Ⅱ.治 療

3

内科治療

文献検索と採択

文献検索期間
  • 1990年1月1日から2019年12月31日
文献検索方法
  • 2018年版では委員がPubMedを用いて検索し,今回,国際医学情報センターの協力を得て以下の検索式で検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
検索式(検索日:2020年3月18日)
キーワード 検索式
Malignant pleural mesothelioma, Chemotherapy, Multimodality therapy, Immunotherapy, Talc pleurodesis
  • #1:悪性胸膜中皮腫(ヒト,言語,年代限定)
  • #2:指定キーワード
  • #3:#1×(タルク,OK432)×胸膜癒着術
  • #4:#1×(化学療法+免疫療法)
  • #5:#4×(術前,術後,周術期)
  • #6:#4×胸水コントロール
  • #7:#4×一次治療×プラチナ
  • #8:#4×プラチナ×コース
  • #9:#4×PS
  • #10:#4×二次治療以降

#2+#3+#5+#6+#7+#8+#9+#10

採択方法
  • 文献はメタアナリシス,第Ⅲ相試験,第Ⅱ相試験を中心に抽出し,総説もしくは検索時点で本邦における未承認薬を用いた試験は除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献,論文化されていない重要な学会報告は上記以外でも採用した。
  • これ以前の文献でも,今回の改訂に際し重要と考えられたものについては採用としている。
3-1
周術期

CQ8.

胸水コントロールのためにタルクやOK432による胸膜癒着術は勧められるか?

推 奨
  • a.
  • 胸水コントロールのため胸膜癒着術を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B,合意率:85%〕

  • b.
  • 胸膜癒着術に用いる薬剤としてはタルク懸濁液を提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:60%〕

解 説

 悪性胸膜中皮腫の周術期のみを対象に胸膜癒着の有用性を検討した比較試験はない。

 有効性(胸水コントロール):癌腫を問わないいわゆる癌性胸膜炎に対し,胸腔ドレナージ単独と,その後の胸水の再貯留を抑制するための胸膜癒着術を比較した試験において,タルクによる胸膜癒着術施行群で胸水コントロール率が優れていた(100% vs 60%)との報告がある1)。悪性胸膜中皮腫に対する使用薬剤についてはタルクを用いた172症例の前向き観察研究で,胸水コントロール率は3カ月時点で49%(85/172例),1年生存者においては93%(79/85例)であった2)。また,タルクによる胸膜癒着術88例とVATSによる胸膜部分切除87例とのランダム化比較試験では,1年生存率は前者が57%,後者が52%であり,1年生存者の胸水コントロール率はそれぞれ77%(27/35例)と70%(23/33例)と報告され,胸水貯留のある中皮腫に対する胸膜癒着術の胸水コントロール率は胸膜部分切除と同等であった3)

 有効性(OS,RFS):胸膜癒着術施行後のOSについて2つの比較試験2)4),PFSについては1つの比較試験がある5)。いずれの試験においても,胸膜癒着術の有無によりOS,PFSに有意差は認められていない。

 安全性:胸膜中皮腫85例を含んだ前向きコホート試験において,タルク懸濁法はARDSの併発を来さなかった6)。タルクによる胸膜癒着術とVATSによる胸膜部分切除とのランダム化比較試験では,合併症はそれぞれ14%と31%であった3)

 QOL:胸膜癒着術後のQOLの変化について,3つの比較試験において検討されているが3)5)7),少なくとも胸膜癒着術がQOLを損なうことを示唆する報告はない。

  • a.よって,胸水制御と症状軽減を目的とした胸膜癒着術は,外科治療などの積極的な治療の適応の有無にかかわらず実施可能であり,有用と考える。特にドレナージ後に肺の再拡張が得られた症例では生検後に胸水コントロール目的の胸膜癒着術を行うよう推奨する。以上より,エビデンスの強さはB,また総合的評価では胸膜癒着術を行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2名含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
85%
(17/20)
10%
(2/20)
0% 5%
(1/20)
0%
  • b.使用薬剤としてはタルク懸濁液が胸水制御率に優れているとのエビデンスが多く存在する。以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価ではタルク懸濁液を用いた胸膜癒着を行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2名含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
35%
(7/20)
60%
(12/20)
5%
(1/20)
0% 0%

CQ9.

術前・術後の化学療法は勧められるか?

推 奨
  • a.
  • 術前もしくは術後の化学療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:85%〕

  • b.
  • 化学療法レジメンとしてはシスプラチン+ペメトレキセド併用療法を推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:90%〕

解 説

 手術可能な悪性胸膜中皮腫症例には,術前または術後のどちらかに集学的治療の一環として化学療法が検討されるが,周術期化学療法を術前または術後のどちらに行うべきかの前向き比較試験の報告はない。後ろ向き観察研究,集学的治療について検討した論文について下記に記載する。

 OS:周術期に化学療法を実施した症例を対象とした後ろ向き観察研究では,術前と術後でOSの有意差は認められなかった(20.9カ月vs 21.7カ月P=0.500)8)。術前あるいは術後化学療法と外科治療(胸膜肺全摘術),術後放射線治療を組み合わせた集学的治療に関する複数の第Ⅱ相試験9)〜12)および前向きコホート研究13)〜15)がある。このうちCDDP+PEM併用療法による術前化学療法と胸膜肺全摘術,術後放射線治療を行った3つの第Ⅱ相試験において,OS中央値は16.8〜19.9カ月9)〜11)であり,胸膜剝皮術とCDDP+PEM併用療法による術後化学療法,術後放射線治療を行った前向きコホート研究では,OS中央値は30カ月,また2年,3年生存率はそれぞれ69%,50%であった14)

 PFS:上述した臨床試験のうち術前あるいは術後に化学療法を行いPFSを解析した論文は4編ある。PFSの中央値は10.1〜13.9カ月9)〜12)であった。

 RR:術前化学療法の奏効率に関して,CDDP+PEM併用療法を用いた場合の奏効率は26.0〜33.3%9)11)16)であり,CDDP+GEM併用療法を用いた試験では26%であった16)

 安全性:術前化学療法として実施したCDDP+PEM併用療法で,Grade 3以上の血液毒性,発熱性好中球減少,肺炎,胸痛,肺血栓の報告があるが,97%以上のdose intensityが保たれており,その後の外科治療のリスクを高めることはないとされている9)

 QOL:術前化学療法によるQOLの変化について1つの臨床試験があり,術後に身体的なQOLの低下がみられたが,その後回復したと報告されている12)

  • a.よって,術前あるいは術後に化学療法を行うことの有用性を手術単独と比較した試験はないが,化学療法の毒性は許容範囲内であり,術前,術後いずれかに化学療法を行うことが推奨される。以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では化学療法を行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2名含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
85%
(17/20)
15%
(3/20)
0% 0% 0%
  • b.推奨されるレジメンとしては,複数の第Ⅱ相臨床試験で有効性と安全性が報告されているCDDP+PEM併用療法を切除不能症例に対する化学療法に準じ実施することを推奨する。以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価ではCDDP+PEM併用療法を行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2名含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
90%
(18/20)
10%
(2/20)
0% 0% 0%
引用文献
1)
Sørensen PG, Svendsen TL, Enk B. Treatment of malignant pleural effusion with drainage, with and without instillation of talc. Eur J Respir Dis. 1984; 65(2): 131-5.
2)
Rena O, Boldorini R, Papalia E, et al. Persistent lung expansion after pleural talc poudrage in non-surgically resected malignant pleural mesothelioma. Ann Thorac Surg. 2015; 99(4): 1177-83.
3)
Rintoul RC, Ritchie AJ, Edwards JG, et al. Efficacy and cost of video-assisted thoracoscopic partial pleurectomy versus talc pleurodesis in patients with malignant pleural mesothelioma(MesoVATS): an open-label, randomised, controlled trial. Lancet. 2014; 384(9948): 1118-27.
4)
Clive AO, Jones HE, Bhatnagar R, et al. Interventions for the management of malignant pleural effusions: a network meta-analysis. Cochrane Database Syst Rev. 2016; 2016(5): CD010529.
5)
Bhatnagar R, Piotrowska HEG, Laskawiec-Szkonter M, et al. Effect of thoracoscopic talc poudrage vs talc slurry via chest tube on pleurodesis failure rate among patients with malignant pleural effusions: a randomized clinical trial. JAMA. 2019; 323(1): 60-9.
6)
Janssen JP, Collier G, Astoul P, et al. Safety of pleurodesis with talc poudrage in malignant pleural effusion: a prospective cohort study. Lancet. 2007; 369(9572): 1535-9.
7)
Dresler CM, Olak J, Herndon JE 2nd, et al. Phase Ⅲ intergroup study of talc poudrage vs talc slurry sclerosis for malignant pleural effusion. Chest. 2005; 127(3): 909-15.
8)
Verma V, Ahern CA, Berlind CG, et al. Treatment of malignant pleural mesothelioma with chemotherapy preceding versus after surgical resection. J Thorac Cardiovasc Surg. 2019; 157(2): 758-66. e1.
9)
Krug LM, Pass HI, Rusch VW, et al. Multicenter phase Ⅱ trial of neoadjuvant pemetrexed plus cisplatin followed by extrapleural pneumonectomy and radiation for malignant pleural mesothelioma. J Clin Oncol. 2009; 27(18): 3007-13.
10)
Van Schil PE, Baas P, Gaafar R, et al; European Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)Lung Cancer Group. Trimodality therapy for malignant pleural mesothelioma: results from an EORTC phaseⅡ multicentre trial. Eur Respir J. 2010; 36(6): 1362-9.
11)
Hasegawa S, Okada M, Tanaka F, et al. Trimodality strategy for treating malignant pleural mesothelioma: results of a feasibility study of induction pemetrexed plus cisplatin followed by extrapleural pneumonectomy and postoperative hemithoracic radiation(Japan Mesothelioma Interest Group 0601 Trial). Int J Clin Oncol. 2016; 21(3): 523-30.
12)
Weder W, Stahel RA, Bernhard J, et al; Swiss Group for Clinical Cancer Research. Multicenter trial of neo-adjuvant chemotherapy followed by extrapleural pneumonectomy in malignant pleural mesothelioma. Ann Oncol. 2007; 18(7): 1196-202.
13)
Sugarbaker DJ, Flores RM, Jaklitsch MT, et al. Resection margins, extrapleural nodal status, and cell type determine postoperative long-term survival in trimodality therapy of malignant pleural mesothelioma: results in 183 patients. J Thorac Cardiovasc Surg. 1999; 117(1): 54-63; discussion 63-5.
14)
Bölükbas S, Manegold C, Eberlein M, et al. Survival after trimodality therapy for malignant pleural mesothelioma: Radical Pleurectomy, chemotherapy with Cisplatin/Pemetrexed and radiotherapy. Lung Cancer. 2011; 71(1): 75-81.
15)
Rea F, Marulli G, Bortolotti L, et al. Induction chemotherapy, extrapleural pneumonectomy(EPP)and adjuvant hemi-thoracic radiation in malignant pleural mesothelioma(MPM): Feasibility and results. Lung Cancer. 2007; 57(1): 89-95.
16)
Flores RM, Krug LM, Rosenzweig KE, et al. Induction chemotherapy, extrapleural pneumonectomy, and postoperative high-dose radiotherapy for locally advanced malignant pleural mesothelioma: a phase Ⅱ trial. J Thorac Oncol. 2006; 1(4): 289-95.]
3-2
進行期

CQ10.

胸水コントロールなどの局所療法と全身的な薬物療法のどちらを先に行うべきか?

推 奨
自覚症状を呈するような胸水貯留を伴う場合は,局所療法を先行するよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:D,合意率:65%〕

解 説

 胸水コントロールなどの局所療法と全身的な薬物治療を比較した試験はない。大量の胸水がある症例に薬物治療を行う場合,薬物によっては半減期が長くなるなど薬物動態に影響を与え,毒性の増強につながる可能性があるため注意が必要である。悪性胸膜中皮腫の場合,薬物治療のみで胸水のコントロールができる症例は限られると考えられるため,少なくとも息切れ・呼吸困難などの自覚症状を呈するような胸水貯留を伴う場合は,局所療法を先行することが推奨される。

 以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価では自覚症状を呈するような胸水貯留を伴う場合は,局所療法を先行するよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2名含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
35%
(7/20)
65%
(13/20)
0% 0% 0%

CQ11.

PS 0-2の一次治療にプラチナ併用療法は勧められるか?

推 奨
シスプラチン+ペメトレキセド併用療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B,合意率:95%〕

解 説

 PS良好例に対する一次治療として,化学療法(MVP療法:MMC+VBL+CDDPもしくはVNR単剤療法)と対症療法のランダム化比較試験1)が,その後,CDDP単剤とCDDP+PEM併用療法の第Ⅲ相比較試験が行われた2)。また,CBDCA+PEM併用療法については2つの第Ⅱ相試験がある3)4)

 OS:対症療法に比べ,MVP療法のOS延長効果は示されなかった(8.5カ月vs 7.6カ月,HR 0.89,P=0.29)が,VNR単剤療法は統計学的に有意ではないものの,OS延長効果が示された(9.5カ月vs 7.6カ月,HR 0.80,P=0.08)。CDDP単剤とCDDP+PEM併用療法の比較では併用療法のOS延長効果が示された(9.3カ月vs 12.1カ月)。CDDP単剤療法が対症療法よりOSが短くなるとは考えにくいことから,CDDP+PEM併用療法によるOS延長効果はあるものと考えられる。

 また,CBDCA+PEM併用療法については2つの第Ⅱ相試験で報告されている結果から,いずれもCBDCA+PEM併用療法のOS中央値はCDDP+PEM併用療法と同様な値(12.7〜14カ月)が得られている。

 PFS:MVP療法と対症療法の比較試験ではOS同様に延長効果を認めなかった(5.1カ月vs 5.6カ月,HR 0.91,P=0.39)が,CDDP単剤とCDDP+PEM併用療法の比較では併用療法の延長効果を認めた(TTP 3.9カ月vs 5.7カ月)。

 また,CBDCA+PEM併用療法では,CDDP+PEM併用療法と比較し同等であった(TTP:6.5〜8.0カ月)。

 RR:CDDP単剤とCDDP+PEM併用療法の比較では16.7% vs 41.3%と併用療法で有意に良好であった。

 また,CBDCA+PEM併用療法は,CDDP+PEM併用療法と比較しORRは18.6%〜25%とやや劣る結果であった。

 安全性:CDDP単剤とCDDP+PEM併用療法の比較ではGrade 3〜4の好中球減少(27.9% vs 2.3%),血小板減少(0% vs 5.8%)はいずれも有意(P<0.001)にCDDP+PEM併用療法で高かった。

 また,CBDCA+PEM併用療法は,CDDP+PEM併用療法と比較し好中球減少,貧血を除き毒性は軽度であった。

 QOL:化学療法と対症療法との比較試験ではEORTC QLQ-C30で評価されたが,化学療法と対症療法に差は認めなかった。

 よって,PS良好な症例にはプラチナ併用療法,CDDPの使用が可能であればCDDP+PEM併用療法を行うよう推奨する。CBDCA+PEM併用療法については比較試験に基づいたものではないが,CDDP不耐な患者に対しては選択肢の1つにしてよいと判断される。なお,PEMを用いた維持療法の有効性について検証した比較試験で,論文化されたものは見当たらない。

 以上より,エビデンスの強さはB,また総合的評価ではCDDP+PEM併用療法を行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2名含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
95%
(19/20)
5%
(1/20)
0% 0% 0%

CQ12.

プラチナ製剤併用薬物療法で勧められる投与コース数は?

推 奨
6コースを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:80%〕

解 説

 至適投与法に関する前向きな検討はない。しかし,CDDP+PEM併用療法 vs PEM単剤の第Ⅲ相試験においては,原則はPDもしくは忍容不能な毒性が発現するまで投与を継続することが推奨されていたが,CDDP+PEM併用療法群で8コース以上投与可能であったのはわずか7.1%に過ぎず,投与コース数の中央値は6コースであった。よって,6コースの投与でも十分な可能性がある1)

 以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では6コースを行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2名含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
20%
(4/20)
80%
(16/20)
0% 0% 0%

CQ13.

PS 0-2,75歳以上の一次治療にプラチナ併用療法は勧められるか?

推 奨
PS 0-2であればプラチナ併用療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:D,合意率:85%〕

解 説

 PS良好な高齢者の一次治療として,プラチナ併用療法の効果,安全性を検討した比較試験はない。

 OS:CDDP+PEM併用療法とCDDP単剤の第Ⅲ相比較試験2)では,登録年齢の上限を設けていないため,一定数の75歳以上の症例が登録されているが,75歳以上の高齢者に限ったデータの公表はなくOSの延長効果は不明である。

 PFS:75歳以上に限ったサブセットの解析はなく,PFSの延長効果は不明である。

 RR:同様に評価は不能であった。

 安全性:CBDCA+PEM併用療法の2つの試験の後方視的統合解析では,70歳未満と比較し70歳以上でGrade 3〜4の貧血(20.8% vs 6.9%,P<0.01)が有意に増加していたが,非血液毒性は同程度であった5)

 QOL:75歳以上の高齢者に限ったQOLを評価できるエビデンスはなく評価不能である。

 以上より,PSが良好であれば,75歳以上の一次治療としてプラチナ併用療法は選択肢の1つと考えられる。エビデンスの強さはD,また総合的評価ではプラチナ併用療法を行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2名含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
5%
(1/20)
85%
(17/20)
10%
(2/20)
0% 0%

CQ14.

PS 3-4に全身的な薬物治療は勧められるか?

推 奨
PS 3-4に対し薬物治療は行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:D,合意率:70%〕

解 説

 PS不良例のみを対象とした臨床試験は存在しない。CQ11で採用した論文では,いずれの臨床試験においても,全身的な薬物治療の対象症例はPS 0-2であり,PS 3-4に対するエビデンスは乏しく安全性も不明である。

 以上より,PS 3-4に対する薬物治療は行わないよう推奨される。エビデンスの強さはD,また総合的評価では薬物治療を行わないよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2名含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 0% 30%
(6/20)
70%
(14/20)

CQ15.

PS 0-2の二次治療以降に勧められる薬物治療は何か?

推 奨
  • a.
  • ペメトレキセド未使用の場合,ペメトレキセド単剤を推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:75%〕

  • b.
  • ペメトレキセド単剤の再投与を提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:D,合意率:90%〕

  • c.
  • ビノレルビン単剤,ゲムシタビン単剤もしくはビノレルビン+ゲムシタビン併用療法の投与を提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:90%〕

  • d.
  • ニボルマブ単剤の投与を推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:85%〕

解 説

a.

 OS:一次治療としてPEMが投与されていない症例を対象とした二次治療の第Ⅲ相比較試験6)において,PEM+BSC群はBSC群に比べてOSの延長効果は認めなかった。

 PFS:PFS(3.6カ月vs 1.6カ月,P=0.0148)は延長効果を認めた。

 安全性:Grade 3以上の血液毒性はPEM+BSC群で好中球減少7.4%,貧血5.8%であった。

 QOL:QOLはエビデンスがなく評価不能である。

 したがって,一次治療でPEMが投与されていない場合,PEMの投与を行うよう推奨する。以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価ではPEMの投与を行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2名含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
75%
(15/20)
25%
(5/20)
0% 0% 0%

b.

 一次治療でPEM含有レジメンを投与した症例を対象とした観察研究が2編存在する7)8)

 OS:一次治療でPEMの最良効果がnon-PDであった症例が経過観察中にPDとなった場合,二次治療としてPEM単剤もしくはプラチナ製剤+PEM併用療法を投与した際のOSは10.5〜13.6カ月であった。

 PFS:PFSは3.8〜5.1カ月であった。

 RR:DCRは48〜57%であった。

 安全性:Grade 3以上の血液毒性は9.7%であった。

 QOL:エビデンスがなく評価不能である。

 したがって,一次治療でPEMがnon-PDで終了していた場合,PEMの再投与を考慮するよう提案する。以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価ではペメトレキセド単剤の再投与を行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2名含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
5%
(1/20)
90%
(18/20)
5%
(1/20)
0% 0%

c.

 二次治療におけるVNR単剤は,第Ⅱ相試験が存在する9)

 OS:OSは9.6カ月であった。

 RR:ORRは16%であった。

 安全性:Grade 3以上の好中球減少は55%であった。

 QOL:エビデンスがなく評価不能である。

 上述の論文はVNRの用量が30mg/m2 weeklyと日本と異なる点に留意が必要である。

 したがって,二次治療においてはVNR単剤の投与も選択肢と考えられるが,毒性については十分配慮すべきである。

 また,二次治療におけるVNR+GEM併用療法も,第Ⅱ相試験が存在する10)

 OS:OSは10.9カ月であった。

 RR:RRは10%であった。

 安全性:Grade 3以上の好中球減少は10%であった。

 有効性はVNR単剤療法と同等の成績であり,毒性はVNRの投与量(25mg/m2,day 1,8)の影響か許容範囲であった。

 したがって,二次治療においてはVNR+GEM併用療法の投与も選択肢の1つと考えられる。

 GEM単剤は二次治療以降を対象とした,第Ⅱ相試験が存在する11)

 OS:OSは8.0カ月であった。

 RR:RRは7%であった。

 安全性:Grade 3以上の好中球減少は30%であったが,発熱性好中球減少は1例も報告がなかった。

 有効性はVNR単剤療法と同等の成績であり,毒性も許容範囲であった。

 したがって,二次治療以降においてはGEM単剤療法の投与も選択肢の1つと考えられる。

 以上より,二次治療以降におけるVNR単剤,GEM単剤,VNR+GEM併用療法のエビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2名含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
10%
(2/20)
90%
(18/20)
0% 0% 0%

d.

 二次治療以降におけるニボルマブ単剤は既治療の日本人(一次治療後24人,および二次治療後10人)を対象にしたMERITおよび海外の既治療例(一次治療後33人,および二次治療後1人)を対象にしたNivoMesの2編の第Ⅱ相試験が報告されている12)13)

 OS:6カ月生存率は74〜85%であった。

 PFS:PFSは2.6〜6.1カ月であった。

 RR:ORRは24〜29%であった。

 安全性:ニボルマブ単剤投与による毒性はGrade 3〜4で15〜26%であった。

 さらに,海外の既治療例を対象にしてニボルマブとニボルマブ+イピリムマブを比較したMAPS2ランダム化第Ⅱ相試験では,ニボルマブ単剤(一次治療後44人,および二次治療以降19人)は,組織型にかかわらずORR 18%,PFS中央値4.0カ月,OS 13.6カ月と前述の2編の試験と同様の成績であった14)。また,QOLはLung Cancer Symptom Scaleを用いて評価され,ニボルマブ単剤投与により治療開始後12週間で一般的な症状が48%の症例で改善したと報告された。なお,イピリムマブは現時点で切除不能悪性胸膜中皮腫既治療例に対して本邦では保険償還されていない。

 以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価ではニボルマブ単剤の投与を行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2名含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
85%
(17/20)
15%
(3/20)
0% 0% 0%
引用文献
1)
Muers MF, Stephens RJ, Fisher P, et al; MS01 Trial Management Group. Active symptom control with or without chemotherapy in the treatment of patients with malignant pleural mesothelioma(MS01): a multicentre randomised trial. Lancet. 2008; 371(9625): 1685-94.
2)
Vogelzang NJ, Rusthoven JJ, Symanowski J, et al. Phase Ⅲ study of pemetrexed in combination with cisplatin versus cisplatin alone in patients with malignant pleural mesothelioma. J Clin Oncol. 2003; 21(14): 2636-44.
3)
Ceresoli GL, Zucali PA, Favaretto AG, et al. Phase Ⅱ study of pemetrexed plus carboplatin in malignant pleural mesothelioma. J Clin Oncol. 2006; 24(9): 1443-8.
4)
Castagneto B, Botta M, Aitini E, et al. Phase Ⅱ study of pemetrexed in combination with carboplatin in patients with malignant pleural mesothelioma(MPM). Ann Oncol. 2008; 19(2): 370-3.
5)
Ceresoli GL, Castagneto B, Zucali PA, et al. Pemetrexed plus carboplatin in elderly patients with malignant pleural mesothelioma: combined analysis of two phaseⅡ trials. Br J Cancer. 2008; 99(1): 51-6.
6)
Jassem J, Ramlau R, Santoro A, et al. Phase Ⅲ trial of pemetrexed plus best supportive care compared with best supportive care in previously treated patients with advanced malignant pleural mesothelioma. J Clin Oncol. 2008; 26(10): 1698-704.
7)
Ceresoli GL, Zucali PA, De Vincenzo F, et al. Retreatment with pemetrexed-based chemotherapy in patients with malignant pleural mesothelioma. Lung Cancer. 2011; 72(1): 73-7.
8)
Bearz A, Talamini R, Rossoni G, et al. Re-challenge with pemetrexed in advanced mesothelioma: a multi-institutional experience. BMC Res Notes. 2012; 5: 482.
9)
Stebbing J, Powles T, McPherson K, et al. The efficacy and safety of weekly vinorelbine in relapsed malignant pleural mesothelioma. Lung Cancer. 2009; 63(1): 94-7.
10)
Zucali PA, Ceresoli GL, Garassino I, et al. Gemcitabine and vinorelbine in pemetrexed-pretreated patients with malignant pleural mesothelioma. Cancer. 2008(7): 1555-61.
11)
van Meerbeeck JP, Baas P, Debruyne C, et al. A Phase Ⅱ study of gemcitabine in patients with malignant pleural mesothelioma. European Organization for Research and Treatment of Cancer Lung Cancer Cooperative Group. Cancer. 1999; 85(12): 2577-82.
12)
Okada M, Kijima T, Aoe K, et al. Clinical efficacy and safety of nivolumab: results of a multicenter, open-label, single-arm, Japanese Phase Ⅱ study in Malignant Pleural Mesothelioma(MERIT). Clin Cancer Res. 2019; 25(18): 5485-92.
13)
Quispel-Janssen J, van der Noort V, de Vries JF, et al. Programmed death 1 blockade with nivolumab in patients with recurrent malignant pleural mesothelioma. J Thorac Oncol. 2018; 13(10): 1569-76.
14)
Zalcman G, Mazieres J, Greillier L, et al. Second or 3rd line nivolumab(Nivo)versus nivo plus ipilimumab(Ipi)in malignant pleural mesothelioma(MPM)patients: Updated results of the IFCT-1501 MAPS2 randomized phase 2 trial. Ann Oncol. 2017; 28(suppl_5): mdx440.074.
このページの先頭へ