Ⅱ.治 療

4

緩和治療

文献検索と採択

文献検索期間
  • 1990年1月1日から2019年12月31日
文献検索方法
  • 2018年版では委員がPubMedを用いて検索し,今回,国際医学情報センターの協力を得て以下の検索式で検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
検索式(検索日:2020年3月18日)
CQ キーワード 検索式
CQ16 Malignant pleural mesothelioma, Palliative, Palliation, Radiotherapy, Radiation therapy
  • #1:悪性胸膜中皮腫(ヒト,言語,年代限定)
  • #2:#1×指定キーワード
CQ17 Malignant pleural mesothelioma, Palliative, Palliation
  • #1:悪性胸膜中皮腫(ヒト,言語,年代限定)
  • #2:#1×指定キーワード
採択方法
  • 文献はメタアナリシス,第Ⅲ相試験,第Ⅱ相試験を中心に抽出し,総説もしくは検索時点で本邦における未承認薬を用いた試験は除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献,論文化されていない重要な学会報告は上記以外でも採用した。
  • これ以前の文献でも,今回の改訂に際し重要と考えられたものについては採用としている。

CQ16.

疼痛緩和目的の放射線治療は勧められるか?

推 奨
疼痛緩和目的の放射線治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:85%〕

解 説

 進行した胸膜中皮腫では,圧迫や浸潤により疼痛を来すことが多い。緩和目的で放射線治療を施行した報告では,約60%の症例に疼痛緩和が得られたとされている1)2)。これらの報告では,主として40Gy/20回または36Gy/13回が用いられていた。また,単施設で189症例,227コースの緩和照射例を検討した報告で,1回線量4Gyの症例のほうが,1回線量4Gy未満の症例よりも緩和効果が高かった(50% vs 39%)3)。20Gy/5回の多施設第Ⅱ相試験の報告で,35%の症例で疼痛緩和効果があったとの報告もある4)。一方,Austin Healthのグループによる報告で,45Gy以上の高線量でGrade 3以上の重症な有害事象の発現率が3D-CRTで53%,IMRTで78%と高率に認められたとされている。緩和照射の際には,低線量で小さな範囲での照射が有用と考えられる5)

 現在のところ最適な分割方法や至適線量は不明であるが,胸膜中皮腫の疼痛に対して緩和照射は有効であり行うよう勧められる。

 以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では疼痛緩和目的の放射線治療を行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2名含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
85%
(17/20)
15%
(3/20)
0% 0% 0%

CQ17.

症状緩和目的の胸膜癒着術は勧められるか?

推 奨
胸水制御と胸水貯留による症状の軽減を目的とした緩和治療として,胸膜癒着術を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B,合意率:80%〕

解 説

 胸膜中皮腫を臨床的に診断し得る最も早期の病態は胸水貯留であり,発見の動機になることが多い。縦隔を偏位させるほど,大量に貯留することもある。胸水による症状は,労作時呼吸困難,胸部圧迫感などがある。

 悪性胸膜中皮腫を対象として,胸水コントロールによる症状緩和を主要評価項目とした比較試験はない。胸水コントロールに関するエビデンスは周術期のCQ8を参照されたい6)〜12)

 胸腔ドレナージ後の胸膜癒着術はドレナージ単独より胸水コントロール率に優れていることが示されており,胸膜中皮腫においても症状緩和目的の胸腔ドレナージは有用と考えられる。特にドレナージ後に肺の再拡張が得られた症例では胸水コントロール目的の胸膜癒着術を行うよう推奨する。

 以上より,エビデンスの強さはB,また総合的評価では胸膜癒着術を行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2名含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
80%
(16/20)
20%
(4/20)
0% 0% 0%
引用文献
1)
Akmansu M, Erpolat OP, Goksel F, et al. Radiotherapy applications of patients with malignant mesothelioma: A single center experience. Rep Pract Oncol Radiother. 2012; 18(2): 82-6.
2)
Jenkins P, Milliner R, Salmon C. Re-evaluating the role of palliative radiotherapy in malignant pleural mesothelioma. Eur J Cancer. 2011; 47(14): 2143-9.
3)
de Graaf-Strukowska L, van der Zee J, van Putten W, et al. Factors influencing the outcome of radiotherapy in malignant mesothelioma of the pleura--a single-institution experience with 189 patients. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1999; 43(3): 511-6.
4)
MacLeod N, Chalmers A, OʼRourke N, et al. Is Radiotherapy Useful for Treating Pain in Mesothelioma?: A PhaseⅡ Trial. J Thorac Oncol. 2015; 10(6): 944-50.
5)
Foroudi F, Smith JG, Putt F, et al. High-dose palliative radiotherapy for malignant pleural mesothelioma. J Med Imaging Radiat Oncol. 2017; 61: 797-803.
6)
Sørensen PG, Svendsen TL, Enk B. Treatment of malignant pleural effusion with drainage, with and without instillation of talc. Eur J Respir Dis. 1984; 65(2): 131-5.
7)
Rena O, Boldorini R, Papalia E, et al. Persistent lung expansion after pleural talc poudrage in non-surgically resected malignant pleural mesothelioma. Ann Thorac Surg. 2015; 99(4): 1177-83.
8)
Rintoul RC, Ritchie AJ, Edwards JG, et al; MesoVATS Collaborators. Efficacy and cost of video-assisted thoracoscopic partial pleurectomy versus talc pleurodesis in patients with malignant pleural mesothelioma(MesoVATS): an open-label, randomised, controlled trial. Lancet. 2014; 384(9948): 1118-27.
9)
Clive AO, Jones HE, Bhatnagar R, et al. Interventions for the management of malignant pleural effusions: a network meta-analysis. Cochrane Database Syst Rev. 2016; 2016(5): CD010529.
10)
Bhatnagar R, Piotrowska HEG, Laskawiec-Szkonter M, et al. Effect of Thoracoscopic Talc Poudrage vs Talc Slurry via Chest Tube on Pleurodesis Failure Rate Among Patients With Malignant Pleural Effusions: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019; 323(1): 60-9.
11)
Janssen JP, Collier G, Astoul P, et al. Safety of pleurodesis with talc poudrage in malignant pleural effusion: a prospective cohort study. Lancet. 2007; 369(9572): 1535-9.
12)
Dresler CM, Olak J, Herndon JE 2nd, et al. Phase Ⅲ intergroup study of talc poudrage vs talc slurry sclerosis for malignant pleural effusion. Chest. 2005; 127(3): 909-15.
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