Ⅱ.非小細胞肺癌(NSCLC)

6

Ⅲ期非小細胞肺癌・肺尖部胸壁浸潤癌

文献検索と採択

文献検索期間
  • 2004年12月から2017年12月31日
文献検索方法
  • キーワード:Ⅲ期非小細胞肺癌(non-small cell, lung cancer, locally advanced radiotherapy),肺尖部胸壁浸潤癌(lung cancer, superior sulcus)
  • 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
採択方法
  • 文献はメタアナリシス,第Ⅲ相試験,ランダム化比較第Ⅱ相試験を中心に抽出し,総説もしくは検索時点で日本における未承認薬を用いた試験は除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献,論文化されていない重要な学会報告は上記以外でも採用した。
  • これ以前の文献でも,今回の改訂に際し重要と考えられたものについては採用としている。

本文中に用いた略語および用語の解説

CBDCA カルボプラチン
CDDP シスプラチン
CPT-11 塩酸イリノテカン
DTX ドセタキセル
ETP エトポシド
MMC マイトマイシンC
PTX パクリタキセル
VBL ビンブラスチン
VDS ビンデシン
VNR ビノレルビン
 
プラチナ製剤 CDDPとCBDCAの総称
第三世代細胞障害性抗癌剤 イリノテカン,ドセタキセル,ゲムシタビン,パクリタキセル,ビノレルビンの総称
3D-CRT 3-dimentional conformal radiation therapy 3次元原体照射
ENI elective nodal irradiation 予防的リンパ節照射
IF involved field 病巣部(病巣関連)照射野:主として肉眼的腫瘍体積(画像上明らかな腫瘍病巣部)に限局した照射野を意味する
IMRT intensity-modulated radiation therapy 強度変調放射線治療
MST median survival time 生存期間中央値
OS overall survival 全生存期間
PFS progression free survival 無増悪生存期間
PS performance status 全身状態
SST superior sulcus tumor 肺尖部胸壁浸潤癌
根治照射可能症例の定義

 根治照射とは治癒を目指す照射のことである。根治照射可能症例とは,病巣部(原発巣およびリンパ節転移)すべてに対して根治線量を照射可能で,かつ正常組織障害を最小限に抑えることができる症例のことである。Ⅲ期の中で,対側肺門リンパ節転移を有する症例は根治照射不能例となる。根治照射が可能か否かは,腫瘍の大きさや腫瘍の部位,肺機能や既存肺の状態などから放射線腫瘍医とともに総合的に判断する。

総 論
Ⅲ期非小細胞肺癌・肺尖部胸壁浸潤癌における治療方針
解 説

1)Ⅲ期非小細胞肺癌における治療方針

 Ⅲ期非小細胞肺癌には種々の病態が含まれるため,呼吸器外科,内科医,放射線治療医を含めた集学的治療チームで治療方針を決定することが重要である(CQ6)。Ⅲ期N2症例に対する標準的治療は化学放射線療法であるが(CQ36),導入療法後の外科切除も提案されている(CQ26)。N2肺癌の中には外科切除により予後改善に寄与する症例が存在する可能性もあるが,外科小委員会で切除可能N2の定義について検討したが難しく,今年度は推奨の提示を見送った。

 1980年代前半の切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌における標準治療は,放射線治療単独であったが治療成績は不良であった。

 そこで,1980年代後半に,放射線単独療法と化学療法後に胸部放射線治療を行う逐次併用療法の比較試験が行われ,併用療法の有用性が複数の第Ⅲ相試験において証明された1)2)。その後メタアナリシスでも放射線単独治療に対して化学放射線療法がOSを改善することが示された3)4)。これらのエビデンスから臨床病期Ⅲ期を中心とする切除不能局所進行非小細胞肺癌で,全身状態が良好な患者に対する標準治療として化学放射線療法が確立された。

 1990年代に入り,化学療法と放射線療法の併用時期に関する検討が行われた。すなわち,標準治療として確立された逐次併用療法に対して,化学療法と放射線療法を同時併用する治療の優越性を検証する第Ⅲ相試験が日米の2つのグループで実施された5)6)。これらの臨床試験から,同時併用の化学放射線療法の5年生存割合は,逐次併用療法を上回り15%程度であることが報告された。

 さらに,2000年代には,Ⅳ期非小細胞肺癌において標準治療におけるキードラッグとなった第三世代細胞障害性抗癌剤を同時併用の化学放射線療法レジメンとして用いる有用性が検証された。CBDCA+weekly PTX,CDDP+DTX療法については,いずれも従来の標準治療であったMVP療法と比較する第Ⅲ相試験が本邦で行われ,現在の標準治療に位置付けられている7)8)

 一方,胸部放射線治療について多くの臨床試験で60Gyが用いられてきたが,近年のCT治療計画による3次元放射線治療の普及により,予防的リンパ節照射(ENI)を省いた高線量照射が試みられるようになった。しかし,病巣部照射野(IF)を用いた標準線量60Gyと高線量74Gyの生存延長効果を比較した第Ⅲ相試験で,高線量74Gyによる同時化学放射線療法では,標準線量60Gyの場合よりも局所再発リスクが37%,死亡リスクが56%上昇すると報告された。したがって,化学放射線療法においては少なくとも60Gyの胸部照射線量が推奨されている。照射野については,ENIを省いた病巣部照射野(IF)の有用性について検討したが,いまだエビデンスが少なく,今回は推奨の提示を見送った。

 2015年以降,Ⅳ期非小細胞肺癌においては免疫チェックポイント阻害剤が本邦でも使用となっている。切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌においても同時化学放射線療法後の抗PD-L1抗体であるデュルバルマブによる地固め療法が,プラセボ群に対してPFSを有意に延長したと報告された。同時併用化学放射線療法後に細胞障害性抗癌剤であるDTXによる地固め療法は,OSを延長しなかったことが報告されており,切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌におけるデュルバルマブによる地固め療法のOSに対する効果,長期の安全性に関する今後の検討が重要である。

 化学放射線療法,放射線治療単独療法:CQ36~3941~43

 切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌において,前述のように全身状態良好な患者では化学放射線療法が勧められ,併用時期としては同時併用が推奨される(CQ363741)。選択されるレジメンについては,CQ3839を参照のこと。一方,化学療法併用不能な患者に対しては,放射線単独療法が勧められる(CQ4243)。

 化学放射線療法後の地固め療法:CQ40

 化学放射線療法後の薬剤を変更しての細胞障害性抗癌剤による地固め療法は,勧められない(CQ40-1)。デュルバルマブによる地固め療法については,CQ40-2を参照のこと。

2)肺尖部胸壁浸潤癌における治療方針

 切除可能な肺尖部胸壁浸潤癌(SST)は,唯一,術前化学放射線療法後に外科治療を実施する集学的治療が勧められるため,病期別の項目とは別に記載している。

 SSTでは外科治療を基本とした治療が行われ,術後30日以内の死亡率は4~8.9%である9)~11)。Paulsonの報告以来,放射線治療あるいは化学放射線療法を外科治療に組み合わせた集学的治療が行われてきた12)。しかし,SSTは稀な疾患であり,大規模な術前化学放射線療法あるいは術後化学放射線療法に関するランダム化比較試験やメタアナリシスは報告されていない。

 肺尖部胸壁浸潤癌:CQ44

 切除可能な肺尖部胸壁浸潤癌(臨床病期T3-4N0-1)は,稀な疾患であり,これまでのエビデンスをもとに,臨床的な有用性を考慮し術前化学放射線療法後に外科治療を実施する集学的治療が勧められる(CQ44)。

引用文献
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Dillman RO, Herndon J, Seagren SL, et al. Improved survival in stage III non-small-cell lung cancer: seven-year follow-up of cancer and leukemia group B(CALGB)8433 trial. J Natl Cancer Inst. 1996; 88(17): 1210-5.
2)
Sause WT, Scott C, Taylor S, et al. Radiation Therapy Oncology Group(RTOG)88-08 and Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)4588: preliminary results of a phase III trial in regionally advanced, unresectable non-small-cell lung cancer. J Natl Cancer Inst. 1995; 87(3): 198-205.
3)
Pritchard RS, Anthony SP. Chemotherapy plus radiotherapy compared with radiotherapy alone in the treatment of locally advanced, unresectable, non-small-cell lung cancer. A meta-analysis. Ann Intern Med. 1996; 125(9): 723-9.
4)
Marino P, Preatoni A, Cantoni A. Randomized trials of radiotherapy alone versus combined chemotherapy and radiotherapy in stages IIIa and IIIb nonsmall cell lung cancer. A meta-analysis. Cancer. 1995; 76(4): 593-601.
5)
Furuse K, Fukuoka M, Kawahara M, et al. Phase III study of concurrent versus sequential thoracic radiotherapy in combination with mitomycin, vindesine, and cisplatin in unresectable stage III non-small-cell lung cancer. J Clin Oncol. 1999; 17(9): 2692-9.
6)
Curran WJ Jr, Paulus R, Langer CJ, et al. Sequential vs. concurrent chemoradiation for stage III non-small cell lung cancer: randomized phase III trial RTOG 9410. J Natl Cancer Inst. 2011; 103(19): 1452-60.
7)
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8)
Segawa Y, Kiura K, Takigawa N, et al. Phase III trial comparing docetaxel and cisplatin combination chemotherapy with mitomycin, vindesine, and cisplatin combination chemotherapy with concurrent thoracic radiotherapy in locally advanced non-small-cell lung cancer: OLCSG 0007. J Clin Oncol. 2010; 28(20): 3299-306.
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10)
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Alifano M, D’Aiuto M, Magdeleinat P, et al. Surgical treatment of superior sulcus tumors: results and prognostic factors. Chest. 2003; 124(3): 996-1003.
12)
Paulson DL. Carcinomas in the superior pulmonary sulcus. J Thorac Cardiovasc Surg. 1975; 70(6): 1095-104.
6-1
Ⅲ期非小細胞肺癌

6-1-1.化学放射線療法

CQ36.

切除不能局所進行非小細胞肺癌,全身状態良好(PS 0-1)の患者に対して,化学放射線療法は勧められるか?

推 奨
切除不能局所進行非小細胞肺癌,全身状態良好(PS 0-1)の患者に対して,化学放射線療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕

解 説

 切除不能局所進行非小細胞肺癌に対する放射線単独療法と化学放射線療法の比較試験をまとめたメタアナリシスの結果,CDDPを含む化学療法と放射線療法の併用群の生存率が放射線単独群の生存率に比して有意に良好であった(HR 0.87,P=0.0052,2年時点での死亡リスクを15~30%減少)1)2)。ただし,これらの比較試験では,PSが良好な症例を対象にしており,化学療法により生存期間延長効果が得られる対象もPS 0-1である1)~3)。また,これらのメタアナリシスには年齢上限のない比較試験も含まれるが70歳以上の高齢者の割合は低く,高齢者に対する有用性は不明確である。本邦においては71歳以上のPS 0-1の高齢者を対象としたJCOG0301のランダム化比較試験の結果でも,化学放射線療法群(低用量CBDCA 30mg/m2/日,週5回,計20日間投与+同時胸部放射線照射60Gy)は放射線単独療法群(胸部放射線照射60Gy)に比べて,主要評価項目であるOSを有意に延長することが示されている(MST 22.4カ月vs 16.9カ月,HR 0.68,95%CI:0.47-0.98,P=0.0179)4)

 以上より,切除不能局所進行非小細胞肺癌,全身状態良好(PS 0-1)の患者に対して化学放射線療法を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。ただし,化学放射線療法の有害事象発生頻度は,放射線単独療法のそれより高いため,十分な配慮が必要である。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(40/40)
0% 0% 0% 0%

CQ37.

切除不能局所進行非小細胞肺癌,全身状態が良好(PS 0-1)な患者の化学放射線療法における放射線療法の最適なタイミングとしては,化学療法との同時併用が勧められるか?

推 奨
切除不能局所進行非小細胞肺癌,全身状態が良好(PS 0-1)な患者の化学療法と放射線療法の併用時期は,同時併用を行うことを推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕

解 説

 化学療法と放射線療法の併用時期は同時のほうが併用効果は高い5)6)。CDDP+VDS+MMC併用(MVP)療法下に放射線療法の同時併用と逐次併用を比較した第Ⅲ相試験では,同時併用群においてOSの有意な延長(16.5カ月vs 13.3カ月,P=0.03998)を認めた5)。同様に,CDDP,VBL併用下に放射線療法の同時併用と逐次併用を比較した結果,同時併用群においてOSの有意な延長(17.0カ月vs 14.6カ月,HR 0.812,95%CI:0.663-0.996,P=0.046)を認めた。しかし,同時併用群では急性期のGrade 3以上の好中球減少(88% vs 77%),血小板減少(9% vs 5%),食道炎(23% vs 4%)と有害事象の頻度が高かった。一方,同時併用では急性の有害事象の頻度が高く注意が必要であるが,慢性の有害事象は逐次併用と同等であることが示されている6)。また,最近の同時併用と逐次併用の臨床比較試験をまとめたメタアナリシスにおいても,同時併用群は,逐次併用群に比してOSの有意な延長を示した(HR 0.84,95%CI:0.74-0.95,P=0.004)7)

 以上より,切除不能局所進行非小細胞肺癌,全身状態が良好(PS 0-1)な患者の化学放射線療法における放射線療法の最適なタイミングとして化学療法との同時併用が勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(40/40)
0% 0% 0% 0%

CQ38.

化学放射線療法においてプラチナ製剤と第三世代以降の細胞障害性抗癌剤併用を勧められるか?

推 奨
化学放射線療法においてプラチナ製剤と第三世代以降の細胞障害性抗癌剤併用を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:94%〕

解 説

 現在までに本邦においてMVP療法に対するCBDCA+CPT-11併用療法,CBDCA+PTX併用(CP)療法,CDDP+DTX併用(CD)療法が比較検討され,OSではMVP療法に対するCP療法(CP 22.0カ月vs MVP 20.5カ月,HR 0.876,P=0.876)の非劣性やCD療法(CD 26.7カ月vs MVP 23.7カ月,P>0.05)の優越性は証明されなかった。しかし,CP療法の生存曲線は密に重なっており,有害事象が軽微であることからCP療法が標準治療の1つと結論された8)。CD療法は主評価項目である2年生存率でMVP療法に対する優越性は証明された(CD 60.3% vs MVP 48.1%,P=0.044)が,OSでの優越性は前述のように証明されなかった9)。海外において,CP療法に対するCDDP+ETP併用(PE)療法が比較検討され,主要評価項目である生存期間でPE療法の優越性は証明できなかった(EP 23.3カ月vs. CP 20.7カ月,HR 0.76,95%CI:0.55-1.05,P=0.095)10)。また,同じく海外において非扁平上皮癌を対象にPE療法に対するCDDP+PEM併用(PP)療法が比較検討された。OSではPP療法はPE療法に対する優越性を示せなかったが(PE 26.8カ月vs PP 25.0カ月,HR 0.98,95%CI:0.79-1.20,P=0.831),骨髄抑制はPE療法に比較し軽微であった11)。ただし,この比較試験には日本人は含まれておらず,日本人における安全性,有効性のデータは十分ではない。したがって,レジメンとしてはCP療法あるいはCD療法が日本人における十分なエビデンスを有している。

 一方,海外では標準治療の1つであるPE療法に関して,前述のとおりCP療法,PP療法と比較する2本のⅢ相試験10)11)が実施され,PE療法の効果はCP療法,PP療法と同等であり,Grade 3以上の肺臓炎はPE療法2.6~7.4%,CP療法8.3%,PP療法1.8%,Grade 3以上の食道炎はPE療法15.5~20.0%,CP療法6.3%,PP療法15.5%であった。ただし,PE療法は現状本邦では保険適応外である。

 以上より,化学放射線療法においてプラチナ製剤と第三世代以降の細胞障害性抗癌剤併用を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
94%
(33/35)
6%
(2/35)
0% 0% 0%

CQ39.

切除不能局所進行非小細胞肺癌,シスプラチン一括投与が不適な高齢者に対して,連日カルボプラチン投与による化学放射線療法は勧められるか?

推 奨
切除不能局所進行非小細胞肺癌,シスプラチン一括投与が不適な高齢者に対して,連日カルボプラチン投与による化学放射線療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:62%〕

解 説

 本邦において,71歳以上の高齢者を対象とし化学放射線療法群(低用量CBDCA 30mg/m2/日,週5回,計20日間投与+同時胸部放射線照射60Gy)を放射線単独療法群(胸部放射線照射60Gy)と比較した第Ⅲ相試験では,主要評価項目であるOSを有意に延長することが示された(MST 22.4カ月vs 16.9カ月,HR 0.68,95%CI:0.47-0.98,P=0.0179)4)。一方で,血液学的毒性に関しては化学放射線療法群で,放射線単独療法群に比較し高い頻度で認められ(Grade 3,4好中球減少:57.3% vs 0%,Grade 3,4血小板減少:22.9% vs 2.0%),重篤な感染症も化学放射線療法群で多く認められた(Grade 3,4感染症:12.5% vs 4.1%)。

 以上より,切除不能局所進行非小細胞肺癌,シスプラチン一括投与が不適な高齢者に対して,連日CBDCA投与による化学放射線療法を行うよう勧められる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会/白票6
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
38%
(13/34)
62%
(21/34)
0% 0% 0%

CQ40-1.

同時化学放射線療法後に異なる細胞障害性抗癌剤に変更して地固め化学療法を行うよう勧められるか?

推 奨 修正 #4
同時化学放射線療法後に異なる細胞障害性抗癌剤に変更しての地固め化学療法は行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B,合意率:100%〕

解 説
修正 #5

 CDDP+ETPと胸部放射線同時併用療法後にDTXを3サイクル実施する地固め化学療法の意義を検証する第Ⅲ相比較試験が行われた。予定されていた中間解析の結果,DTXによる地固め化学療法により生存期間延長効果は得られず(MST 21.2カ月vs 23.2カ月,P=0.883),Grade 3~5の有害事象(発熱性好中球減少症10.9%,感染症11.0%,肺臓炎9.6%)の有意な増加および5.5%の治療関連死亡が報告され,試験は早期無効中止となった12)

 以上より,同時化学放射線療法後に異なる細胞障害性抗癌剤に変更しての地固め化学療法は行わないよう勧められる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行わないよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会/白票11
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 0% 0% 100%
(29/29)

CQ40-2.

同時化学放射線療法後に免疫チェックポイント阻害剤による地固め療法を行うよう勧められるか?

推 奨
同時化学放射線療法後にデュルバルマブによる地固め療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:94%〕

解 説

 同時化学放射線療法後,病勢がコントロールされている切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌を対象として,デュルバルマブによる地固め療法(デュルバルマブ群)を,プラセボ群と比較する第Ⅲ相試験が行われた。主要評価項目は,PFS,OSの両者に設定され,中間解析においてPFSはHR 0.52(16.8カ月vs 5.6カ月,95%CI:0.42-0.65,P<0.001)で,デュルバルマブ群はプラセボ群に対してPFSを有意に延長した。OSについては,PFS中間解析時の解析は計画されておらず,2018年7月時点で詳細な結果は未公表である13)。従来,CBDCA+PTX, CDDP+PEM等を用いた同時化学放射線療法では同じ薬剤を用いた地固め療法が実施されている。本試験では放射線終了後デュルバルマブまたはプラセボを42日以内に投与する試験デザインで実施されたため,同じ薬剤を用いた地固め療法は行わずに,デュルバルマブ群またはプラセボ群に割り付けられている。

 毒性に関して,放射線肺臓炎はデュルバルマブ群33.9%,プラセボ群24.8%で認められたが,Grade 3~4の放射線肺臓炎については,デュルバルマブ群3.4%,プラセボ群2.6%であった。Grade 5の放射線肺臓炎については,デュルバルマブ群1.1%,プラセボ群1.7%で認められた13)14)。また,免疫学的有害事象については,デュルバルマブ群24.2%,プラセボ群8.1%で認められ,Grade 3~4の有害事象は,デュルバルマブ群3.4%,プラセボ群2.6%であった14)

 上記試験における日本人サブセットの解析も報告されている(日本人集団/全体集団112/713例)14)。日本人集団における放射線肺臓炎は,デュルバルマブ群73.6%(53/72例),プラセボ群60.0%(24/40例)であった。そのうち,Grade 3~4の放射線肺臓炎は,デュルバルマブ群5.6%(4/72例),プラセボ群2.5%(1/40例)であった。Grade 5の放射線肺臓炎については,デュルバルマブ群1.4%(1/72例),プラセボ群2.5%(1/40例)で認められた14)

 以上のように,デュルバルマブによる地固め療法は,OSの詳細な結果は未公表であるがPFSを有意に延長しており,同時化学放射線療法後,病勢がコントロールされている切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌を対象としたデュルバルマブによる地固め療法を行うよう提案する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会/白票3
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 94%
(33/35)
6%
(2/35)
0% 0%

CQ41.

化学療法併用時の最適な照射法は何か?

推 奨
  • a.
  • 総線量は通常分割で少なくとも60Gyを用いるよう勧められる。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕

  • b.
  • IFによる74Gyの高線量照射は行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B,合意率:100%〕

解 説
  • a.化学療法に放射線療法を併用する場合の照射方法は,化学療法と放射線を併用するタイミングを検討する試験,同時化学放射線療法における化学療法の比較や地固め化学療法を比較した試験に用いられた放射線療法の分割照射法・投与線量がすべて1回1.8~2Gyで週5回,計59.4~66Gyであったことを元としている。CDDP+VBL同時併用放射線療法,遂時放射線照射,CDDP+ETPと同時過分割照射(計69.6Gy)を比較した試験でも,過分割照射の有用性は証明されていない6)。また,本邦で行われた第三世代以降の殺細胞性抗癌剤を併用した化学放射線療法に関する比較第Ⅲ相試験で用いられた放射線治療は1回2Gyで週5回,計30回,総線量60Gyである8)9)。化学療法に放射線治療を併用する場合においても,放射線単独療法と同じ最低推奨照射線量は安全性の観点から同時に照射が可能であり,通常分割で60Gyを最低総線量とするよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会/白票4
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(36/36)
0% 0% 0% 0%
  • b.近年のCT治療計画による3D-CRTの普及により,予防的リンパ節照射(ENI)を省く病巣部照射野(IF)を用いた高線量照射が試みられるようになった15)16)。このIFを用いた標準線量60Gyと高線量74Gyの生存期間延長効果を比較した第Ⅲ相試験で,高線量74Gyによる同時化学放射線療法では,標準線量60Gyの場合よりも局所再発リスクが37%,死亡リスクが56%上昇すると報告された16)。また,この臨床試験では,IMRTが約半数に施行され,解析が行われた。その結果,3D-CRTより放射線肺臓炎の頻度は低かったと報告された17)。しかし,低線量が照射される肺の体積と重篤な肺臓炎の相関は明らかではなく,肺癌に対するIFを用いたIMRTの安全性は確立されていない。

     以上より,化学放射線療法においてENIを省くIFを用いた74Gyの高線量照射は行わないよう勧められる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行わないよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会/白票6
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 0% 0% 100%
(34/34)
引用文献
1)
Pritchard RS, Anthony SP. Chemotherapy plus radiotherapy compared with radiotherapy alone in the treatment of locally advanced, unresectable, non-small-cell lung cancer. A meta-analysis. Ann Intern Med. 1996; 125(9): 723-9.
2)
Marino P, Preatoni A, Cantoni A. Randomized trials of radiotherapy alone versus combined chemotherapy and radiotherapy in stages IIIa and IIIb nonsmall cell lung cancer. A meta-analysis. Cancer. 1995; 76(4): 593-601.
3)
Non-small Cell Lung Cancer Collaborative Group. Chemotherapy in non-small cell lung cancer: a meta-analysis using updated data on individual patients from 52 randomised clinical trials. BMJ. 1995; 311(7010): 899-909.
4)
Atagi S, Kawahara M, Yokoyama A, et al. Thoracic radiotherapy with or without daily low-dose carboplatin in elderly patients with non-small-cell lung cancer: a randomised, controlled, phase 3 trial by the Japan Clinical Oncology Group(JCOG0301). Lancet Oncol. 2012; 13(7): 671-8.
5)
Furuse K, Fukuoka M, Kawahara M, et al. III study of concurrent versus sequential thoracic radiotherapy in combination with mitomycin, vindesine, and cisplatin in unresectable stage III non-small-cell lung cancer. J Clin Oncol. 1999; 17(9): 2692-9.
6)
Curran WJ Jr, Paulus R, Langer CJ, et al. Sequential vs. concurrent chemoradiation for stage III non-small cell lung cancer: randomized phase III trial RTOG 9410. J Natl Cancer Inst. 2011; 103(19): 1452-60.
7)
Aupérin A, Le Péchoux C, Rolland E, et al. Meta-analysis of concomitant versus sequential radiochemotherapy in locally advanced non-small-cell lung cancer. J Clin Oncol. 2010; 28(13): 2181-90.
8)
Yamamoto N, Nakagawa K, Nishimura Y, et al. Phase III study comparing second- and third-generation regimens with concurrent thoracic radiotherapy in patients with unresectable stage III non-small-cell lung cancer: West Japan Thoracic Oncology Group WJTOG0105. J Clin Oncol. 2010; 28(23): 3739-45.
9)
Segawa Y, Kiura K, Takigawa N, et al. Phase III trial comparing docetaxel and cisplatin combination chemotherapy with mitomycin, vindesine, and cisplatin combination chemotherapy with concurrent thoracic radiotherapy in locally advanced non-small-cell lung cancer: OLCSG 0007. J Clin Oncol. 2010; 28(20): 3299-306.
10)
Liang J, Bi N, Wu S, et al. Etoposide and cisplatin versus paclitaxel and carboplatin with concurrent thoracic radiotherapy in unresectable stage III non-small cell lung cancer: a multicenter randomized phase III trial. Ann Oncol. 2017; 28(4): 777-83.
11)
Senan S, Brade A, Wang LH, et al. PROCLAIM: Randomized Phase III Trial of Pemetrexed-Cisplatin or Etoposide-Cisplatin Plus Thoracic Radiation Therapy Followed by Consolidation Chemotherapy in Locally Advanced Nonsquamous Non-Small-Cell Lung Cancer. J Clin Oncol. 2016; 34(9): 953-62.
12)
Hanna N, Neubauer M, Yiannoutsos C, et al. Phase III study of cisplatin, etoposide, and concurrent chest radiation with or without consolidation docetaxel in patients with inoperable stage III non-small-cell lung cancer: the Hoosier Oncology Group and U. S. Oncology. J Clin Oncol. 2008; 26(35): 5755-60.
13)
Antonia SJ, Villegas A, Daniel D, et al; PACIFIC Investigators. Durvalumab after Chemoradiotherapy in Stage III Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2017; 377(20): 1919-29.
14)
Murakami S, Özgüroğlu M, Villegas A, et al. PACIFIC: A double-blind, placebo-controlled Phase III study of durvalumab as consolidation therapy after chemoradiation in patients with locally advanced, unresectable NSCLC(ESMO Asia 2017 Congress, 403O). Ann oncol. 2017; 28(suppl_10). mdx670.
15)
Yuan S, Sun X, Li M, et al. A randomized study of involved-field irradiation versus elective nodal irradiation in combination with concurrent chemotherapy for inoperable stage III nonsmall cell lung cancer. Am J Clin Oncol. 2007; 30(3): 239-44.
16)
Bradley JD, Paulus R, Komaki R, et al. Standard-dose versus high-dose conformal radiotherapy with concurrent and consolidation carboplatin plus paclitaxel with or without cetuximab for patients with stage IIIA or IIIB non-small-cell lung cancer(RTOG 0617): a randomised, two-by-two factorial phase 3 study. Lancet Oncol. 2015; 16(2): 187-99.
17)
Chun SG, Hu C, Choy H, et al. Impact of Intensity-Modulated Radiation Therapy Technique for Locally Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer: A Secondary Analysis of the NRG Oncology RTOG 0617 Randomized Clinical Trial. J Clin Oncol. 2017; 35(1): 56-62.

6-1-2.放射線単独療法

CQ42.

切除不能のⅢ期非小細胞肺癌で化学療法併用不能なものに対して,放射線単独療法は勧められるか?

推 奨
放射線単独療法を行うよう勧められる。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

解 説

 無症状のⅢ期非小細胞肺癌240人を対象に,A群:通常照射(50Gy/25回/5週),B群:小分割照射(40Gy/10回/5週,3週間の休止期間を含む),C群:症状が出るまで無治療で,症状が出たら姑息照射を行う3群のランダム化比較試験が行われ,2年生存率は,A群18%,B群6%,C群0%と通常照射群の生存率が有意に良好であった1)

 以上より,切除不能のⅢ期非小細胞肺癌で化学療法併用不能なものに対する放射線単独療法は1本のランダム化比較試験の結果のみではあるが,すでにコンセンサスとして標準的に行われており勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:放射線治療小委員会
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(13/13)
0% 0% 0% 0%

CQ43.

放射線治療単独時の最適な照射法は何か?

推 奨
通常分割照射で少なくとも60 Gyを用いるよう勧められる。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕

解 説

 照射線量別の有効性に関する臨床試験では60Gy照射された症例において低い線量が照射された症例(40Gyあるいは50Gy)よりも照射野内再発が有意に低率であった。さらに,3年生存率は有意な差とはならなかったものの,60Gy照射例で良好な結果であった2)。また,放射線単独で線量分割をランダム化比較した英国の4つの臨床試験と,米国の第Ⅲ相試験との検討では3),放射線単独治療では,線量が正常組織反応および局所制御率と相関していた。一方,線量が70Gyを超える領域に関して,T1-3N2M0のⅢ期非小細胞肺癌を対象とした60Gyから79.2Gyまでの過分割照射のランダム化比較試験では,MSTや年次生存率は60Gyから69.6Gyまで線量が増加するほど改善する傾向にあったが,70Gy以上では改善は認められず,有害事象によっては線量増加に従って増える傾向が認められた4)

 通常分割以外の照射方法に関しては,1日に複数回照射する過分割照射や照射期間を短縮する加速照射に関する試験が行われた5)~7)。扁平上皮癌における連続加速過分割照射の優位性が報告されたが,それ以外の組織型における有効性は示されなかった6)。この試験を含め,他の報告はいずれも海外のデータであり,有意な生存期間の延長は示されていない。また,本邦において土日も含めて1日3回照射する連続加速過分割照射は汎用性に乏しいと考えられる。

 以上より,化学放射線療法の適応とならない切除不能のⅢ期非小細胞肺癌に放射線単独療法を行う際には通常分割で少なくとも60Gy/30回を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:放射線治療小委員会
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(13/13)
0% 0% 0% 0%
引用文献
1)
Reinfuss M, Glinski B, Kowalska T, et al. Radiotherapy for stage III, inoperable, asymptomatic small cell lung cancer. Final results of a prospective randomized study(240 patients). Cancer Radiother. 1999; 3(6): 475-9.
2)
Perez CA, Pajak TF, Rubin P, et al. Long-term observations of the patterns of failure in patients with unresectable non-oat cell carcinoma of the lung treated with definitive radiotherapy. Report by the Radiation Therapy Oncology Group. Cancer. 1987; 59(11): 1874-81.
3)
Singer JM, Price P, Dale RG. Radiobiological prediction of normal tissue toxicities and tumour response in the radiotherapy of advanced non-small-cell lung cancer. Br J Cancer. 1998; 78(12): 1629-33.
4)
Cox JD, Azarnia N, Byhardt RW, et al. A randomized phase I/II trial of hyperfractionated radiation therapy with total doses of 60.0Gy to 79.2Gy: possible survival benefit with greater than or equal to 69.6Gy in favorable patients with Radiation Therapy Oncology Group stage III non-small-cell lung carcinoma: report of Radiation Therapy Oncology Group 83-11. J Clin Oncol. 1990; 8(9): 1543-55.
5)
Ball D, Bishop J, Smith J, et al. A randomised phase III study of accelerated or standard fraction radiotherapy with or without concurrent carboplatin in inoperable non-small cell lung cancer: final report of an Australian multi-centre trial. Radiother Oncol. 1999; 52(2): 129-36.
6)
Saunders M, Dische S, Barrett A, et al. Continuous, hyperfractionated, accelerated radiotherapy(CHART)versus conventional radiotherapy in non-small cell lung cancer: mature data from the randomized multicentre trial. CHART Steering committee. Radiother Oncol. 1999; 52(2): 137-48.
7)
Bonner JA, McGinnis WL, Stella PJ, et al. The possible advantage of hyperfractionated thoracic radiotherapy in the treatment of locally advanced nonsmall cell lung carcinoma: results of a North Central Cancer Treatment Group Phase III Study. Cancer. 1998; 82(6): 1037-48.
6-2
肺尖部胸壁浸潤癌

CQ44.

切除可能な肺尖部胸壁浸潤癌(臨床病期T3-4N0-1)に対して,どのような治療が勧められるか?

推 奨
術前化学放射線療法後に外科治療を実施する集学的治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:92%〕

解 説

 肺尖部胸壁浸潤癌(SST)に対する術前化学放射線療法+手術治療の第Ⅱ相試験であるSWOG9416/INT0160では1),術前治療のnon PD率は86%,完全切除割合が75%であり,長期経過観察によるMSTは36カ月で5年生存割合は44%であった。また,国内でもSSTに対する術前化学放射線療法+手術治療の第Ⅱ相試験が行われ(JCOG9806),術前治療の奏効率は61%で完全切除割合は68%,全例の5年生存割合が56%であった2)。放射線治療についてはいずれの試験においても,原発巣および同側の鎖骨上窩に限局した照射野で行われ総線量は45Gy/25回であった。併用した化学療法はCDDP+ETP(SWOG9416/INT0160),MVP療法(JCOG9806)であり,第三世代の細胞障害性抗癌剤は用いられていない。一方,国内で胸壁浸潤癌に対する術前化学放射線療法後+外科切除の第Ⅱ相試験が行われた。この試験では,第三世代細胞障害性抗癌剤を用いたVNR+CDDPが化学療法として併用され,登録された48例中16例がSSTであった。全体集団における術前治療の奏効率51%,完全切除割合は92%であり,5年生存割合は62.6%であった3)

 SSTに対する術後化学放射線療法に関して,手術治療+術後化学放射線療法の第Ⅱ相試験が実施され,完全切除割合は72%で全例の5年生存割合が50%であった4)。しかしながら,本試験では,エントリー時の手術の可否基準が不明確であることに加え,登録期間が1994~2007年までと長く,症例数も少ないため,研究の質に問題があると考えられる。

 以上より,切除可能な肺尖部胸壁浸潤癌(臨床病期T3-4N0-1)に対して術前化学放射線療法後に外科治療を実施する集学的治療を行うよう勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。なお,術前化学放射線療法後に外科治療を実施する集学的治療については実施可能性の検討を含め専門医施設で行うことを考慮する。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会/白票1
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
92%
(36/39)
8%
(3/39)
0% 0% 0%
引用文献
1)
Rusch VW, Giroux DJ, Kraut MJ, et al. Induction chemoradiation and surgical resection for superior sulcus non-small-cell lung carcinomas: long-term results of Southwest Oncology Group Trial 9416(Intergroup Trial 0160). J Clin Oncol. 2007; 25(3): 313-8.
2)
Kunitoh H, Kato H, Tsuboi M, et al. Phase II trial of preoperative chemoradiotherapy followed by surgical resection in patients with superior sulcus non-small-cell lung cancers: report of Japan Clinical Oncology Group trial 9806. J Clin Oncol. 2008; 26(4): 644-9.
3)
Kawaguchi K, Yokoi K, Niwa H, et al; Central Japan Lung Study Group. A prospective, multi-institutional phase II study of induction chemoradiotherapy followed by surgery in patients with non-small cell lung cancer involving the chest wall(CJLSG0801). Lung Cancer. 2017; 104: 79-84.
4)
Gomez DR, Cox JD, Roth JA, et al. A prospective phase 2 study of surgery followed by chemotherapy and radiation for superior sulcus tumors. Cancer. 2012; 118(2): 444-51.
レジメン
Ⅲ期非小細胞肺癌の同時併用
CP療法 胸部放射線治療 60Gy/30回(6週),day 1~
化学療法 CBDCA (AUC=2), day 1,8,15,22,29,36
PTX 40mg/m2, day 1,8,15,22,29,36
CBDCA (AUC=5), day 1 2コース
PTX 200mg/m2, day 1 2コース
CD療法 胸部放射線治療 60Gy/30回(6週),day 1~
化学療法 CDDP 40mg/m2
day 1,8,29,36
➔ 地固め化学療法は行わない
DTX 40mg/m2
day 1,8,29,36
高齢者
CBDCA療法
胸部放射線治療 60Gy/30回(6週),day 1~
化学療法 CBDCA 30mg/m2
 合計20回の投与を40Gyまでの照射日に一致して照射前60分以内に投与
地固め療法 免疫チェック
ポイント阻害剤
デュルバルマブ10mg/kg,day 1,2週毎(最大1年間)
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