Ⅱ.非小細胞肺癌(NSCLC)

7

Ⅳ期非小細胞肺癌

文献検索と採択

文献検索期間
  • 2004年12月1日から2020年11月30日
文献検索方法
  • キーワード:lung cancer, non-small cell lung cancer, chemotherapy
  • 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは医学図書館協会,2020年版からは国際医学情報センターの協力を得てより詳細な検索を行った。2021年版改訂は,下記の検索式で2020年版以降の検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
検索式(検索日:2021年2月10日)
#1 “Carcinoma, Non-Small-Cell Lung/therapy”[Majr]AND(“Carcinoma, Non-Small-Cell Lung/secondary”[Mesh]OR “Neoplasm Metastasis”[Mesh])
#2 “Carcinoma, Non-Small-Cell Lung/therapy”[Majr]AND(stage IV[TIAB]OR stage IV-[TIAB]OR stage III/IV[TIAB]OR stage 4[TIAB]OR stages IV[TIAB]OR stages IV-[TIAB]OR stages III/IV[TIAB]OR stages 4[TIAB]OR advanced[TIAB]OR metastatic[TIAB])
#3 (Non-Small-Cell Lung Cancer[TI]OR Nonsmall Cell Lung Cancer[TI]OR Non Small Cell Lung Carcinoma[TI]OR Nonsmall-Cell Lung Carcinoma[TI]OR NSCLC[TI]OR squamous lung cancer[TI]OR squamous lung carcinoma[TI]OR lung adenocarcinoma[TI]OR lung squamous[TI]OR squamous cell lung[TI]OR pulmonary squamous[TI]OR squamous cell pulmonary[TI]OR pulmonary large[TI]OR lung large[TI]OR large cell lung[TI]OR large cell pulmonary[TI])AND(stage IV[TIAB]OR stage IV-[TIAB]OR stage III/IV[TIAB]OR stage 4[TIAB]OR stages IV[TIAB]OR stages IV-[TIAB]OR stages III/IV[TIAB]OR stages 4[TIAB]OR advanced[TIAB]OR metasta[TIAB])NOT medline[SB]
#4 #1 OR #2 OR #3
#5 #4 AND 2019/12:2020/11[DP]
#6 #5 AND(JAPANESE[LA]OR ENGLISH[LA])
採択方法
  • 文献はメタアナリシス,第Ⅲ相試験,ランダム化比較第Ⅱ相試験を中心に抽出し,総説もしくは検索時点で日本における未承認薬を用いた試験は除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献,論文化されていない重要な学会報告は上記以外でも採用した。
  • これ以前の文献でも,今回の改訂に際し重要と考えられたものについては採用としている。
  • 原稿作成中に検索された2020年12月1日以降の文献も重要性を考慮したうえで適宜追加した。

本文中に用いた略語および用語の解説

CBDCA カルボプラチン
CDDP シスプラチン
CPT-11 イリノテカン
DTX ドセタキセル
GEM ゲムシタビン
IFM イホスファミド
nab-PTX ナブパクリタキセル
NDP/CDGP ネダプラチン
PEM ペメトレキセド
PTX パクリタキセル
S-1 テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤
VNR ビノレルビン
PD-1/PD-L1阻害薬 ニボルマブ,ペムブロリズマブ,アテゾリズマブの総称
免疫チェックポイント阻害薬 ニボルマブ,ペムブロリズマブ,アテゾリズマブ,イピリムマブの総称
プラチナ製剤 CDDP,CBDCA,NDP/CDGPの総称
第一・二世代のEGFR-TKI ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ,ダコミチニブの総称
ALK anaplastic lymphoma kinase 未分化リンパ腫キナーゼ
ECOG eastern cooperative oncology group 米国東海岸癌臨床試験グループ
EGFR epidermal growth factor receptor 上皮成長因子受容体
IC tumor-infiltrating immune cells 腫瘍浸潤免疫細胞
ORR objective response rate 客観的奏効率
OS overall survival 全生存期間
PFS progression free survival 無増悪生存期間
PRO patient reported outcome 患者報告アウトカム
PS performance status 全身状態
QOL quality of life 生活の質
TC tumor cells 腫瘍細胞
TKI tyrosine kinase inhibitor チロシンキナーゼ阻害薬
TPS tumor proportion score PD-L1免疫染色による腫瘍細胞における陽性率
ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)Performance Status
Score 定 義
0 全く問題なく活動できる。
発病前と同じ日常生活が制限なく行える。
1 肉体的に激しい活動は制限されるが,歩行可能で,軽作業や座っての作業は行うことができる。
例:軽い家事,事務作業
2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない。
日中の50%以上はベッド外で過ごす。
3 限られた自分の身の回りのことしかできない。
日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。
4 全く動けない。
自分の身の回りのことは全くできない。
完全にベッドか椅子で過ごす。

出典:Common Toxicity Criteria, Version2.0 Publish Date April 30, 1999

(JCOGホームページ.ガイドライン・各種基準より日本語訳を引用)

高齢者の定義

 現在本邦では,高齢者人口の増加に伴い高齢の肺癌患者が増加している。全国がん登録による罹患データ(2016~17年)によると,肺癌の罹患年齢のピークは70~75歳であり,約半数が70歳以上である。日本の従来の臨床試験では,75歳以上の肺癌患者は除外されることが多かった。近年実施された高齢肺癌患者を対象とする国内第Ⅲ相試験では,70歳以上を対象として実施されたものでも75歳以上の登録例が多く,75歳以上を対象として行われたものもあり,75歳以上の肺癌患者でも治療機会が増えている。

 以上より,本ガイドラインでは非小細胞肺癌において「75歳以上」を高齢者と定義する。

合意率および推奨率

 肺癌診療ガイドラインでは,GRADEアプローチに基づく推奨度の決定を作成委員間の投票で行っている。投票結果に応じて推奨度を決定しており,そのうち最も投票率が高かった項目の割合を合意率としてCQ内に記載している。ただし,Ⅳ期非小細胞肺癌の領域に限っては,特に下記のCQ(CQ525759606671)について,1つのCQに対し推奨度の異なる治療法が含まれるため合意率の記載のみでは投票結果を推奨度に反映できない。そのため,推奨率(推奨1“強”+推奨2“弱”[提案]の割合)を追記した。なお,投票結果の詳細はCQの巻末に提示しているため詳細を確認いただきたい。

総 論
Ⅳ期非小細胞肺癌における薬物療法の意義とサブグループ別の治療方針

樹形図

Ⅳ期非小細胞肺癌:サブグループ別の治療方針
解 説

 Ⅳ期非小細胞肺癌で用いられる薬物療法においては,長らく細胞傷害性抗癌薬がその中心を担ってきた。細胞傷害性抗癌薬と緩和治療を比較したメタアナリシスによって,細胞傷害性抗癌薬を用いた治療により有意に生存を延長させることが示されている1)。これは1年生存率にして9%(20%から29%)の改善,もしくは約1.5カ月のOS延長に相当する。第三世代細胞傷害性抗癌薬を用いた検討では,第三世代細胞傷害性抗癌薬単剤療法でも緩和治療に比して1年生存率で約7%の改善がみられたことが示されている2)。毒性については,別のメタアナリシスで進行非小細胞肺癌における細胞傷害性抗癌薬の治療関連死が1.26%であったと報告されており,その内訳は発熱性好中球減少,虚血や血栓などの心血管系の毒性,肺炎や間質性肺疾患などの肺毒性であった3)。QOLに関しては,第三世代細胞傷害性抗癌薬単剤は緩和治療と比較してQOLを改善させることが報告されている4)。また,第三世代細胞傷害性抗癌薬にプラチナ製剤を追加する治療を行うことの意義を評価した第Ⅲ相試験では,プラチナ製剤と第三世代細胞傷害性抗癌薬を使用した治療がOS・PFS延長を示すと同時にQOLは同等であったと報告されている5)

 一方,2000年代以降になって分子標的治療薬・免疫チェックポイント阻害薬といった新規治療が登場し,これらは細胞傷害性抗癌薬との比較によってその有効性を示している。

 分子標的治療薬の多くはEGFR遺伝子変異,ALK融合遺伝子などといった癌発生の直接的な原因となるようなドライバーと称される遺伝子変異/転座に対する阻害薬である。全身状態良好で,これらドライバー遺伝子の変異/転座を有する患者に対して,それぞれのキナーゼ阻害薬を投与することでORRの増加,PFSの延長などの有効性が報告されている。EGFR遺伝子変異,ALK融合遺伝子では細胞傷害性抗癌薬と比較した第Ⅲ相試験が実施され,キナーゼ阻害薬を用いた治療のほうが細胞傷害性抗癌薬に比して有効であることが報告されている(CQ46)。頻度の少ないEGFRのuncommon mutation,その他のドライバー遺伝子(ROS1,BRAF,MET,RET)変異/転座陽性例では細胞傷害性抗癌薬と比較した第Ⅲ相試験が実施されていないが,第Ⅱ相試験などではそれぞれの阻害薬を投与することによって同程度の高い有効性が報告されている(CQ5560~63)。また多くの分子標的治療薬は一般的に細胞傷害性抗癌薬よりも毒性が軽度であることが多く,少数例の検討ながらPS不良例における前向き試験での有効性が報告されている点も重要である(CQ47)。なお,キナーゼ阻害薬の適応となるドライバー遺伝子変異/転座陽性例は腺癌症例に多く認められるが,扁平上皮癌症例やその他の組織型においても認められることがある。ドライバー遺伝子変異/転座陽性の扁平上皮癌を有する患者に対するキナーゼ阻害薬の治療成績はエビデンスに乏しく,さらに非扁平上皮癌症例と比較すると劣る傾向にある。しかしながら奏効例の報告もみられるため,いずれかのタイミングでキナーゼ阻害薬の投与を検討すべきである。

 2015年以降,本邦で使用可能となった免疫チェックポイント阻害薬は,細胞傷害性抗癌薬や分子標的治療薬と異なる作用機序を有する新規薬で,腫瘍免疫における負の調節因子であるPD-1やCTLA-4などの免疫チェックポイント分子を標的とした抗体薬である。PS 0-1でEGFR遺伝子変異,ALK融合遺伝子を有さない,PD-L1 TPSが50%以上の非小細胞肺癌を対象としたPD-1阻害薬(ペムブロリズマブ)とプラチナ製剤併用療法の第Ⅲ相試験(KEYNOTE-024試験)では,ペムブロリズマブ群においてORR,PFS,OSの有意な改善が示され,毒性も忍容可能であった(CQ66)。さらに,進行非小細胞肺癌を対象として細胞傷害性抗癌薬(プラチナ製剤併用療法)にPD-1/PD-L1阻害薬やCTLA-4阻害薬を併用した治療を評価した複数の第Ⅲ相試験(CQ71)が報告されており,高い有効性が示されている。

 以上,全身状態良好なⅣ期非小細胞肺癌患者に対しては薬物療法(細胞傷害性抗癌薬,分子標的治療薬,免疫チェックポイント阻害薬)が緩和治療に比してOSを延長し,QOLも改善することが示されている。治療方針の決定に際して,分子標的治療薬では腫瘍におけるドライバー遺伝子の変異/転座の有無を,ペムブロリズマブではPD-L1の発現状態を確認する必要があり,これらの薬剤を適切なタイミングで使用するためには組織,病期診断と並行して目の前の患者が,1)ドライバー遺伝子変異/転座陽性例,2)ドライバー遺伝子変異/転座陰性のPD-L1高発現,3)それ以外,のいずれのサブグループに属するのかを診断することが重要である。以下に各サブグループにおける治療方針を述べる。

1)ドライバー遺伝子変異/転座陽性例:CQ46~65

 ドライバー遺伝子変異/転座陽性例では前述したようにそれぞれのキナーゼ阻害薬を用いた治療によってORR,PFSの改善が報告されている。なおこれらの第Ⅲ相試験では,プラチナ製剤併用療法の後治療としてキナーゼ阻害薬治療へのクロスオーバーが高率に行われたために,OSの有意な差は示されていない。EGFR遺伝子変異陽性例の大規模研究において,一次から三次治療のエルロチニブ単剤のPFSに有意差を認めないことが報告されており6),キナーゼ阻害薬と細胞傷害性抗癌薬の投与順序に関して,現時点で明確な結論はない。しかしながら,米国で行われた前向き観察研究では,733例を対象に10遺伝子について解析し,466例(64%)にドライバー遺伝子変異/転座を認めたが,ドライバー遺伝子変異/転座があり,それを標的とした治療薬を使用した260例のOS中央値は3.5年であったのに対し,ドライバー遺伝子変異/転座があったにもかかわらず,それを標的とした治療をしていない患者のOS中央値は2.4年であった(propensity score-adjusted hazard ratio:0.69,95%CI:0.53-0.9,P=0.006)7)

 以上より,ドライバー遺伝子変異/転座陽性例に対してキナーゼ阻害薬の投与機会を逸しないことは重要であり,細胞傷害性抗癌薬よりも優先して投与することを推奨する。なお,本ガイドラインにおけるドライバー遺伝子変異/転座は,現時点で治療標的となる薬剤が承認されている以下の遺伝子異常(EGFR遺伝子変異,ALK融合遺伝子,ROS1融合遺伝子,BRAF遺伝子変異,MET遺伝子変異,RET融合遺伝子)と定義する。増悪後の二次治療としては全身状態に応じて細胞傷害性抗癌薬が勧められる(CQ68~70)。ドライバー遺伝子変異/転座陽性例に対する免疫チェックポイント阻害薬についてはCQ5051を参照のこと。

2)ドライバー遺伝子変異/転座陰性のPD-L1高発現:CQ6667

 PD-1/PD-L1阻害薬の高い臨床効果が期待できるサブグループであり,初回治療としてペムブロリズマブ単剤療法もしくはアテゾリズマブ単剤療法を行うよう勧められる。また,プラチナ製剤併用療法にPD-1/PD-L1阻害薬を併用した治療やニボルマブ+イピリブマブにプラチナ製剤併用療法を併用した治療も勧められる。上記の治療増悪後の二次治療としては,全身状態に応じて細胞傷害性抗癌薬を用いた治療を行うよう勧められる。

3)ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1 TPS 50%未満,もしくは不明:CQ68~80

 このサブグループに対する一次治療として,分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬単剤療法が細胞傷害性抗癌薬よりも有効であることは示されていない。一方で,プラチナ製剤併用療法にPD-1/PD-L1阻害薬を併用した治療もしくはニボルマブ+イピリブマブにプラチナ製剤併用療法を併用した治療は,プラチナ製剤併用療法のみと比較し有意な生存延長効果を示しており,プラチナ製剤併用療法の対象で,かつ免疫チェックポイント阻害薬を併用した治療が可能な症例はこれらの多剤併用療法が勧められる。

引用文献
1)
Non-Small Cell Lung Cancer Collaborative Group. Chemotherapy and supportive care versus supportive care alone for advanced non-small cell lung cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2010; (5): CD007309.
2)
Baggstrom MQ, Stinchcombe TE, Fried DB, et al. Third-generation chemotherapy agents in the treatment of advanced non-small cell lung cancer: a meta-analysis. J Thorac Oncol. 2007; 2(9): 845-53.
3)
Fujiwara Y, Hotta K, Di Maio M, et al. Time trend in treatment-related deaths of patients with advanced non-small-cell lung cancer enrolled into phase III trials of systemic treatment. Ann Oncol. 2011; 22(2): 376-82.
4)
Anderson H, Hopwood P, Stephens RJ, et al. Gemcitabine plus best supportive care(BSC)vs BSC in inoperable non-small cell lung cancer--a randomized trial with quality of life as the primary outcome. UK NSCLC Gemcitabine Group. Non-Small Cell Lung Cancer. Br J Cancer. 2000; 83(4): 447-53.
5)
Sederholm C, Hillerdal G, Lamberg K, et al. Phase III trial of gemcitabine plus carboplatin versus single-agent gemcitabine in the treatment of locally advanced or metastatic non-small-cell lung cancer: the Swedish Lung Cancer Study Group. J Clin Oncol. 2005; 23(33): 8380-8.
6)
Rosell R, Moran T, Queralt C, et al. Screening for epidermal growth factor receptor mutations in lung cancer. N Engl J Med. 2009; 361(10): 958-67.
7)
Kris MG, Johnson BE, Berry LD, et al. Using multiplexed assays of oncogenic drivers in lung cancers to select targeted drugs. JAMA. 2014; 311(19): 1998-2006.
7-1
ドライバー遺伝子変異/転座陽性

樹形図

Ⅳ期非小細胞肺癌:ドライバー遺伝子変異/転座陽性の治療方針 CQ52 CQ68 CQ78
Ⅳ期非小細胞肺癌:ALK融合遺伝子陽性 CQ57 CQ58 CQ68 CQ59 CQ48
Ⅳ期非小細胞肺癌:ROS1融合遺伝子陽性 CQ60 CQ47 CQ68 CQ48
Ⅳ期非小細胞肺癌:BRAF遺伝子変異陽性 CQ61 CQ47 CQ68 CQ48
Ⅳ期非小細胞肺癌:MET遺伝子変異陽性 CQ62 CQ47 CQ68 CQ48
Ⅳ期非小細胞肺癌:RET融合遺伝子陽性 CQ63 CQ47 CQ68 CQ48

7-1-1.遺伝子変異/転座陽性の治療方針

CQ46.

全身状態良好(PS 0-1)なドライバー遺伝子変異/転座陽性例に対する最適な一次治療は何か?

推 奨
ドライバー遺伝子(EGFR,ALK,ROS1,BRAF,MET,RET)変異/転座を有するPS 0-1の患者に,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害薬の治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕

解 説

 非小細胞肺癌におけるEGFR遺伝子変異,ALK融合遺伝子,ROS1融合遺伝子,BRAF遺伝子変異,MET遺伝子変異,RET融合遺伝子は癌発生の直接的な原因となるような遺伝子変異/転座であり,本ガイドラインではこれらの遺伝子をドライバー遺伝子と総称する。全身状態良好で,これらドライバー遺伝子の変異/転座を有する患者に対して,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害薬治療によるORRの増加,PFSの延長などの有効性が報告されている。EGFR遺伝子変異,ALK融合遺伝子では細胞傷害性抗癌薬との比較試験が実施され,キナーゼ阻害薬のほうがより有効であることが報告されている1)~8)。EGFRのuncommon mutation(CQ55),ROS1融合遺伝子(CQ60),BRAF遺伝子変異(CQ61),MET遺伝子変異(CQ62),RET融合遺伝子(CQ63)は,患者数が少ないために細胞傷害性抗癌薬との第Ⅲ相試験は報告されておらず,2021年7月時点で,第Ⅲ相試験のサブグループ解析,第Ⅱ相試験の結果のみが公表されている。これらの結果では,それぞれのドライバー遺伝子に応じたキナーゼ阻害薬によって高い有効性が示されている9)~16)。米国で行われた前向き観察研究では,733例を対象に10遺伝子について解析し,466例(64%)にドライバー遺伝子変異/転座を認めたが,ドライバー遺伝子変異/転座があり,それを標的としたキナーゼ阻害薬を使用した260例のOS中央値は3.5年であったのに対し,ドライバー遺伝子変異/転座があったにもかかわらず,それを標的とした治療をしていない患者のOS中央値は2.4年であった(propensity score-adjusted HR 0.69,95%CI:0.53-0.9,P=0.006)17)。ドライバー遺伝子変異/転座に対する免疫チェックポイント阻害薬のデータは乏しいが,現時点でキナーゼ阻害薬の効果を上回るものではない(CQ51)。

 なお,これらの試験では後治療としてクロスオーバーが認められていることから,OSの差は示されておらず優先順位を付けることはできない。EGFR遺伝子変異陽性例の大規模研究において,一次から三次治療のエルロチニブ単剤のPFSに有意差を認めないことが報告されており18),EGFR-TKI単剤と細胞傷害性抗癌薬の投与順序に関しては,現時点で明確な結論はない。ALK融合遺伝子陽性に対するALK-TKI(クリゾチニブ)単剤と細胞傷害性抗癌薬を比較した第Ⅲ相試験では,長期OSデータの生存曲線においてALK-TKI群が上回っているものの有意差は示されなかった(HR 0.76,95%CI:0.548-1.053)19)。毒性についてはキナーゼ阻害薬で軽い傾向にあるものの,薬剤により毒性のプロファイルおよび程度が異なる。

 以上より,ドライバー遺伝子(EGFR,ALK,ROS1,BRAF,MET,RET)変異/転座を有するPS 0-1の患者には,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害薬を用いた治療を行うことが勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(27/27)
0% 0% 0% 0%

CQ47.

PS 2-4のドライバー遺伝子変異/転座陽性例に対する最適な一次治療は何か?

推 奨
  • a.
  • ドライバー遺伝子(EGFR,ALK,ROS1,BRAF,MET,RET)変異/転座を有するPS 2の患者に,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害薬の治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:96%〕

  • b.
  • ドライバー遺伝子(EGFR,ALK,ROS1,BRAF,MET,RET)変異/転座を有するPS 3-4の患者に,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害薬の治療を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:93%〕

解 説
  • a.EGFR遺伝子変異陽性やALK融合遺伝子陽性の患者を対象とした細胞傷害性抗癌薬との比較試験にもPS 2の患者が5~10%程度含まれており,PS 0-1と同等の有効性が示されている3)4)7)8)。また,EGFR遺伝子変異陽性の患者に対するゲフィチニブや,ALK融合遺伝子陽性の患者に対するアレクチニブはPS不良例に対する有効性が報告されている20)21)

     PS 2のEGFRのuncommon mutation,ROS1融合遺伝子,BRAF遺伝子変異,MET遺伝子変異,RET融合遺伝子陽性例に関するデータは患者数が少ないために限られているが,EGFRやALKの結果を鑑みて,キナーゼ阻害薬による治療を行うよう推奨される。

     以上より,ドライバー遺伝子(EGFR,ALK,ROS1,BRAF,MET,RET)変異/転座を有するPS 2の患者には,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害薬を用いた治療が勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
96%
(27/28)
4%
(1/28)
0% 0% 0%
  • b.PS 3-4のEGFR遺伝子変異陽性の患者を対象としたゲフィチニブや,ALK融合遺伝子陽性の患者を対象としたアレクチニブはPS不良例に対する有効性が報告されており,患者数はそれぞれ22例,6例と少ないが,安全性について大きな問題は認められなかった20)21)。なお,ゲフィチニブの検討ではORRが66%,79%の患者でPSの改善を認めており,アレクチニブの検討では6例中のすべての症例でPSの改善を認めている。

     PS 3-4のROS1融合遺伝子,EGFRのuncommon mutation,BRAF遺伝子変異,MET遺伝子変異,RET融合遺伝子陽性例に関するデータはPS 2よりもさらに限られていたり,データがないものもあるが,PS 2と同様に有効性が期待され得る。一方,キナーゼ阻害薬によって有害事象の頻度やプロファイルは様々であり,全身状態良好例においてさえも高い頻度で休薬・減量を必要とする薬剤が存在するため,PS 3-4で用いる場合はより一層の注意が必要である。

     以上より,ドライバー遺伝子(EGFR,ALK,ROS1,BRAF,MET,RET)変異/転座を有するPS 3-4の患者には,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害薬を用いた治療が勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
7%
(2/28)
93%
(26/28)
0% 0% 0%

CQ48.

75歳以上のドライバー遺伝子変異/転座陽性例に対する最適な一次治療は何か?

推 奨
ドライバー遺伝子(EGFR,ALK,ROS1,BRAF,MET,RET)変異/転座を有する75歳以上の患者に,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害薬の治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:96%〕

解 説

 75歳以上のEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌を対象とした国内でのゲフィチニブ単剤の第Ⅱ相試験(NEJ003試験)において,ORR 74%,PFS中央値12.3カ月と若年者と同等の有効性と安全性が報告されている22)。エルロチニブ単剤については国内での第Ⅱ相試験(JO22903試験)において,75歳超と75歳以下で同等の有効性が示されている23)

 EGFRのuncommon mutation,ALK融合遺伝子,ROS1融合遺伝子,BRAF遺伝子変異,MET遺伝子変異,RET融合遺伝子陽性例に関して,75歳以上に対する有効性を示したサブグループのデータはないが,一般にキナーゼ阻害薬は毒性が細胞傷害性抗癌薬と比べて軽いため,高齢者に対しても比較的安全に使用できると想定される。EGFR-TKIの研究結果を鑑みて,ALK融合遺伝子,ROS1融合遺伝子,BRAF遺伝子変異,MET遺伝子変異,RET融合遺伝子陽性例に対しては75歳以上でもキナーゼ阻害薬を用いた治療を行うことを考慮し得る。

 以上より,ドライバー遺伝子(EGFR,ALK,ROS1,BRAF,MET,RET)変異/転座を有する75歳以上の患者には,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害薬を用いた治療が勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。ただし,薬剤による毒性には若年者より一層の注意が必要である。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
96%
(27/28)
4%
(1/28)
0% 0% 0%

CQ49.

ドライバー遺伝子変異/転座陽性例に細胞傷害性抗癌薬は勧められるか?

推 奨
ドライバー遺伝子変異/転座陽性例の患者においても,ドライバー遺伝子変異/転座のない患者で推奨される細胞傷害性抗癌薬の治療をいずれかのタイミングで行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕

解 説

 ドライバー遺伝子変異/転座のある患者におけるキードラッグはキナーゼ阻害薬であるが,これまでに行われた第Ⅲ相試験では,多くの症例がキナーゼ阻害薬の前後で細胞傷害性抗癌薬の投与を受けている。後解析ではあるが,これらの第Ⅲ相試験にて細胞傷害性抗癌薬を投与されている患者の予後が良い傾向にあり24)25),本邦の大規模観察研究においても同様の傾向が認められている26)。ドライバー遺伝子変異/転座陽性例のみを対象として細胞傷害性抗癌薬とベストサポーティブケアを比較した試験は存在しないが,ドライバー遺伝子変異/転座陽性例は陰性例と比較して細胞傷害性抗癌薬の効果が明らかに劣ることを示唆するデータはないため,ドライバー遺伝子変異/転座不明例やドライバー遺伝子変異/転座陽性例を含む非小細胞肺癌患者を対象とした過去の細胞傷害性抗癌薬のエビデンスは本対象に適応できると考える(CQ68~70参照。ただし細胞傷害性抗癌薬と免疫チェックポイント阻害薬を併用した治療についてはCQ50参照)。

 以上より,ドライバー遺伝子変異/転座のある患者においても,いずれかのタイミングで細胞傷害性抗癌薬を用いた治療を行うことが勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(28/28)
0% 0% 0% 0%

CQ50.

ドライバー遺伝子変異/転座陽性例に細胞傷害性抗癌薬と免疫チェックポイント阻害薬を併用した治療は勧められるか?

推 奨
ドライバー遺伝子変異/転座陽性の患者にプラチナ製剤併用療法と免疫チェックポイント阻害薬を併用した治療を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

解 説

 一次治療における非扁平上皮非小細胞肺癌に対する,CBDCA+PTX+ベバシズマブ+アテゾリズマブ療法とCBDCA+PTX+ベバシズマブ療法を比較した第Ⅲ相試験(IMpower150試験)のEGFR遺伝子変異陽性のサブグループ解析において,OS中央値 未到達vs 18.7カ月(HR 0.61,95%CI:0.29-1.28),PFS中央値10.2カ月vs 6.9カ月(HR 0.61,95%CI:0.36-1.03)とアテゾリズマブ併用群が良好な傾向を示した27)。しかし,このサブグループ解析はプロトコールであらかじめ予定されていた解析ではなく,EGFR遺伝子変異の有無が割付調整因子に設定されていないなど,解釈には注意が必要である。また,非扁平上皮非小細胞肺癌に対するCBDCA+nab-PTX+アテゾリズマブ療法とCBDCA+nab-PTX療法を比較した第Ⅲ相試験(IMpower130試験)のEGFR遺伝子変異もしくはALK融合遺伝子陽性のサブグループ解析において,PFS中央値7.0カ月vs 6.0カ月(HR 0.75,95%CI:0.36-1.54),OS中央値14.4カ月vs 10.0カ月(HR 0.98,95%CI:0.41-2.31)であった28)。いずれも探索的なサブグループ解析のみであり,現時点では,ドライバー遺伝子変異/転座陽性例にプラチナ製剤併用療法と免疫チェックポイント阻害薬を併用した治療を勧めるだけの根拠が明確ではないと判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 32%
(9/28)
64%
(18/28)
4%
(1/28)
0%

CQ51.

ドライバー遺伝子変異/転座陽性例に免疫チェックポイント阻害薬単独療法は勧められるか?

推 奨
ドライバー遺伝子変異/転座陽性例の患者に免疫チェックポイント阻害薬単独療法を勧めるだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

解 説

 非小細胞肺癌の一次治療において,免疫チェックポイント阻害薬の有効性を評価したほとんどの第Ⅲ相試験では,EGFR遺伝子変異陽性,ALK融合遺伝子陽性の患者は主要評価項目の対象集団から除外されていた。二次治療において,免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ,ペムブロリズマブ,アテゾリズマブ)とDTXの比較第Ⅱ/Ⅲ相試験を統合解析した報告の中で,EGFR遺伝子変異陽性例における免疫チェックポイント阻害薬のDTXに対するOSはHR 1.11(95%CI:0.80-1.53,P=0.54)であり,免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療は全体集団では有効性が示されているもののEGFR遺伝子変異陽性例において優れているという結果は示されていない29)。単施設の報告では,EGFR遺伝子変異陽性もしくはALK融合遺伝子陽性例における免疫チェックポイント阻害薬のORRは3.6%と低かった30)。このため,ドライバー遺伝子変異/転座陽性の患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の治療効果は,ドライバー遺伝子変異/転座陰性の患者と比べて低い可能性がある。なお,これらの報告は対象となった症例数の少ないサブグループの結果であることに加え,EGFR以外のドライバー遺伝子変異/転座陽性例の報告は後方視的研究に限られる。

 以上より,ドライバー遺伝子変異/転座陽性例における免疫チェックポイント阻害薬の投与の可否を判断するだけの根拠が明確ではないと判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 23%
(5/22)
73%
(16/22)
0% 5%
(1/22)
引用文献
1)
Mitsudomi T, Morita S, Yatabe Y, et al. Gefitinib versus cisplatin plus docetaxel in patients with non-small-cell lung cancer harbouring mutations of the epidermal growth factor receptor(WJTOG3405): an open label, randomised phase 3 trial. Lancet Oncol. 2010; 11(2): 121-8.
2)
Maemondo M, Inoue A, Kobayashi K, et al. Gefitinib or chemotherapy for non-small-cell lung cancer with mutated EGFR. N Engl J Med. 2010; 362(25): 2380-8.
3)
Zhou C, Wu YL, Chen G, et al. Erlotinib versus chemotherapy as first-line treatment for patients with advanced EGFR mutation-positive non-small-cell lung cancer(OPTIMAL, CTONG-0802): a multicentre, open-label, randomised, phase 3 study. Lancet Oncol. 2011; 12(8): 735-42.
4)
Rosell R, Carcereny E, Gervais R, et al. Erlotinib versus standard chemotherapy as first-line treatment for European patients with advanced EGFR mutation-positive non-small-cell lung cancer(EURTAC): a multicentre, open-label, randomised phase 3 trial. Lancet Oncol. 2012; 13(3): 239-46.
5)
Sequist LV, Yang JC, Yamamoto N, et al. Phase III study of afatinib or cisplatin plus pemetrexed in patients with metastatic lung adenocarcinoma with EGFR mutations. J Clin Oncol. 2013; 31(27): 3327-34.
6)
Wu YL, Zhou C, Hu CP, et al. Afatinib versus cisplatin plus gemcitabine for first-line treatment of Asian patients with advanced non-small-cell lung cancer harbouring EGFR mutations(LUX-Lung 6): an open-label, randomised phase 3 trial. Lancet Oncol. 2014; 15(2): 213-22.
7)
Solomon BJ, Mok T, Kim DW, et al. First-line crizotinib versus chemotherapy in ALK-positive lung cancer. N Engl J Med. 2014; 371(23): 2167-77.
8)
Wu YL, Lu S, Lu Y, et al. Results of PROFILE 1029, a phase III comparison of first-line crizotinib versus chemotherapy in East Asian patients with ALK-positive advanced non-small cell lung cancer. J Thorac Oncol. 2018; 13(10): 1539-48.
9)
Yang JC, Sequist LV, Geater SL, et al. Clinical activity of afatinib in patients with advanced non-small-cell lung cancer harbouring uncommon EGFR mutations: a combined post-hoc analysis of LUX-Lung 2, LUX-Lung 3, and LUX-Lung 6. Lancet Oncol. 2015; 16(7): 830-8.
10)
Shaw AT, Ou SH, Bang YJ, et al. Crizotinib in ROS1-rearranged non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2014; 371(21): 1963-71.
11)
Wu YL, Yang JC, Kim DW, et al. Phase II study of crizotinib in East Asian patients with ROS1-positive advanced non-small-cell lung cancer. J Clin Oncol. 2018; 36(14): 1405-11.
12)
Planchard D, Besse B, Groen HJM, et al. Dabrafenib plus trametinib in patients with previously treated BRAF(V600E)-mutant metastatic non-small cell lung cancer: an open-label, multicentre phase 2 trial. Lancet Oncol. 2016; 17(7): 984-93.
13)
Planchard D, Smit EF, Groen HJM, et al. Dabrafenib plus trametinib in patients with previously untreated BRAF(V600E)-mutant metastatic non-small-cell lung cancer: an open-label, phase 2 trial. Lancet Oncol. 2017; 18(10): 1307-16.
14)
Paik PK, Felip E, Veillon R, et al. Tepotinib in non-small-cell lung cancer with MET exon 14 skipping mutations. N Engl J Med. 2020; 383(10): 931-43.
15)
Wolf J, Seto T, Han JY, et al. Capmatinib in MET exon 14-mutated or met-amplified non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2020; 383(10): 944-57.
16)
Drilon A, Oxnard GR, Tan DSW, et al. Efficacy of Selpercatinib in RET fusion-positive non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2020; 383(9): 813-24.
17)
Kris MG, Johnson BE, Berry LD, et al. Using multiplexed assays of oncogenic drivers in lung cancers to select targeted drugs. JAMA. 2014; 311(19): 1998-2006.
18)
Rosell R, Moran T, Queralt C, et al. Screening for epidermal growth factor receptor mutations in lung cancer. N Engl J Med. 2009; 361(10): 958-67.
19)
Solomon BJ, Kim DW, Wu YL, et al. Final overall survival analysis from a study comparing first-line crizotinib versus chemotherapy in ALK-mutation-positive non-small-cell lung cancer. J Clin Oncol. 2018; 36(22): 2251-8.
20)
Inoue A, Kobayashi K, Usui K, et al. First-line gefitinib for patients with advanced non-small-cell lung cancer harboring epidermal growth factor receptor mutations without indication for chemotherapy. J Clin Oncol. 2009; 27(9): 1394-400.
21)
Iwama E, Goto Y, Murakami H, et al. Alectinib for patients with ALK rearrangement-positive non-small cell lung cancer and a poor performance status(Lung Oncology Group in Kyushu 1401). J Thorac Oncol. 2017; 12(7): 1161-6.
22)
Maemondo M, Minegishi Y, Inoue A, et al. First-line gefitinib in patients aged 75 or older with advanced non-small cell lung cancer harboring epidermal growth factor receptor mutations: NEJ 003 study. J Thorac Oncol. 2012; 7(9): 1417-22.
23)
Goto K, Nishio M, Yamamoto N, et al. A prospective, phase II, open-label study(JO22903)of first-line erlotinib in Japanese patients with epidermal growth factor receptor(EGFR)mutation-positive advanced non-small-cell lung cancer(NSCLC). Lung Cancer. 2013; 82(1): 109-14.
24)
Yoshioka H, Shimokawa M, Seto T, et al. Final overall survival results of WJTOG3405, a randomized phase III trial comparing gefitinib versus cisplatin with docetaxel as the first-line treatment for patients with stage IIIB/IV or postoperative recurrent EGFR mutation-positive non-small-cell lung cancer. Ann Oncol. 2019; 30(12): 1978-84.
25)
Inoue A, Kobayashi K, Maemondo M, et al. Updated overall survival results from a randomized phase III trial comparing gefitinib with carboplatin-paclitaxel for chemo-naive non-small cell lung cancer with sensitive EGFR gene mutations(NEJ002). Ann Oncol. 2013; 24(1): 54-9.
26)
Inoue A, Yoshida K, Morita S, et al. Characteristics and overall survival of EGFR mutation-positive non-small cell lung cancer treated with EGFR tyrosine kinase inhibitors: a retrospective analysis for 1660 Japanese patients. Jpn J Clin Oncol. 2016; 46(5): 462-7.
27)
Reck M, Mok TSK, Nishio M, et al. Atezolizumab plus bevacizumab and chemotherapy in non-small-cell lung cancer(IMpower150): key subgroup analyses of patients with EGFR mutations or baseline liver metastases in a randomised, open-label phase 3 trial. Lancet Respir Med. 2019; 7(5): 387-401.
28)
West H, McCleod M, Hussein M, et al. Atezolizumab in combination with carboplatin plus nab-paclitaxel chemotherapy compared with chemotherapy alone as first-line treatment for metastatic non-squamous non-small-cell lung cancer(IMpower130): a multicentre, randomised, open-label, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2019; 20(7): 924-37.
29)
Lee CK, Man J, Lord S, et al. Clinical and molecular characteristics associated with survival among patients treated with checkpoint inhibitors for advanced non-small cell lung carcinoma: a systematic review and meta-analysis. JAMA Oncol. 2018; 4(2): 210-6.
30)
Gainor JF, Shaw AT, Sequist LV, et al. EGFR mutations and ALK rearrangements are associated with low response rates to PD-1 pathway blockade in non-small cell lung cancer: a retrospective analysis. Clin Cancer Res. 2016; 22(18): 4585-93.

7-1-2.EGFR遺伝子変異陽性

EGFR遺伝子変異陽性の一次治療:エクソン19欠失またはL858R変異陽性

CQ52.

PS 0-1の場合,一次治療としてどの治療法が勧められるか?

推 奨
  • a.
  • オシメルチニブ単剤療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B,合意率:93%(推奨率:100%)〕

  • b.
  • ゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:A,合意率:79%(推奨率:96%)〕

  • c.
  • エルロチニブに血管新生阻害薬を併用した治療を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:A,合意率:86%(推奨率:90%)〕

  • d.
  • ダコミチニブ単剤療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:86%(推奨率:86%)〕

  • e.
  • ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブのいずれかの単剤療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:A,合意率:75%(推奨率:89%)〕

*a~dとeはCQにおける対照(comparisons)が異なっており,エビデンスの強さの評価において異なる基準を用いている(システマティックレビュー表を参照)。

解 説

 EGFR遺伝子変異の約90%を占めるエクソン19の欠失変異とエクソン21のL858R変異は,EGFR-TKIの感受性を高める。進行非小細胞肺癌を対象にしたEGFR-TKI単剤療法(ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ)とプラチナ製剤併用療法の第Ⅲ相試験におけるEGFR遺伝子変異の患者はエクソン19の欠失変異とL858R変異に限定されているか1)~3),大部分を占めていた4)~6)。すべての試験において一貫してEGFR-TKI単剤療法のプラチナ製剤併用療法に対するPFSの有意な延長が報告され,QOL指標の一部が改善することも示されている7)8)

  • a.EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,オシメルチニブ単剤療法と第一世代EGFR-TKI単剤療法(ゲフィチニブまたはエルロチニブ)を比較する第Ⅲ相試験(FLAURA試験)が行われ,主要評価項目であるPFSはHR 0.46(18.9カ月vs 10.2カ月,95%CI:0.37-0.57,P<0.001)と有意に延長することが示され9),OSに関してもHR 0.80(38.6カ月vs 31.8カ月,95.05%CI:0.64-1.00,P=0.046)と有意に延長することが示された10)。なお,PFSはサブグループ別の差異を認めなかったが,OSのサブグループ解析では,アジア人やL858R変異の集団において,それぞれのOS-HRが1.00(95%CI:0.75-1.32),1.00(95%CI:0.71-1.40)という結果であった。また毒性においても,第一世代EGFR-TKI単剤療法では下痢57%,ざ瘡様皮疹48%,AST上昇25%,間質性肺炎2%に対し,オシメルチニブ単剤療法では下痢58%,ざ瘡様皮疹25%,AST上昇9%,間質性肺炎4%であり,皮疹,肝機能障害に関してはオシメルチニブのほうが軽い傾向がみられた。本試験の日本人集団においては間質性肺炎がオシメルチニブ単剤療法では12.3%(8例/65例),ゲフィチニブ単剤療法では1.8%(1例/55例)と報告されており,全体集団に比して高率であった11)

     以上より,治療効果と毒性のバランスを考慮し,EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性例の一次治療としてはオシメルチニブ単剤療法を行うよう推奨する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
93%
(26/28)
7%
(2/28)
0% 0% 0%
  • b.ゲフィチニブ+CBDCA+PEM併用療法とゲフィチニブ単剤療法の第Ⅲ相試験(NEJ009試験)で,主要評価項目の1つであるPFSはHR 0.49(20.9カ月vs 11.9カ月,95%CI:0.39-0.62,P<0.01)であったが,PFS2においてはHR 0.99(20.9カ月vs 20.7カ月,95%CI:0.78-1.25,P=0.90)と両群間で有意差を認めなかった(*PFS2は,ゲフィチニブ単剤療法群において,ゲフィチニブでPDになった後の次治療でPDになるまでの期間と,ゲフィチニブ+CBDCA+PEM併用療法でPDになるまでの期間の比較)。OSの解析においては探索的検討ではあるが,HR 0.722(50.9カ月vs 38.8カ月)という結果であった。毒性については,併用群でGrade 3以上の血液毒性の頻度が高く,好中球減少(31.2% vs 0.6%),貧血(21.2% vs 2.3%),血小板減少(17.1% vs 0%)であった12)。なお,海外で実施された同じデザインの第Ⅲ相試験では,主要評価項目であるPFSはHR 0.51(16カ月vs 8カ月,95%CI:0.39-0.66,P<0.001)であり,OSにおいてもHR 0.45(未到達vs 17カ月,95%CI:0.31-0.65,P<0.001)と併用群において有意な延長がみられた。毒性については,Grade 3以上の毒性が併用群で高く(51% vs 25%),血液毒性,腎障害,低カリウム血症の頻度が高かった13)

     以上より,EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性例の一次治療としてはゲフィチニブ+CBDCA+PEM併用療法を行うよう提案する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
18%
(5/28)
79%
(22/28)
0% 0% 4%
(1/28)
  • c.エルロチニブと血管新生阻害薬の併用療法については,複数の試験が行われている。

     エルロチニブ+ベバシズマブの併用療法とエルロチニブ単剤療法のランダム化第Ⅱ相試験は2編報告されている。本邦で行われたJO25567試験では,主要評価項目であるPFSがHR 0.54(16.0カ月vs 9.7カ月,95%CI:0.36-0.79,P=0.0015)と有意差が認められ14),OSではHR 0.81(47.0カ月vs 47.4カ月,95%CI:0.53-1.23)であった15)。一方,米国で行われたランダム化第Ⅱ相試験では,主要評価項目であるPFSはHR 0.81(17.9カ月vs 13.5カ月,95%CI:0.50-1.31,P=0.39)と有意な延長が示されず,OSではHR 1.41(32.4カ月vs 50.6カ月,95%CI:0.72-2.81)と上乗せ効果が乏しい傾向がみられた16)。その後,同じデザインで行われた本邦の第Ⅲ相試験(NEJ026試験)では,主要評価項目であるPFSはHR 0.605(16.9カ月vs 13.3カ月,95%CI:0.417-0.877,P=0.01573)とエルロチニブ単剤療法に対しPFSを有意に延長することが示された17)が,OSはHR 1.00(95%CI:0.68-1.48)であった18)。また毒性については,併用群でベバシズマブ関連の有害事象が認められた(Grade 3以上の高血圧が9%,蛋白尿が32%,出血性事象が26%など)17)

     エルロチニブ+ラムシルマブ併用療法とエルロチニブ+プラセボ療法を比較した第Ⅲ相試験(RELAY試験)では,主要評価項目であるPFSがHR 0.59(19.4カ月vs 12.4カ月,95%CI:0.46-0.79,P<0.0001)と有意に延長することが示された。毒性については,ラムシルマブ併用群で特有の有害事象が認められており(Grade 3以上の高血圧が24%),その他Grade 3以上の下痢(7% vs 1%),ざ瘡様皮疹(15% vs 9%)が認められた19)

     以上より,EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性例の一次治療としてはエルロチニブに血管新生阻害薬を併用した治療を行うよう提案する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
4%
(1/28)
86%
(24/28)
4%
(1/28)
4%
(1/28)
4%
(1/28)
  • d.EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,ダコミチニブ単剤療法とゲフィチニブ単剤療法を比較する第Ⅲ相試験(ARCHER1050試験)が行われ,主要評価項目であるPFSはHR 0.59(14.7カ月vs 9.2カ月,95%CI:0.47-0.74,P<0.0001)と,ダコミチニブ単剤療法はゲフィチニブ単剤療法に対しPFSを有意に延長することが示された20)。副次評価項目であるOSは探索的検討ではあるが,HR 0.76(34.1カ月vs 26.8カ月,95%CI:0.582-0.993)という結果であった21)。しかし,ゲフィチニブ単剤療法では下痢56%,爪囲炎20%,ざ瘡様皮疹29%に対し,ダコミチニブ単剤療法では下痢87%,爪囲炎62%,ざ瘡様皮疹49%であり,毒性においてはダコミチニブ単剤療法が高かった。日本人集団の報告では毒性の頻度が増えるものの,全体集団と同様であった22)

     以上より,治療効果と毒性のバランスを考慮し,EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性例の一次治療としてはダコミチニブ単剤療法を行うよう提案する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 86%
(24/28)
11%
(3/28)
0% 4%
(1/28)
  • e.第一世代のEGFR-TKI単剤療法同士を直接比較した第Ⅲ相試験で優越性が示されたものはない23)。また,ランダム化第Ⅱ相試験(LUX-Lung7試験)では,アファチニブ単剤療法がゲフィチニブ単剤療法に対して,PFSの延長を示したものの,毒性はより高度であった24)

     以上より,EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性例の一次治療としてはゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブのいずれかの単剤療法を行うよう提案する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
14%
(4/28)
75%
(21/28)
4%
(1/28)
7%
(2/28)
0%

CQ53.

PS 2の場合,一次治療としてどの治療法が勧められるか?

推 奨
  • a.
  • EGFR-TKI単剤療法(ゲフィチニブ,エルロチニブのいずれか)を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:86%〕

  • b.
  • ゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

解 説
  • a.EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌を対象としたエルロチニブ単剤療法とプラチナ製剤併用療法の2つの第Ⅲ相試験において,PS 2は各々7%,14%含まれておりPS 0-1と同等の有効性が示されている2)3)。また,ゲフィチニブ単剤療法はPS不良例に対する有効性が報告されている25)26)。アファチニブ単剤療法,ダコミチニブ単剤療法に関しては,PS 2に対する安全性と有効性の検討は十分ではない5)6)20)。オシメルチニブ単剤療法についても,PS 2に対する有効性の検討は十分ではないが,ゲフィチニブ単剤療法やエルロチニブ単剤療法と比較しても間質性肺疾患以外の毒性は軽度であり,使用を考慮し得る9)

     以上より,PS 2の場合,EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性例の一次治療としては,毒性を考慮したうえで,ゲフィチニブまたはエルロチニブのいずれかのEGFR-TKI単剤療法が勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
86%
(24/28)
14%
(4/28)
0% 0% 0%
  • b.海外で実施されたゲフィチニブ+CBDCA+PEM併用療法とゲフィチニブ単剤療法の第Ⅲ相試験において,PS 2は21~22%含まれており,探索的な解析においてPFSのHRは0.57(95%CI:0.33-0.98)で,併用群において良い傾向が示された13)。一方で,Grade 3以上の毒性の頻度は,併用群で58%,単剤群で28%であり,併用群で毒性の頻度が有意に高いことが報告されている27)。なお,前述した試験は海外の単施設で実施されたものであり,バイアスリスクが高く結果に影響を与えている可能性があり,本試験の結果を本邦の日常診療に反映することが可能か小委員会の中でも意見が分かれた。

     協議の結果,PS 2の場合,EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性例の一次治療において,ゲフィチニブ+CBDCA+PEM併用療法の投与の可否を判断するだけの根拠が明確ではないと判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 46%
(13/28)
39%
(11/28)
14%
(4/28)
0%

CQ54.

PS 3-4の場合,一次治療としてどのEGFR-TKIが勧められるか?

推 奨
ゲフィチニブ単剤療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:75%〕

解 説

 EGFR遺伝子高感受性変異陽性でPS 3-4が大多数を占める予後不良群を対象としてゲフィチニブの投与を評価する第Ⅱ相試験(NEJ001試験)が行われ,約80%の患者でPSが改善し,ORR 66%,OS中央値17.8カ月,PFS中央値6.5カ月と極めて良好な治療効果が得られた25)。一方,PS不良,男性,喫煙歴,既存の間質性肺炎,正常肺領域が少ない患者,心疾患を合併した患者などで間質性肺疾患発症のリスクが高いことが報告されており28)29),慎重な検討も必要である。なお,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会では,特にPS 4に対する投与の是非について議論がなされた。このような集団においては益の評価項目としてPSや症状の改善は重要であり,EGFR-TKI単剤療法によってこれらの改善が期待されるものであるのかを十分吟味する必要がある。

 以上より,PS 3-4の場合,EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性例の一次治療としては,ゲフィチニブ単剤療法が勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
75%
(18/24)
25%
(6/24)
0% 0% 0%

EGFR遺伝子変異陽性の一次治療:エクソン18-21変異(エクソン19欠失・L858R変異を除く)

CQ55.

PS 0-1の場合,一次治療としてEGFR-TKIが勧められるか?

推 奨
  • a.
  • エクソン18-21の遺伝子変異(エクソン19欠失・L858R変異・エクソン20の挿入変異・T790M変異以外)にはEGFR-TKI単剤療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:78%〕

  • b.
  • エクソン20の挿入変異にはEGFR-TKI療法を行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:70%〕

  • c.
  • EGFR-TKI未治療のT790M変異にオシメルチニブ単剤療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:D,合意率:67%〕

※EGFR遺伝子変異の種類,検査法などの詳細については「肺癌患者におけるEGFR遺伝変異検査の手引き」(日本肺癌学会)を参照。

※Uncommon mutationがある場合は,エクソン19の欠失とL858R変異が同時にあったとしても,uncommon mutationに分類する。

解 説
  • a.EGFR遺伝子変異の約90%をエクソン19の欠失変異,エクソン21のL858R変異が占める。その他の遺伝子変異はuncommon mutationと称され,エクソン18-21にわたり(E709X,G719X,S768I,P848L,L861Q,エクソン19の挿入変異など)が報告されている30)。これらの変異でもEGFR-TKIの感受性を有する変異はあるが,ORRはやや劣ると報告されている31)。また,過去の第Ⅲ相試験の多くは,これらの変異が除外されている1)~3)か,含まれたとしても全体の1割程度にすぎない4)~6)

     T790Mとエクソン20の挿入変異以外のuncommon mutationでは,EGFR-TKI単剤療法の効果が報告されている。ゲフィチニブ単剤療法,エルロチニブ単剤療法の後方視的検討では,ORRは48.4%,PFS中央値は5.0カ月31),アファチニブ単剤療法の3つの前向き試験のプール解析では,ORRは71.1%,PFS中央値は10.7カ月と報告されている32)。また,海外で実施されたuncommon mutationに対するオシメルチニブ単剤療法の第Ⅱ相試験(KCSG-LU15-09試験)では,ORRは50%(95%CI:33-67%),PFS中央値は8.2カ月であった33)。ただし,それぞれの報告でuncommon mutationの頻度や治療効果が異なっていることから,これらの結果をもとに各EGFR-TKIを比較することは根拠に乏しいと考えられる。

     以上より,エクソン18-21の遺伝子変異(エクソン19欠失・L858R変異・エクソン20の挿入変異・T790M変異以外)陽性例に対しては,ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ,オシメルチニブのいずれかのEGFR-TKI単剤療法が勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
22%
(6/27)
78%
(21/27)
0% 0% 0%
  • b.エクソン20の挿入変異の報告は少なくEGFR-TKI単剤療法のORRも10%弱であることから,一次治療としてEGFR-TKI療法が有効とは判断できない32)34)

     以上より,エクソン20の挿入変異陽性例に対しては,EGFR-TKI療法は勧められない。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行わないよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 4%
(1/27)
0% 26%
(7/27)
70%
(19/27)
  • c.EGFR-TKIによる治療の前にT790M変異陽性の患者の報告は少なく,前述のFLAURA試験でもT790M変異を認めたのは556例中5例のみであった。なお,オシメルチニブ単剤療法の第Ⅰ相試験では未治療のT790M変異陽性の患者7例中6例で部分奏効を認めている35)。EGFR-TKI未治療のT790M変異に対するデータは限られているが,既治療のT790M変異陽性に対するオシメルチニブ単剤療法の効果は第Ⅲ相試験でも示されており,未治療例においても効果が期待できると考えられる。

     以上より,EGFR-TKI未治療のT790M変異陽性例に対しては,オシメルチニブ単剤療法が勧められる。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
4%
(1/27)
67%
(18/27)
29%
(8/27)
0% 0%

EGFR遺伝子変異陽性の二次治療以降

CQ56.

一次治療EGFR-TKI耐性または増悪後のT790M変異陽性例に対する最適な二次治療は何か?

推 奨
オシメルチニブ単剤療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B,合意率:100%〕

*オシメルチニブを一次治療で用いた場合には当該CQには当てはまらない。

※T790M変異陰性もしくは不明の場合,「遺伝子変異/転座陰性,PD-L1 TPS 50%未満,もしくは不明の一次治療」に準じて細胞傷害性抗癌薬を用いた治療(CQ68~70)が勧められる。

解 説

 オシメルチニブは,活性型EGFR遺伝子変異と耐性変異であるEGFR T790M変異の両方を阻害する第三世代EGFR-TKIである。第一・二世代のEGFR-TKIによる治療の後にT790M変異陽性となった患者を対象にオシメルチニブ単剤療法とプラチナ製剤併用療法(CDDPまたはCBDCA+PEM療法)を比較した第Ⅲ相試験(AURA3試験)が報告された36)。主要評価項目であるPFSの中央値は,オシメルチニブ単剤療法群が10.1カ月,プラチナ製剤併用療法群が4.4カ月(HR 0.30,95%CI:0.23-0.41,P<0.001)であった。OSの中央値は,オシメルチニブ単剤療法群が26.8カ月,プラチナ製剤併用療法群が22.5カ月(HR 0.87,95%CI:0.67-1.12)であった37)。Grade 3以上の毒性の頻度は,オシメルチニブ単剤療法群のほうが低かった(6%vs 34%)36)。また本邦において,T790M変異陽性となったPS不良(PS 2-4)患者を対象としたオシメルチニブ単剤療法の効果と安全性を検証する単群第Ⅱ相試験が行われた。PFSの中央値は7.0カ月,OSの中央値は12.7カ月であり,72%の患者でPSの改善を認めた。Grade 3以上の毒性の頻度は以前の報告と同様だったが,16.6%(3例)で間質性肺炎を認めた38)

 以上より,一次治療EGFR-TKI耐性または増悪後のT790M変異陽性例に対しては,オシメルチニブ単剤療法が勧められる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(26/26)
0% 0% 0% 0%
引用文献
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7-1-3.ALK融合遺伝子陽性

ALK融合遺伝子陽性の一次治療

CQ57.

PS 0-1の場合,一次治療としてどのALK-TKIが勧められるか?

推 奨
  • a.
  • アレクチニブ単剤療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意(推奨)率:100%〕

  • b.
  • ブリグチニブ単剤療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:73%(推奨率:100%)〕

  • c.
  • ロルラチニブ**単剤療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:73%(推奨率:100%)〕

  • d.
  • セリチニブ単剤療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:63%(推奨率:63%)〕

  • e.
  • クリゾチニブ単剤療法を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

*a,b,cとd,eはCQにおける対照(comparisons)が異なっており,エビデンスの強さの評価において異なる基準 を用いている(システマティックレビュー表を参照)。

**2021年10月時点で,ロルラチニブは本邦で初回治療として保険償還されていない。

解 説

 ALK融合遺伝子陽性の患者に対してALK-TKI単剤療法とプラチナ製剤併用療法を比較した第Ⅲ相試験では,すべての試験において一貫してALK-TKI単剤療法のプラチナ製剤併用療法に対するPFSの有意な延長が報告され,QOL指標の一部においてALK-TKI単剤療法のほうがプラチナ製剤併用療法より優れることが示されている1)~3)

  • a.ALK融合遺伝子陽性,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌を対象として,アレクチニブ単剤療法とクリゾチニブ単剤療法を比較した第Ⅲ相試験が3編報告されている。国内で実施された試験(J-ALEX試験)ではPFSのHRが0.38(25.9カ月vs 10.2カ月,95%CI:0.26-0.55,P<0.0001)と,PFSを有意に延長することが示された4)。その後に,米国で行われた試験(ALEX試験)において,PFSのHRが0.47(未到達vs 11.1カ月,95%CI:0.34-0.65,P<0.001),アジアで行われた試験(ALESIA試験)において,PFSのHRが0.22(未到達vs 11.1カ月,95%CI:0.13-0.38,P<0.0001)と,同じくPFSを有意に延長することが示されている5)6)。OSについては,上記のALEX試験のアップデートされた解析の報告において,HR 0.67(未到達vs 57.4カ月,95%CI:0.46-0.98)でアレクチニブ単剤療法が良い傾向にあった7)。また,Grade 3以上の有害事象は,J-ALEX試験においてアレクチニブ単剤療法で32%,クリゾチニブ単剤療法で57%と,アレクチニブ単剤療法のほうが低頻度であった8)。アレクチニブ単剤療法の主な毒性は,味覚障害,筋肉痛,皮疹であり,また他のキナーゼ阻害薬と同様に間質性肺炎に注意が必要である。

     以上より,治療効果と毒性のバランスを考慮し,ALK融合遺伝子陽性例の一次治療としてはアレクチニブ単剤療法を行うよう推奨する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(30/30)
0% 0% 0% 0%
  • b.ALK融合遺伝子陽性,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌を対象として,ブリグチニブ単剤療法とクリゾチニブ単剤療法を比較した第Ⅲ相試験(ALTA-1L試験)が行われ,主要評価項目であるPFSはHR 0.49(未到達vs 9.8カ月,95%CI:0.33-0.74,P<0.001)であり,ブリグチニブ単剤療法のクリゾチニブ単剤療法に対する有意な延長が報告されている9)。また,アップデートされた中間解析の報告では,PFS中央値は,ブリグチニブ単剤療法で24.0カ月,クリゾチニブ単剤療法で9.8カ月であった10)。Grade 3以上の有害事象は,ブリグチニブ単剤療法で61%,クリゾチニブ単剤療法で55%であった。ブリグチニブ単剤療法の主な毒性は,下痢,悪心,嘔吐などの消化器毒性,高血圧,クレアチンキナーゼ上昇,皮疹,間質性肺炎が挙げられる。

     以上より,治療効果と毒性のバランスを考慮し,ALK融合遺伝子陽性例の一次治療としてはブリグチニブ単剤療法を行うよう提案する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
27%
(8/30)
73%
(22/30)
0% 0% 0%
  • c.ALK融合遺伝子陽性,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌を対象として,ロルラチニブ単剤療法とクリゾチニブ単剤療法を比較した第Ⅲ相試験(CROWN試験)が行われ,主要評価項目であるPFSはHR 0.28(未到達vs 9.3カ月,95%CI:0.19-0.41,P<0.001)であり,ロルラチニブ単剤療法のクリゾチニブ単剤療法に対する有意な延長が報告されている11)。Grade 3以上の有害事象は,ロルラチニブ単剤療法で72%,クリゾチニブ単剤療法で56%であった。ロルラチニブ単剤療法の主な毒性は,高コレステロール血症,高トリグリセリド血症,体重増加,高血圧であり,特徴的な有害事象として認知機能障害(2%)が報告されている。

     以上より,治療効果と毒性のバランスを考慮し,ALK融合遺伝子陽性例の一次治療としてはロルラチニブ単剤療法を行うよう提案する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
27%
(8/30)
73%
(22/30)
0% 0% 0%

※2021年10月時点で,ロルラチニブは本邦で初回治療として保険償還されていない。承認後の使用に際しては,添付文書の記載をよく確認すること。

  • d.ALK融合遺伝子陽性,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌を対象として,セリチニブ単剤療法とプラチナ製剤併用療法を比較した第Ⅲ相試験(ASCEND-4試験)が行われ,主要評価項目であるPFSはHR 0.55(16.6カ月vs 8.1カ月,95%CI:0.42-0.73,P<0.0001)であり,セリチニブ単剤療法のプラチナ製剤併用療法に対する有意な延長が認められた。しかしGrade 3以上の有害事象は,セリチニブ単剤療法で65%,プラチナ製剤併用療法で49%と,セリチニブ単剤療法のほうが高頻度であった。セリチニブ単剤療法の主な毒性は,下痢,悪心,嘔吐などの消化器毒性,肝機能障害,食思不振が認められている2)

     以上より,治療効果と毒性のバランスを考慮し,ALK融合遺伝子陽性例の一次治療としてはセリチニブ単剤療法を行うよう提案する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 63%
(19/30)
20%
(6/30)
17%
(5/30)
0%
  • e.ALK融合遺伝子陽性,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌を対象として,クリゾチニブ単剤療法とプラチナ製剤併用療法を比較した2つの第Ⅲ相試験が行われ,PROFILE1014試験ではPFSのHR 0.45(10.9カ月vs 7.0カ月,95%CI:0.35-0.60,P<0.0001),PROFILE1029試験ではPFSのHR 0.402(11.1カ月vs 6.8カ月,95%CI:0.286-0.565,P<0.001)であり,ともにクリゾチニブ単剤療法のプラチナ製剤併用療法に対する有意な延長が報告されている1)3)。クリゾチニブ単剤療法の主な毒性は,視覚障害,下痢や悪心などの消化器毒性,肝機能障害が挙げられる。クリゾチニブ単剤療法に関してはプラチナ製剤併用療法に対してPFSの優越性は示されているが,他のALK-TKI単剤療法(アレクチニブ,ブリグチニブ,ロルラチニブ)との第Ⅲ相試験では主要評価項目であるPFSにおいて劣っていることが複数の臨床試験で示されており4)5)6)9)11),Grade 3以上の毒性に関してはブリグチニブ単剤療法,ロルラチニブ単剤療法に比較して頻度は高くないが,アレクチニブ単剤療法との比較では高頻度である。治療効果と毒性のバランスを考慮し,日常臨床での一次治療において,クリゾチニブ単剤療法を選択すべきかどうか小委員会の中でも意見が分かれた。本CQにおいて,ALK融合遺伝子陽性例の一次治療としてクリゾチニブ単剤療法に関して,議論の末に推奨度決定不能となった。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
3%
(1/30)
40%
(12/30)
27%
(8/30)
30%
(9/30)
0%

CQ58.

PS 2-4の場合,一次治療としてどのALK-TKIが勧められるか?

推 奨
アレクチニブ単剤療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

解 説

 ALK融合遺伝子陽性の患者に対するアレクチニブ単剤療法は,PS不良例に対する有効性が報告されている12)。本邦において,ALK融合遺伝子陽性のPS不良患者を対象として,アレクチニブ単剤療法の有効性および安全性を評価した第Ⅱ相試験(LOGiK1401試験)が行われた。患者数はPS 2:12例,PS 3:5例,PS 4:1例であるが,安全性に大きな問題はなかった。主要評価項目であるORRは72.2%,PFS中央値は10.1カ月であり,さらに83.3%の患者でPSの改善を認めた。同試験のアップデートでは,PFS中央値が16.2カ月,OS中央値は30.3カ月であったと追加報告されている13)

 以上より,PS 2-4の場合,ALK融合遺伝子陽性例の一次治療としては,アレクチニブ単剤療法が勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(27/27)
0% 0% 0% 0%

ALK融合遺伝子陽性の二次治療以降

CQ59.

一次治療ALK-TKI耐性または増悪後のPS 0-2に対する最適なALK-TKIは何か?

推 奨
  • a.
  • アレクチニブ単剤療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:83%(推奨率:100%)〕

  • b.
  • ブリグチニブ単剤療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:63%(推奨率:100%)〕

  • c.
  • ロルラチニブ単剤療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:70%(推奨率:100%)〕

  • d.
  • セリチニブ単剤療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:90%(推奨率:93%)〕

*一次治療で用いたALK-TKIと異なる薬剤の推奨を示す。

解 説
  • a.クリゾチニブ耐性後のALK融合遺伝子陽性進行非小細胞肺癌を対象とし,アレクチニブ単剤を投与する第Ⅱ相試験が行われ,ORR 48~50%,PFS中央値8.1~8.9カ月の良好な成績が報告されている14)15)。本邦で行われたクリゾチニブ既治療の23例に対しアレクチニブ単剤を投与した試験では,ORR 65%,PFS中央値は12.9カ月であった16)。また,クリゾチニブ単剤療法ならびにプラチナ製剤併用療法施行後の症例に対し,アレクチニブ単剤療法と標準化学療法を比較する第Ⅲ相試験(ALUR試験)が行われ,主要評価項目であるPFSはHR 0.15(9.6カ月vs 1.4カ月,95%CI:0.08-0.29,P<0.001)であり,細胞傷害性抗癌薬(DTX単剤またはPEM単剤)に対し,PFSを有意に延長することが示された17)

     以上より,一次治療ALK-TKI耐性または増悪後のPS 0-2の患者には,初回ALK-TKIがクリゾチニブの場合,アレクチニブ単剤療法を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
83%
(25/30)
17%
(5/30)
0% 0% 0%
  • b.クリゾチニブ耐性後のALK融合遺伝子陽性例を対象としたブリグチニブ単剤療法の第Ⅱ相試験(ALTA試験)が行われ,ブリグチニブ90mg/日を1週間投与後に180mg/日に増量する群において,ORR 54%,PFS中央値12.9カ月の成績が示された18)。また,本邦で実施されたアレクチニブまたはクリゾチニブを含むその他すべてのALK阻害薬耐性後の症例を対象としたブリグチニブ単剤療法の第Ⅱ相試験(J-ALTA試験)では,アレクチニブの使用歴のある47例に対するブリグチニブ単剤療法の効果は,ORR 34%,PFS中央値7.3カ月の成績が示され,その他すべてのALK阻害薬を含む既治療例72例では,ORR 32%であった19)。海外で実施された,アレクチニブを含むALK阻害薬耐性後の症例を対象としたブリグチニブ単剤療法の第Ⅱ相試験においても,ORR 40%,PFS 7.0カ月と同様の成績を示した20)。主な毒性は,下痢,悪心,嘔吐などの消化器毒性,高血圧,クレアチンキナーゼ上昇,皮疹,間質性肺炎であった18)~20)。さらに,ブリグチニブの投与によってQOL指標の一部が改善することが示されている21)

     以上より,一次治療ALK-TKI耐性または増悪後のPS 0-2の患者には,ブリグチニブ単剤療法を行うよう提案する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
37%
(11/30)
63%
(19/30)
0% 0% 0%
  • c.ALK融合遺伝子陽性例を対象としたロルラチニブ単剤療法の第Ⅱ相試験が行われ,クリゾチニブ治療後に増悪した症例(59例)においては,ORR 69.5%,PFS中央値は未到達(95%CI:12.5カ月-未到達),クリゾチニブ以外のALK-TKI治療後に増悪した症例(28例)においては,ORR 32.1%,PFS中央値は5.5カ月,2レジメン以上のALK-TKI治療後に増悪した症例(111例)においては,ORR 38.7%,PFS中央値は6.9カ月,とそれぞれ成績が示されている。主な毒性は,高コレステロール血症,高トリグリセリド血症,浮腫であり,重篤な有害事象として認知機能障害(1%)が報告されている22)。日本人集団の報告では全体集団と同様の傾向であった23)

     以上より,一次治療ALK-TKI耐性または増悪後のPS 0-2の患者には,ロルラチニブ単剤療法を行うよう提案する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うことを弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
30%
(9/30)
70%
(21/30)
0% 0% 0%
  • d.クリゾチニブならびにプラチナ製剤併用療法後に増悪したALK融合遺伝子陽性例を対象としたセリチニブ単剤療法の第Ⅱ相試験(ASCEND-2試験)が行われ,ORR 38.6%,PFS中央値5.7カ月の成績が示されている24)。また同様の症例を対象に,セリチニブ単剤療法と標準化学療法を比較した第Ⅲ相試験(ASCEND-5試験)においては,主要評価項目であるPFSのHR 0.49(5.4カ月vs 1.6カ月,95%CI:0.36-0.67,P<0.001)であり,細胞傷害性抗癌薬(DTX単剤またはPEM単剤)に対しPFSを有意に延長することが示された25)。さらに,前治療でアレクチニブ使用歴のある20症例に対するセリチニブ単剤療法の第Ⅱ相試験(ASCEND-9試験)が本邦で行われ,ORR 25%,PFS中央値3.7カ月であった26)

     以上より,一次治療ALK-TKI耐性または増悪後のPS 0-2の患者には,セリチニブ単剤療法を行うよう提案する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
3%
(1/30)
90%
(27/30)
3%
(1/30)
3%
(1/30)
0%
引用文献
1)
Solomon BJ, Mok T, Kim DW, et al. First-line crizotinib versus chemotherapy in ALK-positive lung cancer. N Engl J Med. 2014; 371(23): 2167-77.
2)
Soria JC, Tan DSW, Chiari R, et al. First-line ceritinib versus platinum-based chemotherapy in advanced ALK-rearranged non-small-cell lung cancer(ASCEND-4): a randomised, open-label, phase 3 study. Lancet. 2017; 389(10072): 917-29.
3)
Wu YL, Lu S, Lu Y, et al. Results of PROFILE 1029, a phase III comparison of first-line crizotinib versus chemotherapy in East Asian patients with ALK-positive advanced non-small cell lung cancer. J Thorac Oncol. 2018; 13(10): 1539-48.
4)
Hida T, Nokihara H, Kondo M, et al. Alectinib versus crizotinib in patients with ALK-positive non-small-cell lung cancer(J-ALEX): an open-label, randomised phase 3 trial. Lancet. 2017; 390(10089): 29-39.
5)
Peters S, Camidge DR, Shaw AT, et al. Alectinib versus crizotinib in untreated ALK-positive non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2017; 377(9): 829-38.
6)
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7)
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8)
Takiguchi Y, Hida T, Nokihara H, et al. Updated efficacy and safety of the j-alex study comparing alectinib(ALC)with crizotinib(CRZ)in ALK-inhibitor naïve ALK fusion positive non-small cell lung cancer(ALK+NSCLC). J Clin Oncol. 2017; 35(15 suppl 9064).
9)
Camidge DR, Kim HR, Ahn MJ, et al. Brigatinib versus crizotinib in ALK-positive non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2018; 379(21): 2027-39.
10)
Camidge DR, Kim HR, Ahn MJ, et al. Brigatinib versus crizotinib in advanced ALK inhibitor-naive ALK-positive non-small cell lung cancer: Second interim analysis of the phase III ALTA-1L trial. J Clin Oncol. 2020; 38(31): 3592-603.
11)
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12)
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13)
Iwama E, Goto Y, Murakami H, et al. Survival analysis for patients with ALK rearrangement-positive non-small cell lung cancer and a poor performance status treated with alectinib: updated results of Lung Oncology Group in Kyushu 1401. Oncologist. 2020; 25(4): 306-e618.
14)
Ou SH, Ahn JS, De Petris L, et al. Alectinib in crizotinib-refractory ALK-rearranged non-small-cell lung cancer: a phase II global study. J Clin Oncol. 2016; 34(7): 661-8.
15)
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16)
Hida T, Nakagawa K, Seto T, et al. Pharmacologic study(JP28927)of alectinib in Japanese patients with ALK+ non-small-cell lung cancer with or without prior crizotinib therapy. Cancer Sci. 2016; 107(11): 1642-6.
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18)
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19)
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20)
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21)
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22)
Solomon BJ, Besse B, Bauer TM, et al. Lorlatinib in patients with ALK-positive non-small-cell lung cancer: results from a global phase 2 study. Lancet Oncol. 2018; 19(12): 1654-67.
23)
Seto T, Hayashi H, Satouchi M, et al. Lorlatinib in previously treated anaplastic lymphoma kinase-rearranged non-small cell lung cancer: Japanese subgroup analysis of a global study. Cancer Sci. 2020; 111(10): 3726-38.
24)
Crinò L, Ahn MJ, De Marinis F, et al. Multicenter phase II study of whole-body and intracranial activity with ceritinib in patients with ALK-rearranged non-small-cell lung cancer previously treated with chemotherapy and crizotinib: results from ASCEND-2. J Clin Oncol. 2016; 34(24): 2866-73.
25)
Shaw AT, Kim TM, Crinò L, et al. Ceritinib versus chemotherapy in patients with ALK-rearranged non-small-cell lung cancer previously given chemotherapy and crizotinib(ASCEND-5): a randomised, controlled, open-label, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2017; 18(7): 874-86.
26)
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7-1-4.ROS1融合遺伝子陽性

CQ60.

ROS1融合遺伝子陽性にROS1-TKIは勧められるか?

推 奨
  • a.
  • クリゾチニブ単剤療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:92%(推奨率:100%)〕

  • b.
  • エヌトレクチニブ単剤療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:67%(推奨率:100%)〕

解 説
  • a.ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌ではクリゾチニブ単剤療法の効果が複数報告されている。米国を中心とした試験では50例が参加し,ORRは72%,PFS中央値19.2カ月1),追加報告(53例)でのOS中央値は51.4カ月であった2)。本邦を含む東アジアで実施された試験では,127例が登録され,ORR 71.7%,PFS中央値15.9カ月であった3)。その他,同じデザインで行われた第Ⅱ相試験3編4)~6)を含めた5試験の統合解析はORR 67%(95%CI:58-75%)であり,いずれの試験においても一貫して良好な成績が示されている。

     以上より,ROS1融合遺伝子陽性例に対しては,クリゾチニブ単剤療法が勧められる。エビデンスの強さはC,総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者1名を含む),白票1/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
92%
(22/24)
8%
(2/24)
0% 0% 0%
  • b.ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌に対して,エヌトレクチニブ単剤療法を評価した2つの第Ⅰ相試験(ALKA-372-001試験,STARTRK-1試験),および第Ⅱ相試験(STARTRK-2試験)の統合解析が報告された。全体で53例のROS1融合遺伝子陽性例が登録され,主要評価項目であるORRは77%,PFS中央値は19.0カ月であった7)。エヌトレクチニブ単剤療法の主な毒性は,味覚障害,便秘,下痢などの消化器毒性,倦怠感,浮腫,クレアチニン上昇,ヘモグロビン低下が挙げられる。なお,今回の統合解析においてクリゾチニブ既治療例は含まれておらず,クリゾチニブ耐性後のエヌトレクチニブ単剤療法の効果は明らかでない。

     以上より,ROS1融合遺伝子陽性例に対しては,エヌトレクチニブ単剤療法が勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者1名を含む),白票1/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
67%
(16/24)
33%
(8/24)
0% 0% 0%
引用文献
1)
Shaw AT, Ou SH, Bang YJ, et al. Crizotinib in ROS1-rearranged non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2014; 371(21): 1963-71.
2)
Shaw AT, Riely GJ, Bang YJ, et al. Crizotinib in ROS1-rearranged advanced non-small-cell lung cancer(NSCLC): updated results, including overall survival, from PROFILE 1001. Ann Oncol. 2019; 30(7): 1121-6.
3)
Wu YL, Yang JC, Kim DW, et al. Phase II study of crizotinib in East Asian patients with ROS1-positive advanced non-small-cell lung cancer. J Clin Oncol. 2018; 36(14): 1405-11.
4)
Michels S, Massutí B, Schildhaus HU, et al. Safety and efficacy of crizotinib in patients with advanced or metastatic ROS1-rearranged lung cancer(EUCROSS): a european phase II clinical trial. J Thorac Oncol. 2019; 14(7): 1266-76.
5)
Landi L, Chiari R, Tiseo M, et al. Crizotinib in MET-deregulated or ROS1-rearranged pretreated non-small cell lung cancer(METROS): a phase II, prospective, multicenter, two-arms trial. Clin Cancer Res. 2019; 25(24): 7312-9.
6)
Moro-Sibilot D, Cozic N, Pérol M, et al. Crizotinib in c-MET- or ROS1-positive NSCLC: results of the AcSé phase II trial. Ann Oncol. 2019; 30(12): 1985-91.
7)
Drilon A, Siena S, Dziadziuszko R, et al. Entrectinib in ROS1 fusion-positive non-small-cell lung cancer: integrated analysis of three phase 1-2 trials. Lancet Oncol. 2020; 21(2): 261-70.

7-1-5.BRAF遺伝子V600E変異陽性

CQ61.

BRAF遺伝子V600E変異陽性にダブラフェニブ+トラメチニブは勧められるか?

推 奨
ダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:69%〕

解 説

 BRAF遺伝子V600E変異陽性の非小細胞肺癌ではダブラフェニブ単剤療法や,ダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法の効果が複数報告されている。Ⅳ期非小細胞肺癌のBRAF遺伝子V600E変異陽性の既治療例57例を対象とした,ダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法の第Ⅱ相試験が行われ,主要評価項目のORRは66.7%,PFS中央値は9.7カ月であった1)。Ⅳ期非小細胞肺癌のBRAF遺伝子V600E変異陽性の未治療例36例を対象とした,ダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法の第Ⅱ相試験では,主要評価項目のORRは64%,PFS中央値は10.9カ月であった2)。ただし,両試験に登録された日本人の症例数が限られている。ダブラフェニブとトラメチニブの併用療法では,主な毒性として発熱,肝機能障害,心駆出率減少が認められている。

 以上より,BRAF遺伝子V600E変異陽性例に対しては,ダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法が勧められる。エビデンスの強さはC,総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会/実施年度:2018年
[1回目]
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
58%
(15/26)
42%
(11/26)
0% 0% 0%
[2回目]
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
69%
(18/26)
31%
(8/26)
0% 0% 0%
引用文献
1)
Planchard D, Besse B, Groen HJM, et al. Dabrafenib plus trametinib in patients with previously treated BRAF(V600E)-mutant metastatic non-small cell lung cancer: an open-label, multicentre phase 2 trial. Lancet Oncol. 2016; 17(7): 984-93.
2)
Planchard D, Smit EF, Groen HJM, et al. Dabrafenib plus trametinib in patients with previously untreated BRAF(V600E)-mutant metastatic non-small-cell lung cancer: an open-label, phase 2 trial. Lancet Oncol. 2017; 18(10): 1307-16.

7-1-6.MET遺伝子変異陽性

CQ62.

MET遺伝子変異陽性にMET-TKIは勧められるか?

推 奨
MET-TKI単剤療法(テポチニブ,カプマチニブのいずれか)を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:92%〕

解 説

 MET遺伝子変異(エクソン14スキッピング変異)陽性の非小細胞肺癌を対象として,テポチニブ単剤療法の第Ⅱ相試験(VISION試験)が行われた。主要評価項目はORRであった。有効性評価が可能であった146例のORRは44.5%,そのうち観察期間が9カ月以上得られたコホート(99例)におけるORRは46%,PFS中央値は8.5カ月,OS中央値は17.1カ月であった。テポチニブ単剤療法の主な毒性は,末梢浮腫,悪心,下痢,クレアチニン上昇が認められている。なお,テポチニブ単剤の投与によってQOL指標の一部が改善することが示されている1)

 また,同じくMET遺伝子変異(エクソン14スキッピング変異)陽性の非小細胞肺癌を対象として,カプマチニブ単剤療法の第Ⅱ相試験(GEOMETRY mono-1試験)が行われた。主要評価項目はORRであった。二~三次治療例コホート(69例)におけるORRは41%,PFS中央値は5.4カ月であり,初回治療例コホート(28例)におけるORRは68%,PFS中央値は12.4カ月であった。カプマチニブ単剤療法の主な毒性は,末梢浮腫,倦怠感,悪心嘔吐,クレアチニン上昇が認められている2)

 以上より,MET遺伝子変異陽性例に対しては,テポチニブ・カプマチニブのいずれかの単剤療法が勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
92%
(23/25)
8%
(2/25)
0% 0% 0%
引用文献
1)
Paik PK, Felip E, Veillon R, et al. Tepotinib in non-small-cell lung cancer with MET exon 14 skipping mutations. N Engl J Med. 2020; 383(10): 931-43.
2)
Wolf J, Seto T, Han JY, et al. Capmatinib in MET exon 14-mutated or MET-amplified non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2020; 383(10): 944-57.

7-1-7.RET融合遺伝子陽性

CQ63.

RET融合遺伝子陽性にセルペルカチニブは勧められるか?

推 奨
セルペルカチニブ単剤療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:77%〕

解 説

 RET融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌を対象として,セルペルカチニブ単剤療法の第Ⅰ/Ⅱ相試験(LIBRETTO-001試験)が行われた。主要評価項目はORRであった。既治療例コホート(105例)におけるORRは64%,PFS中央値は16.5カ月であり,初回治療例コホート(39例)におけるORRは85%,PFS中央値は未到達であった1)。セルペルカチニブ単剤療法の主な毒性は,下痢,口内乾燥,高血圧,肝機能障害,倦怠感が認められている。

 以上より,RET融合遺伝子陽性例に対しては,セルペルカチニブ単剤療法が勧められる。エビデンスの強さはC,総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
77%
(20/26)
23%
(6/26)
0% 0% 0%
引用文献
1)
Drilon A, Oxnard GR, Tan DSW, et al. Efficacy of selpercatinib in RET fusion-positive non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2020; 383(9): 813-24.

7-1-8.NTRK融合遺伝子陽性

CQ64.

NTRK融合遺伝子陽性にTRK-TKIは勧められるか?

推 奨
TRK-TKI単剤療法(エヌトレクチニブ,ラロトレクチニブのいずれか)を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:D,合意率:71%〕

*主にがんゲノムプロファイリング検査で検索されるため,実施可能な施設は限られる(2021年10月時点)。

解 説

 NTRK融合遺伝子陽性の固形癌に対して,エヌトレクチニブ単剤療法を評価する試験が癌腫横断的に行われた。2つの第Ⅰ相試験(ALKA-372-001試験,STARTRK-1試験)では,有効性評価が可能な症例のうちNTRK融合遺伝子陽性例の3例中1例にNSCLCが含まれており,奏効が得られている1)。前述した第Ⅰ相試験および第Ⅱ相試験(STARTRK-2試験)の統合解析では,全体で54例のNTRK融合遺伝子陽性固形癌が登録され,主要評価項目であるORRは57%,PFS中央値は11カ月であった2)。そのうちNSCLCは10例(19%)含まれており,ORRは70%,PFS中央値は14.9カ月であった3)。エヌトレクチニブ単剤療法の主な毒性は,味覚障害,便秘,下痢などの消化器毒性,倦怠感,浮腫,クレアチニン上昇,ヘモグロビン低下が挙げられる。また,同じくNTRK融合遺伝子陽性の固形癌に対して,ラロトレクチニブ単剤療法を評価する試験が癌腫横断的に行われた。3つの第Ⅰ/Ⅱ相試験(SCOUT試験,NAVIGATE試験,他)の統合解析が行われた。全体で159例のNTRK融合遺伝子陽性固形癌が登録され,主要評価項目であるORRは79%,PFS中央値は28.3カ月であった4)。そのうち肺癌症例が20例(NSCLC19例)含まれており,ORRは73%,PFS中央値は35.4カ月であった5)。ラロトレクチニブ単剤療法の主な毒性は,便秘,下痢などの消化器毒性,倦怠感,めまい,好中球減少,ヘモグロビン低下が挙げられる。

 以上より,NTRK融合遺伝子陽性例に対しては,エヌトレクチニブ・ラロトレクチニブのいずれかの単剤療法が勧められる。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
71%
(20/28)
25%
(7/28)
4%
(1/28)
0% 0%
引用文献
1)
Drilon A, Siena S, Ou SI, et al. Safety and antitumor activity of the multitargeted pan-TRK, ROS1, and ALK inhibitor entrectinib: combined results from two phase I trials(ALKA-372-001 and STARTRK-1). Cancer Discov. 2017; 7(4): 400-9.
2)
Doebele RC, Drilon A, Paz-Ares L, et al. Entrectinib in patients with advanced or metastatic NTRK fusion-positive solid tumours: integrated analysis of three phase 1-2 trials. Lancet Oncol. 2020; 21(2): 271-82.
3)
Paz-Ares L, Doebele RC, Farago AF, et al. Entrectinib in NTRK fusion-positive non-small cell lung cancer(NSCLC): integrated analysis of patients(pts)enrolled in STARTRK-2, STARTRK-1 and ALKA-372-001. Ann Oncol. 2019; 30(suppl 2): ii48-49.
4)
Hong DS, DuBois SG, Kummar S, et al. Larotrectinib in patients with TRK fusion-positive solid tumours: a pooled analysis of three phase 1/2 clinical trials. Lancet Oncol. 2020; 21(4): 531-40.
5)
Lin JJ,Kummer S, Tan DS, et al. Long-term efficacy and safety of larotrectinib in patients with TRK fusion-positive lung cancer. J Clin Oncol. 2021; 39(suppl 15): abstr 9109.

7-1-9.KRAS遺伝子G12C変異陽性

CQ65.

KRAS遺伝子G12C変異陽性にソトラシブは勧められるか?

推 奨
二次治療以降でソトラシブ**単剤療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:67%〕

*一次治療は,ドライバー遺伝子変異/転座陰性(CQ66~78)を参照のこと。

**2021年10月時点で,ソトラシブは本邦で保険償還されていない。

解 説

 KRAS遺伝子G12C変異陽性の固形癌に対して,ソトラシブ単剤療法を評価する試験が行われた。第Ⅰ相試験では全体で129例のKRAS遺伝子G12C変異陽性の固形癌が登録された。そのうち有効性評価が可能なNSCLC症例59例が含まれており,ORRは32.2%であった1)。その後,既治療KRAS遺伝子G12C変異陽性の非小細胞肺癌(126例)を対象として,ソトラシブ単剤療法の第Ⅱ相試験(CodeBreaK100試験)が行われた。主要評価項目であるORRは37.1%,PFS中央値は6.8カ月,OSは12.5カ月であった2)。ソトラシブ単剤療法の主な毒性は,下痢,悪心, 倦怠感,肝機能障害が認められている。

 以上より,KRAS遺伝子G12C変異陽性例に対しては,二次治療以降でソトラシブ単剤療法が勧められる。エビデンスの強さはC,総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
67%
(18/27)
33%
(9/27)
0% 0% 0%

※2021年10月時点で,ソトラシブは本邦で保険償還されていない。承認後の使用に際しては,添付文書の記載をよく確認すること。

引用文献
1)
Hong DS, Fakih MG, Strickler JH, et al. KRASG12C inhibition with sotorasib in advanced solid tumors. N Engl J Med. 2020; 383(13): 1207-17.
2)
Skoulidis F, Li BT, Dy GK, et al. Sotorasib for lung cancers with KRAS p.G12C mutation. N Engl J Med. 2021; 384(25): 2371-81.
7-2
PD-L1高発現

樹形図

Ⅳ期非小細胞肺癌:PD-L1高発現の治療方針 CQ66 CQ67 CQ77

CQ66.

全身状態良好(PS 0-1)なPD-L1高発現に対する一次治療において薬物療法は勧められるか?

推 奨
  • a.
  • ペムブロリズマブ単剤療法もしくはアテゾリズマブ単剤療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:96%(推奨率:100%)〕

  • b.
  • プラチナ製剤併用療法にPD-1/PD-L1阻害薬を併用した治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B,合意率:82%(推奨率:100%)〕

  • c.
  • ニボルマブ+イピリムマブにプラチナ製剤併用療法を併用した治療を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:59%(推奨率:92%)〕

  • d.
  • ニボルマブ+イピリムマブ併用療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:86%(推奨率:86%)〕

*PD-L1(22C3)TPS 50%以上,もしくはPD-L1(SP142)TC3/IC3。

解 説
  • a.EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子のない,PD-L1 TPS 50%以上のPS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,ペムブロリズマブ単剤療法とプラチナ製剤併用療法を比較する第Ⅲ相試験(KEYNOTE-024試験)が行われた1)。中間解析において,主要評価項目であるPFSはHR 0.50(10.3カ月vs 6.0カ月,95%CI:0.37-0.68,P<0.001),OSは更新された報告において,HR 0.63(30.0カ月vs 14.2カ月,95%CI:0.47-0.86,P=0.002)であり2),ペムブロリズマブ単剤療法はプラチナ製剤併用療法に対しPFS,OSを有意に延長することが示された。また,ORRは44.8% vs 27.8%であり,ペムブロリズマブ単剤療法が有意に優れていた。主な毒性は,ペムブロリズマブ単剤療法群で下痢や倦怠感,発熱,プラチナ製剤併用療法群で貧血,悪心,倦怠感などであり,Grade 3以上の毒性はペムブロリズマブ単剤療法群で有意に少なかった(26.6% vs 53.3%)。一方,ペムブロリズマブ単剤療法群で甲状腺機能障害,肺臓炎,皮疹,大腸炎などの免疫関連の毒性が報告されGrade 3以上は9.7%と報告されており,それらの毒性管理には注意が必要である。KEYNOTE-024試験には40例の日本人患者が登録されており,そのうちペムブロリズマブ単剤療法群は21例であった3)。Grade3以上の毒性は8例(38%)で認められ,Grade 3以上の免疫関連有害事象は4例(19%)で認められた。また,ペムブロリズマブ単剤療法群がプラチナ製剤併用療法に比べてQOLを維持させること,および肺癌による症状が悪化するまでの期間を有意に遅らせることも報告されている4)

     さらに,前述した試験と同様のデザインで,PD-L1 TPS 1%以上を対象として,ペムブロリズマブ単剤療法とプラチナ製剤併用療法を比較する第Ⅲ相試験(KEYNOTE-042試験)が行われた5)。PD-L1 TPS 50%以上のサブグループにおける解析では,主要評価項目であるOSはHR 0.69(20.0カ月vs 12.2カ月,95%CI:0.56-0.85,P=0.0003)とペムブロリズマブ単剤療法はプラチナ製剤併用療法に対しOSを有意に延長することが示され,また,PFSはHR 0.81(7.1カ月vs 6.4カ月,95%CI:0.67-0.99)であり,PFSも延長することが示された。また,ORRは39% vs 32%であった。主な毒性は,前述するKEYNOTE-024試験と同様であり,これらの毒性管理には注意が必要である。

     なお,75歳以上の症例において,有効性,安全性に関する報告は少ない。ペムブロリズマブ単剤療法を検証した第Ⅲ相試験における75歳以上の症例の統合解析では,ペムブロリズマブ単剤療法が細胞傷害性抗癌薬に比べてGrade 3以上の毒性の頻度が低いことが報告されている(24.2% vs 61.0%)6)。ただし,75歳以上と75歳未満のGrade 3以上の毒性頻度はそれぞれ24.2%,16.9%と高齢者で高い傾向にあり,毒性管理には十分な注意が必要である。

     SP142 を用いたPD-L1免疫染色でTC1もしくはIC1以上(PD-L1発現あり相当),PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,アテゾリズマブ単剤療法とプラチナ製剤併用療法を比較する第Ⅲ相試験(IMpower110試験)が行われた7)。この試験の解析ではPD-L1別によるヒエラルキー解析が用いられた。最初のステップであるTC3ないしはIC3(PD-L1高発現相当)の患者205人を対象としたOSの解析のみで有効性が証明された。同サブグループにおけるアテゾリズマブ単剤療法群とプラチナ製剤併用療法群の比較解析において,OSはHR 0.59(20.2カ月vs 13.1カ月,95%CI:0.40-0.89),PFSはHR 0.63(8.1カ月vs 5.0カ月,95%CI:0.45-0.88)であり,アテゾリズマブ単剤療法はプラチナ製剤併用療法に対しPFS,OSを延長することが示唆された。また,ORRは38.3%vs 28.6%であった。Grade 3以上の毒性の頻度においてもアテゾリズマブ単剤のほうが低頻度であった(30.1%vs 52.5%)。アテゾリズマブ単剤療法群で内分泌障害,肺臓炎,皮疹,肝機能障害などの免疫関連の毒性の増加が報告されており,それらの毒性管理には注意が必要である。

     〔SP142を用いたPD-L1免疫染色では,腫瘍細胞(tumor cells;TC)に加え,腫瘍浸潤免疫細胞(tumor-infiltrating immune cells;IC)のPD-L1発現をそれぞれ0~3の4段階で測定し評価している。〕

     以上より,PD-L1高発現のⅣ期非小細胞肺癌(ドライバー遺伝子変異/転座陰性),PS 0-1症例に対してペムブロリズマブ単剤療法もしくはアテゾリズマブ単剤療法を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
96%
(27/28)
4%
(1/28)
0% 0% 0%
  • b-1.非扁平上皮癌

     EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子のない,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しペムブロリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(KEYNOTE-189試験)が行われた8)。中間解析において,主要評価項目であるPFSおよびOSは,それぞれHR 0.52(8.8カ月vs 4.9カ月,95%CI:0.43-0.64,P<0.0001),HR 0.49(未到達vs 11.3カ月,95%CI:0.38-0.64,P<0.0001)であり,CDDP+PEM療法もしくはCBDCA+PEM療法に対するペムブロリズマブの上乗せはPFS,OSを有意に延長することが示された。また,PD-L1 TPS 50%以上のサブグループ解析においても,PFSはHR 0.36(9.4カ月vs 4.7カ月,95%CI:0.25-0.52),OSはHR 0.42(未到達vs 10.0カ月,95%CI:0.26-0.68)と有意に生存を延長した。主な毒性は,ペムブロリズマブ併用療法群で悪心,貧血,倦怠感,便秘などであり,Grade 3以上の毒性はプラチナ製剤併用療法群と比較し頻度は同等であった(67.2% vs 65.8%)。ただし,ペムブロリズマブ併用療法群で急性腎障害が5.2%にみられることに加え,Grade 3以上の免疫関連の毒性が8.9%と報告され,そのうち肺臓炎により3例の治療関連死が報告されており,それらの毒性管理には注意が必要である。また,本試験でも事前に規定されていた患者報告アウトカム(PRO)の解析が行われ,ペムブロリズマブ併用療法群がプラチナ製剤併用療法群に比べてQOLを維持させること,および肺癌による症状が悪化するまでの期間を有意に遅らせることが報告されている9)

     PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しアテゾリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(IMpower150試験)が行われ,CBDCA/PTX/ベバシズマブ+アテゾリズマブ併用療法(B群)とCBDCA/PTX/ベバシズマブ療法(C群)の比較結果が報告された10)。主要評価項目はEGFR遺伝子変異/ALK融合遺伝子陰性集団におけるPFSおよびOSであった。C群に対するB群のPFSは,HR 0.62(8.3カ月vs 6.8カ月,95%CI:0.52-0.74,P<0.001),OSはHR 0.78(19.2カ月vs 14.7カ月,95%CI:0.64-0.96,P=0.02)であり,CBDCA/PTX/ベバシズマブ療法に対するアテゾリズマブの上乗せはPFS,OSを有意に延長することが示された。また,PD-L1発現が「TC3 or IC3」のサブグループ解析においても,PFSはHR 0.39(12.6カ月vs 6.8カ月,95%CI:0.25-0.60),OSはHR 0.70(25.2カ月vs 15.0カ月,95%CI:0.43-1.13)と,PD-L1高発現症例において良好な結果を示した。主な毒性は,アテゾリズマブ併用療法群で食欲低下,末梢神経障害,悪心,倦怠感などであり,Grade 3以上の毒性はCBDCA/PTX/ベバシズマブ療法群と比較し頻度は高い傾向を認めた(58.5% vs 50.0%)。また免疫関連の毒性として,アテゾリズマブ併用療法群で皮疹,肝機能障害,甲状腺機能障害,肺臓炎,大腸炎などが報告されており,免疫関連の毒性管理には注意が必要である。

     また同様の患者集団を対象として,CBDCA+nab-PTX療法にアテゾリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(IMpower130試験)では,主要評価項目としてEGFR遺伝子変異/ALK融合遺伝子陰性集団におけるPFSおよびOSが比較検証された11)。CBDCA+nab-PTX療法に対するアテゾリズマブの上乗せはPFSがHR 0.64(7.0カ月vs 5.5カ月,95%CI:0.54-0.77,P<0.001),OSがHR 0.79(18.6カ月vs 13.9カ月,95%CI:0.64-0.98,P=0.033)とPFS,OSを有意に延長することが示された。また,PD-L1発現が「TC3 or IC3」のサブグループ解析においても,PFSはHR 0.51(6.4カ月vs 4.6カ月,95%CI:0.34-0.77),OSはHR 0.84(17.3カ月vs 16.9カ月,95%CI:0.51-1.39)と,PD-L1高発現症例において良好な結果を示した。主な毒性は,アテゾリズマブ併用療法群で好中球減少や貧血などの骨髄抑制,食欲低下,悪心,倦怠感,下痢などであり,Grade 3以上の毒性はプラチナ製剤併用療法群と比較し頻度は高い傾向を認めた(81% vs 71%)。また免疫関連の毒性として,アテゾリズマブ併用群では甲状腺機能障害(15%),肝機能障害(10%)を主に認め,さらに皮疹,肺臓炎,大腸炎などが報告されており,免疫関連の毒性管理には注意が必要である。

  • b-2.扁平上皮癌

     PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しペムブロリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(KEYNOTE-407試験)が行われた12)。559例が1:1でランダム化され,主要評価項目であるOSは,HR 0.71(17.1カ月vs 11.6カ月, 95%CI:0.58-0.88),PFSはHR 0.57(8.0カ月vs 5.1カ月,95%CI:0.47-0.69)であり,CBDCA+PTX療法もしくはCBDCA+nab-PTX療法に対するペムブロリズマブの上乗せはPFSとOSを有意に延長することが示された。またPD-L1 TPS 50%以上のサブグループ解析においても,OSはHR 0.79(95%CI:0.52-1.21)と良好な傾向がみられた。主な毒性は,ペムブロリズマブ併用療法群で貧血,食欲低下,好中球減少などであり,Grade 3以上の毒性はプラチナ製剤併用療法群と比較し頻度は同等であった(74.1%vs 69.6%)13)。ただし,治療関連死亡はペムブロリズマブ併用療法群で高い傾向を認めた(4.3%vs 1.8%)。また同試験のPROにおいては,ペムブロリズマブ併用療法群でプラチナ製剤併用療法群に比べて,QOLが維持されることが示された14)

     以上より,PD-L1高発現のⅣ期非小細胞肺癌(ドライバー遺伝子変異/転座陰性),PS 0-1症例に対してプラチナ製剤併用療法にPD-1/PD-L1阻害薬を併用した治療を行うよう勧められる。ただし,ペムブロリズマブ単剤療法と比較したデータはなく,プラチナ製剤併用療法にPD-1/PD-L1阻害薬を併用した治療がペムブロリズマブ単剤療法より優れているかどうかは明らかではない。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
82%
(23/28)
18%
(5/28)
0% 0% 0%
  •   なお,プラチナ製剤併用療法にPD-1/PD-L1阻害薬を併用した治療のレジメンの詳細については,項末を参照のこと。

  • c.EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子のない,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,ニボルマブ+イピリムマブ+プラチナ製剤併用療法(2サイクル導入療法)を併用した治療とプラチナ製剤併用療法を比較する第Ⅲ相試験(CheckMate9LA試験)が行われた15)。主要評価項目であるOSはHR 0.66(15.6カ月vs 10.9カ月,95%CI:0.55-0.80)であり,ニボルマブ+イピリムマブ+プラチナ製剤併用療法はプラチナ製剤併用療法に対しOSを有意に延長することが示された。PFSはHR 0.68(6.7カ月vs 5.0カ月,95%CI:0.57-0.82),ORRは38%vs 25%であった。また,PD-L1 TPS 50%以上のサブグループでのニボルマブ+イピリムマブ+プラチナ製剤併用療法群とプラチナ製剤併用療法群の比較解析において,OSはHR 0.66(18.0カ月vs 12.6カ月,95%CI:0.44-0.99)であった。Grade 3以上の毒性の頻度は,ニボルマブ+イピリムマブ+プラチナ製剤併用療法群で高い傾向にあった(47%vs 38%)。また,ニボルマブ+イピリムマブ+プラチナ製剤併用療法群では血液毒性の頻度が低い一方で,内分泌障害,肺臓炎,皮疹,胃腸障害などの免疫関連の毒性の増加が報告されており,それらの毒性管理には注意が必要である。

     以上より,PD-L1高発現のⅣ期非小細胞肺癌(ドライバー遺伝子変異/転座陰性),PS 0-1症例に対してニボルマブ+イピリムマブにプラチナ製剤併用療法を併用した治療を行うよう勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者1名を含む),白票1/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
33%
(9/27)
59%
(16/27)
0% 4%
(1/27)
4%
(1/27)
  • d.EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子のない,PD-L1 TPS 1%以上,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,ニボルマブ+イピリムマブ併用療法,ニボルマブ単剤療法とプラチナ製剤併用療法を3群比較する第Ⅲ相試験(CheckMate227Part 1試験)が行われた16)。PD-L1 TPS 50%以上のサブグループにおけるニボルマブ+イピリムマブ併用療法群とプラチナ製剤併用療法群の比較解析において,OSはHR 0.70(21.2カ月vs 14.0カ月,95%CI:0.55-0.90),PFSはHR 0.62(6.7カ月vs 5.6カ月,95%CI:0.49-0.79)であり,ニボルマブ+イピリムマブ併用療法はプラチナ製剤併用療法に対しPFS,OSを延長することが示された。また,ORRは44.4% vs 35.4%であり,ニボルマブ+イピリムマブ併用療法が優れていた。Grade 3以上の毒性の頻度はどちらも同程度であった(32.8% vs 36.0%)。ニボルマブ+イピリムマブ併用療法群で内分泌障害,肺臓炎,皮疹,胃腸障害などの免疫関連の毒性の増加が報告されており,それらの毒性管理には注意が必要である。

     以上より,PD-L1高発現のⅣ期非小細胞肺癌(ドライバー遺伝子変異/転座陰性),PS 0-1症例に対してニボルマブ+イピリムマブ併用療法を行うよう勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 86%
(24/28)
4%
(1/28)
7%
(2/28)
4%
(1/28)

CQ67.

PS 2のPD-L1高発現に対する一次治療において薬物療法は勧められるか?

推 奨
  • a.
  • 細胞傷害性抗癌薬の治療を行うよう推奨もしくは提案する。

〔単剤療法/推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕

〔カルボプラチン併用療法/推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:100%〕

  • b.
  • ペムブロリズマブ単剤療法もしくはアテゾリズマブ単剤療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:D,合意率:85%〕

  • c.
  • プラチナ製剤併用療法に免疫チェックポイント阻害薬を併用した治療を行うよう推奨するだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

*PD-L1(22C3)TPS 50%以上,もしくはPD-L1(SP142)TC3/IC3。

解 説
  • a.CQ70参照

  • b.KEYNOTE-024試験およびIMpower110試験では,適格基準としてPS 0-1を満たす患者のみが登録されており1)7),PS 2のⅣ期非小細胞肺癌の一次治療でPD-1/PD-L1阻害薬単剤療法を投与した際の有効性は現時点で不明確であるが,安全性を中心とした報告は近年散見される。海外で行われたPS 2の症例60例に対するペムブロリズマブ単剤療法の第Ⅱ相試験(PePS2試験)では,一次治療が24例(40%),PD-L1 TPS 50%以上が15例(25%)含まれていた。登録された全体集団において,ペムブロリズマブ単剤の投与によって17例(28%)で治療延期ないしは治療中断を要する毒性が報告されている17)。一方で,PS 2に対する細胞傷害性抗癌薬のエビデンスも十分とはいえず,有効性は限定的で毒性も懸念される。ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会では,PD-1/PD-L1阻害薬は細胞傷害性抗癌薬と比較して重篤な毒性の頻度が低いことから,益と害のバランスを考慮し治療選択肢として加えてよいという意見が多くみられた。

     以上より,PS 2のPD-L1高発現のⅣ期非小細胞肺癌に対し投与の是非を慎重に検討したうえで,一次治療においてペムブロリズマブ単剤療法もしくはアテゾリズマブ単剤療法を行うことをエキスパートオピニオンとして提案する。エビデンスの強さはD,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 85%
(22/26)
15%
(4/26)
0% 0%
  • c.プラチナ製剤併用療法に対するPD-1/PD-L1阻害薬の上乗せを評価した4つの第Ⅲ相試験8)~13)およびCheckMate9LA試験では15),適格基準としてPS 0-1を満たす患者のみが登録されており,PS 2のⅣ期非小細胞肺癌の一次治療でプラチナ製剤併用療法に免疫チェックポイント阻害薬を併用投与した際の臨床成績および安全性は不明である。また,PS 2症例は細胞傷害性抗癌薬の毒性も懸念される患者群であり,さらに免疫チェックポイント阻害薬を併用投与することについては安全性における懸念を払拭できない。

     以上より,PS 2のPD-L1高発現のⅣ期非小細胞肺癌に対し一次治療においてプラチナ製剤併用療法に免疫チェックポイント阻害薬を併用した治療を推奨するだけの根拠が明確ではなく,推奨度決定不能とした。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 69%
(18/26)
27%
(7/26)
4%
(1/26)
引用文献
1)
Reck M, Rodríguez-Abreu D, Robinson AG, et al. Pembrolizumab versus chemotherapy for PD-L1-positive non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2016; 375(19): 1823-33.
2)
Reck M, Rodríguez-Abreu D, Robinson AG, et al. Updated analysis of KEYNOTE-024: pembrolizumab versus platinum-based chemotherapy for advanced non-small-cell lung cancer with PD-L1 tumor proportion score of 50% or greater. J Clin Oncol. 2019; 37(7): 537-46.
3)
Satouchi M, Nosaki K, Takahashi T, et al. First-line pembrolizumab vs chemotherapy in metastatic non-small-cell lung cancer: KEYNOTE-024 Japan subset. Cancer Sci. 2020; 111(12): 4480-9.(This manuscript has been revised)
4)
Brahmer JR, Rodríguez-Abreu D, Robinson AG, et al. Health-related quality-of-life results for pembrolizumab versus chemotherapy in advanced, PD-L1-positive NSCLC(KEYNOTE-024): a multicentre, international, randomised, open-label phase 3 trial. Lancet Oncol. 2017; 18(12): 1600-9.
5)
Mok TSK, Wu YL, Kudaba I, et al. Pembrolizumab versus chemotherapy for previously untreated, PD-L1-expressing, locally advanced or metastatic non-small-cell lung cancer(KEYNOTE-042): a randomised, open-label, controlled, phase 3 trial. Lancet. 2019; 393(10183): 1819-30.
6)
Nosaki K, Saka H, Hosomi Y, et al. Safety and efficacy of pembrolizumab monotherapy in elderly patients with PD-L1-positive advanced non-small-cell lung cancer: Pooled analysis from the KEYNOTE-010, KEYNOTE-024, and KEYNOTE-042 studies. Lung Cancer. 2019; 135: 188-95.
7)
Herbst RS, Giaccone G, de Marinis F, et al. Atezolizumab for first-line treatment of PD-L1-selected patients with NSCLC. N Engl J Med. 2020; 383(14): 1328-39.
8)
Gandhi L, Rodríguez-Abreu D, Gadgeel S, et al. Pembrolizumab plus chemotherapy in metastatic non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2018; 378(22): 2078-92.
9)
Garassino MC, Gadgeel S, Esteban E, et al. Patient-reported outcomes following pembrolizumab or placebo plus pemetrexed and platinum in patients with previously untreated, metastatic, non-squamous non-small-cell lung cancer(KEYNOTE-189): a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2020; 21(3): 387-97.
10)
Socinski MA, Jotte RM, Cappuzzo F, et al. Atezolizumab for first-line treatment of metastatic nonsquamous NSCLC. N Engl J Med. 2018; 378(24): 2288-301.
11)
West H, McCleod M, Hussein M, et al. Atezolizumab in combination with carboplatin plus nab-paclitaxel chemotherapy compared with chemotherapy alone as first-line treatment for metastatic non-squamous non-small-cell lung cancer(IMpower130): a multicentre, randomised, open-label, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2019; 20(7): 924-37.
12)
Paz-Ares L, Luft A, Vicente D, et al. Pembrolizumab plus chemotherapy for squamous non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2018; 379(21): 2040-51.
13)
Paz-Ares L, Vicente D, Tafreshi A, et al. A randomized, placebo-controlled trial of pembrolizumab plus chemotherapy in patients with metastatic squamous NSCLC: protocol-specified final analysis of KEYNOTE-407. J Thorac Oncol. 2020; 15(10): 1657-69.
14)
Mazieres J, Kowalski D, Luft A, et al. Health-related quality of life with carboplatin-paclitaxel or nab-paclitaxel with or without pembrolizumab in patients with metastatic squamous non-small-cell lung cancer. J Clin Oncol. 2020; 38(3): 271-80.
15)
Paz-Ares L, Ciuleanu TE, Cobo M, et al. First-line nivolumab plus ipilimumab combined with two cycles of chemotherapy in patients with non-small-cell lung cancer(CheckMate 9LA): an international, randomised, open-label, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2021; 22(2): 198-211. Epub 2021 Jan 18.
16)
Hellmann MD, Paz-Ares L, Bernabe Caro R, et al. Nivolumab plus ipilimumab in advanced non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2019; 381(21): 2020-31.
17)
Middleton G, Brock K, Savage J, et al. Pembrolizumab in patients with non-small-cell lung cancer of performance status 2(PePS2): a single arm, phase 2 trial. Lancet Respir Med. 2020; 8(9): 895-904.
7-3
ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1 TPS 50%未満,もしくは不明

樹形図

Ⅳ期非小細胞肺癌:ドライバー遺伝子変異/転座陰性の二次治療以降 CQ78 CQ77 CQ78 CQ77

7-3-1.ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1 TPS 50%未満,もしくは不明の一次治療

CQ68.

ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1 TPS 50%未満,もしくは不明のPS 0-1,75歳未満に対する一次治療において細胞傷害性抗癌薬は勧められるか?

推 奨
プラチナ製剤と第三世代以降の細胞傷害性抗癌薬を併用した治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:93%〕

※PEMは非扁平上皮癌への投与が推奨される。

※ネダプラチン(NDP/CDGP)は扁平上皮癌への投与が推奨される。

解 説

 メタアナリシスによってプラチナ製剤(CDDPもしくはCBDCA)を含む治療が緩和治療に対して有意にOSの延長に寄与していることが示されている1)。また,プラチナ製剤併用の薬剤を第二世代と第三世代細胞傷害性抗癌薬で比較したメタアナリシスにおいて,後者がORRで12%,1年生存率で6%優ると報告されている2)。本邦では,4種類の第三世代細胞傷害性抗癌薬とプラチナ製剤併用の第Ⅲ相試験(FACS試験)の結果が報告されており,いずれの治療効果も同等であった3)

 新規薬剤においても,複数の第Ⅲ相試験によって有効性が示されているが,いくつかの薬剤は特定の組織型に対してのみ有効性が示されている。PEMはそのような薬剤の1つであり,非扁平上皮癌に対して用いられる。CDDP+PEM療法とCDDP+GEM療法の第Ⅲ相試験(JMDB試験)が行われ,全体では同等の治療効果であったが組織型による差が認められ,非扁平上皮癌においてはCDDP+PEM療法群でOSの有意な延長(11.8カ月vs 10.4カ月,HR 0.81,95%CI:0.70-0.94,P=0.005)を認めた一方で,扁平上皮癌においてはCDDP+PEM療法群でPFS(4.4カ月vs 5.5カ月,HR 1.36,95%CI:1.12-1.65,P=0.002),OS(9.4カ月vs 10.8カ月,HR 1.23,95%CI:1.00-1.51,P=0.05)ともに劣っていた4)。サブグループ解析ではあるが,有効性ならびに毒性の観点から非扁平上皮癌に対するCDDP+PEM療法は至適レジメンの1つである。また,CBDCA+PEM療法はOSを主要評価項目とした比較試験がないものの,患者が自覚する毒性がCDDPよりも軽度であることから実地臨床では頻用されている。CBDCA+PEM療法とCBDCA+GEM療法,CBDCA+DTX療法やCBDCA+PTX+ベバシズマブ療法との比較試験では,OSや主要評価項目であった有害事象などで優越性を示せていない5)~7)。しかしながら,CBDCA+PTX+ベバシズマブ療法と比較しても生存曲線に大きな差はなく7),ベバシズマブを併用した試験ではCBDCA+PTX+ベバシズマブ療法よりPFSが上回る傾向にある8)。以上より,CBDCA+PEM療法を行うことは許容される。

 扁平上皮癌に対しては,ネダプラチン(NDP/CDGP)+DTX療法とCDDP+DTX療法の第Ⅲ相試験(WJOG5208L試験)が本邦で実施され,OSの有意な延長が認められた(13.6カ月vs 11.4カ月,HR 0.81,95%CI:0.65-1.02,P=0.037)。毒性はプロファイルが異なり,NDP/CDGP療法群では白血球減少,好中球減少,血小板減少が多く,CDDP療法群では悪心,倦怠感,低ナトリウム血症,低カリウム血症が多かった。本邦において第三世代以降の細胞傷害性抗癌薬併用で唯一の優越性が示された有望なレジメンである9)

 その他,S-1の有効性を評価した2編の第Ⅲ相試験(LETS試験,CATS試験)では,CBDCA+S-1療法はCBDCA+PTX療法に対して,CDDP+S-1療法はCDDP+DTX療法に対して非劣性が示された10)11)。ヒト血清アルブミンとPTXを結合させたナノ粒子製剤であるnab-PTXとCBDCAの併用療法はCBDCA+PTX療法との第Ⅲ相試験において,有意にORRの上昇を認めた(33.0% vs 25.0%)12)。これらのレジメンは組織型にかかわらず使用可能である。

 以上より,75歳未満,PS 0-1症例に対して,プラチナ製剤と第三世代以降の細胞傷害性抗癌薬を併用した治療を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。各レジメンに固有の毒性プロファイルが報告されており,これらも踏まえて選択するべきと考えられる。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
93%
(25/27)
7%
(2/27)
0% 0% 0%

CQ69.

ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1 TPS 50%未満,もしくは不明のPS 0-1,75歳以上に対する一次治療において細胞傷害性抗癌薬は勧められるか?

推 奨
  • a.
  • カルボプラチン併用療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:96%〕

  • b.
  • 第三世代細胞傷害性抗癌薬単剤療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:A,合意率:77%〕

※PEMは非扁平上皮癌への投与が推奨される。

解 説

 一次薬物療法の第Ⅲ相試験と術後補助療法を対象とした検討では,65歳以上と以下で治療効果の差は認めず,暦年齢よりも日常生活自立度が予後に関係していた13)。また,80歳以上でもPS 0-1と良好なものは80歳以下と比べて,OSにおいて80歳以上で7カ月,80歳未満で11カ月(P=0.20)とOSに有意な差がなく,毒性についても明らかな差を認めなかったと報告されている14)。以上より,暦年齢のみで薬物療法の対象外とするべきではない。

  • a.高齢者を対象とした第三世代細胞傷害性抗癌薬単剤療法とCBDCA併用療法を比較した第Ⅲ相試験が3編報告されている。

     海外で行われた第Ⅲ相試験(IFCT0501試験)では,70~89歳の患者を対象にCBDCA+weekly PTX併用療法とGEM単剤療法もしくはVNR単剤療法の比較が行われ,併用療法群でPFSの有意な延長(6.0カ月vs 2.8カ月,HR 0.51,95%CI:0.42-0.62,P<0.0001),OSの有意な延長(10.3カ月vs 6.2カ月,HR 0.64,95%CI:0.52-0.78,P<0.0001)が示された15)。しかし,この試験においては併用療法群における治療関連死が4.4%と高いなどの問題点が指摘されており,投与量も本邦における標準的なものとは異なっているなどデータの解釈には注意を要する。

     本邦において,75歳以上,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)患者を対象とした第Ⅲ相試験(JCOG1210/WJOG7813L試験)が行われ16),CBDCA+PEM併用療法(PEMの維持療法あり)とDTX単剤療法の比較結果が報告された。主要評価項目はCBDCA+PEM併用療法群のDTX単剤療法群に対するOS(非劣性)であり,OSのHRは0.850(18.7カ月vs 15.5カ月,95%CI:0.684-1.056)であったことから非劣性が証明された。しかしながら,CBDCA+PEM併用療法群のDTX単剤療法群に対する優越性は示されなかった。またPFSにおいては,HR 0.739(95%CI:0.609-0.896,P<0.01)とCBDCA+PEM併用療法群で有意に延長させることが示された。Grade 3以上の毒性は,CBDCA+PEM併用療法群で血小板減少と貧血が多く,DTX単剤療法群で好中球減少と発熱性好中球減少が多かった。

     さらに本邦において,70歳以上,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌)患者を対象とした第Ⅲ相試験(CAPITAL試験)が行われ17),CBDCA+nab-PTX併用療法とDTX単剤療法の比較結果が報告された。CBDCA+nab-PTX療法の併用期間は最大6サイクルまでとされ,その後はnab-PTXの維持療法が許容された。主要評価項目であるOSの有意な延長が証明され(HR 0.52,16.9カ月vs 10.9カ月,95%CI:0.38-0.70,P<0.001),またPFSにおいてもHR 0.42(5.8カ月vs 4.0カ月,95%CI:0.30-0.58,P<0.001)とCBDCA+nab-PTX併用療法群で有意に延長させることが示された。本試験は75歳未満/以上が割付調整因子の1つに設定され,半数以上を占めた75歳以上のサブグループ解析においても,PFS(HR 0.46,95%CI:0.31-0.68)とOS(HR 0.58,95%CI:0.37-0.90)で,ともにCBDCA+nab-PTX併用療法群で良好な結果であった。Grade 3以上の毒性は,CBDCA+nab-PTX併用療法群で貧血と血小板減少が多く,DTX単剤療法群で白血球減少,好中球減少と発熱性好中球減少が多かった。また,Grade 2以上の末梢神経障害はCBDCA+nab-PTX併用療法群で15.8%に認めたが,DTX単剤療法群では1%であった。治療関連死はCBDCA+nab-PTX併用療法群で2例 (2.1%),DTX単剤療法群で1例 (1.0%)であった。

     以上より,PS 0-1,75歳以上の非小細胞肺癌症例に対しては,CBDCA併用療法を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
96%
(25/26)
4%
(1/26)
0% 0% 0%
  • b.高齢者においては,緩和治療に対してVNR単剤療法が有意にOSを延長し薬物療法が有効であること,VNR単剤療法と比較してGEM単剤療法が同様の有効性を示していることが確認されている18)19)。その後,本邦で行われた第Ⅲ相試験(WJTOG9904試験)において,DTX単剤療法はVNR単剤療法に対して,PFSで5.5カ月vs 3.1カ月(HR 0.61,95%CI:0.45-0.82,P<0.001)と有意な延長を認め,OSで有意差は認めなかったものの14.3カ月vs 9.9カ月(HR 0.78,95%CI:0.56-1.09,P=0.138)と良好な成績を示した20)

     以上より,PS 0-1,75歳以上の非小細胞肺癌症例に対して,DTXをはじめとした第三世代細胞傷害性抗癌薬単剤療法を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
23%
(6/26)
77%
(20/26)
0% 0% 0%

CQ70.

ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1 TPS 50%未満,もしくは不明のPS 2に対する一次治療において細胞傷害性抗癌薬は勧められるか?

推 奨
  • a.
  • 第三世代細胞傷害性抗癌薬単剤療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕

  • b.
  • プラチナ製剤併用療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:100%〕

※PEMは非扁平上皮癌への投与が推奨される。

解 説

 PS 2は多様な集団であり,標準治療は定まっていない。しかし,薬物療法と緩和治療を比較したメタアナリシスのサブグループにおいて,PSにかかわらず薬物療法によるOSの延長が認められている〔PS 2以上の場合,薬物療法によって1年生存率にして6%(8%から14%)の改善〕1)

  • a.メタアナリシスにおいて第三世代細胞傷害性抗癌薬(DTX,PTX,VNR,GEM)単剤療法は緩和治療に比して1年生存率約7%の改善が示されているが,この中にPS 2以上は約30%含まれていた2)。また,この解析でも取り上げられた3編の試験においてPS 2のサブグループの治療成績が明らかになっており,いずれもOSが延長する傾向が確認されている21)

     以上より,PS 2症例において,第三世代細胞傷害性抗癌薬単剤療法を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(27/27)
0% 0% 0% 0%
  • b.PTX単剤療法とCBDCA+PTX併用療法とを比較した第Ⅲ相試験(CALGB9730試験)においてPS 2のサブグループが報告されており,CBDCA+PTX併用療法はPTX単剤療法に対して1年生存率で優位に上回っていた(18% vs 10%,HR 0.60,95%CI:0.40-0.91)22)。PS 2に対するCBDCA+PTX療法とCDDP+GEM療法とを比較した試験(ECOG1599試験)では,OSは各6.2カ月,6.9カ月と報告され,毒性に関しても忍容可能と考えられた23)。また,CBDCA+GEM併用療法とGEM単剤療法の比較試験が行われ,有意差が認められなかったものの,併用療法群でOSが6.7カ月vs 4.8カ月(P=0.49),PFSが4.1カ月vs 3.0カ月(P=0.36)の延長傾向が示された24)。さらに,PS 2症例を対象としたCBDCA+PEM併用療法とPEM単剤療法の第Ⅲ相試験が報告されている。この試験では第Ⅲ相試験としては登録数が205例と小規模で,扁平上皮癌を含む患者を対象としているなど問題があるが,併用療法群でPFSの有意な延長(5.8カ月vs 2.8カ月,HR 0.46,95%CI:0.35-0.63,P<0.001),OSの有意な延長(9.3カ月vs 5.3カ月,HR 0.62,95%CI:0.46-0.83,P=0.001)が示されている。毒性に関しては,併用療法群で貧血や好中球減少が高く,3.9%の治療関連死が認められた25)

     以上より,毒性が忍容可能と思われるPS 2症例に対してはプラチナ製剤併用療法を考慮してもよいと考えられる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。ただし,PS 2症例に関するエビデンスは限られており,そのほとんどはCBDCA併用レジメン,もしくは通常より減量した用量が用いられていることに注意が必要である。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 100%
(27/27)
0% 0% 0%

CQ71.

プラチナ製剤併用療法を受ける場合に免疫チェックポイント阻害薬を併用した治療は勧められるか?

推 奨
  • a.
  • PS 0-1症例に対して,プラチナ製剤併用療法にPD-1/PD-L1阻害薬を併用した治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B,合意率:92%(推奨率:100%)〕

  • b.
  • PS 0-1症例に対して,ニボルマブ+イピリムマブにプラチナ製剤併用療法を併用した治療を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:42%(推奨率:100%)〕

  • c.
  • PS 2症例に対して,プラチナ製剤併用療法に免疫チェックポイント阻害薬を併用した治療を行うよう推奨するだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

解 説
  • a-1.非扁平上皮癌

     EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子のない,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しペムブロリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(KEYNOTE-189試験)が行われた26)。中間解析において,主要評価項目であるPFSおよびOSは,それぞれHR 0.52(8.8カ月vs 4.9カ月,95%CI:0.43-0.64,P<0.0001),HR 0.49(未到達vs 11.3カ月,95%CI:0.38-0.64,P<0.0001)であり,CDDP+PEM療法もしくはCBDCA+PEM療法に対するペムブロリズマブの上乗せはPFS,OSを有意に延長することが示された。また,PD-L1発現別のサブグループ解析においても,PD-L1 TPS 1~49%のPFSはHR 0.55(95%CI:0.37-0.81),OSはHR 0.55(95%CI:0.34-0.90),PD-L1 TPS 1%未満のPFSはHR 0.75(95%CI:0.53-1.05),OSはHR 0.59(95%CI:0.38-0.92)と,いずれの集団においてもOSを延長させた。主な毒性は,ペムブロリズマブ併用療法群で悪心,貧血,倦怠感,便秘などであり,Grade 3以上の毒性はプラチナ製剤併用療法群と比較し頻度は同等であった(67.2% vs 65.8%)。ただし,ペムブロリズマブ併用療法群で急性腎障害が5.2%にみられることに加え,Grade 3以上の免疫関連毒性が8.9%と報告され,そのうち肺臓炎により3例の治療関連死が報告されており,それらの毒性管理には注意が必要である。また本試験では,事前に規定されていた,患者報告アウトカム(PRO)の解析結果も報告されている27)。ペムブロリズマブ併用療法群で,QOLの維持もしくは肺癌による症状の悪化までの期間の延長が示された。

     PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しアテゾリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(IMpower150試験)が行われ,CBDCA/PTX/ベバシズマブ+アテゾリズマブ併用療法(B群)とCBDCA/PTX/ベバシズマブ療法(C群)の比較結果が報告された28)。主要評価項目はドライバー遺伝子変異/転座陰性集団におけるPFSおよびOSであった。C群に対するB群のPFSは,HR 0.62(8.3カ月vs 6.8カ月,95%CI:0.52-0.74,P<0.001),OSはHR 0.78(19.2カ月vs 14.7カ月,95%CI:0.64-0.96,P=0.02)であり,CBDCA/PTX/ベバシズマブ療法に対するアテゾリズマブの上乗せはPFS,OSを有意に延長することが示された。また,PD-L1発現別のサブグループ解析において,「TC1/2 or IC1/2」のPFSはHR 0.56(95%CI:0.41-0.77),OSはHR 0.80(95%CI:0.55-1.15),「TC0 and IC0」のPFSはHR 0.77(95%CI:0.61-0.99),OSはHR 0.82(95%CI:0.62-1.08)と,PD-L1が低発現および発現がみられない症例においても良好な結果を示した。主な毒性は,アテゾリズマブ併用療法群で食欲低下,末梢神経障害,悪心,倦怠感などであり,Grade 3以上の毒性はCBDCA/PTX/ベバシズマブ併用療法群と比較し頻度は高い傾向を認めた(58.5% vs 50.0%)。また免疫関連の毒性として,アテゾリズマブ併用療法群で皮疹,肝機能障害,甲状腺機能障害,肺臓炎,大腸炎などが報告されており,免疫関連の毒性管理には注意が必要である。

     また同様の患者集団を対象として,CBDCA+nab-PTX療法にアテゾリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(IMpower130試験)では,主要評価項目としてドライバー遺伝子変異/転座陰性集団におけるPFSおよびOSが比較検証された29)。CBDCA+nab-PTX療法に対するアテゾリズマブの上乗せはPFSがHR 0.64(7.0カ月vs 5.5カ月,95%CI:0.54-0.77,P<0.001),OSがHR 0.79(18.6カ月vs 13.9カ月,95%CI:0.64-0.98,P=0.033)とPFS,OSを有意に延長することが示された。また,PD-L1発現別のサブグループ解析において,「TC1/2 or IC1/2」のPFSはHR 0.61(95%CI:0.43-0.85),OSはHR 0.70(95%CI:0.45-1.08),「TC0 and IC0」のPFSはHR 0.72(95%CI:0.56-0.91),OSはHR 0.81(95%CI:0.61-1.08)と,PD-L1が低発現および発現がみられない症例においても良好な結果を示した。主な毒性は,アテゾリズマブ併用療法群で好中球減少や貧血などの骨髄抑制,食欲低下,悪心,倦怠感,下痢などであり,Grade 3以上の毒性はプラチナ製剤併用療法群と比較し頻度は高い傾向を認めた(81% vs 71%)。また免疫関連の毒性として,これらの試験のアテゾリズマブ併用療法群では甲状腺機能障害(15%),肝機能障害(10%)を主に認め,さらに皮疹,肺臓炎,大腸炎などが報告されており,免疫関連の毒性管理には注意が必要である。

     (前述の2試験ではSP142を用いたPD-L1免疫染色でPD-L1発現を評価している。)

  • a-2.扁平上皮癌

     PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しペムブロリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(KEYNOTE-407試験)が行われた30)。559例が1:1でランダム化され,主要評価項目であるOSは,HR 0.71(17.1カ月vs 11.6カ月,95%CI:0.58-0.88),PFSはHR 0.57(8.0カ月vs 5.1カ月, 95%CI:0.47-0.69)であり,CBDCA+PTX療法もしくはCBDCA+nab-PTX療法に対するペムブロリズマブの上乗せはPFSとOSを有意に延長することが示された。PD-L1発現別のサブグループ解析においても,PD-L1 TPS 1以上のPFSはHR 0.50(95%CI:0.39-0.63),OSはHR 0.67(95%CI:0.51-0.87),PD-L1 TPS 1%未満のPFSはHR 0.67(95%CI:0.49-0.91),OSはHR 0.79(95%CI:0.56-1.11)と,いずれの集団においても良好な傾向がみられた31)。主な毒性は,ペムブロリズマブ併用療法群で貧血,食思不振,好中球減少,悪心などであり,Grade 3以上の毒性はプラチナ製剤併用療法群と比較し頻度は同等であった(74.1% vs 69.6%)。ただし,治療関連死亡はペムブロリズマブ併用療法群で高い傾向を認めた(4.3% vs 1.8%)。また,同試験においてペムブロリズマブ併用療法群でプラチナ製剤併用療法群に比べて,QOLが維持されることが示された32)

     75歳以上の症例においては,前述の主な第Ⅲ相試験においてある一定数が登録されているが,高齢者に限った安全性のデータは示されていないため,これらの併用療法の投与には慎重を期すべきである。

     以上より,PD-L1 TPS 50%未満,もしくは不明のⅣ期非小細胞肺癌(ドライバー遺伝子変異/転座陰性),PS 0-1症例に対してプラチナ製剤併用療法にPD-1/PD-L1阻害薬を併用した治療を行うよう勧められる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
92%
(24/26)
8%
(2/26)
0% 0% 0%
  •  なお,プラチナ製剤併用療法にPD-1/PD-L1阻害薬を併用した治療のレジメンの詳細については項末を参照のこと。

  • b.EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子のない,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,ニボルマブ+イピリムマブにプラチナ製剤併用療法(2サイクル導入療法)を併用した治療とプラチナ製剤併用療法を比較する第Ⅲ相試験(CheckMate9LA試験)が行われた33)。主要評価項目であるOSは,HR 0.66(15.6カ月vs 10.9カ月,95%CI:0.55-0.80)であり,ニボルマブ+イピリムマブ+プラチナ製剤併用療法はプラチナ製剤併用療法に対しOSを有意に延長することが示された。PFSは,HR 0.68(6.7カ月vs 5.0カ月,95%CI:0.57-0.82),ORRは,38%vs 25%であった。また,PD-L1 TPS 1~49%と1%未満の各サブグループでのニボルマブ+イピリムマブ+プラチナ製剤併用療法群とプラチナ製剤併用療法群の比較解析において,OSはそれぞれHR 0.61(15.4カ月vs 10.4カ月,95%CI:0.44-0.84)とHR 0.62(16.8カ月vs 9.8カ月,95%CI:0.45-0.85)であった。年齢別のサブグループも報告されており,65歳未満,65~75歳,75歳以上のOS-HRは,それぞれ0.61(95%CI:0.47-0.80),0.62(95%CI:0.46-0.85),1.21(95%CI:0.69-2.12)であった。Grade 3以上の毒性の頻度は,ニボルマブ+イピリムマブ+プラチナ製剤併用療法群で高い傾向にあった(47%vs 38%)。また,ニボルマブ+イピリムマブ+プラチナ製剤併用療法群では血液毒性の頻度が低い一方で,内分泌障害,肺臓炎,皮疹,胃腸障害などの免疫関連の毒性の増加が報告されており,それらの毒性管理には注意が必要である。

     以上より,PD-L1 TPS 50%未満,もしくは不明のⅣ期非小細胞肺癌(ドライバー遺伝子変異/転座陰性),PS 0-1症例に対してニボルマブ+イピリムマブにプラチナ製剤併用療法を併用した治療を行うよう勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
58%
(15/26)
42%
(11/26)
0% 0% 0%
  • c.プラチナ製剤併用療法に対し免疫チェックポイント阻害薬を併用した治療を評価した5つの第Ⅲ相試験26)28)~30)33)では,適格基準としてPS 0-1を満たす患者のみが登録されており,PS 2のⅣ期非小細胞肺癌の一次治療でプラチナ製剤併用療法+免疫チェックポイント阻害薬を投与した際の臨床成績および安全性は不明である。また,PS 2に対しては細胞傷害性抗癌薬の毒性も懸念されており,さらに免疫チェックポイント阻害薬を併用する治療法は安全性において看過できない可能性がある。

     以上より,PS 2のPD-L1 TPS 50%未満,もしくは不明のⅣ期非小細胞肺癌に対し一次治療においてプラチナ製剤併用療法に免疫チェックポイント阻害薬を併用した治療を推奨するだけの根拠が明確ではなく,推奨度決定不能とした。そのため,蓄積されたエビデンスがある細胞傷害性抗癌薬を中心とした治療(CQ70)が推奨される。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 74%
(20/27)
22%
(6/27)
4%
(1/27)

CQ72.

ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1 TPS 50%未満,PS 0-1に対する一次治療において免疫チェックポイント阻害薬は勧められるか?

推 奨
  • a.
  • PD-L1 TPS 1~49%に対して,ペムブロリズマブ単剤療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:89%〕

  • b.
  • PD-L1 TPS 1~49%に対して,ニボルマブ+イピリムマブ併用療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:67%〕

  • c.
  • PD-L1 TPS 1%未満に対して,ニボルマブ+イピリムマブ併用療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:70%〕

CQ71における推奨と併せて検討すること。

解 説
  • a.EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子のない,PD-L1 TPS 1%以上のPS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,ペムブロリズマブ単剤療法とプラチナ製剤併用療法を比較する第Ⅲ相試験(KEYNOTE-042試験)が行われた34)。探索的評価項目であるPD-L1 TPS 1~49%のサブグループ解析において,OSはHR 0.92(13.4カ月vs 12.1カ月,95%CI:0.77-1.11)であり,その生存曲線はクロスしていた。また,PD-L1 TPS 1~49%のPFSは報告されていない。毒性においては前述するKEYNOTE-024試験の有害事象と同様であり,これらの毒性管理には注意が必要である。

     なお75歳以上の症例においては,前述する試験のみのサブグループ解析や前向きなデータともに報告はなく,有効性に関しては明らかになっていない。

     以上より,PD-L1 TPS 1~49%のⅣ期非小細胞肺癌(ドライバー遺伝子変異/転座陰性),PS 0-1症例に対する治療法を検討する際には,プラチナ製剤併用療法に免疫チェックポイント阻害薬を併用した治療が優先されるが,益と害のバランスを鑑みてペムブロリズマブ単剤療法を考慮してもよい。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
4%
(1/27)
89%
(24/27)
4%
(1/27)
4%
(1/27)
0%
  • b.EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子のないPD-L1 TPS 1%以上,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,ニボルマブ+イピリムマブ併用療法,ニボルマブ単剤療法とプラチナ製剤併用療法を3群比較する第Ⅲ相試験(CheckMate227Part 1試験)が行われた35)。PD-L1 TPS 1~49%のサブグループ解析において,OSはHR 0.94(15.1カ月vs 15.1カ月,95%CI:0.75-1.18)であった。なお,PD-L1 TPS 1~49%のORRやPFSは報告されていない。Grade 3以上の毒性は,ニボルマブ+イピリムマブ併用療法群とプラチナ製剤併用療法群において頻度は同程度であった(32.8% vs 36.0%)。一方,ニボルマブ+イピリムマブ併用療法群で内分泌障害,肺臓炎,皮疹,胃腸障害などの免疫関連の毒性が報告されており,それらの毒性管理には注意が必要である。

     なお75歳以上の症例においては,前述する試験のみのサブグループ解析や前向きなデータともに報告はなく有効性に関しては明らかになっていない。

     以上より,PD-L1 TPS 1~49%のⅣ期非小細胞肺癌(ドライバー遺伝子変異/転座陰性),PS 0-1症例に対する治療法を検討する際には,プラチナ製剤併用療法に免疫チェックポイント阻害薬を併用した治療が優先されるが,益と害を鑑みてニボルマブ+イピリムマブ併用療法を考慮してもよい。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者1名を含む)/実施年度:2020年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
7%
(2/27)
67%
(18/27)
22%
(6/27)
4%
(1/27)
0%
  • c.EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子のないPD-L1 TPS 1%以上, PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,ニボルマブ+イピリムマブ併用療法,ニボルマブ単剤療法とプラチナ製剤併用療法を3群比較する第Ⅲ相試験(CheckMate227Part1試験)が行われた35)。本試験では,探索的検討としてPD-L1 TPS 1%未満の症例においてニボルマブ+イピリムマブ併用療法,プラチナ製剤併用療法+ニボルマブ療法とプラチナ製剤併用療法の3群比較する検討も同時に行われた。PD-L1 TPS 1%未満におけるニボルマブ+イピリムマブ併用療法群とプラチナ製剤併用療法群の比較において,OSはHR 0.62(17.2カ月vs 12.2カ月,95%CI:0.48-0.78),PFSはHR 0.75(5.1カ月vs 4.7カ月,95%CI:0.59-0.96)であり,ニボルマブ+イピリムマブ併用療法はプラチナ製剤併用療法に対しPFS,OSを延長することが示唆された。また,ORRは27.3% vs 23.1%であった。Grade 3以上の毒性の頻度はどちらも同程度であった(27.0% vs 35.0%)。

     以上より,PD-L1 TPS 1%未満のⅣ期非小細胞肺癌(ドライバー遺伝子変異/転座陰性),PS 0-1症例に対する治療法を検討する際には,プラチナ製剤併用療法に免疫チェックポイント阻害薬を併用した治療が優先されるが,益と害を鑑みてニボルマブ+イピリムマブ併用療法を考慮してもよい。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者1名を含む)/実施年度:2021年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
22%
(6/27)
70%
(19/27)
7%
(2/27)
0% 0%

CQ73.

プラチナ製剤併用療法を受ける場合の推奨される投与期間は?

推 奨
プラチナ製剤併用療法のプラチナ製剤投与期間を6サイクル以下とするよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕

解 説

 第三世代細胞傷害性抗癌薬とプラチナ製剤との併用期間について,3サイクルもしくは4サイクルを6サイクルと比較した試験によると,いずれにおいても1年生存率やOSは同等で毒性は前者が軽いと報告された36)37)。前述の2編の試験を含む,6サイクルとそれ以下のサイクルを比較した試験の個票データを利用したメタアナリシスでは,6サイクル群で有意なPFSの延長を認めたがOSは同等であった38)

 一方,近年行われた第Ⅲ相試験では,一次治療におけるプラチナ製剤の投与サイクル数を4もしくは6サイクルと規定しているものがほとんどであり,CDDP+PEM療法とCDDP+GEM療法を比較した第Ⅲ相試験(JMDB試験)では,プラチナ製剤併用療法の投与中央値はどちらも5サイクルであった4)

 以上より,プラチナ製剤併用療法の投与期間は4~6サイクルとするよう勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。治療効果および毒性の観点から,6サイクルを超えるプラチナ製剤の投与は推奨されない。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(26/26)
0% 0% 0% 0%

CQ74.

プラチナ製剤併用療法を受ける場合にベバシズマブの上乗せは勧められるか?

推 奨
  • a.
  • ベバシズマブの適応となる75歳未満,PS 0-1症例に対して,プラチナ製剤併用療法にベバシズマブを併用した治療を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:A,合意率:73%〕

  • b.
  • 75歳以上の症例に対して,ベバシズマブを併用した治療を行わないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:96%〕

  • c.
  • PS 2症例に対して,ベバシズマブを併用した治療を行わないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:D,合意率:92%〕

※ベバシズマブは扁平上皮癌への投与は行わない。

解 説
  • a.メタアナリシスでは,プラチナ製剤併用療法にベバシズマブを追加することでORRの上昇,PFSの延長が示されており,OSについても延長が認められたとする報告がある39)40)。一方で,ベバシズマブの併用でGrade 3以上の毒性(蛋白尿,高血圧,出血性イベント,好中球減少,発熱性好中球減少,治療関連死)の有意な増加が報告されている39)~41)

     出血リスクに関しては,扁平上皮癌や空洞を有する症例,大血管への浸潤や隣接を認めるもの,その他,喀血,コントロール不能な高血圧,重篤な大血管病変や消化管における活動性出血の既往があるものなどが高リスク群と考えられており,ベバシズマブの投与に際してはその適応を十分に検討する必要がある41)

     CBDCA+PTX療法にベバシズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(ECOG4599試験)では,ベバシズマブ併用療法群でORRの上昇,PFSの有意な延長(6.2カ月vs 4.5カ月,HR 0.66,95%CI:0.57-0.77,P<0.001)ならびにOSの有意な延長(12.3カ月vs 10.3カ月,HR 0.79,95%CI:0.67-0.92,P=0.003)を認めた42)。一方,CDDP+GEM療法にベバシズマブを追加した第Ⅲ相試験(AVAiL試験)においては,PFSは有意に延長したがOSでは有意な延長を認めなかった43)。本邦ではCBDCA+PTX療法にベバシズマブを追加するランダム化第Ⅱ相試験(JO19907試験)が行われ,併用群においてORRの上昇(60.7% vs 31.0%,P=0.0013),PFSの延長(6.9カ月vs 5.9カ月,HR 0.61,95%CI:0.42-0.89,P=0.0090)を認め,新たな毒性を認めなかったが,OSについては有意な延長を認めなかった(22.8カ月vs 23.4カ月,HR 0.99,95%CI:0.65-1.50,P=0.9526)44)。中国において同じレジメンを比較した第Ⅲ相試験(BEYOND試験)では,ベバシズマブを一次治療以後も継続することが可能なデザインであったが,PFSの有意な延長(9.2カ月vs 6.5カ月,HR 0.40,95%CI:0.29-0.54,P<0.001)と,OSの有意な延長(24.3カ月vs 17.7カ月,HR 0.68,95%CI:0.50-0.93,P=0.0154)が認められた45)

     以上より,ベバシズマブの適応となる75歳未満,PS 0-1症例に対してプラチナ製剤併用療法を用いる際にはベバシズマブを追加投与することが勧められる。エビデンスの強さはA,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
27%
(7/26)
73%
(19/26)
0% 0% 0%

 ベバシズマブの投与については,その薬剤の特性からプラチナ製剤併用療法の終了後,病勢進行もしくは毒性中止まで投与を継続する方法が一般的である42)~45)

  • b.75歳以上

     高齢者におけるプラチナ製剤併用療法+ベバシズマブについて,ECOG4599試験におけるサブグループ解析で70歳以上の高齢者では治療効果の上乗せは認められず,若年に比してGrade 3以上の好中球減少,出血,蛋白尿が多かったとされている46)。その後に報告されたECOG4599試験とPointBreak試験を統合したサブグループ解析では,OSおよびPFSにおいて75歳以上で特にベバシズマブの上乗せ効果に乏しい傾向がみられた47)。米国におけるベバシズマブ併用療法の後方視的研究(ARIES試験)では,65歳未満と65歳以上,および75歳未満と75歳以上のサブグループ解析でどちらも有効性は同等であったが,毒性の面において高齢者群でGrade 3以上の動脈血栓塞栓症が増える傾向にあり,75歳以上ではさらに高かった(65歳未満1.5%,65歳以上2.9%,75歳以上3.5%)48)。また,欧州を中心に施行されたベバシズマブ併用療法のコホート研究(SAiL試験)では,70歳未満と70歳以上で有効性は同等であったが,高齢者群でGrade 3以上の出血の有害事象が増える傾向がみられた(70歳未満3.5%,70歳以上5.3%)49)。ただし,後者に示す2試験はいずれも非ランダム化試験でありエビデンスは低い。

     本邦においては75歳以上の高齢者におけるベバシズマブ併用療法の十分なデータはなく,有効性や安全性は確認されていない。

     以上より,高齢者に対してベバシズマブを併用した治療を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではなく,現時点では行わないよう勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行わないよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 4%
(1/26)
96%
(25/26)
0%
  • c.PS 2

     ベバシズマブ併用療法の臨床試験ならびに観察研究においてその大半がPS 0-1であり,PS 2に対するベバシズマブの安全性や有効性に関してのデータは少ない48)49)。よって,PS 2に対してベバシズマブを併用した治療を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。ベバシズマブを併用することにより毒性の頻度は有意に増加することから,益と害のバランスを考慮し現時点では行わないよう勧められる。エビデンスの強さはD,ただし総合的評価では行わないよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 4%
(1/26)
92%
(24/26)
4%
(1/26)

※CBDCA+PTX+ベバシズマブ療法の第Ⅱ相試験においてGrade 3以上の肺出血が9.1%に認められ,扁平上皮癌では4/13例(31%)で重篤な肺出血をきたした50)。その後,出血リスクに関する検討が行われ,扁平上皮癌や空洞を有する症例,大血管への浸潤や隣接を認めるもの,その他,喀血・コントロール不能な高血圧,重篤な大血管病変や消化管における活動性出血の既往があるものなどが高リスク群と考えられた41)。以上より,ベバシズマブは扁平上皮癌に対して用いない。

CQ75.

プラチナ製剤併用療法を受ける場合にネシツムマブの上乗せは勧められるか?

推 奨
扁平上皮癌のPS 0-1症例に対して,シスプラチン+ゲムシタビンにネシツムマブを併用した治療を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:96%〕

解 説

 PS 0-2のⅣ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法(CDDP+GEM療法)に対しネシツムマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(SQUIRE試験)が行われた51)。主要評価項目であるOSはHR 0.84(11.5カ月vs 9.9カ月,95%CI:0.74-0.96,P=0.01)と,プラチナ製剤併用療法に対するネシツムマブの上乗せはOSを有意に延長することが示された。またPFSにおいても,HR 0.85(5.7カ月vs 5.5カ月,95%CI:0.74-0.98,P=0.006)と,有意に延長することが示された。さらに,PS 0-1のサブグループ解析においても,OSはHR 0.85(95%CI:0.72-1.01),PFSはHR 0.86(95%CI:0.73-1.02)と良好な傾向がみられた。また,PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌)の日本人患者を対象として,プラチナ製剤併用療法(CDDP+GEM療法)に対しネシツムマブを追加することの有効性を評価したランダム化第Ⅱ相試験(JFCM試験)が行われた52)。さらにOSおよびPFSは,それぞれHR 0.66(14.9カ月vs 10.8カ月,95%CI:0.47-0.93,P=0.0161),HR 0.56(4.2カ月vs 4.0カ月,95%CI:0.41-0.78,P=0.0004)であり,ネシツムマブの上乗せによりOS,PFSを有意に延長させることが示された。ORRは,ネシツムマブ併用療法群で有意に高かった(51.1% vs 20.9%)。

 75歳以上の症例においては,前述する2つの試験51)52)においてある一定数が登録されているが,サブグループ解析の成績は示されていない。PS 2症例においては,SQUIRE試験のサブグループ解析でOSはHR 0.78(95%CI:0.51-1.21),PFSはHR 0.79(95%CI:0.50-1.24)と全体集団に劣らない傾向が示されている一方で,PS 2の日本人症例に対する投与経験はなく,有効性および安全性は不明である。

 主な毒性は,ネシツムマブ併用療法群で骨髄抑制,食思不振,倦怠感に加えてネシツムマブに特徴的な皮疹,低マグネシウム血症などであり,Grade 3~4の毒性が併用療法群で高い傾向であった。本邦で行われた第Ⅱ相試験では,発熱性好中球減少症の頻度がプラチナ製剤群と比較し高かった(12% vs 3%)。

 以上より,Ⅳ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌),PS 0-1症例に対してプラチナ製剤併用療法にネシツムマブを併用した治療を行うことが勧められる。ただし,プラチナ製剤併用療法と免疫チェックポイント阻害薬を併用した治療とを比較したデータはなく,プラチナ製剤併用療法+ネシツムマブ療法がプラチナ製剤併用療法+免疫チェックポイント阻害薬療法より優れているかどうかは明らかでない。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者2名を含む)/実施年度:2019年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
4%
(1/28)
96%
(27/28)
0% 0% 0%

 ネシツムマブの投与については,前述した試験によるとプラチナ製剤併用療法の終了後,病勢進行もしくは毒性中止まで投与を継続する方法がとられている。また,プラチナ製剤併用療法+ネシツムマブ療法の治療レジメンは前述した試験で用いられたCDDP+GEM療法が推奨され,安全性の観点からそれ以外の細胞傷害性抗癌薬とネシツムマブを併用した治療は勧められない。詳細については,項末のレジメンを参照のこと。

CQ76.

プラチナ製剤併用療法を受ける場合に維持療法は勧められるか?

推 奨
非扁平上皮癌に対してプラチナ製剤+ペメトレキセド併用療法4サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な症例に対してペメトレキセドによる維持療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B,合意率:100%〕

解 説

 CDDP+PEM併用療法後のPEMを用いた維持療法の第Ⅲ相試験(PARAMOUNT試験)で,PFSの有意な延長(4.1カ月vs 2.8カ月,HR 0.62,95%CI:0.50-0.73,P<0.0001),OSの有意な延長(13.9カ月vs 11.0カ月,HR 0.78,95%CI:0.64-0.96,P=0.0195)が示された53)。QOLの低下は認めず,維持療法群において毒性の増強はみられたものの許容範囲内であった。ベバシズマブの併用に関しては,CDDP+PEM+ベバシズマブ併用療法後にPEM+ベバシズマブ療法群とベバシズマブ単独療法群の第Ⅲ相試験(AVAPERL試験)が行われ,前者でPFSの有意な延長(7.4カ月vs 3.7カ月,HR 0.48,95%CI:0.44-0.75,P<0.0001)を認めたが,OSの有意な延長は認めなかった54)。また,本邦においてCBDCA+PEM+ベバシズマブ併用療法後のPEM+ベバシズマブ療法群とベバシズマブ単独療法群を比較する第Ⅲ相試験(COMPASS/WJOG5610L試験)が行われた。PFSは前者で有意に延長(5.7カ月vs 4.0カ月,HR 0.67,95%CI:0.57-0.79,P<0.001)を認めたが,主要評価項目であるOSの有意な延長は認めなかった55)

 以上より,プラチナ製剤+PEM併用療法4サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な症例に対するPEMの維持療法は行うよう勧められる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(26/26)
0% 0% 0% 0%

CQ77.

PS 3-4の患者(ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明,PD-L1発現は問わない)に薬物療法は勧められるか?

推 奨
薬物療法を行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:D,合意率:100%〕

解 説

 PS 3-4症例(ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明,PD-L1発現は問わない)に対する細胞傷害性抗癌薬を用いた治療は,一般に適応がない。PD-1/PD-L1阻害薬を用いた治療はPS良好例(PS 0-1)を中心に臨床試験が行われているため,PS不良例のエビデンスは乏しく,安全性も不明であることから細胞傷害性抗癌薬と同様にPS 3-4についてのPD-1/PD-L1阻害薬療法も推奨されない。エルロチニブ療法について,PS不良や合併症のため細胞傷害性抗癌薬の適応とならない進行非小細胞肺癌に対してエルロチニブ単剤療法と緩和治療の第Ⅲ相試験(TOPICAL試験)が行われた56)。患者背景として,年齢中央値77歳,PS 3が30%を占め,EGFR遺伝子変異については陰性,不明がそれぞれ52%,46%であった。組織型では,扁平上皮癌と非扁平上皮癌が各40%,60%含まれていた。この試験において,主要評価項目であるOSの延長は認められなかった(エルロチニブ単剤療法群3.7カ月vsプラセボ群3.6カ月,HR 0.94,95%CI:0.81-1.10,P=0.46)。

 以上より,PS 3-4の患者(ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明,PD-L1発現は問わない)に対する薬物療法は行わないよう推奨される。エビデンスの強さはD,ただし総合的評価では行わないよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 0% 0% 100%
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7-3-2.ドライバー遺伝子変異/転座陰性の二次治療以降

CQ78.

一次治療耐性または進行例,PS 0-2,免疫チェックポイント阻害薬未使用例に対する二次治療において薬物療法は勧められるか?

推 奨
  • a.
  • PD-1阻害薬またはPD-L1阻害薬の単剤療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕

  • b.
  • 細胞傷害性抗癌薬の治療を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:A,合意率:96%〕

※ペムブロリズマブの適応症は,(腫瘍細胞上の)PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に限られる。

※PEMは非扁平上皮癌への投与が推奨される。

解 説
  • a.ドライバー遺伝子変異/転座陰性例の二次治療では,複数の第Ⅲ相試験においてDTX単剤療法と比較してPD-1/PD-L1阻害薬単剤療法が有意にOSを延長することが証明されている。いずれの試験もDTX単剤療法を対照としており,ニボルマブ単剤療法およびアテゾリズマブ単剤療法はPD-L1の発現を問わず行われ1)~4),ペムブロリズマブ単剤療法はPD-L1 TPS 1%以上の非小細胞肺癌を対象として行われた5)

  • 〈ニボルマブ単剤療法〉

     ニボルマブ単剤療法はDTX単剤療法との比較において,第Ⅲ相試験が3編報告されている。

     プラチナ製剤併用療法の治療歴を有する進行扁平上皮癌を対象としたCheckMate017試験では,ニボルマブ単剤療法は主要評価項目であるOSにおいてHR 0.59(9.2カ月vs 6.0カ月,95%CI:0.44-0.79,P<0.001)とDTX単剤療法と比較し有意な延長を示し,PD-L1発現率に基づくサブグループ解析でも,PD-L1の発現によらずニボルマブ単剤療法の有効性が示されている1)

     プラチナ製剤併用療法の治療歴を有する進行非扁平上皮癌を対象としたCheckMate057試験でも,主要評価項目であるOSにおいてHR 0.73(12.2カ月vs 9.4カ月,95%CI:0.59-0.79,P=0.002)とDTX単剤療法と比較しニボルマブ単剤療法の有意な延長が示されている2)。特にPD-L1 TPS 1%以上のサブグループにおいてはOSがHR 0.58(95%CI:0.43-0.79),PFSがHR 0.70(95%CI:0.53-0.94)と有意にOSを延長することが示されている。さらに同試験におけるQOLの比較において,ニボルマブ単剤療法群がDTX単剤療法群と比較して有意に肺癌症状の悪化を遅らせることが示された6)

     なお,CheckMate017/057試験の統合解析においてニボルマブ単剤療法群の4年生存率が14%と報告されている7)

     また,海外で行われたプラチナ製剤併用療法の治療歴を有する進行非小細胞肺癌を対象としたCheckMate078試験でも,主要評価項目であるOSにおいてHR 0.68(12.0カ月vs 9.6カ月,95%CI:0.52-0.90,P=0.0006)とDTX単剤療法と比較しニボルマブ単剤療法の有意な延長が示されている3)

     前述の3試験における主な毒性は,ニボルマブ単剤療法群で倦怠感や食欲低下,DTX単剤療法群で好中球減少,倦怠感,脱毛などであり,Grade 3以上の毒性はニボルマブ単剤療法群で有意に少なかった。一方,ニボルマブ単剤療法群で肺臓炎,甲状腺機能障害,大腸炎,肝機能障害,皮疹,Ⅰ型糖尿病などの免疫関連の毒性が報告されており,免疫関連の毒性管理には注意が必要である。

  • 〈ペムブロリズマブ単剤療法〉

     プラチナ併用療法を含む治療歴を有するPD-L1 TPS 1%以上の進行非小細胞肺癌を対象とした第Ⅱ-Ⅲ相試験(KEYNOTE-010試験)では,DTX単剤療法に対するペムブロリズマブ単剤療法(2mg/kg投与群と10mg/kg投与群の2群統合)のOSはHR 0.67(95%CI:0.56-0.80),PFSはHR 0.85(95%CI:0.73-0.98)であり,生存期間の延長効果が示されている5)。Grade 3以上の毒性はペムブロリズマブ単剤療法2mg/kg投与群で13%,10mg/kg投与群で16%,DTX単剤療法群で35%とペムブロリズマブ単剤療法群で頻度が低く,ペムブロリズマブ単剤療法の免疫関連の毒性として甲状腺機能障害,肺臓炎,皮膚障害などが認められた。また,同試験におけるQOL解析においてペムブロリズマブ単剤療法群がDTX単剤療法群と比較して有意に患者のQOLと肺癌関連症状を改善させることが示された8)

     なお,PD-L1陽性の切除不能な進行・再発非小細胞肺癌に対する本邦におけるペムブロリズマブの投与量は,200mg/bodyの3週毎投与と規定されている。

  • 〈アテゾリズマブ単剤療法〉

     アテゾリズマブ単剤療法はプラチナ併用療法の治療歴を有する非小細胞肺癌を対象として,DTX単剤療法と比較したランダム化第Ⅱ相試験(POPLAR試験)と第Ⅲ相試験(OAK試験)がそれぞれ報告されている4)9)

     POPLAR試験では,主要評価項目であるOSはHR 0.73(12.6カ月vs 9.7カ月,95%CI:0.53-0.99,P=0.040)とアテゾリズマブ単剤療法がDTX単剤療法と比較し有意にOSを延長した結果が示されている9)。OAK試験においても,主要評価項目であるOSはHRが0.73(13.8カ月vs 9.6カ月,95%CI:0.62-0.87,P=0.0003)とアテゾリズマブ単剤療法がDTX単剤療法と比較し有意にOSを延長した4)。また,OAK試験におけるQOLの比較において,アテゾリズマブ単剤療法群がDTX単剤療法群と比較して有意に肺癌関連症状の悪化を遅らせることが示された10)

     OAK試験における主な毒性は,アテゾリズマブ単剤療法群で倦怠感や悪心,下痢などであり,Grade 3以上の毒性(治療関連)はアテゾリズマブ単剤療法群で15%,DTX単剤療法群で43%とアテゾリズマブ単剤療法群が少なかった。一方,アテゾリズマブ単剤療法群の免疫関連の毒性として肺臓炎,肝炎,大腸炎が報告されており,毒性による投与中止例は8%(DTX単剤療法群は19%)であった。

  •   上記の第Ⅲ相試験はいずれもPS 0-1の症例を対象として実施しており,PS 2の一次治療耐性または進行後のⅣ期非小細胞肺癌症例に対するPD-1/PD-L1阻害薬単剤療法の有用性は現時点で不明確であるが,安全性を中心とした報告は近年散見される。一次治療耐性または進行後のⅣ期非小細胞肺癌症例に対するニボルマブ単剤療法の前向き観察研究(CheckMate153試験)では,PS 2での使用例で全体集団と比較しGrade 3以上の毒性が増加しないことが示されている(12% vs 12%)11)。一方,海外で行われたPS 2の症例60例に対するペムブロリズマブ単剤療法の第Ⅱ相試験(PePS2試験)では,二次治療以降が36例(60%)含まれていた。登録された全体集団において,ペムブロリズマブ単剤の投与によって17例(28%)で治療延期ないしは治療中断を要する毒性が報告されている。既治療36例の生存効果は,PFS中央値 4.4カ月,OS中央値 10.4カ月であった12)。また,PS 2と高齢者を含んだ治療歴のある進行肺扁平上皮癌患者を対象としたニボルマブ単剤療法の第Ⅱ相試験(CheckMate171試験)の結果も報告されている13)。ニボルマブ単剤で治療を行った811例中103例がPS 2の患者であり,PS 2の患者は毒性の頻度は全体集団と変わらないものの,OS中央値は5.2カ月と全体集団(10.0カ月)に比べて予後は短い傾向であると報告されている。

     以上より,一次治療耐性または進行後,ドライバー遺伝子変異/転座陰性,免疫チェックポイント阻害薬未使用例のⅣ期非小細胞肺癌に対してはPD-1/PD-L1阻害薬単剤療法を行うよう推奨する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(23/23)
0% 0% 0% 0%
  • b.PD-1/PD-L1阻害薬単剤療法と細胞傷害性抗癌薬(DTX)単剤療法を比較した前述の5つのランダム化比較試験1)~5)9)において,一部の試験でPFSおよびOSの生存曲線が交差するなど,細胞傷害性抗癌薬単剤療法のほうが臨床的に有意義であった可能性のある症例が存在する。また,DTX単剤療法よりも生存延長効果に勝るDTX+ラムシルマブ併用療法とPD-1/PD-L1阻害薬単剤療法とを比較した臨床試験は存在しない。

     以上より,一次治療耐性または進行後,ドライバー遺伝子変異/転座陰性,免疫チェックポイント阻害薬未使用例のⅣ期非小細胞肺癌に対して細胞傷害性抗癌薬を用いた治療を行うよう提案する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 96%
(22/23)
4%
(1/23)
0% 0%

CQ79.

PS 0-2に対して二次治療以降で推奨される細胞傷害性抗癌薬は何か?

推 奨
ドセタキセル±ラムシルマブ療法,ペメトレキセド単剤療法,S-1単剤療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕

※PEMは非扁平上皮癌への投与に限定。

解 説
  • 〈ドセタキセル単剤療法〉

     プラチナ製剤を含む薬物療法無効または奏効後に再発した非小細胞肺癌患者を対象としたDTX単剤療法の第Ⅲ相試験が2編報告されている。1つはDTX単剤療法(100mg/m2 or 75mg/m2)vs VNR単剤療法 or IFM単剤療法の比較試験(TAX320試験)で,OSでは有意差を認めないもののDTX 75mg/m2療法群で対照群と比較してORR,26週PFS率,1年生存率の有意な改善を認めた14)。また,DTX単剤療法(100mg/m2 or 75mg/m2)と緩和治療の比較ではOS中央値と1年生存率は,DTX 75mg/m2療法群,緩和治療群でそれぞれ7.5カ月と37%,4.6カ月と19%で,DTX単剤療法群で有意に優れ(P=0.010,P=0.003),QOLの改善も認められた15)。いずれの試験においても,DTX 75mg/m2療法群が最も治療成績が優れており,プラチナ製剤を含む治療後の不応ないし再発例に対する非小細胞肺癌の薬物療法としてはDTX 75mg/m2療法の有用性が確立された。本邦における推奨用量は60mg/m2であるが,本邦で行われたこの用量における第Ⅱ相試験でORR 18.2%,OS中央値7.8カ月と上記2編の第Ⅲ相試験のDTX 75mg/m2療法と同等の効果を有する結果を報告した16)

  • 〈ドセタキセル+ラムシルマブ療法〉

     CQ80参照

  • 〈ペメトレキセド単剤療法〉

     Ⅳ期非小細胞肺癌の二次治療におけるPEM単剤療法とDTX単剤療法の第Ⅲ相試験(JMEI試験)が報告され,ORR,OS中央値はPEM単剤療法群で9.1%,8.3カ月,DTX単剤療法群で8.8%,7.9カ月であり,主要評価項目であるOSで非劣性は証明されなかったが,同等の効果(HR 0.99,95%CI:0.80-1.20,P=0.226)が報告された。毒性に関しては,Grade 3/4の好中球減少,発熱性好中球減少,全Gradeの脱毛の発現率がDTX単剤療法群で有意に高かった17)。同試験を組織学的に後方視的解析した結果,OSは非扁平上皮癌でそれぞれ9.3カ月と8.0カ月(HR 0.78,95%CI:0.61-1.00,P=0.047)と有意差を認めた。また,PFSにおいても非扁平上皮癌でそれぞれ3.1カ月と3.0カ月(HR 0.82,95%CI:0.66-1.02,P=0.076)と有意差を認めなかったが,治療効果はほぼ同等であった18)。一方,毒性に関しては,Grade 3以上の発熱性好中球減少(1.9% vs 12.7%),好中球減少(5.3% vs 40.2%),好中球減少に伴った感染(0.0% vs 3.3%)の発現頻度は有意に少なく,ALT上昇(1.9% vs 0.0%)の頻度は有意に高いと違いを認めたが,QOLに関しては差を認めなかった。

  • 〈S-1単剤療法〉

     プラチナ既治療のⅣ期非小細胞肺癌,PS 0-2の二次もしくは三次治療例を対象とし,S-1単剤療法とDTX単剤療法を比較する第Ⅲ相試験(EAST-LC試験)が本邦を含むアジアで行われた。主要評価項目であるOSは非劣性を示すことが目的であり,S-1単剤療法群で12.75カ月,DTX単剤療法群で12.52カ月(HR 0.945,95%CI:0.833-1.073)で,DTX単剤療法に対するS-1単剤療法の非劣性が示された。またPFSはS-1単剤療法群2.9カ月,DTX単剤療法群2.9カ月(HR 1.03,95%CI:0.91-1.17)で両群に差を認めず,ORRはS-1単剤療法群8.3%,DTX単剤療法群9.9%であった。毒性に関しては,発熱性好中球減少ならびにGrade 3以上の好中球減少の頻度はDTX群で高く(0.9% vs 13.6%,5.4% vs 47.7%),全Gradeの下痢と口腔粘膜障害の頻度はS-1群で高かったが(37.2% vs 18.2%,23.9% vs 14.5%),Grade 3以上の頻度は低く忍容性は良好であった19)

 以上より,一次治療耐性または進行後のⅣ期非小細胞肺癌症例に対してDTX±ラムシルマブ療法,S-1単剤療法,(非扁平上皮癌の場合)PEM単剤療法の投与を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
100%
(23/23)
0% 0% 0% 0%

CQ80.

二次治療でドセタキセルを用いる場合にラムシルマブの併用は推奨されるか?

推 奨
  • a.
  • ラムシルマブの適応となるPS 0-1症例に対して,ドセタキセルにラムシルマブを併用した治療を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B,合意率:74%〕

  • b.
  • 75歳以上の症例に対して,ドセタキセルにラムシルマブを併用した治療を行わないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:D,合意率:78%〕

  • c.
  • PS 2症例に対して,ドセタキセルにラムシルマブを併用した治療を行わないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:D,合意率:87%〕

解 説
  • a.プラチナ製剤併用療法後に進行したPS 0-1の進行非小細胞肺癌症例を対象とし,DTX+ラムシルマブ併用療法とDTX単剤療法を比較する第Ⅲ相試験(REVEL試験)が行われ,主要評価項目であるOSは,ラムシルマブ併用療法群で有意な延長を認めた(10.5カ月vs 9.1カ月,HR 0.86,95%CI:0.75-0.98,P=0.023)。また,ラムシルマブ併用療法群において,PFS(4.5カ月vs 3.0カ月,HR 0.76,95%CI:0.68-0.86,P<0.0001),ORR(23% vs 14%,P<0.0001)も有意に良好であった。毒性に関しては,ラムシルマブ併用療法群でGrade 3/4の好中球減少,発熱性好中球減少,全Gradeの血小板減少,口内炎がより高頻度であったが,Grade 3以上の高血圧は6%で出血性イベントの多くはGrade 1/2であった20)

     また本邦において,DTX+ラムシルマブ併用療法とDTX単剤療法のランダム化比較第Ⅱ相試験(JVCG試験)が行われ,ラムシルマブ併用療法群においてPFS(5.2カ月vs 4.2カ月,HR 0.83,95%CI:0.59-1.16),OS(15.2カ月vs 13.9カ月,HR 0.77,95%CI:0.56-1.32),ORR(28.9% vs 18.5%)ともに良好な結果が示された。毒性に関しては,ラムシルマブ併用療法群において発熱性好中球減少の頻度が高く(34% vs 19%),低アルブミン血症,血小板減少,口内炎,鼻出血,蛋白尿などもDTX単剤療法よりも高頻度であったが,ほとんどはGrade 1/2であった21)。ラムシルマブの投与においてもベバシズマブと同様に出血リスクには注意が必要であり,投与に際してはその適応を十分検討する必要がある。

     以上より,ラムシルマブは適応と考えられる症例においてDTXに併用した治療を行うよう勧められる。エビデンスの強さはB,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
26%
(6/23)
74%
(17/23)
0% 0% 0%
  • b.75歳以上

     前述の第Ⅲ相試験(REVEL試験)における75歳以上のサブグループは不明である。また,本邦において実施された第Ⅱ相試験(JVCG試験)でも75歳以上の症例は10例と少数であるため75歳以上の高齢者に対するラムシルマブ併用療法の安全性や有効性に関してのデータは十分ではない。一方,本ガイドラインの一次治療では,エビデンスの質は低いものの骨髄抑制などの毒性増加への懸念から,75歳以上に対してプラチナ製剤併用療法にラムシルマブと同じ血管新生阻害薬であるベバシズマブを併用した治療を勧める根拠が乏しく,行わないよう提案されている(CQ74参照)。ラムシルマブ併用療法についても若年者を中心とした本邦の第Ⅱ相試験において発熱性好中球減少をはじめとした毒性の増強が懸念されることを考えると,現時点で高齢者にラムシルマブを併用した治療を行う根拠は明確ではない。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行わないよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 9%
(2/23)
9%
(2/23)
78%
(18/23)
4%
(1/23)
  • c.PS 2

     前述のREVEL試験,JVCG試験においては対象症例がPS 0-1であり20)21),PS 2に対するラムシルマブ併用療法の安全性や有効性に関してのデータはない。よって,PS 2に対するラムシルマブを併用した治療は行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。PS 0-1を対象とした試験では,ラムシルマブ併用療法群で発熱性好中球減少の発現頻度が高く,PS不良例においてはラムシルマブの併用療法により毒性の悪化が懸念される。

     以上より,益と害のバランスを考慮し現時点では行わないよう勧められる。エビデンスの強さはD,ただし総合的評価では行わないよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法及び集学的治療小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度:2018年
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
推奨度決定不能 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 9%
(2/23)
87%
(20/23)
4%
(1/23)
引用文献
1)
Brahmer J, Reckamp KL, Baas P, et al. Nivolumab versus docetaxel in advanced squamous-cell non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2015; 373(2): 123-35.
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3)
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レジメン
Ⅳ期非小細胞肺癌

ドライバー遺伝子変異/転座陽性

ドライバー遺伝子に対する標的療法
EGFR遺伝子変異陽性例 ゲフィチニブ 250mg/日 1日1回
エルロチニブ 150mg/日 1日1回
アファチニブ 40mg/日 1日1回
オシメルチニブ 80mg/日 1日1回
ダコミチニブ 45mg/日 1日1回
ALK融合遺伝子陽性例 クリゾチニブ 500mg/日 1日2回
アレクチニブ 600mg/日 1日2回
セリチニブ 450mg/日 1日1回
ロルラチニブ 100mg/日 1日1回
ブリグチニブ 90mg/日,day 1-7
180mg/日,day 8~
1日1回
ROS1融合遺伝子陽性例 クリゾチニブ 500mg/日 1日2回
エヌトレクチニブ 600mg/日 1日1回
BRAF遺伝子V600E変異陽性例 ダブラフェニブ 300mg/日 1日2回
トラメチニブ 2mg/日 1日1回
MET遺伝子変異陽性例 テポチニブ 500mg/日 1日1回
カプマチニブ 800mg/日 1日2回
NTRK融合遺伝子陽性例 エヌトレクチニブ 600mg/日 1日1回
ラロトレクチニブ 200mg/日 1日2回
RET融合遺伝子陽性例 セルペルカチニブ 320mg/日 1日2回
KRAS遺伝子G12C変異陽性例 ソトラシブ 960mg/日 1日1回
併用レジメン(EGFR遺伝子変異陽性例のみ)
ベバシズマブ併用 エルロチニブ 150mg/日 1日1回
ベバシズマブ 15mg/kg,day 1 3週毎
ラムシルマブ併用 エルロチニブ 150mg/日 1日1回
ラムシルマブ 10mg/kg,day 1 2週毎
細胞傷害性抗癌薬併用 ゲフィチニブ 250mg/日 1日1回
CBDCA (AUC=5),day 1 3~4週毎
PEM 500mg/m2,day 1
・4~6サイクル終了後,増悪を認めなければゲフィチニブ+PEM併用の維持療法を考慮する

*PEMの投与に際しては下記ビタミンの補充を行う

①葉酸:投与の7日以上前から葉酸として1日1回0.5mgを連日経口投与する。なお,PEMの投与を中止または終了する場合には,PEM最終投与日から22日目まで可能なかぎり葉酸を投与する。

②ビタミンB12:初回投与の少なくとも7日前に,ビタミンB12として1回1mgを筋肉内投与する。その後,PEM投与期間中および投与中止後22日目まで9週毎(3サイクル毎)に1回投与する。

ドライバー遺伝子変異/転座陰性

プラチナ製剤と第三世代以降の細胞傷害性抗癌薬のレジメン
シスプラチンレジメン
CDDP+PEM療法 CDDP 75mg/m2,day 1 3週毎
PEM 500mg/m2,day 1

・4サイクル終了後,増悪を認めなければPEM単剤の維持療法を考慮する

CDDP+DTX療法 CDDP 80mg/m2,day 1 3週毎
DTX 60mg/m2,day 1
CDDP+GEM療法 CDDP 80mg/m2,day 1 3週毎
GEM 1000mg/m2,day 1,8
CDDP+VNR療法 CDDP 80mg/m2,day 1 3週毎
VNR 25mg/m2,day 1,8
CDDP+CPT-11療法 CDDP 80mg/m2,day 1 4週毎
CPT-11 60mg/m2,day 1,8,15
CDDP+S-1療法 CDDP 60mg/m2,day 8 4~5週毎
S-1 40mg/m2,1日2回,day 1-21

※増悪しなければ上記を6サイクル以内で繰り返す

*PEMの投与に際しては下記ビタミンの補充を行う

①葉酸:投与の7日以上前から葉酸として1日1回0.5mgを連日経口投与する。なお,PEMの投与を中止または終了する場合には,PEM最終投与日から22日目まで可能なかぎり葉酸を投与する。

②ビタミンB12:初回投与の少なくとも7日前に,ビタミンB12として1回1mgを筋肉内投与する。その後,PEM投与期間中および投与中止後22日目まで9週毎(3サイクル毎)に1回投与する。

カルボプラチンレジメン
CBDCA+PTX療法 CBDCA (AUC=6),day 1 3週毎
PTX 200mg/m2,day 1

・PTX投与30分前までにデキサメタゾン,H1,H2 blockerの前投薬を行う

CBDCA+GEM療法 CBDCA (AUC=5),day 1 3週毎
GEM 1000mg/m2,day 1,8
CBDCA+S-1療法 CBDCA (AUC=5),day 1 3週毎
S-1 40mg/m2,1日2回,day 1-14
CBDCA+nab-PTX療法 CBDCA (AUC=6),day 1 3週毎
nab-PTX 100mg/m2,day 1,8,15
CBDCA+PEM療法 CBDCA (AUC=5-6),day 1 3週毎
PEM 500mg/m2,day 1

・4サイクル終了後,増悪を認めなければPEM単剤の維持療法を考慮する

※増悪しなければ上記を6サイクル以内で繰り返す

*PEMの投与に際しては下記ビタミンの補充を行う

①葉酸:投与の7日以上前から葉酸として1日1回0.5mgを連日経口投与する。なお,PEMの投与を中止または終了する場合には,PEM最終投与日から22日目まで可能なかぎり葉酸を投与する。

②ビタミンB12:初回投与の少なくとも7日前に,ビタミンB12として1回1mgを筋肉内投与する。その後,PEM投与期間中および投与中止後22日目まで9週毎(3サイクル毎)に1回投与する。

ネダプラチンレジメン
NDP+DTX療法 NDP/CDGP 100mg/m2,day 1 3週毎
DTX 60mg/m2,day 1

※増悪しなければ上記を6サイクル以内で繰り返す

細胞傷害性抗癌薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用レジメン
ペムブロリズマブ併用 (非扁平上皮癌のみ) 3週毎
CDDP 75mg/m2,day 1
もしくはCBDCA もしくは(AUC=5),day 1
PEM 500mg/m2,day 1
ペムブロリズマブ 200mg/body,day 1

・4サイクル終了後,増悪を認めなければPEM+ペムブロリズマブ併用の維持療法を考慮する

(扁平上皮癌のみ) 3週毎
CBDCA (AUC=6),day 1
PTX 200mg/m2,day 1
もしくはnab-PTX もしくは100mg/m2,day 1,8,15
ペムブロリズマブ 200mg/body,day 1

・4サイクル終了後,増悪を認めなければペムブロリズマブ単剤の維持療法を考慮する

・PTXを含むレジメンの場合,PTX投与30分前までにデキサメタゾン,H1,H2 blockerの前投薬を行う

アテゾリズマブ併用
(非扁平上皮癌のみ)
CBDCA (AUC=6),day 1 3週毎
PTX 200mg/m2,day 1
ベバシズマブ 15mg/kg,day 1
アテゾリズマブ 1200mg/body,day 1

・4~6サイクル終了後,増悪を認めなければベバシズマブ+アテゾリズマブ併用の維持療法を考慮する

・PTX投与30分前までにデキサメタゾン,H1,H2 blockerの前投薬を行う

CBDCA (AUC=6),day 1 3週毎
nab-PTX 100mg/m2,day 1,8,15
アテゾリズマブ 1200mg/body,day 1

・4サイクル終了後,増悪を認めなければアテゾリズマブ単剤の維持療法を考慮する

ニボルマブ+イピリムマブ併用 (非扁平上皮癌のみ) 6週毎
CDDP 75mg/m2,day 1,22
もしくはCBDCA もしくは(AUC=5),day 1,22
PEM 500mg/m2,day 1,22
ニボルマブ 360mg/body,day 1,22
イピリムマブ 1mg/kg,day 1

・2サイクル(6週間投与)終了後,増悪を認めなければニボルマブ+イピリムマブ併用の維持療法を考慮する

(扁平上皮癌のみ)
CBDCA (AUC=6),day 1,22
PTX 200mg/m2,day 1,22
ニボルマブ 360mg/body,day 1,22
イピリムマブ 1mg/kg,day 1

・2サイクル(6週間投与)終了後,増悪を認めなければニボルマブ+イピリムマブ併用の維持療法を考慮する

*PEMの投与に際しては下記ビタミンの補充を行う

①葉酸:投与の7日以上前から葉酸として1日1回0.5mgを連日経口投与する。なお,PEMの投与を中止または終了する場合には,PEM最終投与日から22日目まで可能なかぎり葉酸を投与する。

②ビタミンB12:初回投与の少なくとも7日前に,ビタミンB12として1回1mgを筋肉内投与する。その後,PEM投与期間中および投与中止後22日目まで9週毎(3サイクル毎)に1回投与する。

細胞傷害性抗癌薬と分子標的治療薬併用レジメン
ベバシズマブ併用 CBDCA (AUC=6),day 1 3週毎
PTX 200mg/m2,day 1
ベバシズマブ 15mg/kg,day 1

・PTX投与30分前までにデキサメタゾン,H1,H2 blockerの前投薬を行う

・増悪しなければ上記を6サイクル以内で繰り返す

・プラチナ製剤併用療法の終了後,病勢増悪もしくは毒性中止までベバシズマブの単剤投与を継続する

ラムシルマブ併用 DTX 60mg/m2,day 1 3週毎
ラムシルマブ 10mg/kg,day 1
ネシツムマブ併用 CDDP 75mg/m2,day 1 3週毎
GEM 1250mg/m2,day 1,8
ネシツムマブ 800mg/body,day 1,8

・4サイクル終了後,増悪を認めなければネシツムマブの単剤投与を継続する

免疫チェックポイント阻害薬併用レジメン
ニボルマブ+イピリムマブ療法 ニボルマブ 240mg/body,day 1 2週毎
イピリムマブ 1mg/kg,day 1 6週毎
単剤療法
免疫チェックポイント阻害薬 (PD-L1 TPS 1%以上のみ) 3週毎
ペムブロリズマブ 200mg/body,day 1
ニボルマブ 240mg/body,day 1 2週毎
(初回治療においては,PD-L1 TC3/IC3のみ) 3週毎
アテゾリズマブ 1200mg/body,day 1
細胞傷害性抗癌薬 DTX 60mg/m2,day 1 3週毎
PEM 500mg/m2,day 1 3週毎
S-1 80-120mg/body,1日2回,day 1-28 6週毎
GEM 1000mg/m2,day 1,8,15 4週毎
VNR 25mg/m2,day 1,8 3週毎

*PEMの投与に際しては下記ビタミンの補充を行う

①葉酸:投与の7日以上前から葉酸として1日1回0.5mgを連日経口投与する。なお,PEMの投与を中止または終了する場合には,PEM最終投与日から22日目まで可能なかぎり葉酸を投与する。

②ビタミンB12:初回投与の少なくとも7日前に,ビタミンB12として1回1mgを筋肉内投与する。その後,PEM投与期間中および投与中止後22日目まで9週毎(3サイクル毎)に1回投与する。

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