存率に有意差はみられなかった1)。また,Subramanianらの2019年の同様の論文では,病理病期Ⅰ期非小細胞肺癌切除例2,442例を,high intensity(3カ月),moderate intensity(6カ月),low intensity(1年)の3群に分けて,後方視的解析を行うも,その予後にはやはり有意差を認めなかった2)。さらに米国退役軍人6,171 例の臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌を対象とした研究でも術後低頻度CT(6~12カ月毎,年2回未満のCT)と,高頻度CT(3~6カ月毎,年2回以上のCT)でも生存に差はなかった3)。一方でintensiveに経過観察した場合,生存率が改善するとの報告4)もあるが,術後積極的なサーベイランスを行うのは,費用対効果の面からも再考する必要がある。
早期の非小細胞肺癌に対する経過観察間隔に関してはESMOのガイドラインでは,2年までの半年毎の受診(問診・診察)と12カ月,24カ月時点での造影胸部CT撮影を勧めており,それ以降は年1回の受診とCTを推奨している5)。またASCOのガイドラインでも,病理病期Ⅰ-Ⅲ期の根治的治療後の非小細胞肺癌患者の経過観察において,2年まで6カ月毎の副腎を含む造影胸部CT,以後1年毎の低線量胸部CT撮影を推奨している6)。なお欧米のガイドラインでは定期的なFDG-PETや脳MRI,血液バイオマーカー検査は推奨されておらず,有用性を示唆する科学的根拠もない。
CTについては海外の複数のガイドラインではCTを推奨しており5)7)8),経過観察には低線量らせんCTが有用との報告9)や,半年毎に胸部CTを行った群の予後が良好であったとの報告10)がある。しかし本邦からの病理病期0-Ⅲ期を対象に行った後方視的解析からは,5 年生存率が胸部X線群で76.5%,CT群で78.3% (P=0.22)と差がなかった11)。さらに2022年に発表されたIFCT0302は完全切除された病理病期Ⅰ-ⅢA期非小細胞肺癌1,775 例を対象とし,術後2年まで胸部X線を6カ月毎,術後5年までは1年毎に行う群と,CTを同間隔で行う群の生存期間を比較したランダム化比較試験であるが,OS中央値は胸部X線群8.5年,CT群10.3年と両群間で差はないという結果であった(HR 0.95,P=0.49)。またサブグループ解析で病期毎に比較してもいずれの病期でも両群に差は認めなかった12)。よって術後経過観察における術後CTの予後に対する影響は明らかではない。
明確に推奨する根拠はないものの術後経過観察は日常診療としてなされ,患者のニーズが明確に存在する。また受診による術後合併症の発見,患者の状態の把握,精神的支援などの側面もある。さらに異時多発癌は病理病期Ⅰ期においても1.99/100人年で発生し,切除例の予後は非切除例より良好であった(P=0.003)との報告13)があり,この点も考慮する必要がある。経過観察期間に関しては5年以降では再発は減少14)し,予後は良好15)との報告がある一方で,すりガラス陰影を呈する肺癌でも5年以降に再発したとの報告16)もあり,今後の検討を要する。なお欧州のがん登録の解析では肺癌の場合time to cureは10 年ほどであり17),おおよそ10 年の経過観察が望ましいものの,科学的根拠は不十分である。
以上より,外科切除後の非小細胞肺癌に対しては定期的な経過観察を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
---|---|---|---|---|
100% (10/10) |
0% | 0% | 0% | 0% |
CQ19.
非小細胞肺癌術後の患者は,禁煙を行うべきか?
- 推 奨
- 非小細胞肺癌術後の患者に対しては,禁煙を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C〕
本ガイドラインの中で数少ない喫煙・禁煙と肺癌の関係を対象としたCQであるので,喫煙・禁煙に関係する一般的事項に考察を加えながら課題のCQに答えるようにする。
胃癌とピロリ菌,肝臓癌と肝炎ウイルス,子宮頸癌とヒトパピローマウイルスなどと同様に肺癌も喫煙との因果関係が明らかになっている18)~20)が,あまりにも明らかであるがため逆にランダム化比較試験のようなエビデンスの質の高い報告はみられず,また今後もそのような報告が出てくる可能性もないと考えられる。
肺癌を予防するためには,たばこを吸わないことが最も効果的である。たばこの煙の中には多環芳香族炭化水素類やニトロソアミン類をはじめとする約70種類の発癌物質が含まれており,これらの発癌物質はDNA損傷など癌発生メカニズムの様々な段階に関与する。厚生労働省の「喫煙の健康影響に関する検討会(2016年)」の報告21)では喫煙と疾患の因果関係を以下の4レベルに分類している。すなわち「レベル1:科学的証拠は因果関係を推定するのに十分である」,「レベル2:科学的証拠は因果関係を示唆しているが十分ではない」,「レベル3:科学的証拠は因果関係の有無を推定するのに不十分である」,「レベル4:科学的証拠は因果関係がないことを示唆している」である。肺癌は従来の疫学的・中毒学的データに加え,分子レベル・細胞レベルでの研究で機序面での基礎が揃ったことからレベル1に分類されている18)21)。
多くの疫学研究で一貫して喫煙は癌患者の全死因死亡リスクを上昇させると報告されており,米国Surgeon General Report19)は「科学的証拠は癌患者における喫煙と全死因死亡との因果関係を推定するのに十分である」と結論付けている。60歳以上を対象としたシステマティックレビューでは,非喫煙者に対する統合相対死亡リスクは,喫煙者で1.83(95%CI:1.65-2.03),過去喫煙者で1.34(95%CI:1.28-1.40)と算出された22)。本邦における評価も同様にレベル1である。
喫煙と肺癌の各種治療効果・治療毒性との関係に関してはレベル2(科学的証拠は因果関係を示唆しているが十分ではない)とされている21)が,放射線治療・薬物療法や手術に際して喫煙継続群では禁煙群より有意に合併症が増加したとする報告23)~25)や治療効果が低下したとする報告がみられる26)。またGemineらの2019年の論文では,非小細胞肺癌の診断時の喫煙状態と予後との相関について多施設前向きのコホート研究で1,124例を解析している。リスク調整後の解析で,診断後に禁煙を行った群と喫煙を継続した群では,有意差はみられなかったものの,死亡率の低下がみられており,禁煙は臨床的に重要だとしている27)。VATSの術後合併症に限定しても,前方視的観察研究による多変量解析にて,喫煙が独立したリスク因子であることが示されている23)。
術後再発に関しても同様にレベル2に分類されている21)。喫煙と再発に有意な関係はなかったとする報告もあるが,肺癌術後の患者を喫煙群と禁煙群にランダムに分けることは倫理的にも実施困難であり,必然的にレベルの高い結果は得られていない。しかし,喫煙と二次癌の発生に関してはレベル1(科学的根拠は因果関係を推定するのに十分である)に分類されており21)28)29),喫煙が本人だけではなく周りの人にも伏流煙(フィルターを通しておらず主流煙よりも多くの有害物質を含んでいる)による健康被害を惹起する事実から,肺癌術後の禁煙は強く推奨されるべきものといえる。
以上より,非小細胞肺癌術後の患者に対しては,禁煙を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
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100% (10/10) |
0% | 0% | 0% | 0% |
- 1)
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- 1-10
- 低悪性度腫瘍
文献検索と採択
- 文献検索期間
-
- 2004年12月1日から2023年11月30日
- 文献検索方法
-
- キーワード:lung cancer, surgery, carcinoid, mucoepidermoid, adenoid cystic
- 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,さらに今回,国際医学情報センターの協力により,下記の検索式で2022年版以降の検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
- 検索式(検索日:2023年12月25日)
-
#1 "lung cancer or NSCLC" AND "surgery" #2 #1 AND "low-grade malignancy" #3 #1 AND #2
- 採択方法
-
- メタアナリシス,第Ⅲ相試験,ランダム化比較第Ⅱ相試験を抽出し,review articleは除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献は,上記条件以外でも採用した。
- 上記条件以外のもので,今回の改訂でも必要と判断したものは採用した。
CQ20.
切除可能な低悪性度腫瘍(カルチノイド,粘表皮癌,腺様嚢胞癌)は,非小細胞肺癌に準じた外科治療を行うべきか?
- 推 奨
- 切除可能な低悪性度腫瘍(カルチノイド,粘表皮癌,腺様嚢胞癌)に対しては,非小細胞肺癌に準じた外科治療を行うよう強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C〕
カルチノイドについてはIASLCのデータベースから集積した4,645例の手術症例で,定型カルチノイドの10年生存率は病理病期ⅠA1/97.7%,ⅠA2/97.1%,ⅠA3/96.1%,ⅠB/94.1%,ⅡA/84.7%,ⅡB/85.7%,ⅢA/85.3%,ⅢB+C/48.8%,Ⅳ/58.8%,異型カルチノイドの10年生存率はⅠA1/81.0%,ⅠA2/84.7%,ⅠA3/84.7%,ⅠB/65.5%,ⅡA/87.5%,ⅡB/73.0%,ⅢA/57.7%,ⅢB+C/24.0%,Ⅳ/18.5%で定型カルチノイドに比し異型カルチノイドの予後は不良であった1)。
術式については,カルチノイドにおける縮小手術の有用性は示されていない。2,934例のpropensity score matchingを用いた後方視的解析では,3 cm以下の定型カルチノイドであれば,リンパ節評価を行ったうえで縮小手術も許容し得ると報告された2)。最近の米国NCDBを用いた報告では,3 cm未満の小型カルチノイドにおいて術式は肺葉切除やリンパ節サンプリングを加えた楔状切除の予後が良好であったとされている3)。また2000~07年の3,270例の解析によれば,定型カルチノイド3,084例,異型カルチノイド186例に対し肺葉切除1,669例,縮小手術784例が行われ,多変量解析で疾患特異的生存において縮小手術は肺葉切除に対して劣らないことが示された4)。またSEERデータベースを解析した腫瘍関連死亡に関する多変量解析では,定型カルチノイドでは,部分切除や全摘でも有意な生存延長がみられた一方,異型カルチノイドでは,葉切除のみが有意な生存延長因子であった5)。Filossoらによると,1期定型カルチノイド切除例876例の後方視的観察研究にて,5年生存率94.3%で,Propensity score matching後の比較では,葉切除群は楔状切除群よりも予後良好であった(HR 2.01,P=0.024)6)。異型カルチノイドのみを集積した検討では,浸潤性が高いため標準切除とリンパ節郭清が重要とする報告や7)~9),507例の手術例の多変量解析で,部分切除や全摘術は予後不良因子であるとの結果が示されている10)。一方,放射線照射は死亡率が高いとする報告もあり11),手術が一般的に推奨される。このように数多くの報告があり,カルチノイドに対しては縮小切除でも良好な予後が期待できる可能性はあるが,ランダム化比較試験はなく縮小手術の有用性は示されていないため,非小細胞肺癌に準じた外科治療が勧められる。
カルチノイドでは腫瘍の特性を考慮すべき点もある。SEERデータベースによれば,生検でカルチノイドとされたN0症例4,110例において,5年生存率が肺葉切除で93%,縮小手術で92%,非切除で69%,疾患特異的生存率は肺葉切除で97%,縮小手術で98%,非切除で88%であった。非切除群の疾患特異的生存率も良好であったため,高リスク患者では,無症状例の経過観察や,中枢発生有症状例の気管支鏡処置は考慮してよいと報告されている12)。気管支カルチノイドでは112例の初回経気管支鏡的処置例(全例観察期間5年以上)において,42%の患者が再発を認めず手術を回避し得たとの報告がある13)。
粘表皮癌は肺癌全体の0.1~0.2%を占める稀な腫瘍である。組織学的に低悪性度腫瘍,高悪性度腫瘍に分類される14)。一般的に低悪性度のものは予後良好で,高悪性度のものは予後不良とされている。Qiuらは,1975~2016年のSEERデータベースをもとに,粘表皮癌のみ585例のうち,外科的切除を受けた症例について多変量解析を行い,葉切除/二葉切除をreferenceとして,腫瘍関連死亡に対するHRは,全摘で2.37(95%CI:1.20-4.67),部分切除/区域切除で1.61(95%CI:0.58-4.62),局所腫瘍切除では17.87(8.13-39.31)と報告しており,局所切除は推奨されないと報告している15)。
Qinらの,1988~2013年のSEERデータベースの検討からは315例の粘表皮癌,139例の腺様嚢胞癌を含む462例の唾液腺様原発性肺癌について5年生存率は63.4%,病期別では,Ⅰ期87.5%,Ⅱ期66.6%,Ⅲ期52.5%,Ⅳ期7.3%と示されている。手術は非手術例よりも成績が良好であったが,放射線治療では差がみられなかったと報告している16)。Resioらは,2004~14年のSEERデータベースから699例の粘表皮癌,424例の腺様嚢胞癌を解析し,5年生存率は,粘表皮癌が88.2%,腺様嚢胞癌が89.9%と報告している。切除例の多変量解析により,粘表皮癌では,高悪性度,4 cm以上の腫瘍サイズ,楔状切除が,腺様嚢胞癌では,不完全切除,遠隔転移が独立した予後悪化因子と報告されている17)。
腺様嚢胞癌は完全切除での5年生存率が73~91%と報告され18)~20),後方視的研究ではあるが手術例は非切除例よりも良好な成績で報告されている。
Wangらは,163例の手術例を含む191例の腺様嚢胞癌症例において,切除例の5年生存率が85.0%に対して非切除例では63.7%であった。多変量解析では完全切除,断端陽性例に対する術後照射,術後再発に対する局所療法が良好な予後と関連していた20)。ただ腺様嚢胞癌に対する拡大切除は術後合併症,手術関連死亡が高率であることが報告されており,腺様嚢胞癌の高い放射線感受性を考慮し,その適応は慎重であるべきである21)。
以上より,切除可能な低悪性度腫瘍(カルチノイド,粘表皮癌,腺様嚢胞癌)に対しては,非小細胞肺癌に準じた外科治療を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 強く推奨 |
行うことを 弱く推奨 |
推奨に至る根拠が 明確ではない |
行わないことを 弱く推奨 |
行わないことを 強く推奨 |
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100% (9/9) |
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