2017年版 序

 肺癌診療ガイドライン2017年WEB版の公開にあたりご挨拶申し上げます。

 わが国の肺癌診療ガイドラインは,2003年,2005年に初版,改訂第2版がそれぞれ発行されました。その後の肺癌診療の進歩は著しく,刻々と公表される重要なエビデンスへの対応を迅速に行う必要が生じてきたため,2011年以降は毎年WEB上で公開してまいりました。2014年にはガイドラインの整備が一段落したため冊子体が発刊され,この年から2年毎の冊子化を計画し,昨年末に2016年版を発刊致しました。

 一方,診療ガイドラインの世界標準としてGRADEシステムがあり,日本医療機能評価機構の医療情報サービスMindsの診療ガイドライン作成マニュアルもこれに準拠しております。これに照らしますと,肺癌診療ガイドラインはクリニカルクエスチョンの設定がない,推奨度についてGRADE分類に従っていない等々の点でその規準には沿っておらず課題となっておりました。

 今回のWEB版改訂でも全領域についてはGRADEをとり入れることはできませんでしたが,非小細胞肺癌の集学的療法,薬物療法については,GRADE分類を採用致しました。同じエビデンスであっても従来の記載や推奨度分類はかなり異なっており,少し戸惑われることがあるかもしれません。このうち,最も記載内容の変更の多いⅣ期非小細胞肺癌の薬物療法については分冊化し,冊子体を発刊することと致しました。2018年に予定されている冊子体発刊の折には全領域でこのGRADEに沿った形での改訂を目指しています。

 最新の情報をシステマティックにレビューした上に盛り込んだ本ガイドラインは,診療に有用というだけでなく,教育や研究のツールとしても最上級のものであると思いますので,折に触れご参照いただければ幸甚に存じます。また本ガイドラインをさらに良いものに育て上げていくためのご意見も会員の皆様より広く承りたいと考えております。

 末筆となりましたが,今回の本ガイドラインの作成に忙しい業務のかたわらご尽力頂いた各小委員会の委員長初め多くの委員,特にGRADE導入のために週末あるいは深夜など私的な時間を削ってご尽力いただいた薬物療法及び集学的治療小委員会,放射線療法及び集学的治療小委員会の皆様に深甚なる感謝の意を表します。

2017年11月

特定非営利活動法人日本肺癌学会
理事長 光冨 徹哉
ガイドライン検討委員会
委員長 山本 信之
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