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肺癌学会について

理事長   

      光冨写真スーツ.jpg  光冨徹哉  (近畿大学医学部外科学講座呼吸器外科部門)

日本肺癌学会理事長二期目を拝命して

 2014年の秋、京都での第55回学術集会後より前中西洋一理事長の後を次いで第4代理事長を拝命し、早3年余の月日が流れました。第57回学術集会中の第11回日本肺癌学会総会にて、会員の皆様に二期目の担当をお許しいただき、引き続き理事長職にとどまることとなりました。

 本学会は1960年の発足から57年を経て、ますます活動は活発化しています。会員総数は2017年11月 現在7,308名、うれしいことに看護師さん薬剤師さん中心の準会員は90名から196名と100%以上増加しました。

 福岡で開催された第57回学術集会では4,500名余のご参加をいただき、これまでにない盛り上がりをみせており、とても有意義な会であったと思います。また、世界肺癌学会議と同時開催された横浜での58回学術集会でには4,000名近いご参加があり、第57回学術集会 中西 洋一会長、第58回学術集会 淺村 尚生会長を始め関係各位のご努力に衷心より感謝申し上げます。

 さて、この機会に私が理事長になってからの3年を振り返り今後の展望をさせていただきたく思います。

 2016年1月9-10日にはリトリートと称して常任理事が泊まりがけで集まり、肺癌学会の今後の方向性についてブレインストーミングを行いました。その結果、ミッション、ビジョン、コアバリュー、ストラテジックプランを策定し、小冊子も作成し皆様に周知したところですが、これを今後の活動の規範としていきたいと思っております。
コアバリュー8項目に従ってこの三年間の活動を振り返ってみましょう。
1. 患者さんを最優先に考えます
・日本肺がん患者連絡会と連携し、患者さん目線の意見をとりいれています。
・患者さん・患者会が学術集会に参加するためのトラベルグラントを拠出しました。
・本年度からガイドライン委員会へ患者さん代表二名に加わっていただきました。

2. 科学的根拠に基づいた肺がん医療を推進します
・2015年にWHO病理の大改訂、及び2017 年よりのUICC TNM第8版の施行をうけて肺癌取扱い規約第8版を出版しました。・進歩めざましい薬物治療の内容をもりこむことを主眼に肺癌診療ガイドライン2016年版を出版しました。今回は悪性胸膜中皮腫、胸腺腫瘍ガイドラインも初めて加えています。
・バイオマーカー委員会ではALK融合遺伝子検査の手引き、EGFR遺伝子検査の手引きの改訂を行いました。
現在、PD-L1, ROS1検査の手引き等についても作成中です。

3. 透明性を開示し客観的な情報開示につとめます。
・理事会の決定や予算執行状況について会員のみなさまに十分ご理解いただけるよう努力を続けていきます。このために理事会議事録公開を始めました。

4. 奉仕の精神をもって社会の信頼に対して責任を果たします
・2016年には全国三箇所(京都、札幌、東京)で市民公開講座を催し、2017年は大阪、福岡、札幌、仙台、東京の五箇所で開催し、患者さんやご家族、一般市民の肺がんawarenessを高めました。また、webではQAコンテンツ“肺がんヘルプデスクon the web”を公開し広いニーズに対応しています。
・政策提言を通じた社会的責任を果たすために、患者会とも連携し、特に重要な薬剤の早期承認、保険償還に関する要望、免疫チェックポイント阻害剤の適正使用に関する声明等を行いました。具体的にはニボルマブの適正使用の呼びかけ、包括外算定、オシメルチニブの包括外算定、ペムブロリズムの一次治療の早期承、インフリキシマブの保険償還の要望などです。

5. すべての医療従事者の能力を最大限活用できるチーム医療を推進します
・2016年は、肺がん薬物療法の最前線と題して全国五箇所(東京、名古屋、大阪、岡山、福岡)で医療従事者向けセミナーを開催しました。2017年は、これからのチーム医療をテーマに全国五箇所(名古屋、東京、福岡、徳島、大阪)で開催しました。また学会内にはメディカルスタッフ部会ワーキンググループを設置し、学術集会のおりにface-to-facenの意見交換を行っています。
・医学部生、初期研修医を対象とした呼吸器外科サマースクール2016の協賛を行いました。
・2017年11月には、将来肺癌領域において、国際的に活躍できる若手研究者の養成・育成を目的に、海外演者も招聘し、日本肺癌学会としては初めてPreceptorship Program2017を開催しました。

6. 多様な価値観を理解し少数の意見も尊重します
・四半期毎に「肺がん医療向上委員会」を開催し(のべ17回開催)、製薬企業・検査会社・ヘルスケア関連企業・メディア・肺がん患者など異なる業態・業種の方々が参加し、肺がん医療の正しい情報の発信や意見交換を行っています。現在では毎回60名~80名の参加を得る会に成長しました。

7. 深い専門性と広い視野を持ち革新的・挑戦的な医療の開発に貢献します。
・学会としては最重要点であることは言うまでもありません。この領域では学術集会の充実が第一にあげられます。
・本学会顕彰制度として従来の篠井・河合賞にくわえて、40才未満会員対象の若手奨励賞、学会誌「肺癌」の優秀論文賞を新設しました。
・日本呼吸器外科学会との共同研究「間質性肺炎合併肺癌研究」を行っています。
・本学会主導の “免疫チェックポイント阻害療法をうけた肺がん患者の観察研究”について準備を行っています。

8. 高い倫理観に基づいて行動します
・昨今世間の目も厳しいところであり、倫理委員会、利益相反委員会等を中心に、お互いで気をつけ合う雰囲気を涵養することが重要だと考えています。

このコアバリューの下に事業計画がありストラテジックプランと呼んでいますが、これには
・学術集会、講演会、研究発表会及びセミナー等の開催事業
・学会誌およびその他の刊行物の発行
・肺癌に関するガイドライン、取扱い規約等の策定及び普及事業
・肺癌に関する研究、調査、及び教育事業
・肺癌の予防、禁煙並びに検診等に関する調査および啓発事業
・肺癌研究の奨励及び研究業績の顕彰事業
・国内外の関係学術団体、行政機関等との提携、研究支援事業
があり、この下に各委員会が属しています。

 なお、今期からより現在の業務内容を反映したものとなるよう委員会の改組も行いました。主なものは以下のようです。
・画像診断委員会、気管支鏡委員会は取扱い規約委員会より独立
・取扱い規約委員会、ガイドライン委員会それぞれにあった病理に係る委員会は合体し病理員会として独立
・渉外委員会を広報委員会と会員委員会に分割
・集団検診委員会を肺がん検診委員会に改名
・渉外委員会-喫煙推進小委員会をたばこ対策委員会として昇格
・規約改定委員会、将来計画委員会の業務を総務委員会に吸収
・治療効果判定基準小委員会、喀痰細胞診による肺癌検診小委員会は廃止
・教育研修委員会、用語委員会を新設

 このように本学会では、わが国の肺癌研究の学術的レベルの向上、一次予防や早期発見への取り組み、肺癌診療の標準化と最適化、国際的発信力の強化、女性会員や若手医師など少数派の会員の声の反映、関連学会との連携の強化、チーム医療や患者支援の促進、新薬承認や保険政策等についての関与等をさらに推進していくための体制固めを行ってきたところであります。

 あいかわらずわが国の肺癌死亡者数は増加傾向です。2017年の肺癌死亡推定数は78,000人と過去最高でした。一方、40年前の1977年の死亡数は17,235名で、この間におよそ4.5倍となっています。ところが罹患者の増加はさらに激しく、1977年は19,946名、2017年は6倍以上の128,700人です。別の見方をしてみましょう。罹患を死亡で割った値は治療成績を反映する量になるはずであり、これは1977年には86.8%でしたが2017年は58.2%と激減しています。プロットしグラフにするとよくわかりますが、明らかに2002-2003年頃に変曲点があり、これが分子標的治療の導入と一致するように見えるのは贔屓目でしょうか?
 今後も新薬の開発が目白押しであり、今後ますます肺がんの診療は複雑化していくと思われます。本学会は、会員の皆さん、患者さん、国民からの要望や期待に応えて真に役立つ活動が行えるよう、関係各所との連携をとりながら最大限の努力を続けて参ります。

 皆様のご理解とご支援をお願い申し上げます。

平成29年12月

特定非営利法人日本肺癌学会理事長
近畿大学医学部外科学講座 呼吸器外科部門 主任教授
光冨 徹哉


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