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Ⅱ.非小細胞肺癌

Ⅳ期非小細胞肺癌の2次治療以降

文献検索と採択

Ⅳ期非小細胞肺癌の2次治療以降

本文中に用いた略語および用語の解説

CDDP シスプラチン PEM ペメトレキセド
DTX ドセタキセル VNR ビノレルビン
IFM イホスファミド
プラチナ製剤 シスプラチンとカルボプラチンの総称
第1・2世代のEGFR-TKI ゲフィチニブ・エルロチニブ・アファチニブの総称
PD-1阻害剤 ペムブロリズマブ,ニボルマブの総称
ALK anaplastic lymphoma kinase 未分化リンパ腫キナーゼ
BSC best supportive care 緩和治療,ベストサポーティブケア
ECOG eastern cooperative oncology group 米国東海岸癌臨床試験グループ
EGFR epidermal growth factor receptor 上皮成長因子受容体
mPFS median PFS 無増悪生存期間中央値
MST median survival time 生存期間中央値
ORR objective response rate 客観的奏効率
OS overall survival 全生存期間
PFS progression free survival 無増悪生存期間
PS performance status 一般状態
QOL quality of life 生活の質
TKI tyrosine kinase inhibitor チロシンキナーゼ阻害剤

樹形図

Ⅳ期非小細胞肺癌の2次治療以降
Ⅳ期非小細胞肺癌の2次治療以降 非扁平上皮癌EGFR 遺伝子エクソン18-21の遺伝子変異(エクソン19欠失とL858R変異を除く)陽性の2次治療以降 非扁平上皮癌,EGFR遺伝子エクソン18-21の遺伝子変異(エクソン19欠失とL858R変異を除く)陽性 1次治療としてEGFR-TKI未使用の2次治療以降:PS 0-2 非扁平上皮癌,EGFR遺伝子エクソン18-21の遺伝子変異(エクソン19欠失とL858R変異を除く)陽性 1次治療としてEGFR-TKI使用の2次治療以降:PS 0-1 非扁平上皮癌,EGFR遺伝子エクソン18-21の遺伝子変異(エクソン19欠失とL858R変異を除く)陽性 1次治療としてEGFR-TKI使用の2次治療以降:PS 2
Ⅳ期非小細胞肺癌の2次治療以降 非扁平上皮癌ALK遺伝子転座陽性の2次治療以降 非扁平上皮癌,ALK遺伝子転座陽性 1次治療としてALK-TKI未使用の2次治療以降:PS 0-2 非扁平上皮癌,ALK遺伝子転座陽性 1次治療としてクリゾチニブ使用の2次治療以降:PS 0-1 非扁平上皮癌,ALK遺伝子転座陽性 1次治療としてクリゾチニブ使用の2次治療以降:PS 2 非扁平上皮癌,ALK遺伝子転座陽性 1次治療としてアレクチニブ使用の2次治療以降:PS 0-1 非扁平上皮癌,ALK遺伝子転座陽性 1次治療としてアレクチニブ使用の2次治療以降:PS 2
Ⅳ期非小細胞肺癌の2次治療以降 非扁平上皮癌ROS1遺伝子転座陽性の2次治療以降 非扁平上皮癌,ROS1遺伝子転座陽性 1次治療としてクリゾチニブ未使用の2次治療以降:PS 0-2 非扁平上皮癌,ROS1遺伝子転座陽性 1次治療としてクリゾチニブ使用の2次治療以降:PS 0-1 非扁平上皮癌,ROS1遺伝子転座陽性 1次治療としてクリゾチニブ使用の2次治療以降:PS 2
Ⅳ期非小細胞肺癌の2次治療以降 非扁平上皮癌EGFR遺伝子変異・ALK遺伝子転座・ROS1遺伝子転座陰性もしくは不明の2次治療以降 非扁平上皮癌,EGFR遺伝子変異・ALK遺伝子転座・ROS1遺伝子転座陰性もしくは不明 1次治療としてペムブロリズマブ未使用の2次治療以降:PS 0-1 非扁平上皮癌,EGFR遺伝子変異・ALK遺伝子転座・ROS1遺伝子転座陰性もしくは不明 1次治療としてペムブロリズマブ未使用の2次治療以降:PS 2 非扁平上皮癌,EGFR遺伝子変異・ALK遺伝子転座・ROS1遺伝子転座陰性もしくは不明 1次治療としてペムブロリズマブ使用の2次治療以降:PS 0-1 非扁平上皮癌,EGFR遺伝子変異・ALK遺伝子転座・ROS1遺伝子転座陰性もしくは不明 1次治療としてペムブロリズマブ使用の2次治療以降:PS 2
Ⅳ期非小細胞肺癌の2次治療以降 扁平上皮癌の2次治療以降 扁平上皮癌 1次治療としてペムブロリズマブ未使用の2次治療以降:PS 0-1 扁平上皮癌 1次治療としてペムブロリズマブ未使用の2次治療以降:PS 2 扁平上皮癌 1次治療としてペムブロリズマブ使用の2次治療以降:PS 0-1 扁平上皮癌 1次治療としてペムブロリズマブ使用の2次治療以降:PS 2
非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性もしくは不明),扁平上皮癌におけるエルロチニブ単剤の削除について
 2次治療以降の再発非小細胞肺癌を対象としたエルロチニブ単剤とプラセボとの比較第Ⅲ相試験においてエルロチニブによる延命効果が示され,エルロチニブ単剤は再発非小細胞肺癌に対する2次治療以降の治療選択肢の1つとなった。その後,再発非小細胞肺癌に対するエルロチニブ単剤とドセタキセル単剤の比較第Ⅲ相試験が海外と本邦で行われ,海外で行われたEGFR遺伝子変異陰性例を対象とした試験ではPFS,OSともにエルロチニブ群で劣る結果であった。本邦で行われた比較試験のサブセット解析でも,EGFR遺伝子変異陰性例におけるエルロチニブ群のPFSは1.3カ月,ドセタキセル群は2.9カ月(HR 1.45, P=0.01)とエルロチニブ群で劣る結果であり,扁平上皮癌を含むEGFR遺伝子変異陰性非小細胞肺癌におけるエルロチニブ単剤の有効性はドセタキセル単剤より低いことが示された。近年,再発非小細胞肺癌において,PD-1阻害剤であるニボルマブ単剤やペムブロリズマブ単剤,ドセタキセル+ラムシルマブ療法は,ドセタキセル単剤との比較試験において有意な生存期間の延長を認め再発非小細胞肺癌の標準治療となり,S-1単剤もドセタキセル単剤に対する非劣性が示され標準治療の1つとなった。新たに標準治療となったこれらの薬剤の治療成績と前述のドセタキセル単剤との比較試験の結果を考慮するとエルロチニブ単剤は有効性は低く,リスクの面においてもEGFR・ALK・ROS1陰性の非扁平上皮癌や扁平上皮癌はEGFR-TKIの間質性肺障害発症のリスク因子と報告されている臨床的背景をもつことが多く,間質性肺障害発症のリスクを考慮した慎重な患者選択が必要とされる。
 以上より,非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性もしくは不明),扁平上皮癌におけるエルロチニブ単剤は有効性と間質性肺障害のリスクなどから臨床的有用性は低いと考えられ削除した。
6-1.非扁平上皮癌,EGFR遺伝子エクソン19欠失とL858R変異陽性
1次治療としてEGFR-TKI未使用の2次治療以降:PS 0-2
推 奨
(第1・2世代の)EGFR-TKI単剤を行うよう勧められる。(グレードA)
エビデンス
 EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌を対象にした(第1・2世代の)EGFR-TKI単剤(ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ)とプラチナ製剤併用療法の比較第Ⅲ相試験が行われ,すべての試験において一貫してEGFR-TKI単剤のプラチナ製剤併用療法に対するPFSの有意な延長が報告されている1)~6)。一方で,上述の試験においてEGFR-TKI単剤のプラチナ製剤併用療法に対するOSの差は示されていない7)8)ことから,2次治療にEGFR-TKIを用いれば1次治療にEGFR-TKIを用いた場合とほぼ同様のOSとなる可能性を示している。Rosellらの大規模研究でも1次から3次治療のエルロチニブ単剤のPFSに有意差を認めないことを報告している9)
 EGFR遺伝子変異陽性例に対するEGFR-TKI単剤の最適な投与順序に関しては,現時点で明確な結論はないが,EGFR遺伝子変異陽性患者に対してはEGFR-TKI単剤による治療を逸しないことが推奨される。以上より,(第1・2世代の)EGFR-TKI単剤の推奨グレードをAとした。
6-2.非扁平上皮癌,EGFR遺伝子エクソン19欠失とL858R変異陽性
1次治療としてEGFR-TKI未使用の2次治療以降:PS 3-4
推 奨
ゲフィチニブ単剤を行うことを考慮してもよい。(グレードC1)
エビデンス
 PS 3-4に関しては細胞障害性抗癌剤治療の適応がなく,これまで症状緩和を施行してきた。しかし,1次治療ではあるがEGFR遺伝子変異陽性のPS 3-4が大多数を占める予後不良群を対象にゲフィチニブ単剤の投与を行った第Ⅱ相試験において,80%近くでPSが改善し,ORR 66%,OS 17.8カ月,PFS 6.5カ月と良好な治療効果が得られたことが報告されている10)。一方で,PS不良,男性,喫煙歴,既存の間質性肺炎,正常肺領域が少ないもの,心疾患を合併したものなどで間質性肺障害発症のリスクが高いことが報告されており11)12),慎重な検討も必要である。よって,PS 3-4に対してはゲフィチニブ単剤を推奨グレードC1とした。
6-3.非扁平上皮癌,EGFR遺伝子エクソン19欠失とL858R変異陽性
1次治療としてEGFR-TKI使用の2次治療以降:PS 0-1
推 奨

a.EGFR T790M変異陽性ではオシメルチニブ単剤を行うよう勧められる。(グレードA)

b.非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性,PD-L1陽性細胞<50%もしくは不明)の1次治療:PS 0-1で推奨されるレジメンを行うよう勧められる。(グレードB)

エビデンス

〈オシメルチニブ単剤〉

a.
オシメルチニブは活性型EGFR遺伝子変異と耐性変異であるEGFR T790M変異の両方を阻害する第3世代EGFR-TKIである。第1・2世代のEGFR-TKI治療後に病勢進行を認めたEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌のうち,再生検によってEGFR T790M陽性と診断されたPS 0-1の症例を対象として,オシメルチニブと化学療法(プラチナ製剤+PEM)を比較する第Ⅲ相試験が報告された。主要評価項目であるPFSはオシメルチニブ群が10.1カ月,標準化学療法群が4.4カ月(HR 0.30, 95%CI:0.23-0.41, P<0.001)とオシメルチニブ群で有意に良好であった。Grade 3以上の有害事象はオシメルチニブ群が化学療法群より低く(6% vs 34%),オシメルチニブ群における毒性の種類は下痢・皮疹・爪囲炎など従来のEGFR-TKIと同様で,間質性肺疾患の頻度は3%であった13)。なお,同様の対象について行われた第Ⅰ・Ⅱ相試験において,日本人81人のサブグループ解析では間質性肺疾患が5人(6%)に生じており,そのうち重篤なものは3人(4%)であった14)
 以上より,本対象におけるオシメルチニブの推奨グレードをA,プラチナ併用療法の推奨グレードをBとした。

〈非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性,PD-L1陽性細胞<50%もしくは不明)の1次治療:PS 0-1で推奨されるレジメン〉

b.
複数の1次治療の第Ⅲ相試験においてEGFR-TKI単剤はプラチナ併用療法に対して有意なOSの延長がなかった。このことは大半の症例で後治療でのクロスオーバーがなされたことが影響していると考えられている。EGFR-TKI後の治療における最適な化学療法の詳細な検討がなされていない現状では,非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性,PD-L1陽性細胞<50%もしくは不明)の1次治療に準じて治療を行う。
 一方,EGFR-TKI耐性後のEGFR-TKIの継続投与に関しては,初回治療のゲフィチニブに耐性となったEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌を対象に,CDDP+PEM併用療法にゲフィチニブの継続投与を行う群と行わない群を比較する第Ⅲ相試験が行われ,主要評価項目であるPFSは両群ともに5.4カ月(HR 0.86,P=0.27)と差を認めず,OSにおいてはゲフィチニブの継続投与群で14.8カ月,継続投与なし群で17.2カ月であり(HR 1.62,P=0.03),継続投与群でOSを下回る結果であった15)
 以上より,EGFR-TKI耐性後に化学療法に併用したEGFR-TKIの継続投与による有用性は示されておらず勧められない。
6-4.非扁平上皮癌,EGFR遺伝子エクソン19欠失とL858R変異陽性
1次治療としてEGFR-TKI使用の2次治療以降:PS 2
推 奨
非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性もしくは不明)の1次治療:PS 2で推奨されるレジメンを行うよう勧められる。(グレードB)
エビデンス
 複数の1次治療の第Ⅲ相試験においてEGFR-TKI単剤はプラチナ併用療法に対して有意なOSの延長がなかった。このことは大半の症例で後治療でのクロスオーバーがなされたことが影響していると考えられている。EGFR-TKI後の治療における最適な化学療法の詳細な検討がなされていない現状では,非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性もしくは不明)の1次治療に準じて治療を行う。
6-5.非扁平上皮癌,EGFR遺伝子エクソン18-21の遺伝子変異(エクソン19欠失とL858R変異を除く)陽性
1次治療としてEGFR-TKI未使用の2次治療以降:PS 0-2
推 奨

a.非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性もしくは不明)の2次治療以降で推奨されるレジメンを行うよう勧められる。(グレードB)

b.(第1・2世代の)EGFR-TKI単剤を行うことを考慮してもよい。(グレードC1)

エビデンス
a・b.
EGFR遺伝子変異の約90%をエクソン19欠失とL858R変異が占め,その他の遺伝子変異はuncommon mutationと称され,エクソン18-21にわたりE709X,G719X,S768I,P848L,L861Q,エクソン19の挿入変異などが報告されている。
 EGFR遺伝子変異陽性の未治療進行非小細胞肺癌を対象にした第1・2世代のEGFR-TKI単剤とプラチナ製剤併用療法の比較第Ⅲ相試験において,EGFR遺伝子変異の大部分はエクソン19欠失もしくはL858R変異であり,エクソン18-21の遺伝子変異陽性例に対するEGFR-TKIの有効性に関しては限られたデータしかない。サブグループ解析やレトロスペクティブな報告からは,T790Mとエクソン20の挿入変異以外のエクソン18-21の遺伝子変異に対するEGFR-TKIはORR 48~71%,PFS 5.0~10.7カ月と報告されており,有効性はエクソン19欠失やL858R変異と比べると劣ることが示されている16)17)。アファチニブに関してはORR 71.1%,PFS 10.7カ月とゲフィチニブやエルロチニブより良好な成績が示されている17)
 以上より,エクソン18-21の遺伝子変異陽性例に対して第1・2世代のEGFR-TKI単剤は,ある程度の効果が期待できると考えられるが,データは限られており,非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性もしくは不明)の2次治療以降で推奨されるレジメンの推奨グレードをBとし,第1・2世代のEGFR-TKI単剤の推奨グレードはC1とした。
6-6.非扁平上皮癌,EGFR遺伝子エクソン18-21の遺伝子変異(エクソン19欠失とL858R変異を除く)陽性
1次治療としてEGFR-TKI使用の2次治療以降:PS 0-1
推 奨

a.EGFR T790M変異陽性ではオシメルチニブ単剤を行うよう勧められる。(グレードA)

b.非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性,PD-L1陽性細胞<50%もしくは不明)の1次治療:PS 0-1で推奨されるレジメンを行うよう勧められる。(グレードB)

エビデンス

〈オシメルチニブ単剤〉

a.
オシメルチニブは活性型EGFR遺伝子変異と耐性変異であるEGFR T790M変異の両方を阻害する第3世代EGFR-TKIである。第1・2世代のEGFR-TKI治療後に病勢進行を認めたEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌のうち,再生検によってEGFR T790M陽性と診断されたPS 0-1の症例を対象として,オシメルチニブと化学療法(プラチナ製剤+PEM)を比較する第Ⅲ相試験が報告された。主要評価項目であるPFSはオシメルチニブ群が10.1カ月,標準化学療法群が4.4カ月(HR 0.30, 95%CI:0.23-0.41, P<0.001)とオシメルチニブ群で有意に良好であった。Grade 3以上の有害事象はオシメルチニブ群が化学療法群より低く(6% vs 34%),オシメルチニブ群における毒性の種類は下痢・皮疹・爪囲炎など従来のEGFR-TKIと同様で,間質性肺疾患の頻度は3%であった13)。なお,同様の対象について行われた第Ⅰ・Ⅱ相試験において,日本人81人のサブグループ解析では間質性肺疾患が5人(6%)に生じており,そのうち重篤なものは3人(4%)であった14)
 以上より,本対象におけるオシメルチニブの推奨グレードをA,プラチナ併用療法の推奨グレードをBとした。

〈非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性,PD-L1陽性細胞<50%もしくは不明)の1次治療:PS 0-1で推奨されるレジメン〉

b.
複数の1次治療の第Ⅲ相試験においてEGFR-TKI単剤はプラチナ併用療法に対して有意なOSの延長がなかった。このことは大半の症例で後治療でのクロスオーバーがなされたことが影響していると考えられている。EGFR-TKI後の治療における最適な化学療法の詳細な検討がなされていない現状では,非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性,PD-L1陽性細胞<50%もしくは不明)の1次治療に準じて治療を行う。
 一方,EGFR-TKI耐性後のEGFR-TKIの継続投与に関しては,初回治療のゲフィチニブに耐性となったEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌を対象に,CDDP+PEM併用療法にゲフィチニブの継続投与を行う群と行わない群を比較する第Ⅲ相試験が行われ,主要評価項目であるPFSは両群ともに5.4カ月(HR 0.86,P=0.27)と差を認めず,OSにおいてはゲフィチニブの継続投与群で14.8カ月,継続投与なし群で17.2カ月であり(HR 1.62,P=0.03),継続投与群でOSを下回る結果であった15)
 以上より,EGFR-TKI耐性後に化学療法に併用したEGFR-TKIの継続投与による有用性は示されおらず勧められない。
6-7.非扁平上皮癌,EGFR遺伝子エクソン18-21の遺伝子変異(エクソン19欠失とL858R変異を除く)陽性
1次治療としてEGFR-TKI使用の2次治療以降:PS 2
推 奨
非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性もしくは不明)の1次治療:PS 2で推奨されるレジメンを行うよう勧められる。(グレードB)
エビデンス
 複数の1次治療の第Ⅲ相試験においてEGFR-TKI単剤はプラチナ併用療法に対して有意なOSの延長がなかった。このことは大半の症例で後治療でのクロスオーバーがなされたことが影響していると考えられている。EGFR-TKI後の治療における最適な化学療法の詳細な検討がなされていない現状では,非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性もしくは不明)の1次治療に準じて治療を行う。
6-8.非扁平上皮癌,ALK遺伝子転座陽性
1次治療としてALK-TKI未使用の2次治療以降:PS 0-2
推 奨

a.アレクチニブ単剤を行うよう勧められる。(グレードA)

b.クリゾチニブ単剤を行うよう勧められる。(グレードB)

エビデンス

〈アレクチニブ単剤〉

a.
アレクチニブは,ALK-TKI未治療のALK遺伝子転座陽性進行非小細胞肺癌を対象とした第Ⅰ-Ⅱ相試験においてORR 93.5%の良好な結果を示し18),その後のフォローアップにて29カ月以上のPFSが推定されている19)。また,本邦においてALK-TKI未治療のALK遺伝子転座陽性患者を対象としたアレクチニブとクリゾチニブの比較第Ⅲ相試験が行われ,主要評価項目であるPFSはアレクチニブ群で有意な延長を認め(未到達vs 10.2カ月:HR 0.34,P<0.001),Grade 3以上の毒性もアレクチニブ群で少なかった(26% vs 51%)20)
 以上より,アレクチニブ単剤を行うよう勧められ,推奨グレードはAとした。

〈クリゾチニブ単剤〉

b.
プラチナ製剤治療歴のあるALK遺伝子転座陽性例を対象とし,2次治療以降としてクリゾチニブと標準化学療法(PEMまたはDTX)を比較する第Ⅲ相試験が報告され,主要評価項目であるPFSはクリゾチニブ群が7.7カ月,標準化学療法群が3.0カ月(HR 0.49,95%CI:0.37-0.64,P<0.001)とクリゾチニブ群で有意に良好であった21)
 以上より,クリゾチニブ単剤を行うよう勧められるが,上述のアレクチニブとクリゾチニブの比較第Ⅲ相試験において主要評価項目であるPFSはアレクチニブ群で有意に良好であり,クリゾチニブの推奨グレードはBとした。
6-9.非扁平上皮癌,ALK遺伝子転座陽性
1次治療としてクリゾチニブ使用の2次治療以降:PS 0-1
推 奨

a.非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性,PD-L1陽性細胞<50%もしくは不明)の1次治療:PS 0-1で推奨されるレジメンを行うよう勧められる。(グレードB)

b.アレクチニブ単剤を行うよう勧められる。(グレードB)

c.セリチニブ単剤を行うよう勧められる。(グレードB)

エビデンス

〈非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性,PD-L1陽性細胞<50%もしくは不明)の1次治療:PS 0-1で推奨されるレジメン〉

a.
1次治療としてALK遺伝子転座陽性の進行非小細胞肺癌を対象にしたクリゾチニブとプラチナ製剤併用療法の比較第Ⅲ相試験22)におけるOSは十分な観察期間が得られていないが,現時点では差がなく,クロスオーバーされていることが原因と考えられていること,現時点で報告されている耐性機序は化学療法と異なることより,非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性,PD-L1陽性細胞<50%もしくは不明)の1次治療に準じて治療を行う。

〈アレクチニブ単剤〉

b.
クリゾチニブ耐性後のALK遺伝子転座陽性進行非小細胞肺癌を対象とし,アレクチニブを投与するⅠ-Ⅱ相試験ならびに第Ⅱ相試験が海外で行われ,ORR 48~50%,PFS 8.1~8.9カ月の良好な成績が報告されている23)~25)。少数例の検討ではあるが,日本で行われたクリゾチニブ既治療の23例に対してアレクチニブを投与した試験では,ORR 65%,PFSは12.9カ月であった26)。プラチナ製剤併用療法と比較したデータはないものの,少なくとも同程度の有効性は期待できると考え,推奨グレードはBとした。

〈セリチニブ単剤〉

c.
ALK遺伝子転座陽性進行非小細胞肺癌を対象としセリチニブを投与する第Ⅰ相試験が行われ,expansion phaseでのサブグループ解析において,クリゾチニブ既治療の80例でORR 56%,PFS 6.9カ月の成績が報告された27)。主な毒性は悪心(82%),下痢(75%),嘔吐(65%),倦怠感(47%),肝機能障害(35%)であった。また,クリゾチニブならびにプラチナ併用療法後に増悪したALK遺伝子転座陽性例を対象とした単アームの第Ⅱ相試験において,ORR 38.6%,PFS 5.7カ月の成績が報告されている28)。本邦で行われた第Ⅰ相試験においては,クリゾチニブ既治療の9例中5例でPRの効果が得られた29)
 アレクチニブ同様,プラチナ製剤併用療法と比較したデータはないものの,少なくとも同程度の有効性は期待できると考え,推奨グレードはBとした。
6-10.非扁平上皮癌,ALK遺伝子転座陽性
1次治療としてクリゾチニブ使用の2次治療以降:PS 2
推 奨

a.非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性もしくは不明)の1次治療:PS 2で推奨されるレジメンを行うよう勧められる。(グレードB)

b.アレクチニブ単剤を行うよう勧められる。(グレードB)

c.セリチニブ単剤を行うよう勧められる。(グレードB)

エビデンス

〈非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性もしくは不明)の1次治療:PS 2で推奨されるレジメン〉

a.
1次治療としてALK遺伝子転座陽性の進行非小細胞肺癌を対象にしたクリゾチニブとプラチナ製剤併用療法の比較第Ⅲ相試験22)におけるOSは十分な観察期間が得られていないが,現時点では差がなくクロスオーバーされていることが原因と考えられていること,現時点で報告されている耐性機序は化学療法と異なることより,非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性もしくは不明)の1次治療に準じて治療を行う。

〈アレクチニブ単剤〉

b.
クリゾチニブ耐性後のALK遺伝子転座陽性進行非小細胞肺癌を対象とし,アレクチニブを投与するⅠ-Ⅱ相試験ならびに第Ⅱ相試験が海外で行われ,ORR 48~50%,PFS 8.1~8.9カ月の良好な成績が報告されている23)~25)。少数例の検討ではあるが,本邦で行われたクリゾチニブ既治療の23例に対してアレクチニブを投与した試験では,ORR 65%,PFSは12.9カ月であった26)。プラチナ製剤併用療法と比較したデータはないものの,少なくとも同程度の有効性は期待できると考え,推奨グレードはBとした。

〈セリチニブ単剤〉

c.
ALK遺伝子転座陽性進行非小細胞肺癌を対象としセリチニブを投与する第Ⅰ相試験が行われ,expansion phaseでのサブグループ解析において,クリゾチニブ既治療の80例でORR 56%,PFS 6.9カ月の成績が報告された27)。主な毒性は悪心(82%),下痢(75%),嘔吐(65%),倦怠感(47%),肝機能障害(35%)であった。また,クリゾチニブならびにプラチナ併用療法後に増悪したALK遺伝子転座陽性例を対象とした単アームの第Ⅱ相試験において,ORR 38.6%,PFS 5.7カ月の成績が報告されている28)。本邦で行われた第Ⅰ相試験においては,クリゾチニブ既治療の9例中5例でPRの効果が得られた29)
 アレクチニブ同様,プラチナ製剤併用療法と比較したデータはないものの,少なくとも同程度の有効性は期待できると考え,推奨グレードはBとした。
6-11.非扁平上皮癌,ALK遺伝子転座陽性
1次治療としてアレクチニブ使用の2次治療以降:PS 0-1
推 奨
非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性,PD-L1陽性細胞<50%もしくは不明)の1次治療:PS 0-1で推奨されるレジメンを行うよう勧められる。(グレードB)
エビデンス
 現時点では,クリゾチニブのようにプラチナ製剤と比較する第Ⅲ相試験の報告はないが,今までのEGFR-TKI,ALK-TKIの蓄積されたデータも参考とし,非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性,PD-L1陽性細胞<50%もしくは不明)の1次治療に準じて治療を行う。
 アレクチニブ使用例に対するクリゾチニブ使用については前向き試験での検討はなされていない。
6-12.非扁平上皮癌,ALK遺伝子転座陽性
1次治療としてアレクチニブ使用の2次治療以降:PS 2
推 奨
非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性もしくは不明)の1次治療 :PS 2で推奨されるレジメンを行うよう勧められる。(グレードB)
エビデンス
 現時点では,クリゾチニブのようにプラチナ製剤と比較する第Ⅲ相試験の報告はないが,今までのEGFR-TKI,ALK-TKIの蓄積されたデータも参考とし,非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性もしくは不明)の1次治療に準じて治療を行う。
 アレクチニブ使用例に対するクリゾチニブ使用については前向き試験での検討はなされていない。
6-13.非扁平上皮癌,ROS1遺伝子転座陽性
1次治療としてクリゾチニブ未使用の2次治療以降:PS 0-2
推 奨
クリゾチニブ単剤を行うよう勧められる。(グレードA)
エビデンス
 ROS1遺伝子転座陽性の進行非小細胞肺癌患者を対象としたクリゾチニブ単剤の第Ⅰ相試験が行われ, 拡大コホートでの50症例においてORR 72%,PFS 19.2カ月の良好な結果が報告された。毒性に関しては視覚障害,下痢,吐き気などの頻度が高かったが多くはGrade 2以下であり,ALK遺伝子転座陽性例に対するクリゾチニブ単剤の毒性と同様であった30)
 その後,日本を含む東アジアにおいて前治療の化学療法が3レジメン以下のROS1遺伝子転座陽性進行非小細胞肺癌に対する第Ⅱ相試験が行われ,主要評価項目であるORRは69.3%でCRが11%に認められ,PFSは13.4カ月と良好な結果が報告されている31)
 以上,ROS1遺伝子転座陽性例に対するクリゾチニブ単剤はプラチナ併用療法との比較試験はないが,第Ⅰ/Ⅱ相試験において非常に高い有効性が示されており,ドライバー遺伝子に対する薬剤の特性と併せて,推奨グレードはAとした。
6-14.非扁平上皮癌,ROS1遺伝子転座陽性
1次治療としてクリゾチニブ使用の2次治療以降:PS 0-1
推 奨
非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性,PD-L1陽性細胞<50%もしくは不明)の1次治療:PS 0-1で推奨されるレジメンを行うよう勧められる。(グレードB)
エビデンス
 ROS1遺伝子転座陽性に対するクリゾチニブとプラチナ製剤の比較試験の報告はないが,今までのEGFR-TKI,ALK-TKIの蓄積されたデータを参考とし,非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性,PD-L1陽性細胞<50%もしくは不明)の1次治療に準じて治療を行う。
6-15.非扁平上皮癌,ROS1遺伝子転座陽性
1次治療としてクリゾチニブ使用の2次治療以降:PS 2
推 奨
非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性もしくは不明)の1次治療:PS 2で推奨されるレジメンを行うよう勧められる。(グレードB)
エビデンス
 ROS1遺伝子転座陽性に対するクリゾチニブとプラチナ製剤の比較試験の報告はないが,今までのEGFR-TKI,ALK-TKIの蓄積されたデータを参考とし,非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性もしくは不明)の1次治療に準じて治療を行う。
6-16.非扁平上皮癌,EGFR遺伝子変異・ALK遺伝子転座・ROS1遺伝子転座陰性もしくは不明
1次治療としてペムブロリズマブ未使用の2次治療以降:PS 0-1
推 奨

a.PD-1阻害剤を行うよう勧められる。(グレードA)

b.ラムシルマブは適応と考えられる症例においてドセタキセルに追加するよう勧められる。(グレードB)

c.ドセタキセル単剤を行うよう勧められる。(グレードB)

d.ペメトレキセド単剤を行うよう勧められる。(グレードB)

e.S-1単剤を行うよう勧められる。(グレードB)

エビデンス

〈PD-1阻害剤〉

a-1.ペムブロリズマブ単剤

 進行非小細胞肺癌を対象としたペムブロリズマブの第Ⅰ相試験が行われ,既治療の394例におけるORRは18.0%,PFS 3.0カ月,OS 9.3カ月の成績が報告された。主な毒性は疲労,瘙痒,食欲低下などであり,Grade 3以上の毒性は9.5%と忍容性は良好であった。この試験においてペムブロリズマブの投与方法は2mg/kg 3週毎,10mg/kg 3週毎,10mg/kg 2週毎での検討が行われたが用量や投与スケジュールによる有効性や毒性の差は認めなかった。腫瘍細胞のPD-L1発現レベルと有効性の検討では, PD-L1陽性細胞≧50%の既治療例でのORRは43.9%,PFS 6.1カ月,OS未到達であり,PD-L1の発現が1~49%,1%未満の症例と比較し良好であった32)
 その後,プラチナ併用療法を含む治療後に再発し腫瘍細胞のPD-L1陽性細胞≧1%の進行非小細胞肺癌を対象とし,ペムブロリズマブ単剤とDTX単剤を比較するランダム化比較Ⅱ/Ⅲ相試験が行われ,1,034例がペムブロリズマブ2mg/kg群,ペムブロリズマブ10mg/kg群,DTX群の3群に割り付けられた。主要評価項目は全集団ならびにPD-L1陽性細胞≧50%の症例におけるOSとPFSであった。全集団のOSは,それぞれ10.4カ月,12.7カ月,8.5カ月であり,DTX群に対して2mg/kg群でHR 0.71(P=0.0008),10mg/kgでHR 0.61(P<0.0001)と有意な延長を示した。PFSはそれぞれ3.9カ月,4.0カ月,4.0カ月と差を認めなかったが,ORRはそれぞれ18%,18%,9%とペムブロリズマブ群で有意に良好であった。PD-L1陽性細胞≧50%の症例におけるOSは,ペムブロリズマブ2mg/kg群で14.9カ月,10mg/kg群で17.3カ月,DTX群で8.2カ月であり,DTX群に対して2mg/kg群でHR 0.54(P=0.0002),10mg/kgでHR 0.50 (P<0.0001) と有意な延長を示し,PFSにおいてもそれぞれ5.0カ月(HR 0.59,P=0.0001),5.2カ月(HR 0.59,P<0.0001),4.1カ月とペムブロリズマブ群で有意に良好であった。ORRもそれぞれ30%,29%,8%とペムブロリズマブ群で有意に良好であり, PD-L1陽性細胞≧50%の症例においてOS,PFS,ORRともにDTX単剤との差は顕著であった。毒性に関しては,Grade 3以上の毒性はペムブロリズマブ2mg/kg群で13%,10mg/kg群で16%,DTX群で35%とペムブロリズマブ群で頻度が低く,ペムブロリズマブの免疫関連の毒性として甲状腺機能障害,肺臓炎,皮膚障害などが認められた。また,この試験においてペムブロリズマブ2mg/kg群と10mg/kg群での有効性や毒性の差は認めなかったことが報告されている33)
 以上より,PD-L1陽性細胞≧1%の症例においてペムブロリズマブ単剤を行うよう勧められ,推奨グレードはAとした。

a-2.ニボルマブ単剤

 プラチナ併用療法の治療歴を有する進行非扁平上皮非小細胞肺癌の2次治療として,ニボルマブ単剤とDTX単剤を比較する第Ⅲ相試験が行われ,主要評価項目であるOSはニボルマブ群で有意な延長を認め(12.2カ月vs 9.4カ月,HR 0.73,P=0.002),1年生存率もニボルマブ群で良好であった(51% vs 39%)。ORRはニボルマブ群で有意に良好であったが(19% vs 12%,P=0.02),PFSはニボルマブ群で2.3カ月,ドセタキセル群で4.2カ月(HR 0.92,P=0.39)と両群に差を認めなかった。この試験におけるOS,PFSのカプランマイヤー曲線は,前半にニボルマブが下回り,6カ月以降からニボルマブが上回るという結果であった。奏効例では長期にわたる効果が期待できるなどの免疫チェックポイント阻害剤の薬剤の特性を加味する必要はあるが,非扁平上皮癌においてはニボルマブあるいはDTXに対する治療反応性の異なる集団が一定の割合で存在することが示唆される。毒性に関しては,主な毒性としてニボルマブ群で倦怠感,吐き気,食欲低下,DTX群で好中球減少,倦怠感,脱毛などであり,Grade 3以上の毒性はニボルマブ群で有意に少なかった(10% vs 54%)。一方,ニボルマブ群で肺臓炎,甲状腺機能障害,大腸炎,肝機能障害,皮疹,Ⅰ型糖尿病などの免疫関連の毒性が報告されており,免疫関連の毒性管理には注意が必要である34)
 また,本邦において再発非小細胞肺癌を対象としたニボルマブ単剤の第Ⅱ相試験が行われ,非扁平上皮癌でORR 19.7%,PFS 2.8カ月の成績が報告された。主な毒性は発熱,倦怠感,食欲低下,発疹などであり,Grade 3以上の毒性は16.2%と忍容性は良好であったが,間質性肺合併症(間質性肺炎+肺障害)が7.2%(Grade 3以上が3.6%)に認められた35)
 以上より,ニボルマブ単剤を行うよう勧められ,推奨グレードはAとした。
 前回,ニボルマブ単剤の推奨グレードはBであったが,今回は同じPD-1阻害剤であるペムブロリズマブ単剤の比較試験においてもDTX単剤と比較し有意なOSの延長という同様の結果が得られ,忍容性も良好であることより,両薬剤の推奨グレードはAとした。

〈ドセタキセル+ラムシルマブ併用療法〉

b.
プラチナ併用療法後に増悪した進行非小細胞肺癌症例を対象とし,ラムシルマブ+DTX併用療法とDTX単剤を比較する第Ⅲ相試験が行われ,主要評価項目であるOSは,ラムシルマブ併用群で有意な延長を認めた(10.5カ月vs 9.1カ月,HR 0.86,P=0.023)。また,ラムシルマブ併用群において,PFS(4.5カ月vs 3.0カ月,HR 0.76,P<0.0001),ORR(23% vs 14%,P<0.0001)も有意に良好であった。毒性に関しては,ラムシルマブ併用群でGrade 3/4の好中球減少,発熱性好中球減少,全Gradeの血小板減少,口内炎がより高頻度であったが,Grade 3以上の高血圧は6%で出血性イベントの多くはGrade 1/2であった36)。また,本邦においてラムシルマブ+DTX併用療法とDTX単剤のランダム化比較第Ⅱ相試験が行われ,ラムシルマブ併用群においてPFS(5.22カ月vs 4.21カ月,HR 0.83),OS(15.15カ月vs 13.93カ月,HR 0.77),ORR(28.9% vs 18.5%)ともに良好な結果が示された。毒性に関しては,ラムシルマブ併用群において発熱性好中球減少の頻度が高く(34% vs 19%),低アルブミン血症,血小板減少,口内炎,鼻出血,蛋白尿などもDTX単剤よりも高頻度であったが,ほとんどはGrade 1/2であった37)。ラムシルマブにおいてもベバシズマブと同様に出血リスクには注意が必要であり,投与に際してはその適応を十分検討する必要がある。
 以上より,ラムシルマブは適応と考えられる症例においてDTXに追加するよう勧められる。効果と発熱性好中球減少をはじめとする有害事象のバランスを考慮し,推奨グレードはBとした。

〈ドセタキセル単剤〉

c.
プラチナ製剤を含む化学療法無効または奏効後に再発した非小細胞肺癌患者を対象としたDTX単剤の第Ⅲ相試験が2つ報告されている。1つはDTX(100mg/m2 or 75mg/m2) vs VNR or IFMの比較試験でMSTでは有意差を認めないもののDTX 75mg/m2群でコントロール群と比較してORR,26週PFS率,1年生存率の有意な改善を認めた38)。また,DTX(100mg/m2 or 75mg/m2)とBSCの比較ではMST,1年生存率は,DTX 75mg/m2,BSC群でそれぞれ7.5カ月と37%,4.6カ月と19%でDTX群で有意に優れ(P=0.010,P=0.003),QOLの改善も認められた39)。いずれの試験においても,DTX 75mg/m2群が最も治療成績が優れており,プラチナ製剤を含む治療後の不応ないし再発例に対する非小細胞癌の化学療法としてはDTX 75mg/m2の有用性が確立された。本邦における承認用量は60mg/m2であるが,本邦で行われたこの用量における第Ⅱ相試験でORR 18.2%,MST 7.8カ月と上記2つの第Ⅲ相試験のDTX 75mg/m2と同等の効果を有する結果を報告した40)
 以上より,DTX単剤を行うよう勧められる。従来DTX単剤の推奨グレードはAであったが,今回3つの第Ⅲ相試験においてDTX単剤はペムブロリズマブ単剤,ニボルマブ単剤,DTX+ラムシルマブ療法にOSで有意に劣っていたことから,推奨グレードはBとした。

〈ペメトレキセド単剤〉

d.
2004年に再発非小細胞肺癌の2次治療におけるPEM単剤とDTX単剤のランダム化比較第Ⅲ相試験が報告され,ORR,MSTはPEM群で9.1%,8.3カ月,DTX単剤群で8.8%,7.9カ月であり,主要評価項目であるMSTで同等の効果が報告された。毒性に関しては,Grade 3/4の好中球減少,発熱性好中球減少,全Gradeの脱毛の発現率がDTX群で有意に高かった41)。同試験を組織学的にレトロスペクティブに解析した結果,OSは非扁平上皮癌でそれぞれ9.3カ月と8.0カ月(HR 0.78,P=0.047)であるのに対し,扁平上皮癌でそれぞれ6.2カ月と7.4カ月(HR 1.56,P=0.018)であり,扁平上皮癌で有意差をもってDTX群で良好であった。また,mPFSにおいても,非扁平上皮癌でそれぞれ3.1カ月と3.0カ月(HR 0.82,P=0.076)と有意差を認めないものの,扁平上皮癌でそれぞれ2.3カ月と2.7カ月(HR 1.40,P=0.046)であり有意にDTX群が良好であったと報告された42)。一方本邦において,既治療非小細胞肺癌を対象にPEM 500mg/m2と1,000mg/m2のランダム化比較第Ⅱ相試験が行われ,用量による有意な効果と毒性の差を認めなかった43)。さらに,既治療非小細胞肺癌を対象にPEM 500mg/m2と900mg/m2のランダム化比較第Ⅲ相試験が行われ,ORR,MST,PFSは,500mg/m2群で7.1%,6.7カ月,2.6カ月,900mg/m2群で4.3%,6.9カ月,2.8カ月と統計学的に有意差を認めず,Grade 3/4の毒性は両群とも5%未満で900mg/m2群にて毒性の頻度が高い傾向にあったと報告された44)
 以上より,PEM単剤を行うよう勧められる。従来PEM単剤の推奨グレードはAであったが,DTX単剤と同様の理由で推奨グレードはBとした。

〈S-1単剤〉

e.
プラチナ既治療の再発非小細胞肺癌,PS 0-2を対象とし,S-1単剤とDTX単剤を比較する第Ⅲ相試験が日本を含むアジアで行われ,全生存期間中央値はS-1群で12.75カ月,DTX群で12.52カ月(HR 0.945, P=0.3818)であり,主要評価項目であるOSにおいてS-1単剤のDTX単剤に対する非劣性が示された。PFSはS-1群 2.86カ月,DTX群 2.89カ月(HR 1.033)で両群に差を認めず,ORRはS-1群8.3%,DTX群9.9%であった。毒性に関しては,発熱性好中球減少ならびにGrade 3以上の好中球減少の頻度はDTX群で高く(0.9% vs 13.6%,5.4% vs 47.7%),全Gradeの下痢と口腔粘膜障害の頻度はS-1群で高かったが(37.2% vs 18.2%,23.9% vs 14.5%),Grade 3以上の頻度は低く忍容性は良好であった45)
 以上より,S-1単剤はDTX単剤に対する非劣性が示されており行うよう勧められ,推奨グレードはBとした。
6-17.非扁平上皮癌,EGFR遺伝子変異・ALK遺伝子転座・ROS1遺伝子転座陰性もしくは不明
1次治療としてペムブロリズマブ未使用の2次治療以降:PS 2
推 奨

a.ドセタキセル単剤を行うよう勧められる。(グレードA)

b.ペメトレキセド単剤を行うよう勧められる。(グレードA)

c.S-1単剤を行うよう勧められる。(グレードA)

エビデンス

〈ドセタキセル単剤〉

a.
プラチナ製剤を含む化学療法無効または奏効後に再発した非小細胞肺癌患者を対象としたDTX単剤の第Ⅲ相試験が2つ報告されている。1つはDTX(100mg/m2 or 75mg/m2)vs VNR or IFMの比較試験でMSTでは有意差を認めないもののDTX 75mg/m2群でコントロール群と比較してORR,26週PFS率,1年生存率の有意な改善を認めた38)。また,DTX(100mg/m2 or 75mg/m2)とBSCの比較ではMST,1年生存率は,DTX 75mg/m2,BSC群でそれぞれ7.5カ月と37%,4.6カ月と19%でDTX群で有意に優れ(P=0.010,P=0.003),QOLの改善も認められた39)。いずれの試験においても,DTX 75mg/m2群が最も治療成績が優れており,プラチナ製剤を含む治療後の不応ないし再発例に対する非小細胞癌の化学療法としてはDTX 75mg/m2の有用性が確立された。本邦における承認用量は60mg/m2であるが,本邦で行われたこの用量における第Ⅱ相試験でORR 18.2%,MST 7.8カ月と上記2つの第Ⅲ相試験のDTX 75mg/m2と同等の効果を有する結果を報告した40)
 以上より,DTX単剤を行うよう勧められ,推奨グレードはAとした。

〈ペメトレキセド単剤〉

b.
2004年に再発非小細胞肺癌の2次治療におけるPEM単剤とDTX単剤のランダム化比較第Ⅲ相試験が報告され,ORR,MSTはPEM群で9.1%,8.3カ月,DTX群で8.8%,7.9カ月であり,主要評価項目であるMSTで同等の効果が報告された。毒性に関しては,Grade 3/4の好中球減少,発熱性好中球減少,全Gradeの脱毛の発現率がDTX群で有意に高かった41)。同試験を組織学的にレトロスペクティブに解析した結果,OSは非扁平上皮癌でそれぞれ9.3カ月と8.0カ月(HR 0.78,P=0.047)であるのに対し,扁平上皮癌でそれぞれ6.2カ月と7.4カ月(HR 1.56,P=0.018)であり,扁平上皮癌で有意差をもってDTX群で良好であった。また,mPFSにおいても,非扁平上皮癌でそれぞれ3.1カ月と3.0カ月(HR 0.82,P=0.076)と有意差を認めないものの,扁平上皮癌でそれぞれ2.3カ月と2.7カ月(HR 1.40,P=0.046)であり有意にDTX群が良好であったと報告された42)。一方本邦において,既治療非小細胞肺癌を対象にPEM 500mg/m2と1,000mg/m2のランダム化比較第Ⅱ相試験が行われ,用量による有意な効果と毒性の差を認めなかった43)。さらに,既治療非小細胞肺癌を対象にPEM 500mg/m2と900mg/m2のランダム化比較第Ⅲ相試験が行われ,ORR,MST,mPFSは,500mg/m2群で7.1%,6.7カ月,2.6カ月,900mg/m2群で4.3%,6.9カ月,2.8カ月と統計学的に有意差を認めず,Grade 3/4の毒性は両群とも5%未満で900mg/m2群にて毒性の頻度が高い傾向にあったと報告された44)
 以上より,PEM単剤を行うよう勧められ,推奨グレードはAとした。

〈S-1単剤〉

c.
プラチナ既治療の再発非小細胞肺癌,PS 0-2を対象とし,S-1単剤とDTX単剤を比較する第Ⅲ相試験が日本を含むアジアで行われ,全生存期間中央値はS-1群で12.75カ月,DTX群で12.52カ月(HR 0.945, P=0.3818)であり,主要評価項目であるOSにおいてS-1単剤のDTX単剤に対する非劣性が示された。PFSはS-1群2.86カ月,DTX群2.89カ月(HR 1.033)で両群に差を認めず,ORRはS-1群8.3%,DTX群9.9%であった。毒性に関しては,発熱性好中球減少ならびにGrade 3以上の好中球減少の頻度はDTX群で高く(0.9% vs 13.6%,5.4% vs 47.7%),全Gradeの下痢と口腔粘膜障害の頻度はS-1群で高かったが(37.2% vs 18.2%,23.9% vs 14.5%),Grade 3以上の頻度は低く忍容性は良好であった45)
 以上より,S-1単剤はDTX単剤に対する非劣性が示されており行うよう勧められ,推奨グレードはAとした。
6-18.非扁平上皮癌,EGFR遺伝子変異・ALK遺伝子転座・ROS1遺伝子転座陰性もしくは不明
1次治療としてペムブロリズマブ使用の2次治療以降:PS 0-1
推 奨
非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性,PD-L1陽性細胞<50%もしくは不明)の1次治療:PS 0-1で推奨されるレジメンを行うよう勧められる。(グレードB)
エビデンス
 EGFR遺伝子変異とALK遺伝子転座陰性で腫瘍細胞のPD-L1陽性細胞≧50%の進行非小細胞肺癌を対象とし,初回治療としてペムブロリズマブ単剤とプラチナ併用療法を比較する第Ⅲ相試験が行われ,主要評価項目であるPFSは10.3カ月 vs 6.0カ月(HR 0.50,95%CI:0.37-0.68, P<0.001)とペムブロリズマブ群で有意に良好であった。この試験においてプラチナ併用療法群の44%が増悪後にペムブロリズマブ単剤にクロスオーバーされていたが,OSにおいてもペムブロリズマブ群で良好であったことが報告されている(HR 0.60, P=0.005)46)。ペムブロリズマブ後の化学療法に関するデータは少なく,現時点では今まで蓄積されたデータを参考とし,非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性,PD-L1陽性細胞<50%もしくは不明)PS 0-1の1次治療に準じて治療を行う。
6-19.非扁平上皮癌,EGFR遺伝子変異・ALK遺伝子転座・ROS1遺伝子転座陰性もしくは不明
1次治療としてペムブロリズマブ使用の2次治療以降:PS 2
推 奨
非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性もしくは不明)の1次治療:PS 2で推奨されるレジメンを行うよう勧められる。(グレードB)
エビデンス
 EGFR遺伝子変異とALK遺伝子転座陰性で腫瘍細胞のPD-L1陽性細胞≧50%の進行非小細胞肺癌を対象とし,初回治療としてペムブロリズマブ単剤とプラチナ併用療法を比較する第Ⅲ相試験が行われ,主要評価項目であるPFSは10.3カ月 vs 6.0カ月(HR 0.50,95%CI:0.37-0.68, P<0.001)とペムブロリズマブ群で有意に良好であった。この試験においてプラチナ併用療法群の44%が増悪後にペムブロリズマブ単剤にクロスオーバーされていたが,OSにおいてもペムブロリズマブ群で良好であったことが報告されている(HR 0.60, P=0.005)46)。ペムブロリズマブ後の化学療法に関するデータは少なく,現時点では今まで蓄積されたデータを参考とし,非扁平上皮癌(EGFR・ALK・ROS1陰性もしくは不明)PS 2の1次治療に準じて治療を行う。
6-20.扁平上皮癌
1次治療としてペムブロリズマブ未使用の2次治療以降:PS 0-1
推 奨

a.PD-1阻害剤を行うよう勧められる。(グレードA)

b.ラムシルマブは適応と考えられる症例においてドセタキセルに追加するよう勧められる。(グレードB)

c.ドセタキセル単剤を行うよう勧められる。(グレードB)

d.S-1単剤を行うよう勧められる。(グレードB)

エビデンス

〈PD-1阻害剤〉

a-1.ペムブロリズマブ単剤

 進行非小細胞肺癌を対象としたペムブロリズマブの第Ⅰ相試験が行われ,既治療の394例におけるORRは18.0%,PFS 3.0カ月 ,OS 9.3カ月の成績が報告された。主な毒性は疲労,瘙痒,食欲低下などであり,Grade 3以上の毒性は9.5%と忍容性は良好であった。この試験においてペムブロリズマブの投与方法は2mg/kg 3週毎,10mg/kg 3週毎,10mg/kg 2週毎での検討が行われたが用量や投与スケジュールによる有効性や毒性の差は認めなかった。腫瘍細胞のPD-L1発現レベルと有効性の検討では, PD-L1陽性細胞≧50%の既治療例でのORRは43.9%,PFS 6.1カ月,OS未到達であり,PD-L1の発現が1~49%,1%未満の症例と比較し良好であった32)
 その後,プラチナ併用療法を含む治療後に再発し腫瘍細胞のPD-L1陽性細胞≧1%の進行非小細胞肺癌を対象とし,ペムブロリズマブ単剤とDTX単剤を比較するランダム化比較Ⅱ/Ⅲ相試験が行われ,1,034例がペムブロリズマブ2mg/kg群,ペムブロリズマブ10mg/kg群,DTX群の3群に割り付けられた。主要評価項目は全集団ならびにPD-L1陽性細胞≧50%の症例におけるOSとPFSであった。全集団のOSは,それぞれ10.4カ月,12.7カ月,8.5カ月であり,DTX群に対して2mg/kg群でHR 0.71(P=0.0008),10mg/kgでHR 0.61(P<0.0001)と有意な延長を示した。PFSはそれぞれ3.9カ月 ,4.0カ月 ,4.0カ月と差を認めなかったが,ORRはそれぞれ18%,18%,9%とペムブロリズマブ群で有意に良好であった。PD-L1陽性細胞≧50%の症例におけるOSは,ペムブロリズマブ2mg/kg群で14.9カ月,10mg/kg群で17.3カ月,DTX群で8.2カ月であり,DTX群に対して2mg/kg群でHR 0.54(P=0.0002),10mg/kgでHR 0.50 (P<0.0001) と有意な延長を示し,PFSにおいてもそれぞれ5.0カ月(HR 0.59,P=0.0001),5.2 カ月(HR 0.59,P<0.0001),4.1カ月とペムブロリズマブ群で有意に良好であった。ORRもそれぞれ30%,29%,8%とペムブロリズマブ群で有意に良好であり,PD-L1陽性細胞≧50%の症例においてOS,PFS,ORRともにDTX単剤との差は顕著であった。毒性に関しては,Grade 3以上の毒性はペムブロリズマブ2mg/kg群で13%,10mg/kg群で16%,DTX群で35%とペムブロリズマブ群で頻度が低く,ペムブロリズマブの免疫関連の毒性として甲状腺機能障害,肺臓炎,皮膚障害などが認められた。また,この試験においてペムブロリズマブ2mg/kg群と10mg/kg群での有効性や毒性の差は認めなかったことが報告されている33)
 以上より,PD-L1陽性細胞≧1%の症例においてペムブロリズマブ単剤を行うよう勧められ,推奨グレードはAとした。

a-2.ニボルマブ単剤

 プラチナ併用療法の治療歴を有する進行扁平上皮非小細胞肺癌の2次治療として,ニボルマブ単剤とDTX単剤を比較する第Ⅲ相試験が行われ,主要評価項目であるOSはニボルマブ群で有意な延長を認め(9.2カ月vs 6.0カ月,HR 0.59,P<0.001),1年生存率もニボルマブ群で良好であった(42% vs 24%)。また,ニボルマブ群においてPFS(3.5カ月vs 2.8カ月,HR 0.62,P<0.001),ORR(20% vs 9%,P=0.008)も有意に良好であった。主な毒性は,ニボルマブ群で倦怠感や食欲低下,DTX群で好中球減少,倦怠感,脱毛などであり,Grade 3以上の毒性はニボルマブ群で有意に少なかった(7% vs 55%)。一方,ニボルマブ群で肺臓炎,甲状腺機能障害,大腸炎,肝機能障害,皮疹,Ⅰ型糖尿病などの免疫関連の毒性が報告されており,免疫関連の毒性管理には注意が必要である47)
 また,本邦において再発非小細胞肺癌を対象としたニボルマブ単剤の第Ⅱ相試験が行われ,扁平上皮癌でORR 25.7%,mPFS 4.2カ月の成績が報告された。主な毒性は発熱,倦怠感,食欲低下,発疹などであり,Grade 3以上の毒性は16.2%と忍容性は良好であったが,間質性肺合併症(間質性肺炎+肺障害)が7.2%(Grade 3以上が3.6%)に認められた35)
 以上より,ニボルマブ単剤を行うよう勧められ,推奨グレードはAとした。

〈ドセタキセル+ラムシルマブ併用療法〉

b.
プラチナ併用療法後に増悪した進行非小細胞肺癌症例を対象とし,ラムシルマブ+DTX併用療法とDTX単剤を比較する第Ⅲ相試験が行われ,主要評価項目であるOSは,ラムシルマブ併用群で有意な延長を認めた(MST 10.5カ月vs 9.1カ月,HR 0.86,P=0.023)。また,ラムシルマブ併用群において,PFS(mPFS 4.5カ月vs. 3.0カ月,HR 0.76,P<0.0001),ORR(23% vs 14%,P<0.0001)も有意に良好であった。毒性に関しては,ラムシルマブ併用群でGrade 3/4の好中球減少,発熱性好中球減少,全Gradeの血小板減少,口内炎がより高頻度であったが,Grade 3以上の高血圧は6%で出血性イベントの多くはGrade 1/2であった36)。また,本邦においてラムシルマブ+DTX併用療法とDTX単剤のランダム化比較第Ⅱ相試験が行われ,ラムシルマブ併用群においてPFS(mPFS 5.22カ月vs 4.21カ月,HR 0.83),OS(MST 15.15カ月vs 13.93カ月,HR 0.77),ORR(28.9% vs 18.5%)ともに良好な結果が示された。毒性に関しては,ラムシルマブ併用群において発熱性好中球減少の頻度が高く(34% vs 19%),低アルブミン血症,血小板減少,口内炎,鼻出血,蛋白尿などもDTX単剤よりも高頻度であったが,ほとんどはGrade 1/2であった37)。ラムシルマブにおいてもベバシズマブと同様に出血リスクには注意が必要であり,投与に際してはその適応を十分検討する必要がある。
 以上より,ラムシルマブは適応と考えられる症例においてDTXに追加するよう勧められる。効果と発熱性好中球減少をはじめとする有害事象のバランスを考慮し,推奨グレードはBとした。

〈ドセタキセル単剤〉

c.
プラチナ製剤を含む化学療法無効または奏効後に再発した非小細胞肺癌患者を対象としたDTX単剤の第Ⅲ相試験が2つ報告されている。1つはDTX(100mg/m2 or 75mg/m2)vs VNR or IFMの比較試験でMSTでは有意差を認めないもののDTX 75mg/m2群でコントロール群と比較してORR,26週PFS率,1年生存率の有意な改善を認めた38)。また,DTX(100mg/m2 or 75mg/m2)とBSCの比較ではMST,1年生存率は,DTX 75mg/m2,BSC群でそれぞれ7.5カ月と37%,4.6カ月と19%でDTX群で有意に優れ(P=0.010,P=0.003),QOLの改善も認められた39)。いずれの試験においても,DTX 75mg/m2群が最も治療成績が優れており,プラチナ製剤を含む治療後の不応ないし再発例に対する非小細胞癌の化学療法としてはDTX 75mg/m2の有用性が確立された。本邦における承認用量は60 mg/m2であるが,本邦で行われたこの用量における第Ⅱ相試験でORR 18.2%,MST 7.8カ月と上記2つの第Ⅲ相試験のDTX 75mg/m2と同等の効果を有する結果を報告した40)
 以上より,DTX単剤を行うよう勧められる。従来DTX単剤の推奨グレードはAであったが,今回3つの第Ⅲ相試験においてDTX単剤はペムブロリズマブ単剤,ニボルマブ単剤,DTX+ラムシルマブ療法にOSで有意に劣っていたことから推奨グレードはBとした。

〈S-1単剤〉

d.
プラチナ既治療の再発非小細胞肺癌,PS 0-2を対象とし,S-1単剤とDTX単剤を比較する第Ⅲ相試験が日本を含むアジアで行われ,全生存期間中央値はS-1群で12.75カ月,DTX群で12.52カ月(HR 0.945, P=0.3818)であり,主要評価項目であるOSにおいてS-1単剤のDTX単剤に対する非劣性が示された。PFSはS-1群 2.86カ月,DTX群 2.89カ月(HR 1.033)で両群に差を認めず,ORRはS-1群8.3%,DTX群9.9%であった。毒性に関しては,発熱性好中球減少ならびにGrade 3以上の好中球減少の頻度はDTX群で高く(0.9% vs 13.6%,5.4% vs 47.7%),全Gradeの下痢と口腔粘膜障害の頻度はS-1群で高かったが(37.2% vs 18.2%,23.9% vs 14.5%),Grade 3以上の頻度は低く忍容性は良好であった45)
 以上より,S-1単剤はDTX単剤に対する非劣性が示されており行うよう勧められ,推奨グレードはBとした。
6-21.扁平上皮癌
1次治療としてペムブロリズマブ未使用の2次治療以降:PS 2
推 奨

a.ドセタキセル単剤を行うよう勧められる。(グレードA)

b.S-1単剤を行うよう勧められる。(グレードA)

エビデンス

〈ドセタキセル単剤〉

a.
プラチナ製剤を含む化学療法無効または奏効後に再発した非小細胞肺癌患者を対象としたDTX単剤の第Ⅲ相試験が2つ報告されている。1つはDTX(100 mg/m2 or 75 mg/m2)vs VNR or IFMの比較試験で,MSTでは有意差を認めないもののDTX 75mg/m2群でコントロール群と比較してORR,26週PFS率,1年生存率の有意な改善を認めた38)。また,DTX(100mg/m2 or 75mg/m2)とBSCの比較ではMST,1年生存率は,DTX 75mg/m2,BSC群でそれぞれ7.5カ月と37%,4.6カ月と19%でDTX群で有意に優れ(P=0.010,P=0.003),QOLの改善も認められた39)。いずれの試験においても,DTX 75mg/m2群が最も治療成績が優れており,プラチナ製剤を含む治療後の不応ないし再発例に対する非小細胞癌の化学療法としてはDTX 75mg/m2の有用性が確立された。本邦における承認用量は60mg/m2であるが,本邦で行われたこの用量における第Ⅱ相試験でORR 18.2%,MST 7.8カ月と上記2つの第Ⅲ相試験のDTX 75mg/m2と同等の効果を有する結果を報告した40)
 以上より,DTX単剤を行うよう勧められ,推奨グレードはAとした。

〈S-1単剤〉

b.
プラチナ既治療の再発非小細胞肺癌,PS 0-2を対象とし,S-1単剤とDTX単剤を比較する第Ⅲ相試験が日本を含むアジアで行われ,全生存期間中央値はS-1群で12.75カ月,DTX群で12.52カ月(HR 0.945, P=0.3818)であり,主要評価項目であるOSにおいてS-1単剤のDTX単剤に対する非劣性が示された。PFSはS-1群 2.86カ月,DTX群 2.89カ月(HR 1.033)で両群に差を認めず,ORRはS-1群 8.3%,DTX群 9.9%であった。毒性に関しては,発熱性好中球減少ならびにGrade 3以上の好中球減少の頻度はDTX群で高く(0.9% vs 13.6%,5.4% vs 47.7%),全Gradeの下痢と口腔粘膜障害の頻度はS-1群で高かったが(37.2% vs 18.2%,23.9% vs 14.5%),Grade 3以上の頻度は低く忍容性は良好であった45)
 以上より,S-1単剤はDTX単剤に対する非劣性が示されており行うよう勧められ,推奨グレードはAとした。
6-22.扁平上皮癌
1次治療としてペムブロリズマブ使用の2次治療以降:PS 0-1
推 奨
扁平上皮癌(PD-L1陽性細胞<50%もしくは不明)の1次治療:PS 0-1で推奨されるレジメンを行うよう勧められる。(グレードB)
エビデンス
 EGFR遺伝子変異とALK遺伝子転座陰性で腫瘍細胞のPD-L1陽性細胞≧50%の進行非小細胞肺癌を対象とし,初回治療としてペムブロリズマブ単剤とプラチナ併用療法を比較する第Ⅲ相試験が行われ,主要評価項目であるPFSは10.3カ月 vs 6.0カ月(HR 0.50,95%CI:0.37-0.68, P<0.001)とペムブロリズマブ群で有意に良好であった。この試験においてプラチナ併用療法群の44%が増悪後にペムブロリズマブ単剤にクロスオーバーされていたが,OSにおいてもペムブロリズマブ群で良好であったことが報告されている(HR 0.60, P=0.005)46)
 ペムブロリズマブ後の化学療法に関するデータは少なく,現時点では今まで蓄積されたデータを参考とし,扁平上皮癌(PD-L1陽性細胞<50%もしくは不明)PS 0-1の1次治療に準じて治療を行う。
6-23.扁平上皮癌
1次治療としてペムブロリズマブ使用の2次治療以降:PS 2
推 奨
扁平上皮癌の1次治療:PS 2で推奨されるレジメンを行うよう勧められる。(グレードB)
エビデンス
 EGFR遺伝子変異とALK遺伝子転座陰性で腫瘍細胞のPD-L1陽性細胞≧50%の進行非小細胞肺癌を対象とし,初回治療としてペムブロリズマブ単剤とプラチナ併用療法を比較する第Ⅲ相試験が行われ,主要評価項目であるPFSは10.3カ月 vs 6.0カ月(HR 0.50,95%CI:0.37-0.68, P<0.001)とペムブロリズマブ群で有意に良好であった。この試験においてプラチナ併用療法群の44%が増悪後にペムブロリズマブ単剤にクロスオーバーされていたが,OSにおいてもペムブロリズマブ群で良好であったことが報告されている(HR 0.60, P=0.005)46)
 ペムブロリズマブ後の化学療法に関するデータは少なく,現時点では今まで蓄積されたデータを参考とし,扁平上皮癌 PS 2の1次治療に準じて治療を行う。
引用文献

レジメン:Ⅳ期非小細胞肺癌の2次治療以降

単剤療法

ペムブロリズマブ 投与方法は添付文書を参照
ニボルマブ 3 mg/kg, on day 1 q2w
DTX 60 mg/m2, on day 1 q3w
ラムシルマブ 10 mg/kg, on day 1
DTX 60 mg/m2, on day 1 q3w
PEM 500 mg/m2, on day 1 q3w

PEMの投与に際しては下記ビタミンの補充を行う

①葉酸:投与の7日以上前から葉酸として1日1回0.5 mgを連日経口投与する。なお,本剤の投与を中止または終了する場合には,本剤最終投与日から22日目まで可能なかぎり葉酸を投与する。

②ビタミンB12:初回投与の少なくとも7日前に,ビタミンB12として1回1 mgを筋肉内投与する。その後,本剤投与期間中および投与中止後22日目まで9週ごと(3コースごと)に1回投与する。

内服療法

S-1 80-120 mg/body, on days 1-28 1日2回,q6w
ゲフィチニブ 250 mg/日 1錠 1日1回
エルロチニブ 150 mg/日 1錠 1日1回
アファチニブ 40 mg/日 1錠 1日1回
オシメルチニブ 80 mg/日 1錠 1日1回
クリゾチニブ 500 mg/日,250 mg 2錠(1回1錠) 1日2回
アレクチニブ 600 mg/日,150 mg 4錠(1回2錠) 1日2回
セリチニブ 750 mg/日,150 mg 5錠 1日1回
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