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Ⅱ.非小細胞肺癌(NSCLC)

放射線治療基本的事項

文献検索と採択

放射線治療基本的事項

本文中に用いた略語および用語の解説

DVH dose-volume histogram 線量体積ヒストグラム
MLD mean lung dose 平均肺線量
V20 20 Gy以上照射される肺体積の全肺体積に対する割合
V30 30 Gy以上照射される肺体積の全肺体積に対する割合
2-1.放射線治療装置・治療計画法
推 奨

a.肺癌に対する胸部放射線治療には直線加速器による6~10 MV X線を用いるよう勧められる。

b.放射線治療計画には,CTシミュレーションによる3次元治療計画を行うよう勧められる。

c.肺癌の放射線治療では,できるかぎり実測値に近い計算アルゴリズムを用いた不均質肺補正を行い,3次元的な線量分布を常に検討することを行うよう勧められる。

エビデンス
a.
肺癌の胸部放射線治療では直線加速器による高エネルギーX線が用いられるが,エネルギーが低いと照射範囲内の線量不均一性が高度となり,逆にエネルギーが高すぎても標的辺縁ではビルドアップ効果により線量の低下を招く1)~4)。このようにX線の物理的特性から至適エネルギーとして6~10 MV X線の使用が推奨される。ただし,定位放射線照射の場合には4~6 MV X線が望ましい。
b.
3次元治療計画により,ターゲットの線量を低下させることなく正常肺と心臓の平均線量を有意に減少できることが示されている5)~7)。また,放射線治療単独例に対し,肺のDVHと放射線肺臓炎の関係について検討され,Grade 2(RTOGの基準)以上の放射線肺臓炎の発症リスクを低下させるには,V20が40%を超えないようにすることが重要であると報告されている8)。また,化学療法併用の際には,V20が25%を超えないように治療計画することを推奨している9)。さらに,全肺のV20だけではなくV30やMLDなどのパラメーターと放射線肺臓炎の発生との相関についても報告されている10)~12)。その他,放射線食道炎と関連する食道のパラメーター13)14), 心毒性と相関する心臓のパラメーター15)などについても報告され,リスク評価における有用性が示唆されており,放射線治療計画には,CTシミュレーションによる3次元治療計画を行うよう勧められる。
c.
ファントムを用いた線量測定実験で,肺内孤立性腫瘍を10 MV X線で照射した場合,肺補正なしでは,線量は10~20%の過線量となる。一方,肺補正を行うと線量計算アルゴリズムによって8~18%の線量不足となる16)。臨床の肺癌症例での検討では,肺補正を行わないと5~28%の過線量となると報告されている16)~18)。また,肺野型腫瘍に対してはエネルギーの低いX線を用いたほうが良好な線量分布を得られると報告されている19)。計算アルゴリズム精度も向上しており,実地医療において3次元的な線量分布を検討するよう勧められる。
2-2.放射線療法の品質管理
推 奨
放射線療法では,照射野設定,線量計算などの品質管理を適切に行うよう勧められる。
エビデンス
 放射線療法では,品質管理は重要である。小細胞肺癌を対象にしたランダム化比較試験においてプロトコール違反症例の生存率は有意に不良であった20)。非小細胞肺癌を対象とした化学放射線療法のランダム化比較試験ではプロトコール違反が20%程度起こっており,品質管理モニターの必要性が示されている21)。同様の報告は他のグループからもなされ22)23),多施設臨床試験では,試験の質を上げるために照射野,線量などの定期的なレビューが必要である。
 したがって,放射線療法では,照射野設定,線量計算などの品質管理を適切に行うよう勧められる。
引用文献
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