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理事長挨拶

日本肺癌学会の理事長に就任いたしました山本信之でございます。
日本肺癌学会は、我が国におけるがん関連の単一疾患名を冠している学会としては、最も長い歴史を有しており、肺癌の国際学会であるIASLC(International Association for the Study of Lung Cancer)の10年以上前に設立されております。
そのため、国内外の肺癌診療・研究に対する貢献度も大きく、例えば、皆様もよくご存知のように、日本肺癌学会を含む国内6学会で運営されている肺癌登録合同委員会のデータは、International Association for the Study of Lung Cancer (IASLC) / International Union Against Cancerによる肺癌病期分類の重要な基礎資料として使用されてきておりますし、日本国内においても、厚労省の研究班(藤村班)が2003年に作成した「EBMの手法による肺癌診療ガイドライン」を肺癌学会が引き継ぎ、定期的に更新しており、日本の肺癌診療の標準化・適正化に大きく貢献しております。

山本 信之

さて、ミッション・ビジョン・バリューを明確に示していることも日本肺癌学会の特徴です。
実は、学会としてこの3項目を明らかにしているところは、それほど多くありません。学会の存在意義(ミッション)、未来に向かっての目標(ビジョン)、ミッション・ビジョンを成し遂げるための行動指針(バリュー)の3つがそろうことにより、学会としての方向性・価値観が共有され、適切な学会運営・新たな段階へのステップアップが可能となります。この中で最も重要とされているビジョンには、「日本肺癌学会は肺がんにならない世界、肺がんが治る世界を実現します。」という目標を掲げておりますが、一筋縄では達成できない課題であることは誰の目から見ても明らかではあります。しかしながら、我々は、この壮大な目標に向けて怠りなく最大限の努力をすることは当然のこと、肺癌診療に関わる全ての方々がこの目標に向けてより容易に努力できる状況を作り出すことに全力で取り組む所存です。

その1つの試みとして、肺癌認定医制度が今年より実施される見込みとなっております。
上述のガイドラインは、2003年の初版から最新の2024年版までに冊子体として9冊が刊行され、その厚さは2.5倍にもなっております。それの原因は一義的には知っておくべき情報量が純粋に増加したことに起因しますが、それだけではなく、標準的診療そのものが複雑・多様化しておることも大きな要因です。また、それは、一般的に想像される外科・内科・放射線治療だけではなく、病理診断・画像診断・緩和医療・支持医療の領域にも及んでいます。すなわち、これからの肺癌診療をするためには、各分野のエキスパートが集合したチーム医療だけでは不十分で、ガイドラインに記載されている内容を熟知した専門家の存在が不可欠となります。肺癌認定医制度の開始により、「肺がんが治る世界」により近づけることを期待しております。

最後に、日本肺癌学会に関わるステークホルダーについて述べさせていただきます。
日本肺癌学会の直接的ステークホルダーは、学会員、肺癌診療を受ける患者・その家族を含めた関係者であり、間接的ステークホルダーには、政府機関・患者団体・関連学会・メディア等が含まれます。その中でも、当然ではございますが「肺癌診療を受ける患者・その家族を含めた関係者」は重要な存在であり、コアバリューに「Patient-Centered」を掲げており、これまでも、肺がん医療向上委員会等を通じて、様々なご意見をお聞かせいただいておりました。ただ、患者市民参画の点からはその関係性は十分とはいえず、更なる強化が必要であると感じておりました。そのため新たに、「JALCA・ペイシャントアドボカシー小委員会」を立ち上げて、患者教育等を通じて真の意味での「Patient-Centered」を実現したいと考えております。また、新規医療の開発と普及には、政府機関および国内外の関連学会との連携が不可欠です。そこで国際連携を強化するため、新たに「国際・IASLC連携小委員会」を立ち上げました。今後は、IASLCとの協力体制をさらに進めるとともに、厚生労働省やPMDA等とも具体的な連携強化を進めていきたいと持っております。

「日本肺癌学会は肺がんにならない世界、肺がんが治る世界を実現します。」という目標にむけ、着実に前進してまいりますので、皆様のご協力をどうかよろしくお願い申し上げます。