まずは医師や看護師,そして家族や友人と話し合いをすることです。医師や医療チームは,一緒に話し合い不安や疑問に寄り添い,あなたの希望を尊重し可能な限り治療をサポートします。
「治療法がない」「治療をしないほうがよい」と患者さんに伝えることは,医師にとっても非常につらいことです。しかし,これらの判断はけっしてあなたを見放すという意味ではありません。医師が,薬物療法を勧めなかったり,提案する薬剤がないことには理由があります。
薬物による治療の目的は,それによって生存期間を延長させることですが,使える抗がん剤があれば順番に使っていけばよいということではありません。薬物療法は必ず副作用を伴うので,予測される治療効果とのバランスによって治療を行うかどうかを判断します。「治療法がない」とは,再発・再燃した場合の治療が副作用に見合う有用な効果が期待できないのです。また,「治療をしないほうがよい」とは,治療を受ける患者さんの体力や基礎疾患(持病)などから治療を受けられる全身状態ではなく,副作用に耐えられないおそれがあることを意味します。詳細はQ28の表:パフォーマンスステータス(PS)を参照してください。
薬物療法を続けていくことは大事なことですが,もっと大切なことはいかにQOL(生活の質)を保ちながら治療をしていくかです。化学療法のような積極的な治療以外にもQOLを維持,または高めるために緩和ケアを取り入れる方法もありますし,積極的な治療との両立も可能です。緩和ケアを治療開始時のより早期から取り入れることで,がん治療を受けながらでもQOL を維持することが可能となります(Q27,28,47,48参照)。標準治療を受け終わってもあなたの体調が普段と変わらない状態を維持できていて,積極的な治療を受けたいという希望があれば,治験など臨床試験に参加するということも可能です(Q29参照)。積極的治療だけががんの治療ではありませんので,「もう治療法がない」ということはけっしてありません。もし治療法がない,治療をしないほうがよいといわれたときは,積極的な治療以外の治療について担当医に聞いたり,治験や臨床試験について相談するのがよいと思います。また,医療機関にあるがん相談支援の窓口などで相談されるのもよいでしょう。インターネット,新聞・雑誌広告などに掲載されている自由診療などの治療はけっしてお勧めできません。慌てず焦らずに,家族や医療スタッフと相談をしながら納得いく治療を見つけましょう。
臨床試験,治験の情報については,下記のウェブサイトが参考になります。
タイトルをクリックするとWEBページへうつります。
米国臨床腫瘍学会(ASCO)でも,次の項目を満たす肺がんを含む固形がんの患者さんに対しては,積極的ながん治療(化学療法など)を行わないことと発表しています。
参考文献:Schnipper LE, et al. American Society of Clinical Oncology identifies five key opportunities to improve care and reduce costs:the top five list for oncology. J Clin Oncol. 2012;30(14):1715 ‒24.