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ALK融合遺伝子のコンパニオン診断薬についての声明

ALK融合遺伝子のコンパニオン診断薬についての声明

平成26年9月9日
特定非営利活動法人 日本肺癌学会

ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺癌に対して、その特異的阻害剤であるクリゾチニブ®(ザーコリ®)による分子標的治療は大きな成果をあげております。このような分子標的治療の嚆矢となった上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異 (〜40%)と比べて、ALK融合遺伝子は頻度が低く(3〜5%)、かつ遺伝子転座を直接には検出できないために、間接的にFISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)あるいは免疫染色(IHC)で検出しなければいけないという問題があります。このため日本肺癌学会では「肺癌患者におけるALK遺伝子検査の手引き」を作成し、IHCによるスクリーニング後、陽性例をFISHによって確認することを推奨して参りました。

2014年6月16日にIHCの体外診断薬として初めて株式会社ニチレイバイオサイエンスの「ヒストファイン ALK iAEP® キット」が製造販売承認され、8月28日に発売されました。ALK肺癌診断の促進および精度向上につながるものと大いに歓迎するところであります。しかし同キットの使用目的は「アレクチニブの適用判断の補助」と限定されており、2014年7月4日に製造販売承認された第二のALK阻害剤であるアレセンサ® (アレクチニブ)のコンパニオン診断薬と位置づけられております。

コンパニオン診断薬の概念は、治験で得られた有効性と安全性を一般臨床で再現するためには治験で使用されたものと同じ検査試薬が用いられる必要があるとの合理的な考え方に基づいています。即ち検査試薬と治療薬を一対のものとして承認していこうという当局の方針を反映したもので、ザーコリのコンパニオン診断薬はVysis ALK Break Apart FISHプローブキットです。一方、アレセンサではニチレイIHCとVysis FISHの両方がコンパニオン診断薬として承認されています。なおアレセンサの治験では現在商品化されていない別のFISHキットが使われましたが、同等性試験の結果に基づきVysis FISHが承認された経緯があります。

しかしながら、本来コンパニオンとしてペアであるべきは検査試薬と治療薬ではなく、分子異常と治療薬であることは自明であります。コンパニオン診断薬の原則があまりに強調されますと、ニチレイIHCでスクリーニングの後にVysis FISHで確認してザーコリを使用するとニチレイIHCが保険償還できない、あるいはVysis FISHで診断しザーコリ治療が奏効した患者さんの二次治療以降には再度ニチレイIHCを施行しなければアレセンサが使用できない、等といった医学的、科学的には不合理な事態の発生が懸念されます。

現時点で既に日本肺癌学会会員から上記のような場合の原則の遵守はどの程度必要であるのかについての疑問や不安の声が聞かれます。日本肺癌学会と致しましてはコンパニオン診断薬の必要性を十分認識しつつも上記のような事例につきましては、正しく診断して安全な医療を提供する観点、医療費を抑制する観点からも、特に保険償還上柔軟な対応がなされますことを切に希望するものであります。



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