Ⅳ期の非小細胞肺がんの患者さんに対して使用されるがん治療薬には,抗がん剤(細胞傷害性抗がん薬)(Q40,Q41参照),分子標的治療薬(Q42,Q43参照),免疫チェックポイント阻害薬(Q44,45参照)があります。それぞれの患者さんに適した治療を選択するためには,がん細胞もしくは血液中のがん細胞由来の遺伝子を用いた遺伝子検査(Q10, Q12参照)やがん組織を用いたPD-L1タンパクの発現状況の確認(Q10参照)を行う必要があります。
治療薬の選択において,最も重要な情報は「ドライバー遺伝子の変異や転座の有無」です(Q10,Q42参照)。がん細胞もしくは血液中のがん細胞由来の遺伝子を用いた遺伝子検査でEGFRやALKなどの遺伝子に変異や転座が確認された際には,積極的に分子標的治療薬(オシメルチニブやアレクチニブなど)を用いた治療が行われます(Q42参照)。薬剤は年齢,体力なども考慮して選択されます。
非小細胞肺がんと診断された時点で,ドライバー遺伝子の変異や転座とともにがん細胞表面のPD-L1タンパクの発現状況が確認されます。ドライバー遺伝子の変異や転座が確認されず,かつPD-L1タンパクの発現状況が高い場合には,免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待されます。そのため,免疫チェックポイント阻害薬単独もしくは抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が選択されます。
ドライバー遺伝子の変異や転座が確認されず,PD-L1タンパクの発現がない,もしくは発現が低い場合には,抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が選択されます。
年齢やパフォーマンスステータス(Q27参照)などをもとに担当医がそれぞれの患者さんに適した治療を選択します。
大まかな治療選択の流れを図に示しますが,年齢や体力低下,合併症などにより,図の通りの治療が受けられない可能性もありますので,抗がん剤の選択に関しては,十分に担当医と話し合って,納得したうえで治療を受けることが重要です。