Ⅱ.非小細胞肺癌(NSCLC)
8
転移など各病態に対する治療
- 総 論
- 転移など各病態に対する治療方針

進行期の非小細胞肺癌では脳・骨など遠隔転移の頻度が高く,これらの制御は予後のみならず全身状態に大きな影響を与える。本項では日常臨床で多く遭遇する骨転移・脳転移・胸部緩和照射・癌性胸膜炎・癌性心膜炎についてクリニカルクエスチョン(CQ)を設定した。
いずれの病態においても共通する基本的な考え方としては,無症状であれば全身化学療法を優先,有症状例もしくは近いうちに有症状・機能低下をきたす可能性が高い症例に対しては局所治療を優先する,となる。また,その時点で使用可能な化学療法レジメンの効果(特にORR・PFSなどの短期指標)も治療選択における重要な情報である。各治療法の決定においては呼吸器内科医・呼吸器外科医・腫瘍内科医・放射線腫瘍医・整形外科医・脳神経外科医・緩和治療医などとの緊密な連携,キャンサーボードなど多職種での検討が重要である。
近年の肺癌薬物療法の進歩は局所療法の選択にも少なからず影響を与えている。特にドライバー遺伝子変異/転座陽性例においては,分子標的治療薬によって短期間で良好な腫瘍縮小が期待できることが多い(Ⅱ.7.Ⅳ期非小細胞肺癌:総論の項参照)。また予後についても長期成績が期待できるようになってきたため,このような症例に対する局所治療を導入するにあたっては,効果のみならず侵襲度や晩期毒性も含めた検討がこれまで以上に重要となっている。
以下,局所治療の中ではエビデンスが比較的豊富な骨転移・脳転移病態における治療方針ならびに胸部緩和照射について概説する。
1)骨転移
有症状例では局所治療の適応となる。多くは放射線治療が選択されるが(CQ79,80),oncologic emergencyである脊髄圧迫に対しては外科治療も選択肢となる(CQ81)。局所治療を要する骨転移は多くの場合で生命予後に直結することは少ないものの,生活の質(QOL)に与える影響は大きい。このため治療選択には予後との兼ね合いも重要となる。こうした観点から,放射線治療については単回照射の選択肢があることはより知られてよい(CQ80)。
2)脳転移
有症状例を中心として放射線治療や摘出術などが局所治療の対象となるが(CQ85~88),無症状でも局所治療を選択する場合がある(CQ84,87,88,90)。放射線治療の選択については,4個以下で腫瘍径3 cm程度までであれば定位照射,それ以外の多発脳転移については全脳照射を行うのが基本的な考え方であるが,近年,5~10個以上の多発脳転移に対する定位照射の前向きな観察研究の結果も報告されており,全脳照射による認知低下が危惧される場合の治療選択肢として提案し得る(CQ87)。
薬物療法においては特にドライバー遺伝子変異/転座陽性例で分子標的治療薬により長期の局所制御が得られる症例も経験される(CQ90)。これらの症例では数年以上の長期生存が得られる可能性があることから,局所治療を行う場合は晩期毒性に今まで以上の注意を払う必要がある。
3)胸部緩和照射
肺癌局所に対する放射線治療の役割は,局所制御を目的とした根治照射以外に,症状の軽減を目的とした緩和照射も重要である。特に肺癌患者では,QOLや生命予後に影響を及ぼす重篤な症状も多い(CQ91)。根治照射と緩和照射の間に位置する放射線治療の役割として,「根治照射の適応とならない肺癌症例に対して症状がなくても姑息的胸部照射は勧められるか?」,「Ⅳ期非小細胞肺癌の化学療法後の残存または増悪病巣が1カ所のみの場合に放射線療法は勧められるか?」などのCQも検討されたが,エビデンスが十分ではなく,本年度のCQ作成は見送った。
本文中に用いた略語および用語の解説
BLM | ブレオマイシン | |
---|---|---|
CBDCA | カルボプラチン | |
CDDP | シスプラチン | |
DOXY | ドキシサイクリン | |
ETP | エトポシド | |
MINO | ミノサイクリン | |
MMC | マイトマイシンC | |
OK-432 | ピシバニール | |
PEM | ペメトレキセド | |
PTX | パクリタキセル | |
Talc | タルク | |
TC | テトラサイクリン | |
BP製剤 | ビスフォスフォネート製剤 | |
ALK | anaplastic lymphoma kinase | 未分化リンパ腫キナーゼ |
BSC | best supportive care | 緩和治療,ベストサポーティブケア |
ECOG | eastern cooperative oncology group | 米国東海岸癌臨床試験グループ |
EGFR | epidermal growth factor receptor | 上皮成長因子受容体 |
GPA | graded prognostic assessment | 段階的予後評価 |
HR | hazard ratio | ハザード比 |
ORR | objective response rate | 客観的奏効率 |
OS | overall survival | 全生存期間 |
PFS | progression free survival | 無増悪生存期間 |
PS | performance status | 全身状態 |
QALY | quality adjusted life years | 質調整生存期間 |
QOL | quality of life | 生活の質 |
RPA | recursive partitioning analysis | 再帰分割分析 |
RR | relative risk | 相対危険度 |
SRE | skeletal related event | 骨関連事象 |
STI | stereotactic irradiation | 定位放射線照射 |
以下の2つに分けられる | ||
SRS | stereotactic radiosurgery | 定位手術的照射:1回照射 |
SRT | stereotactic radiotherapy | 定位放射線治療:分割照射 |
- 8-1
- 骨転移
文献検索と採択
- 文献検索期間
-
- 2009年9月1日から2018年12月31日
- 文献検索方法
-
- キーワード:bone neoplasms, secondary
- 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
- 採択方法
-
- 文献はメタアナリシス,第Ⅲ相試験,ランダム化比較第Ⅱ相試験を中心に抽出し,総説もしくは検索時点で日本における未承認薬を用いた試験は除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献,論文化されていない重要な学会報告は上記以外でも採用した。
- これ以前の文献でも,今回の改訂に際し重要と考えられたものについては採用としている。
樹形図

CQ79.
症状を有する骨転移に対して,放射線治療が勧められるか?
- 推 奨
- 放射線治療を行うよう推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕
肺癌の骨転移は進行非小細胞肺癌では約30~40%に生じるとされ,OS中央値は1年にも満たないとされる。本邦における259人の非小細胞肺癌での後方視的な解析1)では,その経過で70人(30.4%)に骨転移が認められている。そのうち46人(65.7%)は初回Staging時で認められ,また35人(50%)は骨関連事象(SRE)をその経過で認めた。特に疼痛は最も多い症状であり,肺癌の骨転移症例の約80%に認められるという報告もある。
未治療の骨転移合併非小細胞肺癌では,可能なら全身治療としての薬物療法を導入すべきであるが,症状を有する,または病的骨折の危険性が高い,または脊椎転移が脊髄圧迫を生じている場合は放射線治療が優先されることがある。
16のランダム化比較試験のメタアナリシス2)によると,放射線治療による痛みの改善は50~80%と高率に得られ,有害事象の頻度も少なかった(病的骨折2.8~3.2%,脊髄圧迫1.9~2.8%)。
以上より,放射線治療によって高い局所制御率と臨床的有効性がメタアナリシスにて確認されている。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 推奨 |
行うことを 弱く推奨(提案) |
推奨度決定不能 | 行わないことを 弱く推奨(提案) |
行わないことを 推奨 |
---|---|---|---|---|
100% (35/35) |
0% | 0% | 0% | 0% |
CQ80.
症状を有する骨転移に対する適切な照射法は何か?
- 推 奨
-
- a.
- 分割照射を行うよう推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕
-
- b.
- 単回照射を行うよう提案する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:A,合意率:97%〕
従来,骨転移に対する放射線治療としては総線量20~30 Gyの分割照射が行われてきた。8 Gy単回照射については,総線量20~30 Gyの分割照射との比較を行った前向き試験がいくつかあり,これら16のランダム化比較試験に関するメタアナリシスが報告されている2)。これによると痛みの改善は単回照射群58% vs分割照射群59%と同等であった(HR 0.99,95%CI:0.95-1.03)。有害事象も病的骨折3.2% vs 2.8%(P=0.75),脊髄圧迫2.8% vs 1.9%(P=0.13)と有意差を認めなかったが,再照射率は20% vs 8%と単回照射群で有意に高かった(HR 2.5,95%CI:1.76-3.56)。このメタアナリシスに含まれる試験で照射後の長期フォローアップを行った研究3)でも,有害事象は両群で有意差を認めず,再照射率は単回照射群で有意に高かった(27% vs 9%,P=0.002)。
以上より,骨転移に対する標準的な照射方法としては,20 Gy/5回,30 Gy/10回などの分割照射が勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。一方,期待生存期間3カ月以内,連日の治療が困難,原腫瘍が増悪しているなど,症例によっては8 Gy単回照射が選択肢と考えられる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 推奨 |
行うことを 弱く推奨(提案) |
推奨度決定不能 | 行わないことを 弱く推奨(提案) |
行わないことを 推奨 |
|
---|---|---|---|---|---|
a | 100% (35/35) |
0% | 0% | 0% | 0% |
b | 3% (1/35) |
97% (34/35) |
0% | 0% | 0% |
CQ81.
病的骨折の危険性の高い骨転移,または脊椎転移が脊髄圧迫を生じている骨転移に対して,外科治療が勧められるか?
- 推 奨
- 外科治療を行うよう提案する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕
病変が2.5 cm以上,もしくは荷重骨で皮質の50%以上に破壊がみられる場合は病的骨折のリスクが高いとされている。病的骨折の危険性の高い骨転移に対し外科治療の意義や術式に関するランダム化比較試験はない。切迫骨折または病的骨折の状態にある四肢長管骨を対象とした前向き観察研究4)では,術後6週と3か月の両評価点において重篤な合併症なく,疼痛や機能面(MSTS1987, MSTS1993, TESS)での有意な改善が認められた。しかし,健康関連QOL(SF-36)においては有意な改善が得られなかった。多くの後方視的報告においても,疼痛や機能の維持・改善は示されているものの,QOLに関しては予後や全身状態による影響も大きく,明らかな益は示されていない5)。
脊髄圧迫を呈する転移性骨腫瘍に対して除圧術+放射線治療と放射線治療単独のランダム化比較試験において6),治療後の歩行可能者割合は84% vs 57%(オッズ比6.2,95%CI:2.0-19.8,P=0.001)と手術群で良好で,歩行を維持できた期間も前者で長かった(122日間vs 13日間,P=0.003)ことから,試験は早期中止となった。しかし,この試験は100例の集積に10年を要するなど,患者選択にバイアスがかかっている可能性や放射線治療単独群における歩行維持期間が短すぎることなど,いくつかの問題が指摘されている。そこで,この試験の患者と予後因子を合わせたペアマッチ解析が検討されたが7),治療後の歩行可能者割合は69% vs 68%と有意差を認めず,単変量解析でも治療内容は予後に影響しなかった。
以上より,病的骨折のリスクが高い骨転移では,外科治療を行うことで術後早期より疼痛緩和や機能面での改善が期待できる。しかし,その適応や術式には病勢や予後,全身状態など総合的な判断を要し,多職種からなる集学的な検討が望ましい。脊椎転移が脊髄圧迫を生じている骨転移に対する外科治療は少数の比較試験で有効性が示唆されているものの,相反する報告も存在している。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 推奨 |
行うことを 弱く推奨(提案) |
推奨度決定不能 | 行わないことを 弱く推奨(提案) |
行わないことを 推奨 |
---|---|---|---|---|
0% | 100% (35/35) |
0% | 0% | 0% |
CQ82.
病的骨折の危険性が高い骨転移,または脊椎転移が脊髄圧迫を生じている骨転移に対して,放射線治療が勧められるか?
- 推 奨
- 放射線治療を行うよう推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕
従来,病変が2.5 cm以上,もしくは荷重骨で皮質の50%以上に破壊がみられる場合は病的骨折のリスクが高いとされ,固定と放射線治療の適応がある8)。脊髄圧迫については,単群第Ⅱ相試験ではあるが,放射線治療によって82%で除痛が得られ,76%で歩行機能が回復または維持していたと報告されている9)。また,この中で画像上圧迫を認めるものの症状が顕在化していない時期に放射線治療をすることで,全例にその後の歩行能力が保持されていたとも報告されている。
以上より,病的骨折の危険性が高い,または脊椎転移による脊髄圧迫が切迫していると判断される場合には,明らかな神経症状がなくても放射線治療を行うよう勧められる。単群試験やこれまでのコンセンサスによる部分が多いため,エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 推奨 |
行うことを 弱く推奨(提案) |
推奨度決定不能 | 行わないことを 弱く推奨(提案) |
行わないことを 推奨 |
---|---|---|---|---|
100% (35/35) |
0% | 0% | 0% | 0% |
CQ83.
骨転移を有する症例に対して,骨関連事象の抑制(発現率を軽減し,発現までの時期を延長させる)に骨修飾薬(ゾレドロン酸またはデノスマブ)は勧められるか?
- 推 奨
- 骨修飾薬(ゾレドロン酸またはデノスマブ)による治療を行うよう推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B,合意率:100%〕
乳癌および前立腺癌以外の肺癌を中心とした固形癌の骨転移患者(非小細胞肺癌50%,小細胞肺癌8%)を対象に,ビスフォスフォネート(BP)製剤であるゾレドロン酸とプラセボを,骨関連事象(SRE)の発症率および発症までの期間で比較した第Ⅲ相試験が行われた10)。21カ月までのSRE発現割合は,ゾレドロン酸4 mg投与群が38.9%,プラセボ投与群が48.0%とゾレドロン酸投与群が有意に低く,発症時期を2カ月以上延長させた(236日 vs 155日)。疼痛スコアや鎮痛剤の使用およびPSの変化に関しても,有意ではないものの改善傾向であった。
乳癌,前立腺癌を除く,進行癌と多発性骨髄腫患者(非小細胞肺癌40%)を対象に,デノスマブとゾレドロン酸を,SRE発症までの期間で比較した第Ⅲ相試験が行われた。初回SRE発症までの期間は,デノスマブ群20.6カ月,ゾレドロン酸群16.3カ月で,非劣性が証明されたが,優越性は証明されなかった。一方で,疼痛スコアの増悪や骨病変に対する放射線治療のリスクは,デノスマブ群が有意に少なかった11)12)。
以上より,骨転移を有する症例では,SREの発現率の軽減とSRE発現までの期間を延長させることが複数の研究で示されているため,ゾレドロン酸またはデノスマブの投与は勧められる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。
BP製剤とデノスマブの重要な有害事象に顎骨壊死と腎機能障害が報告されている。顎骨壊死のリスク因子は,直近の歯科的処置やBP製剤の36カ月以上の長期投与が挙げられている13)。そのため,日常診療におけるBP製剤の長期使用では,顎骨壊死は十分に注意すべき有害事象である。デノスマブとゾレドロン酸の比較試験の統合解析では,両薬剤で,顎骨壊死の頻度に有意差を認めず14),デノスマブもBP製剤と同様な対応が必要である(参考資料:http://jsbmr.umin.jp/guide/pdf/bronjpositionpaper2012.pdf)。
BP製剤の腎障害は,BP製剤を使用した症例の4%に報告されている15)。一方,デノスマブは,海外第Ⅲ相試験14)において,クレアチニンクリアランス値が30 mL/min未満の重度腎疾患患者および透析の必要な末期腎不全患者は対象から除外されており,慎重投与となっている。
デノスマブで注意すべき有害事象は,低カルシウム(Ca)血症である。低Ca血症の頻度がBP製剤と比較して有意に多いという報告(ゾレドロン酸投与群5.8%,デノスマブ投与群10.8%)があり,予防のためにCa製剤,ビタミンD製剤の内服,定期的な血清Caの測定が推奨されている14)。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 推奨 |
行うことを 弱く推奨(提案) |
推奨度決定不能 | 行わないことを 弱く推奨(提案) |
行わないことを 推奨 |
---|---|---|---|---|
100% (42/42) |
0% | 0% | 0% | 0% |
- 1)
- Tsuya A, Kurata T, Tamura K, et al. Skeletal metastases in non-small cell lung cancer: a retrospective study. Lung Cancer. 2007; 57(2): 229-32.
- 2)
- Chow E, Harris K, Fan G, et al. Palliative radiotherapy trials for bone metastases: a systematic review. J Clin Oncol. 2007; 25(11): 1423-36.
- 3)
- Sande TA, Ruenes R, Lund JA, et al. Long-term follow-up of cancer patients receiving radiotherapy for bone metastases: results from a randomised multicentre trial. Radiother Oncol. 2009; 91(2): 261-6.
- 4)
- Talbot M, Turcotte RE, Isler M, et al. Function and health status in surgically treated bone metastases. Clin Orthop Relat Res. 2005; 438: 215-20.
- 5)
- Errani C, Mavrogenis AF, Cevolani L, et al. Treatment for long bone metastases based on a systematic literature review. Eur J Orthop Surg Traumatol. 2017; 27(2): 205-11.
- 6)
- Patchell RA, Tibbs PA, Regine WF, et al. Direct decompressive surgical resection in the treatment of spinal cord compression caused by metastatic cancer: a randomised trial. Lancet. 2005; 366(9486): 643-8.
- 7)
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- 8)
- Harrington KD. New trends in the management of lower extremity metastases. Clin Orthop Relat Res. 1982; (169): 53-61.
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- 10)
- Rosen LS, Gordon D, Tchekmedyian NS, et al. Long-term efficacy and safety of zoledronic acid in the treatment of skeletal metastases in patients with nonsmall cell lung carcinoma and other solid tumors: a randomized, PhaseⅢ, double-blind, placebo-controlled trial. Cancer. 2004; 100(12): 2613-21.
- 11)
- Henry DH, Costa L, Goldwasser F, et al. Randomized, double-blind study of denosumab versus zoledronic acid in the treatment of bone metastases in patients with advanced cancer(excluding breast and prostate cancer)or multiple myeloma. J Clin Oncol. 2011; 29(9): 1125-32.
- 12)
- Vadhan-Raj S, von Moos R, Fallowfield LJ, et al. Clinical benefit in patients with metastatic bone disease: results of a phase 3 study of denosumab versus zoledronic acid. Ann Oncol. 2012; 23(12): 3045-51.
- 13)
- Migliorati CA, Siegel MA, Elting LS. Bisphosphonate-associated osteonecrosis: a long-term complication of bisphosphonate treatment. Lancet Oncol. 2006; 7(6): 508-14.
- 14)
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- 15)
- Bonomi M, Nortilli R, Molino A, et al. Renal toxicity and osteonecrosis of the jaw in cancer patients treated with bisphosphonates: a long-term retrospective analysis. Med Oncol. 2010; 27(2): 224-9.
- 8-2
- 脳転移
文献検索と採択
- 文献検索期間
-
- 1980年1月1日から2018年12月31日
- 文献検索方法
-
- キーワード:brain metastases, radiation therapy
- 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
- 採択方法
-
- 文献はメタアナリシス,第Ⅲ相試験,ランダム化比較第Ⅱ相試験を中心に抽出し,総説もしくは検索時点で日本における未承認薬を用いた試験は除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献,論文化されていない重要な学会報告は上記以外でも採用した。
- これ以前の文献でも,今回の改訂に際し重要と考えられたものについては採用としている。
樹形図

CQ84.
遠隔転移が単発の脳転移のみのⅣ期症例に対して,定位手術的照射や外科治療は勧められるか?
- 推 奨
- 脳以外の病巣がコントロールされており,かつ単発の脳転移に対して,定位手術的照射*や外科治療を行うよう推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:85%〕
全身コントロール良好な単発性脳転移を有する症例を対象とした,SRSと手術+全脳照射の比較試験において,SRS単独群のOS中央値は約10カ月と報告されている1)。またPS良好な単発性脳転移を有する症例を対象とした手術と手術+全脳照射の比較試験において,手術単独群のOS中央値は約10カ月と報告されている(全脳照射の追加によるOSの延長はなし:CQ88)2)。これらはいずれも他癌腫を含んだデータで,肺癌患者は3~6割程度を占めていた。近年報告された,非小細胞肺癌患者を対象とした観察研究のシステマティックレビューでは,原発巣がコントロールされ,脳転移に対してSRSや手術などの局所治療を行った患者のOS中央値19.7カ月(範囲6.8-52カ月)と報告されている3)。
以上より,脳以外の病巣がコントロールされており,かつ単発の脳転移に対して,SRSや外科治療を行う妥当性はあると考えられる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 推奨 |
行うことを 弱く推奨(提案) |
推奨度決定不能 | 行わないことを 弱く推奨(提案) |
行わないことを 推奨 |
---|---|---|---|---|
85% (33/39) |
15% (6/39) |
0% | 0% | 0% |
CQ85.
症状を有する脳転移に対して,外科治療は勧められるか?
- 推 奨
- 症状を有する単発性脳転移に対して,腫瘍摘出術を行うよう提案する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕
肺癌は脳転移を生じる頻度が高く,これによって生じた様々な神経症状はQOLを低下させる。このため,QOL改善を目的とした手術が治療選択肢の1つとして汎用されてきた。単発性脳転移を有する固形癌患者を対象とした手術と手術+全脳照射とのランダム化比較試験において,手術単独群のOS中央値は約10カ月,頭蓋内無増悪期間中央値は約6カ月であった(全脳照射の追加によるOSの延長はなし:CQ88)2)。疾患の性質からBSCとの比較試験は存在しないが,症状を有する単発性脳転移に対する手術については治療選択肢として提案可能である。一方,定位照射の有効性が期待できる場合には手術より優先されることが考えられる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 推奨 |
行うことを 弱く推奨(提案) |
推奨度決定不能 | 行わないことを 弱く推奨(提案) |
行わないことを 推奨 |
---|---|---|---|---|
0% | 100% (11/11) |
0% | 0% | 0% |
CQ86.
症状を有する脳転移に対して,放射線治療は勧められるか?
- 推 奨
- 症状を有する脳転移に対して,放射線治療を行うよう推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕
肺癌は脳転移を生じる頻度が高く,これによって生じた様々な神経症状はQOLを低下させる。2つの前向き試験では放射線治療によって70~90%の患者に症状の寛解が得られたと報告されており4),CQ87に示すように全脳照射やSRSのいずれにおいても良好な頭蓋内無増悪期間およびOSが報告されている。
以上より,エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
なお,ステロイド+全脳照射とステロイド単独療法の非劣性を検討した第Ⅲ相試験において,OSとQOLの指標である質調整生存期間(QALY)の非劣性は証明されなかったものの,OS・QOLに有意差はなかった5)。本試験の患者背景はKarnofsky performance status 70未満の割合が約4割と多く,RPA・GPAなどの予後予測因子も不良なものが大多数を占めていた。またOS中央値は両群とも8~9週程度と非常に短く,このために全脳照射の有用性が認められなかったと考えられている。よって,予後不良と考えられる場合はステロイド単独治療も選択肢である。
行うことを 推奨 |
行うことを 弱く推奨(提案) |
推奨度決定不能 | 行わないことを 弱く推奨(提案) |
行わないことを 推奨 |
---|---|---|---|---|
100% (11/11) |
0% | 0% | 0% | 0% |
CQ87.
多発性脳転移に対して,放射線治療は勧められるか?
- 推 奨
-
- a.
- 多発性脳転移に対して,全脳照射を行うよう推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:84%〕
-
- b.
- 4個以下で腫瘍径3 cm程度までであれば定位手術的照射*を行うよう推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:97%〕
-
- c.
- 5~10個の脳転移に対して,定位手術的照射を行うよう提案する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:61%〕
*定位放射線照射(STI)は,線量分割の違いにより,1回照射の場合を定位手術的照射(SRS),分割照射の場合を定位放射線治療(SRT)と定義されている。ガンマナイフ,サイバーナイフやリニアックによる1回照射はSRSに含まれる。脳幹など重要組織が近接している場合や大きい腫瘍にはSRTで治療を行うことがある。
-
a・b.従来,多発性脳転移に対しては全脳照射が行われてきた。疾患の性質からBSCとの比較試験は存在しないが,2つの前向き試験では放射線治療によって70~90%の患者に症状の寛解が得られたと報告されている。それらの前向き試験ではそのOS中央値は3.5~7.5カ月程度であり,頭蓋内無増悪期間は中央値約6カ月程度と報告されている6)~10)。
4個以下,3 cm程度の脳転移に対してはSRSのエビデンスも蓄積されており,前向き試験のデータではOS中央値は約8~15カ月,照射1年後の局所コントロール率は6~9割程度と報告されている11)12)。
脳腫瘍に対する放射線照射の有害事象として治療後のQOLの低下が問題となることがある。手術やSRSに全脳照射を追加することで,活動性の低下や認知機能障害が生じることを示す報告12)~14)がある一方で,評価の方法や時期の違いの影響から差がなかったとする報告もある11)。一方,全脳照射を省くことで脳内再発によって認知機能の悪化がみられることがある。
以上より,多発性脳転移に対する全脳照射,4個以下で腫瘍径3 cm程度までに対するSRSは複数の前向き試験でその有効性が示唆されている。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 推奨 |
行うことを 弱く推奨(提案) |
推奨度決定不能 | 行わないことを 弱く推奨(提案) |
行わないことを 推奨 |
|
---|---|---|---|---|---|
a | 84% (32/38) |
16% (6/38) |
0% | 0% | 0% |
b | 97% (37/38) |
3% (1/38) |
0% | 0% | 0% |
-
c.5個以上の脳転移に対するSRSの有効性については,前向き観察研究で5~10個の脳転移と2~4個の脳転移に対する治療成績の比較によって,生存率に差がなかったとする結果が本邦から報告されており,有害事象の出現率にも差を認めなかった(9% vs 9%,P=0.89)15)。ただし,本研究の適格基準として最大経3 cm未満,最大腫瘍体積10 mL未満,合計体積15 mLなどが挙げられており,この結果を適応できる患者は限られる可能性がある。一方で,全脳照射後の認知機能低下について複数の報告がされていることから13)14),この対象に対して定位照射も治療選択肢として提案できる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した(合意率61%)。また個数にかかわらず定位照射を選択した場合には,しばしば後発転移が生じることから定期的な画像診断を継続することが必要である。
行うことを 推奨 |
行うことを 弱く推奨(提案) |
推奨度決定不能 | 行わないことを 弱く推奨(提案) |
行わないことを 推奨 |
---|---|---|---|---|
0% | 61% (20/32) |
36% (12/32) |
0% | 0% |
CQ88.
手術や定位手術的照射に,全脳照射の追加は勧められるか?
- 推 奨
- 手術や定位手術的照射に,全脳照射の併用を行わないよう提案する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:A,合意率:100%〕
症状を有する脳単発の脳転移を要する患者に対しての手術と,手術+全脳照射との併用療法を比較したランダム化比較試験は1つあり,OSに有意差は認められなかったが(43週vs 48週,RR 0.91,95%CI:0.59-1.40,P=0.39),局所再発は有意に減少した(46% vs 10%,P<0.001)2)。
4個以下の脳転移に対するSRSと,SRS+全脳照射との併用療法を比較した試験は複数あり,ランダム化比較試験のメタアナリシスで局所制御率については併用群で有意に良好であった(HR 2.61,95%CI:1.68-4.06,P<0.0001)が,OSに有意差を認めなかった(HR 0.98,95%CI:0.71-1.35,P=0.88)16)。4個以下脳転移に対して,3 cmを超える病変に対して手術が行われ,手術後残存腫瘍に対して全脳照射または再発時SRSを比較したランダム化比較試験が行われた17)。OSは両群で15.6カ月で,非劣性仮説に対する片側P値=0.0266(HR 1.05,90%CI:0.83-1.33)であり,SRS群の全脳照射群に対する非劣性が証明された。
認知機能に関しては1つのランダム化比較試験ではSRS群とSRS+全脳照射群間でMini Mental State Examinationの結果に有意差は認められなかったが11),もう1つのランダム化比較試験ではHopkins Verbal Learning Test-Revisedを用いて評価を行ったところ,記憶学習能力が併用群で有意に低下したため早期中止となっている12)。同じく,複数の認知機能検査を用いて評価したランダム化比較試験でもSRS群と比較してSRS+全脳照射群で3カ月後の評価で有意に低下がみられた14)。
また,手術もしくはSRSを行った患者に対して全脳照射の追加を検討したランダム化比較試験において,全脳照射併用群は健康関連QOLが悪い傾向にあった13)。
以上より,脳転移に対する手術やSRSに全脳照射を追加すると,局所制御には有効であると考えられるが,一方では生存には寄与せず,認知機能低下などの有害事象も懸念されることが複数の臨床試験で示されている。このため手術やSRS後に全脳照射を追加するかしないかは,腫瘍サイズや性状,手術所見などを踏まえて総合的に判断すべきである。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行わないよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 推奨 |
行うことを 弱く推奨(提案) |
推奨度決定不能 | 行わないことを 弱く推奨(提案) |
行わないことを 推奨 |
---|---|---|---|---|
0% | 0% | 0% | 100% (11/11) |
0% |
CQ89.
髄膜癌腫症に対する適切な治療法は何か?
- 推 奨
- 髄膜癌腫症に対して,薬物療法・放射線治療を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。
〔推奨度決定不能〕
髄膜癌腫症に対する薬物療法の有効性は,本邦で承認された薬剤・用量に限った場合,いくつかの後方視的研究での報告に限られている18)。また,髄膜癌腫症に対する放射線治療(全脳照射)の有用性を検討した前向き臨床試験は存在しない。後方視的研究では,髄膜癌腫症での全脳照射の有用性は認められていないが19),中には症状緩和が得られる症例が経験されることもある。
以上より,髄膜癌腫症に薬物療法・放射線治療について勧めるだけの根拠が明確ではなく,推奨度決定不能とした。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 推奨 |
行うことを 弱く推奨(提案) |
推奨度決定不能 | 行わないことを 弱く推奨(提案) |
行わないことを 推奨 |
---|---|---|---|---|
0% | 16% (4/25) |
64% (16/25) |
20% (5/25) |
0% |
CQ90.
無症候性脳転移に対して,薬物療法は勧められるか?
- 推 奨
- 薬物療法を行うよう推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C,合意率:100%〕
無症候性脳転移に対しては全身治療として薬物療法が治療の中心となるものの,放射線治療も高い局所制御を示すことからその時期を逸さないことは重要である。一方で近年,新規薬物療法の登場によって進行非小細胞肺癌の予後は延長しており,治療方針を決定する際の評価項目として,OS・脳転移制御率だけではなく神経学的予後に対する配慮もより重要となっている。
無症候性脳転移に対して薬物療法・放射線治療のどちらを先行させるかという重要なクリニカルクエスチョンが生じるが,現時点で明確なエビデンスは乏しいことから,脳転移巣のサイズ・個数・部位,医療状況などをもとに放射線腫瘍医と十分検討のうえで判断されるべきである。
放射線治療に関しては,CQ87を参照すること。
<分子標的治療>
遺伝子変異を有する無症候性脳転移患者に対する分子標的治療薬の有効性は,多くが第Ⅲ相試験のサブグループ解析もしくは単群試験における少数例の報告である。TKI未治療の脳転移症例に対する各TKIの全身における有効性はORR 53-83%,PFS中央値 6.6カ月-未到達と良好である20)~24)。
EGFR遺伝子変異陽性
本邦のEGFR遺伝子変異陽性患者41例を対象にゲフィチニブ単剤を行った単群第Ⅱ相試験では,頭蓋内病変のORRは87.8%,頭蓋内病変のPFS中央値は14.5カ月(95%CI:10.2カ月-18.3カ月)であった25)。FLAURA試験のサブグループ解析では,脳転移を有する128例における頭蓋内病変のPFS中央値はオシメルチニブ群未到達に対して第一世代EGFR-TKI群13.9カ月(HR 0.48,95%CI:0.26-0.86)とオシメルチニブ群で有意に延長していた。頭蓋内病変のORRも91%,68%とオシメルチニブ群で良好であった26)。T790M変異陽性を対象としたAURA3試験のサブグループ解析では,頭蓋内病変のPFS中央値はオシメルチニブ群11.7カ月に対して細胞障害性抗癌剤群5.6カ月(HR 0.32,95%CI:0.15-0.69)とオシメルチニブ群で有意に延長していた。測定可能病変を有する46例の頭蓋内病変のORRも70%,31%とオシメルチニブ群で良好であった27)。
ALK遺伝子転座陽性
クリゾチニブを投与した第Ⅱ相試験と第Ⅲ相試験の統合解析に未治療脳転移症例が109例含まれ,全身のORRが53%であるのに対して頭蓋内病変のORRは18%と高くはないものの,頭蓋内病変増悪までの期間の中央値は7.0カ月(95%CI:6.7カ月-16.4カ月)であった22)。ALEX試験において,測定可能な未治療の脳転移を有する29例における頭蓋内病変のORRは,クリゾチニブ群 40.0%に対して,78.6%とアレクチニブ群で良好であった24)。セリチニブの第Ⅲ相試験におけるサブグループ解析では,22例における頭蓋内病変のORRは72.7%と報告された23)。ロルラチニブの第Ⅱ相試験におけるサブグループ解析では,頭蓋内病変のORRはALK-TKI未治療例(3例)で66.7%,少なくとも1つのALK阻害剤既治療例(81例)で63.0%と報告された28)。
<細胞障害性抗癌剤/血管新生阻害剤>
無症候性脳転移患者に対する細胞障害性抗癌剤の有効性が複数の試験で検討されている。非扁平上皮非小細胞肺癌43例を対象としてCDDP+PEM療法を行った第Ⅱ相試験では,頭蓋内病変のORRは41.9%で,頭蓋内病変のPFS中央値は5.7カ月(95%CI:4.0カ月-7.6カ月)であった29)。同様に非扁平上皮非小細胞肺癌67例を対象にCBDCA+PTX+ベバシズマブ療法を行った第Ⅱ相試験では,頭蓋内病変のORRは61.2%で,頭蓋内病変のPFS中央値は8.1カ月(95%CI:5.5カ月-11.3カ月)であった30)。
<免疫チェックポイント阻害剤>
悪性黒色腫もしくはPD-L1陽性細胞1%以上の非小細胞肺癌を対象としたペムブロリズマブの第Ⅱ相試験において,10 mg/kgと承認用量とは異なるが,非小細胞肺癌18例における頭蓋内病変のORRは33%と報告された。神経障害としてGrade1~2の認知機能障害,頭痛,めまい,脳梗塞が報告されたが,治療関連死亡は認められず,免疫関連有害事象は既知のものと変わりなかった31)。
以上より,無症候性脳転移に対する薬物療法については,有効性を示唆するデータが複数報告されているものの,いずれも単群第Ⅱ相試験や第Ⅲ相試験のサブグループ解析である。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 推奨 |
行うことを 弱く推奨(提案) |
推奨度決定不能 | 行わないことを 弱く推奨(提案) |
行わないことを 推奨 |
---|---|---|---|---|
100% (42/42) |
0% | 0% | 0% | 0% |
- 1)
- Muacevic A, Wowra B, Siefert A, et al. Microsurgery plus whole brain irradiation versus Gamma Knife surgery alone for treatment of single metastases to the brain: a randomized controlled multicentre phaseⅢ trial. J Neurooncol. 2008; 87(3): 299-307.
- 2)
- Patchell RA, Tibbs PA, Regine WF, et al. Postoperative radiotherapy in the treatment of single metastases to the brain: a randomized trial. JAMA. 1998; 280(17): 1485-9.
- 3)
- Ashworth A, Rodrigues G, Boldt G, et al. Is there an oligometastatic state in non-small cell lung cancer? A systematic review of the literature. Lung Cancer. 2013; 82(2): 197-203.
- 4)
- Borgelt B, Gelber R, Kramer S, et al. The palliation of brain metastases: final results of the first two studies by the Radiation Therapy Oncology Group. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1980; 6(1): 1-9.
- 5)
- Mulvenna P, Nankivell M, Barton R, et al. Dexamethasone and supportive care with or without whole brain radiotherapy in treating patients with non-small cell lung cancer with brain metastases unsuitable for resection or stereotactic radiotherapy(QUARTZ): results from a phase 3, non-inferiority, randomised trial. Lancet. 2016; 388(10055): 2004-14.
- 6)
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- 7)
- Coia LR, Aaronson N, Linggood R, et al. A report of the consensus workshop panel on the treatment of brain metastases. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1992; 23(1): 223-7.
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- 30)
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- 31)
- Goldberg SB, Gettinger SN, Mahajan A, et al. Pembrolizumab for patients with melanoma or non-small-cell lung cancer and untreated brain metastases: early analysis of a non-randomised, open-label, phase 2 trial. Lancet Oncol. 2016; 17(7): 976-83.
- 8-3
- 胸部病変に対する緩和的放射線治療
文献検索と採択
- 文献検索期間
-
- 2004年12月1日から2018年12月31日
- 文献検索方法
-
- キーワード:palliative, lung neoplasm, radiation therapy
- 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
- 採択方法
-
- 文献はメタアナリシス,第Ⅲ相試験,ランダム化比較第Ⅱ相試験を中心に抽出し,総説もしくは検索時点で日本における未承認薬を用いた試験は除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献,論文化されていない重要な学会報告は上記以外でも採用した。
- これ以前の文献でも,今回の改訂に際し重要と考えられたものについては採用としている。
CQ91.
縦隔・肺門病変による気道狭窄,上大静脈狭窄など胸郭内の腫瘍増大に伴う症状の緩和を目的とした胸部放射線治療は,行うよう勧められるか?
- 推 奨
- 放射線治療を行うよう推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:94%〕
肺癌治療においては根治治療を行うことが難しい場合でも,症状の緩和や延命を目的とした胸部への放射線治療の役割は大きく,対症的に放射線治療を行うよう勧められる。照射線量に関するシステマティックレビューでは,総合的な症状緩和効果は高線量分割照射のほうが低線量照射より優れ(77.1% vs 65.4%,P=0.003),1年生存割合も良好であった1)。ただし,治療による食道炎の頻度は高線量分割照射のほうが高かった(20.5% vs 14.9%,P=0.01)。一方,30 Gy/10回と同等あるいはそれ以上の高線量分割照射と,より少ない総線量での照射とを比較した5つの臨床試験のメタアナリシスでは,症状改善率(咳嗽:約50%,胸痛:50~86%,血痰:75~97%)や1年および2年生存割合に差は認められなかった2)。以上,緩和的胸部照射については,いずれの報告においても高い割合で症状緩和が得られており,有効性がメタアナリシスで示されている。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。一方で患者背景などが様々であり,最適な線量を明示するだけの根拠は不足している。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 推奨 |
行うことを 弱く推奨(提案) |
推奨度決定不能 | 行わないことを 弱く推奨(提案) |
行わないことを 推奨 |
---|---|---|---|---|
94% (33/35) |
6% (2/35) |
0% | 0% | 0% |
- 1)
- Fairchild A, Harris K, Barnes E, et al. Palliative thoracic radiotherapy for lung cancer: a systematic review. J Clin Oncol. 2008; 26(24): 4001-11.
- 2)
- Ma JT, Zheng JH, Han CB, et al. Meta-analysis comparing higher and lower dose radiotherapy for palliation in locally advanced lung cancer. Cancer Sci. 2014; 105(8): 1015-22.
- 8-4
- 癌性胸膜炎
文献検索と採択
- 文献検索期間
-
- 2004年12月1日から2018年12月31日
- 文献検索方法
-
- キーワード:malignant pleural effusion
- 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
- 採択方法
-
- 文献はメタアナリシス,第Ⅲ相試験,ランダム化比較第Ⅱ相試験を中心に抽出し,総説もしくは検索時点で日本における未承認薬を用いた試験は除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献,論文化されていない重要な学会報告は上記以外でも採用した。
- これ以前の文献でも,今回の改訂に際し重要と考えられたものについては採用としている。
CQ92.
胸腔穿刺・ドレナージを行った癌性胸膜炎に対して,どのような治療が勧められるか?
- 推 奨
-
- a.
- 胸腔ドレナージ後の症例には,胸膜癒着術を行うよう推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:A,合意率:92%〕
-
- b.
- 薬物療法未治療例には,胸膜癒着術の代わりに薬物療法を行うよう提案する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:88%〕
-
a.胸膜癒着術の使用薬剤としては抗菌薬(TC,DOXY,MINOなど),抗癌剤(BLM,CDDPなど),鉱物(Talc),溶連菌製剤(OK-432)などが報告されている。
本邦でTalcが承認される前に行われたBLM,OK-432,CDDP+ETP(PE)胸腔内投与のランダム化比較第Ⅱ相試験では,4週間後の胸水コントロール率は,BLM(68.6%),OK-432(75.8%),PE(70.6%)であった。PEでは消化器毒性の頻度が多く,治療効果に有意差は認めなかったものの胸水コントロール率の高いOK-432が汎用される根拠となった1)。
各薬剤を比較したメタアナリシスでは,Talc噴霧法による胸水制御が良好で,BLM,DOXY,TCなどより優れていた2)。Talc噴霧法とTalc懸濁法を比較した第Ⅲ相試験では,78%と71%で胸水制御が得られ,有意差は認めなかった3)。重篤な副作用として急性呼吸促迫症候群があるが,粒子径の大きいもの(平均24.5 μm)では低頻度であった(558例中0例)4)。よって,2013年に本邦でもTalc懸濁法が承認されてから,胸水制御のエビデンスのあるTalcが汎用されるようになった。胸腔ドレナージ後の胸膜癒着術は,ドレナージ単独より胸水コントロール率に優れていることがエビデンスの質の高い研究で示されている。
以上より,エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 推奨 |
行うことを 弱く推奨(提案) |
推奨度決定不能 | 行わないことを 弱く推奨(提案) |
行わないことを 推奨 |
---|---|---|---|---|
92% (22/24) |
8% (2/24) |
0% | 0% | 0% |
-
b.分子標的治療薬による胸水制御を前向きに検討した報告はなかったが,日常臨床において,ドライバー遺伝子変異/転座陽性例では,胸水に対しても分子標的治療薬が有効であることはしばしば経験される。一方,胸水に対して胸膜癒着術を行わずに,細胞障害性抗癌剤の投与を行うことが有効であると示した報告が2つある。CBDCA+PEM+ベバシズマブ療法を行った第Ⅱ相試験では,28例の胸水コントロール率は92.9%で5),CBDCA+PTX+ベバシズマブ療法を行った第Ⅱ相試験では,23例の胸水コントロール率は86.9%であった6)。前者では貧血(CTCAE Grade 3以上)が25%,後者では発熱性好中球減少症が26.1%で報告され,POINTBREAK試験やECOG4599試験より有害事象の頻度が高い傾向にあった。
胸膜癒着術を行わずに全身薬物療法を導入することで,長期の持続ドレナージに伴うPSの増悪や全身薬物療法導入時期の遅れを回避できる可能性がある。一方で,前述の報告はドライバー遺伝子変異/転座陽性例や扁平上皮癌を対象としておらず,限られた患者集団およびレジメンでの単群の第Ⅱ相試験であり,十分なエビデンスがあるとは言い難い。
以上より,エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 推奨 |
行うことを 弱く推奨(提案) |
推奨度決定不能 | 行わないことを 弱く推奨(提案) |
行わないことを 推奨 |
---|---|---|---|---|
4% (1/24) |
88% (21/24) |
8% (2/24) |
0% | 0% |
- 1)
- Yoshida K, Sugiura T, Takifuji N, et al. Randomized phaseⅡ trial of three intrapleural therapy regimens for the management of malignant pleural effusion in previously untreated non-small cell lung cancer: JCOG 9515. Lung Cancer. 2007; 58(3): 362-8.
- 2)
- Clive AO, Jones HE, Bhatnagar R, et al. Interventions for the management of malignant pleural effusions: a network meta-analysis. Cochrane Database Syst Rev. 2016; (5): CD010529.
- 3)
- Dresler CM, Olak J, Herndon JE 2nd, et al. PhaseⅢ intergroup study of talc poudrage vs talc slurry sclerosis for malignant pleural effusion. Chest. 2005; 127(3): 909-15.
- 4)
- Janssen JP, Collier G, Astoul P, et al. Safety of pleurodesis with talc poudrage in malignant pleural effusion: a prospective cohort study. Lancet. 2007; 369(9572): 1535-9.
- 5)
- Usui K, Sugawara S, Nishitsuji M, et al. A phaseⅡ study of bevacizumab with carboplatin-pemetrexed in non-squamous non-small cell lung carcinoma patients with malignant pleural effusions: North East Japan Study Group Trial NEJ013A. Lung Cancer. 2016; 99: 131-6.
- 6)
- Tamiya M, Tamiya A, Yamadori T, et al. Phase 2 study of bevacizumab with carboplatin-paclitaxel for non-small cell lung cancer with malignant pleural effusion. Med Oncol. 2013; 30(3): 676.
- 8-5
- 癌性心膜炎
文献検索と採択
- 文献検索期間
-
- 2004年12月1日から2018年12月31日
- 文献検索方法
-
- キーワード:lung cancer, pericardial effusion
- 委員がPubMedを用いて検索し,2014年版からは順次,医学図書館協会の協力を得てより詳細な検索を行い,各CQにおいて採用を検討した。
- 採択方法
-
- 文献はメタアナリシス,第Ⅲ相試験,ランダム化比較第Ⅱ相試験を中心に抽出し,総説もしくは検索時点で日本における未承認薬を用いた試験は除外した。なお,治療リスクに関する重要な文献,論文化されていない重要な学会報告は上記以外でも採用した。
- これ以前の文献でも,今回の改訂に際し重要と考えられたものについては採用としている。
CQ93.
心嚢穿刺・ドレナージを要する癌性心膜炎に対して,どのような治療が勧められるか?
- 推 奨
- 心膜癒着術を行うよう提案する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:C,合意率:79%〕
心嚢水は単回穿刺では再貯留率が高いため,長期的な心嚢水制御のためにはドレナージが推奨される。BLMによる心膜癒着術についての79例を対象としたランダム化比較試験では,主要評価項目であったドレナージ後2カ月時点での心嚢液の増悪を伴わない生存割合に有意差はないもののBLM群でよい傾向があり(ドレナージ単独群29% vs BLM群46%,P=0.086),OSの延長傾向(中央値79日vs 119日)もみられた1)。心膜癒着術の使用薬剤としては,各種薬剤について少数例で検討されており,30日後の心嚢水コントロール率,OS中央値はそれぞれ,BLM(46~95%,119~125日)1)2),MMC(75%,80日)3),CBDCA(80%,69日)4)と報告されている。
なお,血行動態が不安定な場合は心膜開窓術などの手術も治療選択肢であるが,心嚢水制御について前向きに検討した文献はなく,各施設の医療状況や経験をもとに判断されるべきである。
以上より,対象集団が少ないことからランダム化比較試験が施行しにくく,十分なエビデンスがないものの,短期の症状緩和に関する益と害のバランスを考慮した場合,心嚢ドレナージ後の心膜癒着術を考慮してよいと考えられる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを 推奨 |
行うことを 弱く推奨(提案) |
推奨度決定不能 | 行わないことを 弱く推奨(提案) |
行わないことを 推奨 |
---|---|---|---|---|
4% (1/24) |
79% (19/24) |
17% (4/24) |
0% | 0% |
- 1)
- Kunitoh H, Tamura T, Shibata T, et al. A randomised trial of intrapericardial bleomycin for malignant pericardial effusion with lung cancer(JCOG9811). Br J Cancer. 2009; 100(3): 464-9.
- 2)
- Maruyama R, Yokoyama H, Seto T, et al. Catheter drainage followed by the instillation of bleomycin to manage malignant pericardial effusion in non-small cell lung cancer: a multi-institutional phaseⅡ trial. J Thorac Oncol. 2007; 2(1): 65-8.
- 3)
- Kaira K, Takise A, Kobayashi G, et al. Management of malignant pericardial effusion with instillation of mitomycin C in non-small cell lung cancer. Jpn J Clin Oncol. 2005; 35(2): 57-60.
- 4)
- Moriya T, Takiguchi Y, Tabeta H, et al. Controlling malignant pericardial effusion by intrapericardial carboplatin administration in patients with primary non-small-cell lung cancer. Br J Cancer. 2000; 83(7): 858-62.
- レジメン
- 転移など各病態に対する治療
転移性骨腫瘍
緩和的放射線治療 | 30 Gy/10回(2週),20 Gy/5回(1週),8 Gy/1回(1日)など | ||
---|---|---|---|
薬物療法 | ゾレドロン酸 | 4 mg | 3~4週毎投与 |
デノスマブ | 120 mg | 4週毎投与 | |
Ca製剤 | 500 mg/日 | 連日投与 | |
天然型ビタミンD | 400 IU/日 | 連日投与 | |
(デノスマブ使用においては,高Ca血症を認めないかぎり,低Ca血症予防のためCa製剤とビタミンD製剤の補充を推奨) |
転移性脳腫瘍
緩和的放射線治療 (全脳照射) |
30 Gy/10回(2週),37.5 Gy/15回(3週),40 Gy/20回(4週)など |
---|
胸部病変
緩和的放射線治療 | 30 Gy/10回(2週),37.5 Gy/15回(3週),40 Gy/20回(4週)など |
---|
*定位放射線照射(STI)は,線量分割の違いにより,1回照射の場合を定位手術的照射(SRS),分割照射の場合を定位放射線治療(SRT)と定義されている。ガンマナイフ,サイバーナイフやリニアックによる1回照射はSRSに含まれる。脳幹など重要組織が近接している場合や大きい腫瘍にはSRTで治療を行うことがある。