禁煙プロジェクト

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禁煙支援における医師の役割

神山 由香理

 世界保健機関(WHO)によると、世界中で年間490万人が喫煙に起因する病気で死亡しています。タバコはさまざまな病気の原因のうち、単一で最大の予防可能な因子です。
 喫煙対策には、「正しい情報提供」「喫煙防止教育」「非喫煙者の保護」「禁煙支援」の4つがあります。これら喫煙対策に取り組むにあたって、私たち医師の果たす役割はとても大きいといえます。なぜなら、喫煙によって引き起こされる悲劇に私たちは日々直面し、心を痛め、苦悩しているからです。
 多くの調査で、喫煙者の7割近くができればやめたいと願いつつタバコを吸っていると報告されています。癌患者も決して例外ではありません。診察に際して医師は、患者に必ず喫煙歴を尋ね、喫煙者には「禁煙してみませんか?」「禁煙しましょう」と一言声をかけることが重要です。一般に、医師からの健康に関する情報や助言は信頼性が高いと認識されています。積極的に禁煙を望んでいない喫煙者でも、医療機関受診時には禁煙の勧めを心理的に受け入れられる人が多く、医師の一言でタバコをやめたというケースも少なくありません。

ニコチン依存症とニコチン置換療法
 喫煙者の多くは何度か禁煙を試みたことがあり、「自分の意志が弱いから禁煙できない」と思っています。わが国ではいまだにタバコを嗜好品とする考えが根強く残っていますが、タバコに含まれるニコチンには強い依存性があり、喫煙はニコチン依存症という薬物依存の一型としてとらえることができます。タバコをやめようと思っても、イライラや落ち着きのなさ、集中力の低下、睡眠障害、タバコに対する渇望感、ストレス耐性の低下ど、これらのつらい離脱症状のために、なかなかタバコがやめられないのです。
 喫煙者のニコチン依存の程度をみる指標としては、Fagerstromのニコチン依存度テストなどが用いられますが、簡易法として起床後の喫煙開始時間と一日の本数からある程度判断できます。
 このように、容易にタバコがやめられない原因がニコチン依存にあると明らかになった現在では、ニコチン置換療法という治療法が世界的に広く行われるようになりました。これは、タバコの代わりにニコチンガムやニコチンパッチなどの禁煙補助剤を利用して少量のニコチンを補給し、離脱症状を緩和して、禁煙の継続をサポートするというものです。米国にはニコチン置換療法を主体とした禁煙サポートのガイドラインがあります。



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